「ん……アレ?」
あれ?どうして私は、こんな所で寝てたんだっけ?
「フリード、どこ~?」
「やっと起きたか」
誰!?
驚いて振り向くと、そこにいたのは藍さん。
その姿を見て、私はさっきまで繰り広げられた弾幕決闘を思い出しました。
実を言うと、最後のスペルを宣言したあたりから記憶が曖昧なんです。
たぶん魔力切れでダウンしたんだろうけど……。
「竜なら食料を集めにその辺を飛び回っている。ん?どうかしたか?」
「藍さん……実は、さっきの決闘のことなんですが、私気絶して最後の方のことが記憶に無いんです。結局、どうなったんですか?」
正直辛いけど、これは聞いておかないといけません。
まあ、予想するまでも無く私の負けなんでしょうが。
最後の時点で私の残りスペルは1枚、藍さんは3枚。
仮に被弾しそうになっても、スペルで相殺されて終了。
偉そうに「助ける」なんて言っちゃったけれど、宣言の時点で既に詰んでいたわけで
「あーあ、勝ちたかったなあ」
自分が情けなくて涙が出てきます。そんな私を見て、藍さんは困ったように頭を掻いており……アレ?
「あの、藍さん?」
「ん、どうした?」
「どうして藍さんは、まだ封印されてないんですか?」
「……そうか。さっきの決闘のことを覚えてないのか。結論から言ってみれば、あの戦いはお前の勝利で、私が残っているのは契約のためだ。……どうかしたか?」
ナンデスト?
「私が、藍さんに勝った?」
「そうだ」
「ミーが?」
「ユーが。ってなんでミッド語なんだ?」
「まぢですか?」
「マジだ」
「ま「そろそろしつこいぞ」ううう……。」
本当、みたいですね。
「じゃあ、私と契約してくれるってことでいいのかな?」
「元より負けた身だ。拒否権など有りはしない。しかし、キャロは本当にいいのか?」
「へ?何が?」
「前にも言ったが、私みたいなデバイスを持っているのがバレたら、間違いなく有象無象に狙われるぞ。最悪命を落とすかもしれない。それでいいのか?私への同情だけで契約するのなら、考えた方がいい」
それは愚問ですよ。だって
「私は知ってますから。運命からは逃げることなんて出来ないって」
こちとら追放フラグに4年間晒され続けたんです。実体験なめるなです。
「だから、戦ってやります。待ち伏せされているのが分かってるなら、正面から叩き折ってやります」
主にフラグ的な意味で。
「だから藍さん。私と一緒に、戦ってくれませんか」
「キャロ……、いや、マスター。そこまで言ってくれるのなら、もう私から言う事は何も無い。では、早速契約を始めようか」
あ、呼称変わりましたね。けじめって奴でしょうか。
では、早速契約です。
幻想縁起を持ってきて準備完了。細かいことは全て藍さんに丸投げです。
「では、始めるぞ。
“珠(じゅ)は珠(たま)であり魂(たま)である。
珠(じゅ)は珠(じゅ)であり呪(じゅ)である。
ここに、夢幻の呪(まじない)となって主と魂の契約を為す。
藍の名のもと、マスター、キャロ・ル・ルシエとの契約を承認する”」
藍さんがそう言い終わると、本が光り中から何か出てきて、それが私の手の中に落ちてきました。
宝石が連なって輪っかになってて……、数珠、でしょうか?
同時に本のページがすごい勢いでめくれていき、そこに次々と文字が書き足されていっています。
「これは、何が?」
「この本の本来の使い道に戻るだけだ。」
「本来、って?」
「少々ややこしいんだが、この幻想縁起は夢幻珠を格納して封印するためのただのストレージユニットであって、デバイスではない。デバイスと言えるのはあくまで夢幻珠の方で、コレ自体はただの箱みたいなものだ」
「ふむふむ」
「それで、契約が為されて封印の意味が無くなると、情報ストレージとして今度は逆に夢幻珠に格納され、以降は夢幻珠のマニュアルとして使用されるんだ」
「そーなのかー」
言われて幻想縁起に目を通します。これは……かなり内容が多いです。後でじっくり読むことにしましょう。
「とにかくこれで契約は成立だ。……これからよろしく頼みます、マスター」
あ、口調も変わりました。徹底してますねえ。
「こちらこそ、よろしくお願いします、藍さん」
「……えーっとだな、マスター。」
「何ですか?」
「マスターはあなたですから敬語は要らないです。あと、さん付けも結構です。」
「……うん、分かったよ。よろしく、藍」
こうしてこの日、私は自分のデバイスと、そして、新しい家族に出会うことができました。
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「ねえ、藍。」
「はい、何でしょうか?」
「そういえば、1つ聞きたいことがあったんだけど、いいかな?」
「はい。何でも聞いて下さい。」
「私達が初めて会った時なんだけど、目が覚める時、顔に尻尾の感触があったんだ。
アレ、どういうことかな?」
「ギク!!そ、それは……」
「人様の顔の上にケツ乗っけて、一体何をしてたんでしょうかねえ……」
「……えーっとですねえ、確認のため、ちょっと記憶を……」
は? こいつ今何て言った?
ちょっと窘める程度で許そうかと思っていたのですが、新たに余罪を白状してきました。
これは詳しく聞く必要がありますね。
「記憶を、って何? 正直に話してね」
「対象に夢を見させて、それを観測することで記憶を見るんだが……マスター?」
ああ、成る程、今朝の悪夢は全部こいつのせいだったんですか……許さん!!
「藍、ちょっと、OHANASHIしようか?」
「ま、マスター!? アッーーーーーーー!!」
ピチューン!!
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―某所にて―
「〇〇様、〇〇は無事完了したみたいです」
「へぇ、見込んだ通りねぇ。なら、……」
「いいんですか? 〇〇ですよ?」
「いいのよ。〇〇は〇〇なんだから。また変わったことがあったらその時はよろしく」
「分かりました。では、……」
矛盾出ないように修正修正~。バレてない……よね?