BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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いまだに時々ランキングに乗るのがたまらなく嬉しい(^^)/
これも読者の方々の御蔭です。ありがとうございます<(_ _)>






万仙陣との出会い③

 

 

 

穂先が短刀状の槍。菊池鎗と呼ばれるその槍の大凡の重さは1.5~2.0kg程。一般的な斬魄刀。刀の重さ0.8kgと比べると凡そ倍。

その数字は吉良イヅルにとって無視することの出来ない、あまりに大きな目の前の相手との戦力差に他ならなかった。

 

---班目君。君は強いよ。

 

「面を上げろ『侘助(わびすけ)』」

 

吉良イヅルの斬魄刀が解放される。形状の変化は著明。切っ先から三分の一ほど刀身が曲がりくねり西洋数字の7の様な形へと変わる。あるいは変化がそれだけならば、それはとても戦いやすいとは言えない変化でしかない。その奇妙な形の刀で何を斬るのかと聞かれれば大抵の者は返す言葉もないだろう。

 

---斬魄刀『侘助(わびすけ)』がただの奇妙な形なだけの刀だったなら、ね。

 

「はっ。ようやくやる気になりやがったか。…行くぜぇ‼根暗ぁあ‼」

 

「…ひどい言い草だ。とても副隊長に対する三席の言葉使いじゃないね」

 

『鬼灯丸』の穂先が吉良イヅルの正中線に向けて伸ばされる。吉良イヅルは迫りくる突きと避けることはせず曲がりくねった刀身で受けた。継いで放たれる吉良イヅルの斬撃は他に類を見ない奇妙な形の刀だというのに軌道が読みやすい素直な袈裟切り。

班目一角はそのことを奇妙に感じながらも石突で弾いてみせた。

敵は斬魄刀には何かある。班目一角の直感がそう告げていた。疑心の眼に映る吉良イヅルの『侘助』は幻影により揺らいで見えた。

 

始解を果たした斬魄刀には大凡二つの系統がある。

直接攻撃系。鬼道系。

班目一角の持つ『鬼灯丸』は前者に当たる。直接攻撃系の斬魄刀の大半は始解に分かり易い形状変化が伴う。刀から担い手自身が戦い易い形へと変化する。その際に何かしらの能力を備えることもあるが、それはあくまでおまけ程度。神髄(しんずい)はその変化した形状での文字通りの直接攻撃。

対して鬼道系の斬魄刀は形状の変化をすることもあるが、その変化の度合いは直接攻撃系に比べて少ないことが多い。代わりに直接攻撃系よりも付随(ふずい)する能力が多岐に渡り、また振り幅も大きい。攻撃はもっぱら能力に頼るものになる。

 

直接攻撃系と鬼道系。互いに一長一短。班目一角の所属する十一番隊では直接攻撃系の斬魄刀を尊ぶ傾向にあるが、それはあくまで隊風の問題。どちらにも利があり、どちらの戦い方にも理があった。

 

班目一角の頭が対鬼道系の斬魄刀へと切り替わる。鬼道系の斬魄刀と戦う時のセオリーの一つは、能力を発動する前に潰すこと。

班目一角は攻勢を強めた。

 

「シャオらぁああ‼」

 

斬る。突く。薙ぐ。打つ。変幻自在の槍捌き。多種多様な攻撃の全てが刀の攻撃範囲外から振るわれる。剣道三倍段。その言葉に偽りはない。刀で長物を相手に勝つには三倍の段位が必要だ。現世における最強格。かの剣豪宮本武蔵でさえ、刃渡り三尺(約90㎝)の野太刀を持つ佐々木小次郎と対峙した時は更に長い(かい)の木刀を用意した。

それほどに武器の長さの違いは強さに繋がる。

 

---班目君。君は強い。だけれど…。

 

もしこれがただの槍と刀の戦いであったなら、吉良イヅルに勝ち目は無かった。純粋な戦闘技術において、吉良イヅルは班目一角には及ばない。戦闘専門部隊の異名は伊達ではなく、十一番隊第三席班目一角の戦闘力は他の隊の副隊長格と比べても劣ることはない。

 

「…けれど、君では僕には勝てない」

 

---跪け『侘助』。

 

瞬間、班目一角の身体に変化が起こる。腕が鈍る。身体が重い。

--- 一服盛られたか。そんな疑問は数瞬。班目一角は直ぐに異変の原因に気が付いた。

 

「グッ!?『鬼灯丸』が、重い…」

 

「それが僕の『侘助』の能力だよ」

 

班目一角の『鬼灯丸』。菊池鎗の穂先が重みに耐えかね地に落ちる。

 

