機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

5 / 31
第5話

翌朝、ティファの容態が急変した。

数日安静にして居れば意識は回復する筈が、強力な毒により生死の境をさまよって居る。

テックスはすぐに病状を調べるが、解毒剤もなくフリーデンの設備でも治療は出来ない。

駆け付けたジャミルとアムロは彼女の表情を覗くが、依然として目を覚ます様子はなかった。

 

「テクス、コレは……」

 

「あぁ、首筋に針で刺した様な穴がある。何の毒かまではわからんが、このままでは1週間と保たない」

 

「内部犯……だが、何の為に……」

 

考えるジャミルだが、時は一刻を争う。

誰がやったのかも重要だが、彼女をどう救うのかも見付けなければならない。

その隣でアムロもティファを見て居ると、微かにだが感じるモノがあった。

 

「あの男なのか?」

 

「わかるのか? アムロ」

 

「あぁ、だとすれば奴は動くぞ。ジャミル、俺はモビルスーツデッキに行く。ティファを治療出来る施設は近辺にないのか?」

 

「あるにはある。だが、危険な賭けになる。ティファを救出したアルタネイティブ社の研究ラボ。あそこなら治療出来る筈だ」

 

「良し、ならそこに行くしかない」

 

即決するアムロ。

それは相手の戦力、情報を知らないからでもある。

対照にその事を知って居るジャミルは二の足を踏んでしまう。

 

「だが警備は厳重だ。それに前とは違って制圧する必要がある。ガンダムがあるとは言え……」

 

「あれだけの戦闘力を持った機体だ。それに相手の殆どは量産機、4機掛かりなら行ける」

 

言うとアムロは病室の扉を開けた。

瞬間、違和感を感じ、通路に出た先には話を盗み聞きして居たガロードの姿。

 

「ガロード……」

 

「マジィ、クソッ!!」

 

他のクルーには見付からないように逃げ出そうとしたガロードだが、アムロは上着を掴み動きを止める。

そして近くまで引き寄せ、真剣な眼差しでガロードを見た。

 

「さっきまでの話は聞いてたな?」

 

「ティファが死んじまうかもしれないんだろ?」

 

「そうだ、時間がない。ガロード、ティファが居る限りフリーデンから逃げない、昨日そう言ったな?」

 

「あぁ、言ったさ!!」

 

「だったら――」

 

黒いジャケットのポケットに手を入れるアムロ。

取り出したのはGXのコントロールユニット。

 

 

 

第5話 GXにはお前が乗れ

 

 

 

コントロールユニットを受け取るガロード。

けれども以前のアムロの戦いを見ており、自身がGXに乗る事に戸惑いを覚えた。

 

「俺があの機体に……でも俺は……」

 

「俺には俺の機体がある。良いか、ガロード。ティファを守りたい気持ちが力になる筈だ。後は俺がフォローする」

 

「俺に出来るのか? アムロみたいに……」

 

「それは違うぞ。ガロードの感覚で動けば良い。そうすればガンダムが応えてくれる」

 

「ガンダムが応えてくれる?」

 

「そうだ」

 

言うとアムロはガロードの肩を叩き、モビルスーツデッキに向かって走った。

コントロールユニットを握り締めるガロードは、医務室の開かれた扉からちらりとティファを覗き、思考を切り替えて全力で走った。

モビルスーツデッキでは、各メカニックが作業を進めて居た。

オルバ・フロストも自らの機体の調整作業をしており、意図的に組み替えた回線を元に戻し推進剤の補充を済ませる。

 

「これで準備は整った。艦の進路もアルタネイティブに向かって居る。予定通り」

 

機体のコクピットに乗り込み、エンジンを起動させモノアイが赤く点灯する。

操縦桿を握り目を閉じると、兄であるシャギアに念波を飛ばす。

 

(予定通りだよ、兄さん。奴らはアルタネイティブのラボに向かって居る)

 

