機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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最終話

 モビルアーマー形態に変形するアシュタロンは懸命にアムロの後ろを追い掛ける。だがその頃にもなると、アムロはキッドに伝えた受け取りポイントに到着した。無造作に漂流するνガンダム。

 

「来たか、奴も居るな」

 

「アイツは何をするつもりだ? ボロボロの機体で」

 

 変形を解くアシュタロンはビームサーベルを片手にラズヴェートに迫る。振り下ろす切っ先、交わるビーム刃。

 鍔迫り合いは激しい閃光を生む。肉薄する両者、オルバはトリガーを引きマシンキャノンを撃ちまくった。残弾はもう気にしない。目の前の相手を倒さなくては自らの願いが成就する事もなかった。

 けれどもアムロはオルバの殺意を察知し膝でアシュタロンの股関節を蹴り上げる。

 

「ぐぅッ!? やったな、アムロ・レイ!」

 

「遅いッ!」

 

 一瞬の隙を逃さないアムロは操縦桿を押し倒しビームサーベルを胸部に突き立てる。本来ならこれでアシュタロンは機能不全になる筈だった。

 けれどもアムロの攻撃に反応するオルバは操縦桿を動かしビームサーベルで攻撃を防ぐ。

 

「動きが変わった? 反応が早い」

 

「兄さん? 兄さんなの? 聞こえるよ、兄さんの声が!」

 

「来るのか!?」

 

 攻めに転じるオルバはビームサーベルを振り下ろす。シールドを構えるアムロだが、ビームの出力を防ぎきれず数秒で切断されてしまう。

 

「この強さは何だ? 本当にオルバ・フロストなのか?」

 

「今ならわかるよ。アイツの動きが手に取るようにわかる! 僕と兄さんが力を合わせればできない事なんてないんだ! さぁ、ニュータイプを倒そう!」

 

「手強い!」

 

 互いに袈裟斬り、ビーム刃が交わり閃光と火花が飛び散る。

 アムロはアシュタロンを蹴りつけ距離を離すが、そんなのは一時の時間稼ぎ。アムロを逃すまいとオルバはメインスラスターのペダルを踏み込む。

 

「逃がさないと言った!」

 

「ロアビィ、任せられるか?」

 

「任されて!」

 

 サテリコンの艦隊防衛から離れたロアビィのレオパルドがアムロに加勢する。全身に武装された機体から放たれるミサイルとビームの雨。

 オルバの相手を任せるアムロはνガンダムを抱えてこの領域から急いで離脱する。

 

「アムロは行ったか? さぁて、ゲテモノガンダム! 自慢のハサミはどうした!」

 

「お前ごときが僕達兄弟の邪魔をするのか? 消えろよッ!」

 

 攻撃の雨の中を潜り抜けるアシュタロンはビームサーベル1本でレオパルドに挑む。スラスター制御とAMBACで機体を匠に操作しレオパルドに詰め寄る。

 

「正気かよ、コイツ!? 何でそんな動きができるんだ?」

 

「僕達はニュータイプを超える存在! お前なんて弱いんだよ!」

 

「冗談! 舐めてんじゃないよッ!」

 

 ツインビームシリンダーから絶え間なく放たれるビーム。並のパイロットならば被弾は避けられないが、オルバは針に糸を通すように攻撃を掻い潜りレオパルドに肉薄した。

 

「これなら!」

 

「武器ならまだあるんだよね」

 

 両肩アーマーに左右2基づつの計4門装備されたショルダーランチャーがアシュタロンを狙う。だが今のオルバの反応速度はニュータイプをも凌駕する。

 ビームサーベルで横一閃、ロアビィがトリガーを引くよりも早くに武装を破壊。更に右腕を振り下ろすと左肩を切断した。

 

「ぐぅっ!? やってくれるな!」

 

「雑魚は消えろッ!」

 

 振り払う腕で残るツインビームシリンダーも切断されてしまうが、レオパルドは瞬時にビームナイフを引き抜き前方に突き出す。

 完璧に隙を付いた筈だった。だが、それでさえもオルバは見切る。機体上半身を反らして攻撃を回避し、そのままレオパルドの胸部装甲を蹴り飛ばす。

 為す術もなく、レオパルドは明後日の方向に流されて行く。

 

「邪魔は消えたな。決着を付けるぞ、アムロ・レイ!」

 