「斬りつけたものの重さを倍にする。二度斬ればさらに倍。三度斬ればそのまた倍。そして、斬られた相手は重みに耐えかね必ず地に這いつくばり、()びるかのように(こうべ)を差し出す。故に『侘助』」

 

攻防の最中。『侘助』が『鬼灯丸』を斬りつけた回数は7回。『鬼灯丸』の重さが約1.5㎏だとして二の七乗すると192kg。最早武器の用途を成さないだろう重量。

 

「僕の斬魄刀はね、君の様な直接攻撃系の斬魄刀の天敵なんだ。手で持ち振るい戦う以上、それが持てない重さになれば武器は凶器たりえなくなる。戦い方次第では、僕は君達の隊長とだって渡り合えると思っているよ」

 

「…はっ。更木隊長と渡り合えるだと?笑わせんな。俺程度を嵌めたからって、調子乗ってんじゃねぇぞこら‼」

 

「その威勢も、その樣では滑稽だね。見るに堪えない。終わらせよう」

 

吉良イヅルはゆっくりと班目一角へと近づいていく。班目一角の手が『鬼灯丸』を持ち上げようと力を込めるが、しかし、持ち上げることは叶わず穂先が僅かに浮くだけに終わる。

ならば、最早、之は要らずと班目一角は『鬼灯丸』を手放した。

 

「白打で僕に挑む気かい?剣道三倍段。君の言葉だよ。刀を持つ僕に君が白打で勝つには三倍の実力差が必要だ。まあ、鬼道が扱えるのならその前提も覆るだろうけど、君はそういうタイプじゃないんじゃないかな?」

 

「…っせい」

 

「何か言ったかい?」

 

「うるせいって言ってんだよ‼長々と口上垂れやがって‼来るなら来いよ根暗野郎‼斬魄刀が使えねぇ程度で俺がテメエに勝てねぇだと?はっ!笑わせんな!男らしくねぇんだよ‼」

 

「…」

 

「斬るなら黙って斬れよ‼なあおい、なんでテメェは躊躇してんだ?戦えなくなった奴は斬れねぇってか?おいおい、下らねぇ価値観を戦いに持ち込んでんじゃねぇよ。大体よぉ、俺はまだ負けを認めちゃいねぇんだよ。なのにテメェ、勝った気になってベラベラとよぉ。聞くに堪えねぇ。戦いってのは、そんなもんじゃねぇ筈だろうが」

 

戦い。(たたかい)只戦(ただソレ)と。

嘗て何処かで埒外の修羅が語った理屈を吼えながら、班目一角は拳を握る。

目の前の相手を倒す。自ら振るう拳は相手に届くと確信する。理屈ではなく概念。敵と己を分け立つ為の法則。班目一角の求めるモノは勝利ではなく戦い。手段の為に目的など選ばないという人外の発想。戦う為の戦い。

修羅場での呼吸。死地での生甲斐(いきがい)。---只戦(ただソレ)を求めている。

 

「君は…狂っているのか」

 

否。狂っているのは班目一角だけじゃない。仲間が負けそうになっている。だというのに一対一の戦いを班目一角が望んでいるからと、ただ近くで戦いの行く末を静観し続ける護廷十三隊十一番隊第五席、綾瀬川(あやせがわ)弓親(ゆみちか)。総隊長命令というのは建前でただ戦いたいから市丸ギンと戦っている護廷十三隊十一番隊隊長、更木剣八。そんな更木剣八を微笑みながら見ている少女。護廷十三隊十一番隊副隊長、草鹿(くさじし)やちる。

皆、狂っている。それは仕方のないことだった。護廷十三隊十一番隊を率いる更木剣八自身がかつて埒外の修羅『八千流』が只戦(ただソレ)と唱えた外法に歓喜し、剣を交えることで生涯一度の憧れを抱いたのだから。率いる者が狂っているのなら率いられる者もまた然り。

上が腐れば全てが腐る。換えようもない不文律は狂気という形であったとしても変わらない。

 

「戦狂い。…それが君達の本質だとするなら、僕にはまったく理解の外だ。なんで苦しもうとする。なんで傷つこうとする。苦しみながら進む先で、得られるモノなんて何も無い。…そう答えはとうの昔に出ているのに」

 

---誰が---苦しみながら進む道で幸せになれるという---。

 

嫌なことならやらなければいい。

やりたくないことを嫌々やるくらいなら、閉じれ終えばそれでいい。

 

それは市丸ギンが吉良イヅルに語った理屈。

そして嘗て風守風穴が市丸ギンに聞かせた概念。

 

