幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第8話 夢幻珠

「ん……アレ?」

 

 あれ?どうして私は、こんな所で寝てたんだっけ?

 

「フリード、どこ~?」

 

「やっと起きたか」

 

 誰!?

 

 驚いて振り向くと、そこにいたのは藍さん。

 その姿を見て、私はさっきまで繰り広げられた弾幕決闘を思い出しました。

 実を言うと、最後のスペルを宣言したあたりから記憶が曖昧なんです。

 たぶん魔力切れでダウンしたんだろうけど……。

 

「竜なら食料を集めにその辺を飛び回っている。ん?どうかしたか?」

 

「藍さん……実は、さっきの決闘のことなんですが、私気絶して最後の方のことが記憶に無いんです。結局、どうなったんですか?」

 

 正直辛いけど、これは聞いておかないといけません。

 まあ、予想するまでも無く私の負けなんでしょうが。

 

 最後の時点で私の残りスペルは1枚、藍さんは3枚。

 仮に被弾しそうになっても、スペルで相殺されて終了。

 偉そうに「助ける」なんて言っちゃったけれど、宣言の時点で既に詰んでいたわけで

 

「あーあ、勝ちたかったなあ」

 

 自分が情けなくて涙が出てきます。そんな私を見て、藍さんは困ったように頭を掻いており……アレ?

 

「あの、藍さん?」

 

「ん、どうした?」

 

「どうして藍さんは、まだ封印されてないんですか?」

 

「……そうか。さっきの決闘のことを覚えてないのか。結論から言ってみれば、あの戦いはお前の勝利で、私が残っているのは契約のためだ。……どうかしたか?」

 

 ナンデスト?

 

「私が、藍さんに勝った?」

 

「そうだ」

 

「ミーが?」

 

「ユーが。ってなんでミッド語なんだ?」

 

「まぢですか?」

 

「マジだ」

 

「ま「そろそろしつこいぞ」ううう……。」

 

 本当、みたいですね。

 

「じゃあ、私と契約してくれるってことでいいのかな?」

 

「元より負けた身だ。拒否権など有りはしない。しかし、キャロは本当にいいのか?」

 

「へ?何が?」

 

「前にも言ったが、私みたいなデバイスを持っているのがバレたら、間違いなく有象無象に狙われるぞ。最悪命を落とすかもしれない。それでいいのか?私への同情だけで契約するのなら、考えた方がいい」

 

 それは愚問ですよ。だって

 

「私は知ってますから。運命からは逃げることなんて出来ないって」

 

 こちとら追放フラグに4年間晒され続けたんです。実体験なめるなです。

 

「だから、戦ってやります。待ち伏せされているのが分かってるなら、正面から叩き折ってやります」

 

 主にフラグ的な意味で。

 

「だから藍さん。私と一緒に、戦ってくれませんか」

 

「キャロ……、いや、マスター。そこまで言ってくれるのなら、もう私から言う事は何も無い。では、早速契約を始めようか」

 

 あ、呼称変わりましたね。けじめって奴でしょうか。

 

 では、早速契約です。

 幻想縁起を持ってきて準備完了。細かいことは全て藍さんに丸投げです。

 

「では、始めるぞ。

 “珠(じゅ)は珠(たま)であり魂(たま)である。

 珠(じゅ)は珠(じゅ)であり呪(じゅ)である。

 ここに、夢幻の呪(まじない)となって主と魂の契約を為す。

 藍の名のもと、マスター、キャロ・ル・ルシエとの契約を承認する”」

 

 藍さんがそう言い終わると、本が光り中から何か出てきて、それが私の手の中に落ちてきました。

 宝石が連なって輪っかになってて……、数珠、でしょうか?

 同時に本のページがすごい勢いでめくれていき、そこに次々と文字が書き足されていっています。

 

「これは、何が?」

 

「この本の本来の使い道に戻るだけだ。」

 

「本来、って?」

 

「少々ややこしいんだが、この幻想縁起は夢幻珠を格納して封印するためのただのストレージユニットであって、デバイスではない。デバイスと言えるのはあくまで夢幻珠の方で、コレ自体はただの箱みたいなものだ」

 

「ふむふむ」

 

「それで、契約が為されて封印の意味が無くなると、情報ストレージとして今度は逆に夢幻珠に格納され、以降は夢幻珠のマニュアルとして使用されるんだ」

 

「そーなのかー」

 

 言われて幻想縁起に目を通します。これは……かなり内容が多いです。後でじっくり読むことにしましょう。

 

「とにかくこれで契約は成立だ。……これからよろしく頼みます、マスター」

 

 あ、口調も変わりました。徹底してますねえ。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします、藍さん」

 

「……えーっとだな、マスター。」

 

「何ですか?」

 

「マスターはあなたですから敬語は要らないです。あと、さん付けも結構です。」

 

「……うん、分かったよ。よろしく、藍」

 

 こうしてこの日、私は自分のデバイスと、そして、新しい家族に出会うことができました。

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼▼▼▼

 

「ねえ、藍。」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「そういえば、1つ聞きたいことがあったんだけど、いいかな?」

 

「はい。何でも聞いて下さい。」

 

「私達が初めて会った時なんだけど、目が覚める時、顔に尻尾の感触があったんだ。

アレ、どういうことかな?」

 

「ギク!!そ、それは……」

 

「人様の顔の上にケツ乗っけて、一体何をしてたんでしょうかねえ……」

 

「……えーっとですねえ、確認のため、ちょっと記憶を……」

 

 は? こいつ今何て言った?

 ちょっと窘める程度で許そうかと思っていたのですが、新たに余罪を白状してきました。

 これは詳しく聞く必要がありますね。

 

「記憶を、って何? 正直に話してね」

 

「対象に夢を見させて、それを観測することで記憶を見るんだが……マスター?」

 

 ああ、成る程、今朝の悪夢は全部こいつのせいだったんですか……許さん!!

 

「藍、ちょっと、OHANASHIしようか?」

 

「ま、マスター!? アッーーーーーーー!!」

 

 ピチューン!!

 

 

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 ―某所にて―

 

「〇〇様、〇〇は無事完了したみたいです」

 

「へぇ、見込んだ通りねぇ。なら、……」

 

「いいんですか? 〇〇ですよ?」

 

「いいのよ。〇〇は〇〇なんだから。また変わったことがあったらその時はよろしく」

 

「分かりました。では、……」




 矛盾出ないように修正修正~。バレてない……よね?

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