 モビルアーマー形態に変形するアシュタロンアムロが向かう先、地球に目掛けて降下するコロニーレーザーへ飛ぶ。

 一方で時間を稼いだアムロはνガンダムと共にコロニーレーザーに取り付こうとしていた。

 

「新連邦も事の重大性を理解したか? ガロード、どこに居る?」

 

 コンソールパネルを操作してダブルエックスに通信を飛ばす。ガロードは漂流しているビームライフルを片手にコロニーレーザーを無闇に攻撃するしかできなかった。

 

「アムロか? このままじゃコロニーが……」

 

「わかっている。だが核ノズルを止めない事には」

 

「どうやって? ビームを撃ったくらいじゃ」

 

「ガンダムを使う。付いて来い、他のモビルスーツに邪魔されると不味い。それにジャミルも居る」

 

「サテライトキャノンか!? 了解!」

 

 νガンダムを抱えるラズヴェートはコロニーレーザーの推進力である核ノズルに急行する。ガロードもアムロを援護すべく合流ポイントに向かった。

 フロスト兄弟が計画した地球攻撃。第1段でコロニーレーザーによるエネルギー照射を地球に向けるつもりだったがそれは叶わず、第2段に15年前の戦争を彷彿とさせるコロニー落としを決行。

 そうする事で今居る人間を滅しニュータイプの概念を世界から消滅させるのが最終目標だ。

 だが、コロニー落としを成功などさせまいとガロードは必死にもがく。

 そして各陣営とも総司令官が戦死した事で崩れていた統率が少しずつ回復し、現実に起きている事を直視する。

 

「コロニーが地球に向かっている?」

 

「総統閣下はどうされたのだ? 新連邦の作戦は成功したのか?」

 

 こう言う状況にもなれば敵のモビルスーツの動きも遅くなる。一気に突き抜けるダブルエックスは早急にアムロのラズヴェートに接触した。

 

「追い付いた。でも今からで間に合うのか?」

 

「何もできないよりはマシだ。ライフルを借りるぞ」

 

 コロニーレーザーに設置された核ノズルに目掛けてνガンダムを流すアムロ。武器も無ければ各部が損傷したモビルスーツの使い道ともなればこれくらいしか残っていない。

 ガンダムのエンジンに狙いを定めるアムロだが、後方から彼を狙う敵が追いかけて来る。

 

「アムロ・レイ! お前はここで倒すッ!」

 

「邪気が来るか。今は構っていられない!」

 

 一旦ガンダムから照準を切り替えアシュタロンに向けると素早くトリガーを3回。発射されるビームに反応するオルバはアムロの攻撃をスラスター制御で安々と避ける。

 

「見えると言った! もうお前なんて敵じゃない!」

 

「アムロの邪魔はさせない!」

 

 サイドスカートからハイパービームソードを引き抜くダブルエックスはアシュタロンと対峙する。振り下ろすハイパービームソードを受けるアシュタロン。装備も失い各部にガタが見え始めた状態だが、その動きは機体がフル装備の時よりも強い。

 

「ガロード……そうか、お前もまだだったよ。ダブルエックス諸共宇宙に消えろ!」

 

「させるもんか! もうこれ以上、戦争なんてやらせるもんか!」

 

「だったら僕達を倒してみろ!」

 

 ダブルエックスを押し返すアシュタロンはすかさず袈裟斬り。操縦桿を動かすガロードはビーム刃を何とか受け止めるが、オルバの攻撃は終わらない。追い打ちに更にビームサーベルを振り下ろす。横一閃、袈裟斬り。

 戦いの中でようやく宇宙戦闘にも慣れてきたガロードだが、飛躍的に上昇したオルバの反応速度に付いて行くのは至難の業。

 防ぎきれずに左肩の装甲が斬られてしまう。

 

「ぐっ!? コイツ、本当にオルバなのか? 動きも反応も全然違う」

 

「兄さん、完璧だ! ガンダムも、ニュータイプも僕達の手で倒す! そして僕達が望む世界でやり直すんだ!」

 

「そんな事じゃ変わらない! 何も変わらない! 誰だってみんな今を必死にもがいてる。ニュータイプが消えた所でお前の望むようにはならない!」

 

「黙れよッ!」

 

「だから俺もッ!」

 

 ビームサーベルがぶつかり合い閃光が走る。同時に後方から巨大な爆発の光が広がる。

 

「アムロがやったのか? コロニーの動きはどうなった? 何だ? 何の光……」

 

「核ノズルを止めたか? だがもう遅い! コロニーレーザーは地球の引力に引かれて落ちる!」

 

