機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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第8話

フリーデンに帰還するアムロ。

ドートレスの整備はキッドに任せ、皆が揃うブリッジへ向かう。

ガロードが乗るGXが奪われた事で戦闘力は著しく下がり、なんとしても取り戻す必要がある。

シートに座るジャミルはこれからの事に付いて話す。

 

「これは私のミスだ。ガロードを引き止める事ができなかった」

 

「それはわかるが……どうする、キャプテン? ドートレス1機であれだけの数を相手にするのは俺でも無理だぞ」

 

「わかっている。サラ、バルチャーサインを出してくれ。ロアビィを呼ぶ」

 

「ロアビィだけですか? エアマスターのウィッツは?」

 

「1人で良い。そこまで資金に余裕がない」

 

「了解です。すぐに呼び出します」

 

「頼む」

 

サラは指示に従ってパネルを叩き、フリーデンから照明弾を打ち出す。

今後の方針は取り敢えず決定したが、アムロにはまだジャミルに聞く事がある。

 

「奴らをどう攻略する? ガンダムを合わせても2機、相手の練度を見ても絶対とは言い切れない」

 

「いいや、3機だ。私が出る。キッドには鹵獲したドートレスのメンテを頼んである」

 

「行けるのか!? コクピットの恐怖心はどうした?」

 

「治ってない。考えただけでも体が震えて来る。だが、フリーデンの艦長は私だ。責任は私が取る」

 

そう宣言するジャミルに反論できるモノは居なかった。

 

///

 

「ッハ!! 負けたのか……ここはどこだ?」

 

埃臭いベッドの上で目を覚ますガロード。

周囲を見渡すと、ベッドと同じように埃まみれの木製の壁。

物置部屋のように狭い部屋の中で眠らされて居た。

警戒しながら眠っていたベッドから立ち上がり外に出ようとするが、それよりも早くに扉が開かれる。

入って来たのは目付きの鋭い赤い髪の女。

 

「おや? 起きたのかい?」

 

「お前……俺達を襲ったバルチャーだな?」

 

「そうだよ。アタシはエニル・エル。アンタのガンダムと戦ったドートレスのパイロットさ」

 

「どうして俺を殺さない? 逃げ出してガンダムを奪い返すぞ」

 

「ふふふっ、そう警戒するな。それよりも名前は何て言うんだい?」

 

「なまえ?」

 

「言っただろ、アタシはエニル・エル。アンタの名前さ」

 

攻撃して来る様子はない。

それでもガロードはいつでも反撃できるように気構えながら、鋭い視線でエニルを睨み付ける。

 

「ガロード・ラン」

 

「ガロードか……覚えたよ」

 

「なんのつもりだ? ガンダムは手に入れたんだから、俺なんて殺す筈だろ」

 

「だから、そう警戒するな。アンタ、見どころがあるからさ。どうだい、手を組まないか?」

 

「お前と手を組む?」

 

「アタシは今、ザコットって奴と組んでるんだけどさ。コイツが金の払いが悪くてね。ガンダムだってアタシのお陰で捕獲できたのに、分前はアイツの方が多いと来たもんだ」

 

そこまで言ってエニルは笑い声を上げた。

以前として警戒するガロードだが、彼女は流暢に話し続ける。

 

「アハハッ、悪かったよ。アンタを倒したりして。こっから逃げたいだろ? グズグズしてるとザコットに見つかる。付いて来て」

 

「信用できない。誰がお前なんかに」

 

「そうかい、そう言うなら……」

 

目を細めるエニルはゆっくりガロードに詰め寄る。

元々の身長と、履いたブーツのヒールで上から見下ろすような態勢の2人。

ガロードはジャケットの内ポケットに手を伸ばし、隠した薄いナイフを握る。

殺意をみなぎらせ、相手の急所にいつでも攻撃できるようにして、そのタイミングを窺う。

緊張が走り、静寂な空気が空間を支配する。

埃が舞い上がる音さえも聞こえるくらい集中するガロード。

高鳴る鼓動が闘争本能と生存本能を掻き立てる。

けれども対照的に、コケティッシュに笑みを浮かべるエニルは唇を合わせた。

薄く口紅がガロードにも付着する。

艶めかしく、エニルは耳元に囁いた。

 

