バトルロワイアル ~Dream and Phantasm~ 作:歩く激戦区
夜中の11時頃、47人の生徒はバスではなく古びた教室にいた。全員に共通しているのは、机に突っ伏して寝ていることと、首に巻きついている、銀色の首輪だ。
~燈導 刹也~
「はぁ~、やっと終わりましたか……あの人たちいつも手際悪いんですよねぇ……」
と、生徒達が眠っている部屋の隣にある、雑多な機械が並んだ部屋の中央に置かれているこじんまりしたソファーに腰掛けながらコーヒーを飲んでいた男は、トレードマークの銀の長髪ーーーといってもこの部屋にいる3人は全員銀髪だがーーーをかき上げながら愚痴を2人の同僚にこぼした。
「な~んでそんなせっかちなのよヒドゥー、そんなに早く始めたかったの?」
「ワハハハハ、そりゃしかたねぇだろう松柏よぉ!俺だって早く殺し合いを見たくてワクワクしてんだぞ!なぁ?ヒドゥーもだろ!?」
「貴方と一緒にしないでくださいよ……」
ヒドゥーと呼ばれた男、燈導刹也は3人の中では立場は一番上だが、3人で長く一緒に仕事をしていることもありお互い気を使わずに話すことが出来る。プログラムの管理者側という殺伐とした世界に身を置いている彼らにとってお互いの存在は非常にありがたい仲間たちとなっていた。
仲間の1人で紅一点なのが松柏 栄美。銀髪と、赤と青のオッドアイが特徴だ。並外れた視力を持ち、そのおかげで銃の腕前は抜群、と言いたいのだが彼女はいつも弓を使っている。特殊加工した矢や特注の弓を使用しているため威力面では全く問題ないのだが、軍の規定に従えと上の人間がこの上なく煩く注意をしている。
もう一人は北條 正之助。同じく銀髪でとても熱い性格をしている。絵に描いたような脳筋で怪力の持ち主だ。彼はいつも愛用の妖刀閻魔を振るっている。戦闘能力に関しては銃を使っている相手にも片手で勝てるほど申し分ないのだが、これまた上の人間の注意が非常に煩い。
燈導が手に持っている書類の束の1枚目にはまたその旨が書いてある。彼は一応形だけは注意しているので問題はないが、上司の視察が来て罰則を受けることを少しだけ恐れていた。
「あのー、一応持ってくるだけでも良いんで銃を持ってきてくれません?」
「なーによ、また注意しろって?もう上も諦めが悪いわねー、私の「星の雫」のほうが下手な銃よりよっぽど強いのに」
「大体お前もいっつも愛剣の「ヴァルファーレ」しか使ってねえだろうが」
「僕はいつも予備のデザートイーグルを持ってきてますよ!」
と、彼は懐からもう大分使われていないデザートイーグルを取り出した。手入れだけはきちんとしているので作動はするようだ。
「で、なんでそんな疲れてんの?」
松柏がその理由を尋ねると、彼はその書類の束から問題の部分ーーー書類の半分以上がこれだーーーを差し出した。
「え、なになに……ってまたぁ?何度出来ないって言ったらわかるのかしら……」
「ん?なんだ?……おいおいおい、お前これ前も断ってなかったか?」
「だから嫌なんですよ……とっとと終わらせて帰りたい……」
その書類の束に書かれていることを分かりやすくまとめると、「俺が賭けた生徒を優勝させるように仕向けろ」だ。
プログラムは政府の上層部やその他の富豪の中では一種のギャンブルのようになっている。しかしそんな不正を行うと発覚した時に今度は担当官である自身の身が危なくなるので彼は毎回それらしい理由を付けて断っている。だが依頼してくる人数は一向に減らず、彼はその事に頭を抱えていた。
「先生、そろそろ始めていただけると……」
「ん、ああ分かりました、今行きます」
プログラムを補佐する専守防衛軍の軍人達から呼ばれ、彼は書類の束から生徒のデータが書かれたページを抜き取って残りをまとめてゴミ箱に突っ込んでから、愛剣ヴァルファーレを腰に差して担当補佐官2人に加え兵士5人と一緒に隣の教室へ移動していった。
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