「…躊躇するなって?そんなの、無理さ。僕は、本当は戦いたくなんてないんだから」

 

---だが、戦わなければ守れないものがあるから。

 

「…嫌なことを、嫌々やるんだ。世界が僕にそうさせるんだ。だから、だから僕は‼あの人の作る世界(ユメ)を守るんだ…。そうすれば僕にとって幸せな世界(ユメ)が見られるって、市丸隊長は言っていた‼」

 

感情が発露する。吉良イヅルの抑え込んできた痴れた音色(ホンネ)が漏れだした。

 

「守りたい…世界(ユメ)があるんだ‼」

 

「知るかそんなもん‼」

 

 

戦いたい者。班目一角。

戦いたくない者。吉良イヅル。

 

 

その戦いは千年前から脈々と受け継がれることになってしまった狂人2人の思想のぶつかり合いに他ならず、ならばきっと何時かはぶつかり合うしかなかった戦いだった。

 

『八千流』と『風守』。

 

その代理戦争を制したのは吉良イヅルだった。

 

 

 

 

 

 

班目一角との死闘を制した吉良イヅルは、倒れ伏した班目一角へと駆け寄る綾瀬川弓親を無視して更木剣八と市丸隊長との戦へと目を向ける。市丸ギンは既に始解を果たしていて、更木剣八の身体には無数の傷が刻まれていた。だというのに大笑する更木剣八は傷を負いながらも、市丸ギンを僅かながらに押しているように見えた。

班目一角との戦いで消耗した自分にどれだけのことが出来るかは解らないが、市丸ギンの援護に行かなければと身体を次なる死地へと向けた吉良イヅルだったが、しかし、その足は突如、空から降ってきた者によって止まる。

 

ボカンと、冗談の様な音がした。

 

遥か上空。目視も出来ない様な場所から文字通り、落ちてきた大男。黒々とした髭を携えた坊主頭の死神はその外見に不釣り合いな生き生きとした少年の様な(まなこ)で吉良イヅルを見る。

 

唐突に目の前に落ちてきた死神。突然の出来事にフリーズした吉良イヅルの口から、呆気にとられた声が漏れる。

 

「え?」

 

そんな吉良イヅルに構うことなく、黒々とした髭を携えた坊主頭の死神。兵主部(ひょうすべ)一兵衛(いちべい)は呆気にとられる吉良イヅルを見定めながら髭を掻く。

 

「お主、随分と『風守』に毒されておる様じゃな」

 

「…え?」

 

「ふむぅ。見た所、そこまで風守の奴とは接点は無いようじゃ…精々一度か二度、直接あった程度か。それでもなお、此処まで高位の死神を痴れさせるとは、やはり『大織守(おおおりがみ)』の言うようにチカラを増しておる。…いや、『鴻鈞道人』に喰われているのか…いずれ、本格的に対策をせねばならんな」

 

「なにを言って?」

 

兵主部一兵衛の言葉の意味が分からないという様子の吉良イヅルにたいして、兵主部一兵部は真面目な顔を崩すとニカリと笑い吉良イヅルの肩を叩いた。

 

「何、気にするな独り言だ。それよりもおぬし。あそこで戦っているのは五番隊と十一番隊の隊長じゃろう。何故争っておる」

 

「それは…先ほど『天挺空羅』で伝えられた総隊長命令が…」

 

「総隊長命令?ああ、あの偽物の声か。全くあんなモノも見破れない者がいるとは、どうやら重國の奴は後進の育成を怠っておる様じゃな」

 

全く仕方ないと呆れながら、兵主部一兵部は散歩でもする様な足取りで市丸ギンと更木剣八との戦いの中へと歩いていき声を張り上げた。

 

「おおい!その方ら剣を納めよ!この戦いに意味はないぞう!」

 

「…誰だ?おっさん」

 

「誰や…って、その羽織の文様。まさか」

 

更木剣八は兵主部一兵部の登場に首を傾げ、市丸ギンは兵主部一兵部の羽織の沈丁花(ちんちょうげ)の文様をみて眼を見開いた。

 

「この戦いわしが預かる。双方退け」

 

「ああ?なんでテメェの指図を受けなきゃならなねぇ」

 

「…退かぬのなら、わしが相手になるぞ」

 

「はっ!面白れぇ‼」

 

更木剣八は迷わず兵主部一兵部へと剣を向けた。兵主部一兵部は困った様に禿げ頭を掻く。

 

「ふむぅ。わしを前にその啖呵は見事だが、どうやらおぬしは『八千流』に毒されておるのぅ。…何時から護廷十三隊は狂人共の集まりになったのやら。ああいや、元々か。そう言えば『麒麟児』が始めは全員奇人変人ばかりだと言っておったか。…最近は真面になったと聞いておったんじゃが」