 

 

第8話 ファーストキス

 

 

予想もしない突然の事に目を見開くガロードは動揺して後ろに後ずさるが、ベッドに躓きそのままシーツの上に尻もちを付いてしまう。

完全に戦意も喪失してしまい、目の前の女を見る事しかできない。

 

「フフフッ、冗談だよ」

 

「冗談だって?」

 

「それよりも、さっさとここを出る。ガンダムはガロードが、アタシはドートレスで出る」

 

「出るって言っても……作戦とかあるのか?」

 

「当然だろ? 連行するフリをしてガンダムの所にまで連れて行く。そのままコクピットに入って、後は合図を送るまで待機。簡単だろ?」

 

「あぁ、確かにな。でも、もう1つだけ聞きたい事がある。どうして仲間を裏切るような事をするんだ?」

 

「仲間だって? お笑い種だね。アタシは金で雇われてるだけだ。他の連中も一緒さ。報酬が貰えるから協力してるに過ぎない。相手だってそう考えてる。そんな奴を相手に、義理を立てる必要なんてない。ガロードだって同じだろ?」

 

「俺は……」

 

「ガンダムが捕まった後、あの白い戦艦もそそくさと逃げて行ったよ。そりゃそうさ。戦力で劣る状況で無理して突っ込んだりなんてしない。あの艦はガロードを諦めたんだ」

 

反論できないガロード。

アムロと共にフリーデンのクルーとして雇われ、ようやく1ヶ月経った所。

充分に信頼関係を構築できているとは言えず、相手の立場になって考えれば見捨てられた事にも納得できた。

ガンダムを捨ててでも、生き残る事を優先させる。

戦後のこの世界を生き残るガロードには、それを納得できてしまっていた。

 

「そう……なのか……」

 

思い返すのはティファの事。

それでも最後の会話はスレ違いを引き起こしただけ。

簡単に諦める事はできないが戻る事もできない状況で、生き延びる為にエニルの策に乗る事とした。

 

「そうだよ。でもそいつらが悪い訳じゃない。言ってる意味はわかるだろ?」

 

「あぁ……そうだな……」

 

「それなら行くよ。手を後ろに回して。手錠を掛ける」

 

「本気なのか?」

 

「あぁ、本気だよ。安心しろ、手錠は壊れてる」

 

言いながらエニルはガロードの手首に手錠を掛けた。

手錠は見た目だけで少し力を入れれば簡単に外す事ができる。

ガロードは埃臭い部屋から出るとエニルの作戦通りに動いた。

 

「それより、ここはどこなんだ?」

 

「町から少し離れた所でキャンプしてる。ここを脱出したら町の整備工の所で合流だ」

 

「信じて良いんだな?」

 

「任せな」

 

外はもう夜。

周囲に悟られないように小声で話しながら進むガロード。

そのすぐ後ろには銃を握るエニル。

キャンプしてるこの場所で、フリーデンを襲ったバルチャーは酒を飲み、肉を頬張り、大いに盛り上がっている。

ガンダムをほぼ無傷で捕えた事で大金が手に入るとなれば、男達は1日中騒ぎ立てた。

その中には、リーダーであるザコット・ダットネルの姿もある。

ビンに入ってる酒をラッパ飲みする彼は2人に気が付くと陽気な顔をして近づいて来た。

 

「どうしたエニル? お前もさっさと飲めよ」

 

「最後に一仕事あってね。それが終われば行くさ」

 

「一仕事? そこのガキか?」

 

「あぁ、町まで連れてって血を売るのさ」

 

「血なんてどうするんだ?」

 

「今の時代、買い手が付けばなんでも売れる。肉でも内臓でもね。文字通り、血の1滴まで絞りとる」

 

「フュ~!! とんでもねぇ女だぜ」

 

「生きる為なら何だってするさ」

 

エニルは銃口で背中を軽く押しガロードを歩かせる。

アルコールで酔っ払うザコットはこれ以上気にする事もなく、他のメンバーも2人を気に掛ける事はなかった。

そのままキャンプの隅に寝かされたガンダムの所にまで来る。

 

「な? 上手く行った。後はさっき言った通りだ。合流地点で落ち合おう」

 

