バトルロワイアル ~Dream and Phantasm~   作:歩く激戦区

2 / 9
拙い文書ですが読んでいただけると幸いです。
暇があれば是非夢幻BRにも参加してみてください。


プロローグ 生存:47人/47人
プロローグ


 夜の高速道路を6台のバスが走っている。各々の車内では中学生40人前後が思い思いの時間を過ごしていた。

 この日脇本町立脇本中学校3学年は毎年の恒例行事である勉強合宿のために県内の山地にある合宿所へ出発していた。合宿所で特にイベントがあるわけではないが、生徒達は修学旅行に出かける時のようにはしゃいでいた。

 

 鴨山彩子の受け持っている3年2組はどういうわけか個性的な生徒が多かった。大抵どのクラスにも目立たない生徒というものはいるものだが、この3年2組には全くと言って良いほどいない。強いて言えば、非常に無口で担任の鴨山でさえも喋っているところを見たことが無い蒼杉芳樹(あおすぎよしき 1番 男子)や、常に眠そうにしていて顔色の悪い天戸清春(あまときよはる 3番 男子)くらいだ。他のクラスの先生からすればある意味では立派な目立つ生徒らしいが。

 目立つ生徒の例を挙げるとキリがなかった。陸上部の短距離走エースの風見楓夏(かざみふうか 9番 女子)や野球部のキャプテンである須田拓也(すだたくや 24番 男子)、マーチングバンド部部長の平本響一(ひらもときょういち 34番 男子)、剣道部部長の町田擬古(まちだぎこ 37番 男子)を代表とする各部活動のエース級や、岸間浩平(きしまこうへい 12番 男子)や黒野焔(くろのほのお 17番 男子)等の学年トップクラスの秀才、さらには生徒達の間ではアイドルグループの様に扱われている如月珠莉

(きさらぎじゅり 11番 女子)、坂本京子(さかもときょうこ 19番 女子)、雪野聖夜(ゆきのせいや 41番 女子)

 、吉田蛍(よしだほたる 43番 女子)達仲良し4人組ーーー誰が言い出したかは分からないが「ゆきほたきょんじゅ」という名前が付いているーーーや果ては大蛇龍牙(おろちりゅうが 7番 男子)のような生粋の不良までいる。

 彼女が最前列の座席から後ろを振り返れば、皆がそれぞれ思い思いの時間を過ごしているのがよく見える。

 例えば夜桜水鏡(よざくらすいきょう 42番 男子)は生徒達から「夜桜組」と呼ばれている、いつも一緒にいる6人組でバスの最後列に無理矢理詰めて仲良く喋っているし、雪野聖夜もまた同じように4人で仲良く喋っている。中には恋愛相談に長けており、生徒達の間で愛の伝道師と呼ばれている葉山まりあ(はやままりあ 32番 女子)に恋愛相談をしている者もいた。

 それとは対照的に、岸間浩平は参考書を開いて勉強しているし、鏡聊爾(かがみりょうじ 8番 男子)は愛読している古典文学の本を読んでいる。

 

 彼女はこの個性溢れる3年2組を心底愛しており、このクラスの担任となれたことを心の底から幸せに、そして誇りに思っていた。個性に溢れているが故にトラブルも少なくはなかったのだが、彼女はそれによって生じる仕事を嫌な顔一つせずに引き受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、だろうか。

 

 

 

 

 これから起こる惨劇を想像して、彼女の頬を一筋の水滴が伝っていくのは。

 

 しばらくして、添乗員からガスマスクが彼女と運転手に配られ、全員が装着し終わると運転手がバスのあるスイッチを押した。そうすると賑やかだった車内がだんだんと静まっていき、10分もすると車内は出発前の静寂を取り戻した。

 鴨山が後ろを振り向くと全員が例外無く眠っており、半ば廊下に倒れこんだような姿勢の生徒もいた。

 

 そして彼女達のクラスのバスは先行していたバスの進路を外れ、県内のとある港に向かっていった。

 そこには物々しく軍に警護されたフェリーが一隻停泊していた。既に乗船する準備は整っており、その船の姿は獲物を丸呑みにしようと口を広げている深海魚のようであった。

 バスが船に入ると船はこれから地獄と化すであろう、一つの島に向かって出航した。

 その時鴨山が見た海は、今まで見たどの海よりも深く、暗く、そしてとても静かだった。

 

 

 

【残り47人】




次回の更新は1週間後です。
お気に入りや感想、評価を頂けると泣いて喜びます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。