(流石だ、オルバ。後はティファ・アディールを連れて戻って来るんだ)

 

(この艦のメインエンジンを破壊してね。それに今なら他のガンダムも潰せる)

 

モビルスーツデッキにはメカニックだけでパイロットは居ない。

オルバはペダルを踏み込みコンソールパネルを叩き、この機体の真の姿を見せる。

 

「どう言う事だ!? 誰が動かしてる!!」

 

「とにかく逃げろ!! 踏み潰されるぞ!!」

 

「さぁ、ガンダムアシュタロン。目障りなガンダムを潰せ!!」

 

歩き出すアシュタロンはビームサーベルを引き抜き、まず初めに目の付いたガンダムエアマスターに向かう。

そして、握るビームサーベルをコクピットに突き立てようとした。

瞬間、もう1機のガンダムが起動する。

 

「こんのぉぉぉ!!」

 

「ナニィッ!?」

 

もう少しの所でオルバは妨害されてしまう。

マニピュレーターで頭部を殴られて姿勢を崩すアシュタロン。

揺れるコクピットで歯を食いしばりモニターに映る相手を見た。

そこに居るのはガロードの乗ったGX。

 

「お前がティファを!! ティファをあんな目に合わせやがって!!」

 

「GXだと!? フン、まぁ良い」

 

バックパックのアトミックシザースに内蔵されたビーム砲を、今度はハンガーに固定されたガンダムレオパルドに向けた。

トリガーに指を掛ける。

 

「っ!? この感覚は?」

 

「やらせるか!!」

 

アトミックシザースを掴み上げるνガンダム。

銃口をレオパルドから反らし、その隙を付いてGXが更にマニピュレーターを叩き込む。

 

「吹っ飛べぇぇぇ!!」

 

一方的に殴られるアシュタロンは背部から壁面に激突する。

鳴り響く金属音。

激しい揺れ。

 

「やってくれたな、GX!!」

 

(どうしたオルバ?)

 

(もう少しの所で邪魔された。ガンダムの破壊は無理だ。でもティファ・アディールは狙える)

 

(ラボの部隊を率いて私もヴァサーゴで出る。ティファ・アディールだけでも連れて来るんだ)

 

(わかったよ、兄さん)

 

念波で言葉を交わすオルバは操縦桿を握り直し、機体の姿勢を維持させてアトミックシザースを動かす。

けれどもビーム砲の銃口は相手に向けるのではなく、すぐ傍の壁に目掛けてトリガーを引いた。

ビームはフリーデンの外壁を吹き飛ばし、脱出出来るだけの大穴を開ける。

 

「これなら」

 

メインスラスターを吹かし素早く脱出するアシュタロン。

外へ出たオルバは、目標であるティファが眠る病室の壁をアトミックシザースで突く。

壁には容易く穴が開き、そこからマニピュレーターを伸ばしベッドごとティファを持ち出した。

ガロードのGXも急いで外に出るがその時にはもう遅い。

 

「フフフッさようならだ、GX」

 

「逃がすか!!」

 

ビームライフルを引き抜き銃口を向ける。

けれどもトリガーを引く前に、アムロがそれを静止した。

 

「撃つんじゃない。あの子に当たるぞ」

 

「そんな!? だったらどうしたら」

 

「奴が行く先はわかってる。俺達も追うぞ」

 

アムロはνガンダムに予備に保管されて居たビームライフルを持たせて、ガロードと共にアシュタロンの姿を追う。

行く先にあるモノは、ティファが囚えられて居たアルタネイティブ社の研究施設。

コンソールパネルに手を伸ばし、ブリッジのジャミルに通信を繋げる。

 

「ジャミル、こうなったらやるしかない。敵の増援も居る。あの2機のガンダムも出すんだ」

 

『わかった。こちらからも援護はする。だがアムロ、2人だけで先行し過ぎだ』

 

「危なくなったら引くくらいするさ」

 