 

---仕方がないのう。潰すか。

 

兵主部一兵部の顔から笑みが消えた。更木剣八は肌で感じる殺気と霊圧の大きさに歓喜する。唐突に現れた強大な敵を前にして喜ばない程、更木剣八は真面じゃない。剣を振り上げ、更木剣八は兵主部一兵部に一直線に向かって行く。

 

兵主部一兵部は息を吸い込むと手刀を構えて更木剣八に向けた。

 

「裏破道―三の道」

 

詠唱と共に兵主部一兵部の背後に巨大な風龍が現れる。それこそは瀞霊廷に存在する鬼道とは一線を画す『霊王宮』にのみ存在する超霊術の一つ。

 

「『鉄風殺(てっぷうさつ)』」

 

地上にあるモノ全てを吹き飛ばす暴風が更木剣八を襲った。その暴風は余波でさえ大きく。傍にいたの吉良イヅルは市丸ギンに助けられることで吹き飛ばされずに済み、草鹿やちるは壁に張り付き何とか吹き飛ばされることを耐え、気絶していた班目一角を吹き飛ばし、吹き飛ばされる班目一角を助けるために綾瀬川弓親は走っていった。

そして、更木剣八は驚くことにその暴風を真正面から受けて耐えてみせた。

 

「よお。勿体ぶってこんなもんかよ」

 

「ほう。流石は今代の『剣八』。裏破道を生身で受け切るか。じゃが、これならどうじゃ?」

 

次いで兵主部一兵部が繰り出すのは張り手。ただの掌底での引っ叩き。一見威力もない攻撃だが、ただ受けるのは馬鹿のすることと更木剣八は避ける。

しかし、瞬間、更木剣八は避け切れるわけもない巨大な掌を見た。

 

「『千里通天掌(せんりつうてんしょう)』」

 

それもまた『霊王宮』にのみ存在する超霊術の一つ。突いたものを千里先まで問答無用で吹き飛ばす技。

 

「なんだぁああ!?」

 

この技に身体の頑丈さは関係ない。更木剣八は千里先まで吹き飛ばされた。

 

圧倒的な兵主部一兵部のチカラ。『霊王』を守る為、『霊王宮』へと招かれた零番隊に属する死神。その長の実力を近くで見た市丸ギンは顔を引きつらせていた。

笑みを取り戻した兵主部一兵部は手を払いながら、ふむと更木剣八が吹き飛ばされた方向を見ながら言う。

 

「まったく喧嘩っ早い奴だったのう。少しは反省してこい」

 

そして、地に伏せる吉良イヅルを庇うように立つ市丸ギンへと向き直ると髭を掻きながら訪ねた。

 

「それで、お主もわしと戦いたいのか?」

 

「…あかん、無理や。僕が貴方に勝てるイメージが湧かんわ」

 

「ふむ。懸命な判断だ。ならば、聞きたいことがあるんじゃが…この瀞霊廷の混乱の原因である風守風穴はどこに居る?」

 

「貴方は、風守隊長の敵なん?」

 

「いや、敵ではないぞ。会えば拳骨一つでもくれてやるつもりじゃがな。とりあえず会って話を聞きたいだけじゃから、そう警戒するな」

 

風守風穴の敵ではない。その言葉に嘘は見えない事に市丸ギンは安堵する。もし敵であったなら、藍染惣右介という黒幕に自覚が無くとも与するつもりであったなら、市丸ギンは勝てないとわかっている戦いに挑まなければならなかった。

 

「…なあ、零番隊さん。もし貴方が風守隊長の敵やない言うんなら、僕の話を聞いてくれませんか?」

 

「はて?話とはなんじゃ?」

 

「この騒動。原因は風守隊長じゃないんよ。原因は、藍染惣右介や」

 

「藍染惣右介?確か、百年ほど前に五番隊の隊長になった死神だろう。そんな若造になにが出来る?」

 

「何もかもや。貴方は強い。けど、風守隊長の含め貴方達は強いからこそ見えてない。後ろに続く者の中に、藍染惣右介いう化け物がいることを知らん」

 

「ふむ。とりあえず話を聞こう」

 

 

 






宮本武蔵の逸話が真実かは知りません。昔読んだ漫画からの引用です。
一説では佐々木小次郎は存在しなかったらしいですね!(; ・`д・´)

長刀を扱う無名の農民がいただけとかいう某中二ゲームの設定は大好き(^◇^)
アサシンさんはイケメン過ぎた。



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