「エニルはどうするんだ?」

 

「ドートレスを隠してある。それと、最後の仕上げだ。先に行ってな」

 

手首に掛けられた手錠を外すガロードは白い装甲の隙間を足場にしてコクピットまで駆け上がる。

ハッチを開放させ、乗り込む寸前に振り返った。

その先ではもうエニルは居らず、自身の機体に向かって走る。

 

「撃って来る感じじゃないな。だったら、今は信用するよ。エニル」

 

コクピットシートに座りハッチを閉じる。

コントロールユニットは装着されたままで、操縦桿を握るガロードはエンジンを起動させた。

電力が供給され頭部ツインアイが光る。

ゆっくりと関節を折り曲げて動き出すガンダム。

地に足を付け、巨大な機体が大地に立つ。

 

「装甲は所々焼かれてるけど、内部は大丈夫みたいだな。これなら!!」

 

リフレクターからエネルギーを放出させて、GXは合流地点に向かって飛び立つ。

けれどもそれに気が付かない筈がなく、ザコット達バルチャーは飛んで行ってしまうGXを見上げた。

 

「ガンダムが逃げ出した? まさか、エニルなのか!? 全員モビルスーツに乗り込め!! なんとしてもガンダムを取り戻す!!」

 

「そうはいかないよ!!」

 

キャンプ地に飛び込んで来たのはカスタマイズされたエニルの青いドートレス。

マシンガンを装備する機体は、その銃口をザコットへ向けた。

 

「エニルか!?」

 

「ザコット、アンタとの契約もここまでだ。ガンダムも、あの坊やも、アタシは全て手に入れる」

 

「お前!! ここまで一緒にやって来た恩も忘れて!!」

 

「アンタが勝手に思い込んでただけさ。安心しな、貯えてる金はアタシが有効に使ってやるよ」

 

「キサマァァァッ!!」

 

躊躇なくエニルはトリガーを引いた。

発射される弾丸は人間の体など容易に吹き飛ばす。

消炎と血の匂い。

夜の闇の中でマズルフラッシュが走り、逃げる人間の怒号が響き渡る。

それでも何とかしてモビルスーツにまでたどり着く人も居るが、次の瞬間には爆発の炎に包まれた。

 

「モビルスーツには爆弾を仕掛けた。もう無駄だよ!!」

 

エニルが仕込んだ時限爆弾が次々に着火する。

辺り一面炎に包まれ、バルチャー達にはもう逃げる手段もないし立ち向かう事もできない。

わずか数分でキャンプ地は完全に崩壊し、この場に生き残ったのはエニルだけ。

 

「終わった。合流地点に行くとするか」

 

ホバーリング移動するドートレスは先にガロードが向かった地点に移動を始めた。

 

///

 

月が沈み、太陽が昇る。

町の整備工場まで到着したガロードは、そこで働く整備士に会いに行く。

店内には今までに整備したモビルスーツの写真が幾つも飾られていた。

 

「ようこそ、モビルスーツの整備かい? そうじゃなくても車、バイク、自転車でも良いよ?」

 

「オッサン、モビルスーツの修理頼まれてくれる?」

 

「お安いご用さ。機体は何なんだ?」

 

「見て驚くなよ? 外に置いてある」

 

「随分な自信じゃないか」

 

そう言いながら店主と一緒に外に出るガロード。

見上げた先には片膝を付いているGXの姿。

その白い装甲はビームバリアーのダメージのせいで所々焼け焦げてしまっている。

 

「これは!? ガンダムじゃないか!!」

 

「ヘヘッ、そうだよ。整備、頼まれてくれる?」

 

「どうしてお前のような子どもが!? 金さえあれば手に入るようなモンじゃないぞ!!」

 

「それは企業秘密ってやつ」

 

「はぁ~、良いけどよ。コイツを整備するとなるとそれなりの金は貰うぜ? なんたってガンダムなんだからよ。電子パーツ1つでも売れば大金になる。この装甲も、ルナチタニウムなんて高値でしか取引されてない。金はちゃんとあるんだろうな?」

 

「かね? 金……金かぁ……」

 