νガンダムとGXはフリーデンを置いてアシュタロンの先にあるラボを目指す。

けれども待ち構えるのは、シャギア率いるガンダムヴァサーゴとドートレス部隊。

その数は20を超えて居る。

大部隊を相手にガロードは思わず目を見開く。

 

「なんて数なんだ。今はサテライトキャノンも使えないって言うのに!!」

 

「焦る必要はない、後方には味方も居る。目的は彼女を助ける事と、この施設の制圧だ。敷地内での戦闘は極力避けるんだ」

 

「んな事言ったって」

 

「言っただろ、サポートはする。今は目の前の敵に集中するんだ」

 

言うとアムロはまだ距離のある敵機に銃口を向けた。

射程距離からは外れており、今の位置で撃った所で当たる訳がない。

それでもアムロはトリガーを引いた。

敵が避ける先を予測して、向けられるプレッシャーにビームを放つ。

 

(こんな距離から!?)

 

驚くガロードはビームが向かう先を見た。

長距離狙撃は目標地点に到達するまでにビームのエネルギーが少しずつ放散して行く。

νガンダムが撃つビームも、狙った相手に届く頃には威力が減少して居る。

でもアムロは構わずにもう2回トリガーを引いた。

回避行動を移るドートレス。

初弾は地面へ当たり砂煙が舞い上がる。

だが移動する先を知ってるかのように、2発のビームはドートレスに直撃した。

頭部を吹き飛ばし右脚部にダメージを受けて機体は倒れ込む。

 

「来るぞ、ガロード」

 

「っ!?」

 

ドートレスの部隊が2人の目前にまで迫る。

ビームライフルを向けるガロードは照準を合わせ、とにかく敵を倒そうとトリガーを引いた。

GXから発射されるビーム。

それは一撃で敵機を破壊できるだけの威力がある。

だが幾ら強力でも当てられなければ意味はなく、回避行動に移るドートレスはコレを避けた。

 

(攻撃されれば普通避けるよな。だったら、何でアムロは当てられるんだ?)

 

アムロが乗っていた時と今とでは明らかにGXの戦闘能力が違う。

その力の差に劣等感を抱きながら、ガロードは戦っていた。

更にビームライフルのトリガーを引き、銃口から発射されるビームは3発目にしてようやくドートレスの胴体を貫く。

そうしてる間にも、隣のνガンダムは3機目を落とす。

 

「ライフルのエネルギーを使い過ぎだ。ここからの敵は無視するぞ」

 

「そんな事できるのかよ?」

 

「フリーデンから援護射撃も来る。俺の後ろに続けば良い」

 

言うとアムロは敵陣のド真ん中を突っ切るべく、メインスラスターの出力を上げる。

敵部隊から向けられる弾丸の雨。

νガンダムは各部スラスターとアポジモーターを駆使して軽快に動く。

ビームライフルで牽制しながら、被弾する事なく第1陣を突破する。

 

『早い!? アレがガンダムなのか?』

 

『背中がガラ空きだ。後ろから撃ち込め!!』

 

振り返るドートレスはGXとνガンダムに銃口を向ける。

以前として多い敵の数に、ガロードはどうしても後ろを気にしてしまう。

 

「敵が来る!? ガンダムでも耐え切れないぞ!!」

 

「ガロード、振り向くな!!」

 

次の瞬間、無数の爆撃がドートレスを襲う。

飛来するミサイルと砲撃、無数の弾丸。

背後からの攻撃にドートレス部隊は為す術がなく、機体は瞬く間に爆散。

後方から追い付いて来たフリーデンとガンダムレオパルドによる砲撃が、敵部隊を総崩れにする。

 

「フリーデンが来てくれた!!」

 

「あぁ、ラボに突入する。来れるな?」

 

「行くぜ!!」

 

GXとνガンダムはメインスラスターを全開にして一気に飛んだ。

防衛網を突破し、アルタネイティブ社はもう目と鼻の先。

けれどもまだ、2人の進む先を妨げる存在が居る。

高出力の赤黒いビームが大地を焼く。

 

