世界中の能力者から能力を奪って帰ってきた
入院当初に見られた記憶の混濁も無事解消し、退院祝いに生徒会のメンバーでバーベキューに行くことになったのだが、事態は一変する。
しかし、
――なんで陽野森高校に?
どこまで時間を
僕が陽野森高校にいたのは高校入学した数日だ。今日は何日だろう。遠からず数日内に
いや待ってなんかいられない。
とにかく早く
「
声をかけられた。
あれ? 陽野森高校に知り合いなんて――僕は後ろを振り返る。
「
黒髪の少女、
陽野森高校のマドンナ。才色兼備の美少女。
彼女は覚えていないだろうけど、
あの時は本当に悪いことをした。
「や、やあ、
僕はできるだけ平然を装って応対する。今の僕は学年一位の優等生なんだからな。怪しまれては面倒だ。
「どうしたじゃないですよ
そう言って手をつながれる。
「うわっ!」
驚いて、とっさに僕は振り払ってしまった。
「えっ……」
「ご、ごめん……」
僕は罪悪感から謝る。
「いきなり手を触られて驚いたんだ」
「そ、そうですよね……ごめんなさい……」
数秒ほど無言が続くと、
「じゃ、じゃあ、今からなら手をつないでいいですか?」
「は、はぁ?」
意味不明なことをおっしゃった。
ほ、本当に意味がわからない……。
過去にこんなことなかったよな。
でも、後遺症で記憶違いがあるかもしれない。
そう一度考えるとこの状況をどうすればいいか
「
言いよられる。
「嫌とかじゃなくてだな……どうして手を――」
――つなぎたいのか、言いかけて、考える。
「手を?」
首をかしげられる。
「……ごめん。なんでもないんだ。ところで
不自然に会話を逸らした。どうしても早くしりたい情報だった。確か僕が起こしてしまったトラック事故は4月9日だったはずだ。
「……今日ですか? 今日は4月9日ですよ?」
――あれ?
おかしいぞ。
「どうかしましたか?
「………………」
どうなっているんだ……。
いや、冷静に考えろ。
僕じゃなくて、
「本当に今日は4月9日かな?」
「……? 本当ですよ、ほらっ」
――4月9日。
はっきりとデジタルの数字はそう指し示している。
ありえない。
僕は慌ててポケットに入ってあったスマホを取り出してまた確認した。始めからそうすればよかった。
4月9日。
間違いない。
今日は僕が
「あっ、パンケーキですけど前のお店でいいですよね?」
嬉しそうに予定を取り決めようと僕に尋ねてくる。
――前? 前ってなんだ?
「……
「は、はいっ、何でしょうか?」
「僕たちはいつ出会ったんだっけ?」
「えっ……?」
「頼むどうしても知りたいんだ!」
困惑する
「ふっふふ」
「えっ?」
頭を上げると
目尻を下げて、口に手を当てている。
「おかしなこと聞くんですね。
「そ、そうなのか?」
「変な前置き入れるから少し身構えちゃいましたよ。だって――」
時間がゆっくりに感じた。
その先の言葉聞いたら何かが変わってしまうような――
「私たち、小学校の時から同じ学校じゃないですか」
僕はその場に膝から崩れ落ちた。
「お、
嘘だろ?
ここはどこだ?
ここはどこなんだ?
僕はこんな世界しらない。
念のため、僕は読心術を発動させる。
(
やはり
でも、だとしたら、ここは本当にどこなんだ?
「ほ、保健室行きますか? 顔が真っ青ですよ……?」
「……大丈夫だよ。でも体調が良くないからパンケーキは申し訳ないんだけど、また今度じゃダメかな?」
「そ、そうですか……。残念ですけどしょうがないです。……あの心配なので家まで送りましょうか?」
本当に心配してくれているようで、泣きそうな表情を見せる。
「ありがとう。でも僕はひとりで大丈夫だから」
◆ ◆ ◆
学校の自販機エリアのベンチで僕は身体を休めていた。
背筋を伸ばしてスマホを覗きこむ。
日付は何度見直しても4月9日だった。
僕はどこに
時刻を表示したスマホを腕を伸ばして身体から遠ざける。画面に表示された小さな文字がぼやける。どうやら視力は落ちているらしい。
『――私たち、小学校の時から同じ学校じゃないですか』
記憶違いがなければ僕と
高校入試前に成績優秀な彼女の存在をチェックはしていたが、話したことは一度もない。少なくとも小学校から同じはありえない。
「どうなっているんだ……」
謎が深まるばかりだ。
とにかく、事情を
僕がベンチから立ち上がったその時だった。
見慣れた後ろ姿がそこにいた。
明るい髪色のツインテール。
さっきまで山奥に倒れていた冷たい亡骸じゃない。
生きてる
「
急に走りだした僕に周りの生徒たちは驚く。
どうして
「
その声を聞いて長い髪が揺れる。
振り返った顔見て僕は安心した。やっぱり
「
「引くなっ! な、なんですかっ! あなた気持ち悪い!」
ドン引いた
「た、確かに私は
いつか僕が告白した日のように淡々とした反応を見せる。
「……僕をしらないのか? お前は僕を捕まえに来たんじゃないのか?」
まただ。
また何かが変わっている。
本来ならカンニングで不正に入学した僕を捕まえに来たはず……。
「はぁ? なんで私があなたを捕まえないといけないんですか?」
「いや、だって僕が能力者で……そのカンニング魔だから……」
僕はこの状況を整理するために
「能力者? カンニング魔? 意味がわかりません」
それを聞いて
能力者をしらない? そんな馬鹿な!
「能力者だよ! お前は『不可視』の能力者で、僕は『略奪』の能力者だっただろ?」
「は、はぁ……」
(何言ってんだ。この人)
この世界では
「そ、それでお前のお兄さんも能力のせいで科学者たちにモルモットにされて……入院して……」
途端に
「あなた何言ってるんすか……私の兄なら元気ですが?」
「……えっ?」
何が起こっているんだ。
おかしい。
過去が完全に書き換わっている。
この世界で僕は
でも、
こんなことがありえるのか?
「……もういいですか? 私、急いでいるので」
「ま、待ってくれ、
通り越そうとする
「さっきは変なこと言ってごめん。だけど聞かせてほしい」
わからないことが多すぎる。少しでも
(この人変だ。ヘタに反発したら危険かもしれない)
そんな声が聞こえて、胸が痛む。
気にするな、こんなことで心が折れていたらみんなを救えない。情報収集を再開しろ。
「
「しりません」
前の世界では
「
「しりません」
僕を捕まえに来たわけではないから、
「西森
「アイドルですよね?」
「じゃあ黒羽美砂は?」
「誰ですかそれ」
苗字と姉の存在をしらない。この口調だと知り合いではなく芸能人として、しっている感じだ。直接
「……そうだよな。それなら
「知り合いですけど」
「そうか、やっぱりしらな……えぇっ!」
今、なんて?
「
「いや、だって……」
まさかこの流れでしってるとは……すまん
「
「同級生って、星ノ海学園のか?」
「はぁ? どこっすかそこ、この学校に決まってるでしょう」
それなら僕も同級生なんだが……いやそんなこと、今はどうでもいい。
「じゃあ
「そうですよ。じゃないとここにいるのはおかしいっしょ」
星ノ海学園の存在もなかったことになってる。
「もういいでしょう……私もう行きますね」
もう僕一人の力じゃどうしようもないことが起きている。
だから――僕は――
「最後にひとつだけ言わせてくれ」
「何ですか?」
うんざりした顔で
「もし僕が未来から