今のガロードにそこまでの所持金はない。

最初は初めて見るガンダムに興奮していた店主だが、次第に目つきが変わってくる。

エニルに言われてここまで来たが、それ以上の事は彼女に聞かないとわからない。

どうしたものかと考えていると、地面が揺れる音が聞こえた。

振り返る先には、エニル用にカスタマイズされたドートレス。

 

「エニル!! ようやく来たのか!!」

 

「悪い、少し遅れた」

 

コクピットから出て来た彼女が持つのは銀色のアタッシュケース。

ワイヤーを片手に地上まで降りると、ガロードと店主の所にまで歩いて来る。

そして無造作にアタッシュケースを投げ捨て、中から何かを取り出した。

彼女が握るのは金色に光る金属の塊。

 

「き、きんかいぃぃ!?」

 

「そうさ、コイツの隠し場所を探すのに手間取ってね。オイ、おやじ。3本もあれば充分だろ?」

 

「え……えぇ!! それは勿論!!」

 

目の前で光る金塊に目が眩む。

店主はエニルから金塊を受け取り思わず生唾を飲み込む。

それでもまだ金塊はアタッシュケースの中に大量に詰め込まれており、数年の間は金には困らない。

ケースの口を閉じるエニルは話を区切り、合流したガロードの所へ向かった。

 

「それじゃ、町に行くとするかい」

 

「あ……あぁ、わかった。でも何をするんだ?」

 

「腹が減ったら動けないだろ? 何でも良いから食べる。安心しな、金はたんまりある」

 

2人は町の中に繰り出す。

戦争の傷跡も修復され、治安も良くなりつつある。

バルチャーの姿も見当たらず、今のこの町は平和と言える状況だ。

人も盛んに出入りしており、エニルはその中で1つの店舗に目を付ける。

外に並べられた白いイスとテーブル。

 

「ここで良いだろ。そこで待ってな。店で何か買って来る」

 

「あ……あぁ、頼む」

 

ガロードを置いて店の中に入って行くエニル。

彼女の後ろ姿を見ながら、イスに座るガロードは深く息を吐いた。

 

「ここまで来たは良いけど、俺はどうすれば良いんだ……ティファ……」

 

1人で考えていても答えは出ない。

外から聞こえて来る大勢の人の声も耳に入らず、これから先どうするかで頭が一杯だ。

じっとイスに座り続けて数分、不意に誰かが話し掛けて来る。

 

「失礼、相席しても良いかな?」

 

「場所なら他にもあるだろ? なんだって――」

 

視線を向けた先、そこに居たのは忘れもしないあの男。

 

「オルバ!? お前!!」

 

「おっと、静かに。周りの人の迷惑になる」

 

「よくもそんな事が言えたな。お前のせいで、ティファは死にかけたんだぞ!!」

 

「でも死んでない。まぁ、そう怒らないで。今日はキミと話がしたくてね。ちょっとお茶でもどう?」

 

「素直に従うと思うのか?」

 

「殺し合いをした人間とお茶は飲めないかい? 残念だ、今日は兄さんも来てるのに」

 

「兄さん?」

 

ガロードの肩に誰かが触れた。

反射的に振り向いた先にはもう1人の男が。

 

「初めまして、ガロード・ラン。私の名前はシャギア・フロスト。オルバの兄であり、ガンダムヴァサーゴに乗っている」

 

「シャギア? ガンダムヴァサーゴ?」

 

「アルタネイティブ社のラボで戦っただろ? 忘れたとは言わせない」

 

「アムロと戦った赤いガンダムか?」

 

「アムロ? そうか、あの白いガンダムのパイロットか……私達はね、今まで誰にも負けた事がないんだ」

 

「へぇ~、それで? 自分は格上だとでも?」

 

挑発するように話すガロード。

けれども2人は意にも返さず、対面のイスに腰を下ろした。

自信の現れか、不敵な笑みを浮かべるフロスト兄弟。

 

「ここでキミを殺すのは簡単だ。でもそれではモビルスーツで負けたと言う汚点を残す事になる。だからだ、キミにはこれからもGXに乗って戦って貰う。アムロと言うパイロットもだ」

 

「残念だけどそれはできないね。アムロのガンダムは損傷してもう使えない。俺ももう、フリーデンには帰らない」

 