「プレッシャー!? 来るのか?」

 

「ぐっ!!」

 

散開するGXとνガンダム。

現れたのは、その名前のように悪魔のようなフォルムをした機体。

シャギア・フロストが搭乗するガンダムヴァサーゴ。

 

「月もないままに現れるか、GX」

 

「あの見た目……アイツもガンダム……」

 

「伝説のガンダムタイプが2機。だが1人は素人か」

 

「もう少しって所で!! 邪魔だぁ!!」

 

ビームサーベルを引き抜き、ガロードはペダルを踏み込みGXを動かす。

余裕の態度を崩さないシャギアも機体にビームサーベルを握らせる。

だがアムロはマニピュレーターをGXの肩に触れさせると、接触回線でガロードを呼び止めた。

 

「待て、奴は俺が止める。ガロードは早く彼女を」

 

「アムロ、でも……」

 

「悩んでいられる程時間はない。動け」

 

前を見据えるガロードは、アムロの言う事に従いヴァサーゴを無視してラボを目指す。

シャギアもGXを追い掛けようとはせず、残るνガンダムと対峙する。

 

(オルバ、ティファ・アディールはどうなった?)

 

(今、ラボに到着した所だよ)

 

(そうか。GXがそっちに向かった。パイロットは素人だ。コクピットだけを潰せ)

 

(わかったよ、兄さん)

 

「さて、もう1機のガンダム。貴様はここで退場して貰う」

 

ビームサーベルを構えるヴァサーゴはνガンダムと相まみえる。

 

///

 

ティファを連れてラボに戻ったオルバ。

アシュタロンを建物屋上に位置させ、ベッドを抱えるマニピュレーターをコンクリートの床に置く。

オルバが戻った事を知ったフォンと数人の研究者は、急いで屋上に駆け付けた。

 

「ティファ・アディールを連れ戻したのか?」

 

「アナタがこのラボの責任者ですね? 兄から聞いてるとは思いますが、私が弟のオルバ・フロストです」

 

「良くやってくれた。さぁ、彼女をこちらに」

 

「えぇ、ですがその前に」

 

空いたマニピュレーターを差し出すオルバ。

全てを言われなくとも、フォンは嫌悪感をむき出しにしながら要求に従った。

アタッシュケースを片手に持ち、差し出されたマニピュレーターの上に置く。

 

「念の為にケースを開けて頂けますか?」

 

「疑り深い奴だ。これで満足か?」

 

言われてケースを開けるフォン。

中には大量の紙幣が詰め込まれており、ティファを奪還した際の報酬がこれだ。

確認を済ませるとベッドを床に降ろし、アタッシュケースをコクピットへ運ぶ。

ハッチを開放してアタッシュケースをコクピットに入れるオルバ。

 

「彼女にはAPMを投与してます。すぐに処置を施して下さい。私は追って来るバルチャーの後始末に向かいます」

 

(後始末か……そうだな。後始末は付けなくてはならん)

 

メインスラスターを吹かしラボを後にするアシュタロン。

研究員はすぐにティファの眠るベッドを移動させ、フォンは1人格納庫へと足を運ぶ。

操縦桿を握るオルバは、念波で受け取ったGXの存在をレーダーで見た。

 

「兄さんの言った通り、モビルスーツが1機向かって来てる。あの時の白い機体、GX……借りは返させて貰うよ」

 

メインスラスターから青白い炎を噴射し加速するアシュタロン。

空中を飛びラボから離れて行く先で、因縁の相手が向かって来る。

 

「さっきはやってくれたね、GX」

 

「黒いガンダム!? ティファを返せ!!」

 

「残念だけどソレは出来ない。こう言う時、なんて言えば良いんだっけ? 返して欲しければ僕を倒してごらん?」

 

「舐めるなよ、こっちだってガンダムだ!!」

 

