バトルロワイアル ~Dream and Phantasm~   作:歩く激戦区

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『現実』の幕開け

「皆さんのことは家族にはもう伝わっていると思います。ちなみにですが、ここは幻想島というリゾート地です。今は住人には出ていって貰っているので思う存分戦ってくださいね。では何か質問のある人はいますか?」

 

  燈導が生徒達に問いかけると、1人のポニーテールの女子生徒がおもむろに手を挙げた。九十九坂妖乃(つくもざかあやの 28番 女子)だ。

  燈導はほう、と呟き、生徒の情報が書かれた書類を見ながら言葉を続けた。

 

「はい。えーっと、九十九坂さん。起立してください。何が聞きたいのですか?何でも答えますよ」

「ん?」

  呟いたのは徳河瑠々家(とくかわるるいえ 29番 男子)だ。

 

「プログラム中に殺人や傷害といった犯罪以外の罪状で罪に問われるとかそういったオチは無いですよね?例えば放火とか」

「ほぉ~、良い質問だねぇ。安心してください!ゲーム中は何をやっても罪に問われることはありません!遠慮無く暴れてください!」

 

  九十九坂はわかりました、とだけ言い席についた。周りの生徒はそんな九十九坂を若干の軽蔑と恐怖が混じった目で見ていた。

 

  そして鴨山を運んでいった兵士2人が生徒達全員の勉強合宿用に持ってきた荷物と47個のデイパックと共に部屋に戻ってきた。燈導はチラリと腕時計を見て、慌てた口調で言った。

 

「あらら、もう時間が無い。それではこれから皆さんに出発してもらいますが、この封筒の中に番号が書いた紙があります。その番号に該当する出席番号の人から荷物とデイパックを取って出発してもらいます。そしたらその後は2分毎にその人の次の出席番号の人から出発してもらいます。全員が出発して20分後にこの分校があるエリアは禁止エリアになるから早く遠くに離れろよー」

 

  そして燈導は懐から封筒を取り出した。慌てていたせいか、封筒を取り出すのと一緒にデザートイーグルも出てきて床に落としてしまった。床に落ちてガチャリと音がしたと同時に近くの生徒から僅かに悲鳴が聞こえた。

  燈導はさらに慌ててデザートイーグルを拾って懐にしまい直すと、封筒を乱暴にちぎって中の紙に書かれている番号を確認した。

 

「……出席番号18番!出発です!えーっと、黒城雅也君からですね」

 

  名前を呼ばれた強面の男子生徒、黒城雅也(こくじょうまさや 18番 男子)は真っ直ぐ荷物を運んできた兵士の元へ歩み寄ると、無言で荷物とデイパックを受け取り、クラスメイトの方を振り返りもせずに廊下へ出ていった。

ゆっくりとした足音がだんだん遠ざかっていき、ついに聞こえなくなった。

 

  そして2分後、坂本京子が燈導から指示されて泣きながら教室を後にした。さらに2分後には佐川吉鷹(さがわよしたか 20番 男子)がかけている眼鏡を外して残ったクラスメイトを瞬きしながら数十秒眺めた後、燈導に急かされて教室を出た。

 

  こうして遂に、どんな夢よりも、どんな幻影よりも恐ろしい『現実』は幕を開けたのだった。

 

 

 

・ 00時00分  脇本町立脇本中学校3年2組正式プログラム開始。

・ 00時00分  黒城 雅也 (3年2組 18番) が プログラムに参加。

・ 00時02分  坂本 京子 (3年2組 19番) が プログラムに参加。

・ 00時06分  佐川 吉鷹 (3年2組 20番) が プログラムに参加。




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