「それは困ったね、兄さん」

 

「お前達フリーデンのガンダムパイロットは私達兄弟が始末する。それが、私達の望みなのでね」

 

「そんな事、俺に関係ないだろ」

 

そこまで言うと、オルバがテーブル越しにガロードの瞳をジッと覗き込んで来た。

鋭い視線からは殺気や凄味がヒシヒシと伝わる。

 

「いいや、ある。このまま負けたままでは、僕達の美学が許さない。だからキミにも、アムロにも、フリーデンでガンダムに乗り戦って貰う」

 

「勝手な事を言うな!! 大体、俺が憎いならここで殺せば良いだろ!!」

 

「言わなかったかな? ガンダムに乗るキミを倒すからこそ意味があるんだ」

 

「あんまり俺を……舐めるなよ?」

 

ジャケット裏に手を伸ばし薄型ナイフを手に取る。

首筋目掛けて一瞬の内に手を伸ばすが、オルバはそれを完全に見切っていた

切っ先が首筋に届くよりも早くに手首を掴み上げ、同時にシャギアは懐から拳銃を抜き額へ銃口を突き付ける。

ガロードの背中に嫌な汗が流れた。

 

「っ!?」

 

「あまり僕達を舐めないで欲しいね」

 

「さっきも言ったが、ここでキミを殺すつもりはない。そしてアムロと言うパイロットにも伝えるんだ。ガンダムを倒すのは私達兄弟だと」

 

ナイフを取り上げるシャギアはそう言い残し、イスから立ち上がるとオルバと共にこの場から立ち去ろうとする。

不意に立ち上がるガロードは立ち去ろうとする2人に向かって叫んだ。

 

「待て!! なんで直接ここに来た!! こんな事しなくても言う方法なんて他に幾らでもある」

 

「それを聞いてどうする? まぁ良い、何を気にしてるかは知らんが教えてやろう。直接顔を合わせて言うからこそ意味がある。これでキミも私も相手の事を覚えた。次に戦場で合えば確実なる憎悪を向けられる」

 

「憎悪だって?」

 

「私達が求める戦争を実現させる為にはガンダムが必要なのだよ。それも敵としてね」

 

「戦争……」

 

「さて、これで用は済んだ。次に戦場で会える日を心待ちにしてるよ。ガロード・ラン」

 

「僕達以外の相手に負けるんじゃないよ」

 

去って行く2人の姿は次第に遠ざかる。

立ち尽くすガロードは彼らの姿を視界に焼き付けた。

そうしてる間に注文を終えたエニルがいつの間にか戻って来ており、声を掛けられてようやく気が付く。

 

「ガロード……おい、ガロード!!」

 

「ハッ!!」

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

「エニル……俺……」

 

「ここは治安も良い、暫くはゆっくりできる。夜には部屋を探すぞ」

 

「俺……やっぱり行くよ!! 直接会って確かめたいんだ!! ティファの事も、みんなの事も!!」

 

ガロードの言葉を聞いてエニルの目付きが変わった。

銃を取り出しトリガーに指を掛け、狙いをガロードに合わせる。

 

「アンタをここまで助けてあげた事、まさか忘れたなんて言うんじゃないよね?」

 

「わかってる!! でも、俺の事を仲間だって思うなら行かせて来れ!!」

 

「黙れッ!! アタシは――」

 

激昂するエニルにガロードはイスを投げ付けた。

響き渡る銃声。

弾丸は明後日の方向に飛んで行き、姿勢を崩すエニルは地面に倒れてしまう。

その隙を見て走りだすガロード。

 

「ガロードッ!! アンタはアタシの!!」

 

急いで立ち上がるエニルは銃口を向けてトリガーを引き続ける。

けれども弾はかすりもせず、ガロードの姿は射程圏外へ離れて行く。

イライラが収まらないエニルはそれでもトリガーを引き続け、銃声だけが虚しく響く。

 

「あの子……許さない!!」




投稿が遅くなってしまいすみません。
艦これのイベントをやってたのですが、そのせいで時間を使い過ぎてしまいました。
他にもやりたい事が一杯あるのに全然できておらず、この現状はだめだと思いデータを消しました。
次からはペースを早めていきます。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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