ビームライフルを向けトリガーを引く。

アシュタロンに目掛けてビームを発射するガロードだが、オルバは鼻で笑いならが簡単にコレを避ける。

アトミックシザースを前方に向け、次はアシュタロンが攻撃を始めた。

2本のビームがGXを襲う。

 

「くっ!! 相手の方が手数が多い」

 

「フフフッ、どうしたのさGX? さっきまでの威勢が失くなったようだけど?」

 

回避に専念しながら、隙を見てトリガーを引く。

だが技量に明確な差がある。

アシュタロンは余裕を持ってビームを回避し、更にGXへ攻め込む。

ビーム攻撃をしながら回り込み、相手との距離を詰める。

旋回するガロードはなんとかして攻撃を避けつつ、視界に敵を収めようとした。

それでも動きが単調になり、オルバはソレを見逃さない。

ペダルを踏み込み機体を加速させて一気に詰め寄り、マニピュレーターにビームサーベルを握らす。

 

「ビームサーベルだって!? シールド!!」

 

GXが握るライフルの装甲が展開される。

グリップ部が可動して銃口が下に向くと、ビームライフルは小型のシールドへと早変わりした。

繰り出される灼熱のエネルギー刃。

ガロードはシールドで攻撃を防ぐが、同時に機体の動きも一瞬であるが固定させてしまう。

ビームサーベルがシールドの装甲を焦がすその時、アトミックシザースがGXの両腕を挟み込んだ。

 

「しまった!?」

 

「兄さんの言ってた通り、パイロットは素人同然か。機体はそのまま、キミには死んで貰うよ」

 

アトミックシザースは両腕を掴みあげGXの動きを封じながら、マニピュレーターが握るビームサーベルがコクピットに狙いを定める。

なんとか脱出しようと操縦桿を前に後ろに押し倒すガロード。

けれども機体はビクともせず、GXはアシュタロンの拘束から逃れる事はない。

 

「こんな所で死んでたまるかァァァッ!!」

 

コントロールユニットのギミックを押し込み、サテライトキャノンを展開させるガロード。

太陽がまだ登ってる時間帯、月のマイクロウェーブ送信施設からエネルギーを受け取る事はできない。

それでもその砲身は、ビームサーベルが突き刺される寸前でアシュタロンの頭部に叩き付けられた。

 

「コイツ!?」

 

「退けェェェ!!」

 

トリガーを引き込みブレストバルカンから弾丸を発射させる。

強固な装甲を誇るガンダムだが、至近距離から無数に浴びせられる弾丸は当たり方によっては致命傷にも成り兼ねない。

アシュタロンの黒い装甲を削り取る。

ガロードはペダルを踏み込み、相手が反撃に転じるよりも前に右脚部で更に蹴った。

ぶつかり合う装甲はコクピットを激しく揺らす。

アトミックシザースは耐え切れずにGXの両腕を手放してしまう。

 

「ぐぅ!? やってくれたな!! ん、なんだ?」

 

「この反応、モビルアーマーなのか? 来る!!」

 

2機の居る所へ巨大な光の弾が発射される。

直撃を避けるべく散開する2人が見たモノは、アルタネイティブ社に現れた巨大なモビルアーマー。

4本の巨大な足で自立する緑のモビルアーマーはまるで砲台。

長距離荷粒子光弾砲を搭載する機体のコクピットには、ラボの責任者であるフォンが搭乗していた。

 

「撃て!! 撃ち続けろ!! 邪魔者共は全て排除しろ!!」

 

広いコクピットスペースに搭乗する他の乗組員に号令を飛ばす。

フォンの用意したモビルアーマー、グランディーネは荷粒子光弾を立て続けに発射する。

オルバは回避行動を取りながら、シャギアに念波を飛ばす。

 

(兄さん!! あの男、モビルアーマーを!!)

 

(ティファ・アディールを渡すタイミングを間違えたな。私のミスだ)

 

(どうするの? バルチャー共も相手にするとなると骨が折れるよ)

 

(ここは無理をする場面ではない。引き上げるぞ)

 

(わかったよ、兄さん)

 

モビルアーマー形態に変形するアシュタロンは加速し、GXを置いてヴァサーゴが居る地点へ向かう。

 

「待て、逃げるな!!」

 

ガロードはアシュタロンの姿を追い掛けようとするが、グランディーネの砲撃がGXを襲う。

 

「クッ!! サテライトキャノンも撃てない。だったら突っ込む!!」

 

砲身を収納し、リフレクターからエネルギーを放出してラボに飛ぶGX。

一方で、アムロのνガンダムとシャギアのヴァサーゴとの戦闘も終わりを迎える。

ヴァサーゴは被弾こそしてないが、完璧に整備された状態でνガンダムにたったの一撃すら与えられない。

互いに射撃戦を繰り返す中で、シャギアは苛立ちを感じる。

 

「碌な武器もない相手に……エネルギーを消耗し過ぎた」

 

「腕は良いが、一本調子だ。そんな事では!!」

 

「これ以上はやらせん!!」

 

ヴァサーゴの両腕を伸ばし、死角からクローユニットのビームを発射する。

だがファンネルのように射角に自由度はなく、銃口から向けられる殺意を感じ取りアムロは攻撃を掻い潜りながらビームライフルを向けた。

 

(機動力は良いが、どうやったって腕が邪魔になる。それに前がガラ空きだ)

 

「コイツ、逃げる先を狙っている!?」

 

「そこだ!!」

 

回避しながら相手の先を読み攻撃。

ニュータイプ同士の戦いともなればそれらの繰り返しである。

先を読むが故に傍から見れば見当違いの所に撃ってるようにも見えるが、アムロは今までの戦いでこれらの経験を積み重ねて来た。

それは普通の戦闘でも優位に働き、機体が万全ではない状態でもヴァサーゴと互角に戦う事ができる。

トリガーを引き発射されるビーム。

見てから反応するシャギアは操縦桿を動かし、スラスターを駆使して機体に急制動を掛ける。

ビームは停止するヴァサーゴの右肩をかすめた。

 

「この機体の弱点を見付けたのか?」

 

「落とさせて貰う」

 

「させるか!!」

 

腹部が上下に展開し、備えられたメガ粒子砲が現れる。

チャージされたエネルギーを拡散ビームとして発射し、目の前のνガンダムに発射した。

赤黒いビームは無数の雨となり敵に襲い掛かる。

けれども視線の先にはもうνガンダムは居ない。

地面に直撃するビームが土煙を上げ視界を悪くする中、メインスラスターから青白い炎を噴射してνガンダムはジャンプした。

発射線上を遮るモノは何もない。

コクピットに狙いを定めビームライフルのトリガーを引く。

懐はガラ空き、防ぐにも両腕を収納せねばならずそんな余裕はない。

眼前に迫るビームの一撃。

 

(兄さん!!)

 

ヴァサーゴを守る黒い機体。

寸前の所でアシュタロンはアトミックシザースでビームを防いだ。

同時に2門のビーム砲を向けて空中のνガンダムに攻撃を開始する。

 

「兄さん、無事だね?」

 

「オルバ、助かった。離脱するぞ」

 

合流した2人は着地するνガンダムに攻撃を続けながら距離を離す。

アムロも無理に戦おうとはせずに2機から離れて行く。

 

「合流された、モビルアーマーもある。ガロード」

 

ガロードの居るラボへ向かうアムロ。

シャギアとオルバはその様子を確認し、この戦闘領域から離脱を始める。

逃げる最中、シャギアはチラリとνガンダムの姿を視界に収めた。

その瞳に漂うのは怒りと憎悪。

 

「白い奴……2度と忘れん」




スパロボUXのルナマリアがマジチャーミング。
次回でグランディーネと決着です。
ご意見、ご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。