「それでもまだ終わってない! 終われない!」

 

「無駄だよ!」

 

 νガンダムに組み込まれたサイコフレームが最後の輝きを放つ。緑色の粒子は戦闘領域全体に広がっていく。

 だがオルバに光を感じ取る余裕などない。ダブルエックスを殴り付けるアシュタロン。コクピットが激しく揺れる。歯を食いしばり握る操縦桿に力を込めるガロード、その彼にしがみ付くティファも戦闘の衝撃に耐えながら声を出す。

 

「ガロード、サテライトキャノンは使えませんがマイクロウェーブなら使えます」

 

「マイクロウェーブ……そうか! ティファの言う事、試してみる価値はある! その為には!」

 

 右足でペダルを踏み込むガロードはメインスラスターを全開にして未だに地球への進路を取るコロニーレーザー、その前方に目掛けて飛ぶ。

 またも自身を無視してコロニーを優先する姿勢にオルバは怒る。

 

「お前もか、ガロード・ラン! 僕はニュータイプをも超えた存在、ガンダムを超える存在だ! その僕から逃げるのか!」

 

「また地球がダメになるかもしれないんだ。お前の相手なんかしてる暇はない!」

 

「言ったな!」

 

 追い掛けるアシュタロン、だが別方向からビームが飛来し回避行動を余儀なくされる。視線を向けた先ではビームライフルを構えるラズヴェート。

 

「どうするつもりだガロード? コロニーの落下は始まっているんだぞ?」

 

「ダブルエックスとマイクロウェーブならどうにかできるかもしれない。このままだとGXのサテライトキャノンでも破壊しきれない」

 

「だが脱出できなくなるぞ?」

 

「パーラのGファルコンに乗り込めば逃げられる。マイクロウェーブのエネルギー量なら、コロニーの進路を少し反らすくらいできるかもしれない」

 

「だったら急ぐぞ。ジャミルも発射体勢に入っている。援護は俺がする」

 

 GXのサテライトキャノンの破壊力でも一撃ではコロニーレーザーを破壊しきれない。後方からいつでも撃てるようにジャミルも準備を進めているが、完全に破壊できなければサテライトキャノンのエネルギーと爆風の余波でコロニーは加速してしまう。そうなれば地球落下を阻止するのは不可能。

 

「地球が本当にすぐ目の前だ……」

 

「この接触が本当に最後だ。引力に引っ張られれば終わりだぞ」

 

 コロニーレーザーの下では青く光る水の星。15年の月日を得てようやく回復してきた地上が再び危機にさらされている。

 もはや新連邦も宇宙革命軍も邪魔をするモノはいない。追手はオルバのアシュタロンのみ。

 コロニー後部に取り付くダブルエックスはそのまま直進し、一旦立ち止まるアムロはビームライフルの銃口をアシュタロンに向けた。

 

「アムロ・レイが来るか? 無駄だよ!」

 

「奴の反応速度に付いて行けるか……」

 

 トリガーを引きビームが発射される。攻撃を回避するアシュタロンは距離を詰めて袈裟斬り。

 スラスターで姿勢を制御するラズヴェートだがビームライフルは切断されてしまう。すぐさま投げ捨てビームサーベルを引き抜くと横一閃。ビーム刃が交わる。

 

「沈めよォォォッ!」

 

「ガロード、後は頼むぞ。できるだけの事はやってやる」

 

 押し返すラズヴェートは腕を振り上げて袈裟斬り。だが今のオルバの反応速度はアムロでさえ凌駕する。互いにビームサーベルを振り合い斬り付け、メインスラスターとAMBACで機体を制御し移動しながら攻撃。

 両者共に一歩も譲らない。アムロの背中には地球がある。オルバの眼前には目指した野望が広がる。

 タイムリミットが迫る中、ジャミルは後方でGXのサテライトキャノンを展開してコロニーレーザーを照準に収めていた。

 右手に握る操縦桿のガジェットを押し込めばマイクロウェーブをいつでも受信できる。だがまだ撃てない。

 ウィッツのエアマスターはサテリコンの艦隊が安全圏にまで到達したのを確認し、ロアビィのレオパルドを回収するとジャミルのGXと合流した。

 

「何でサテライトキャノンを撃たねぇんだよ! コロニーは地球までもう目の前なんだぞ!」

 

「わかっている! だがガロード達が脱出するまで待ってやるしかないだろう」

 

「クッ!? 急げよガロード!」

 

 コロニーレーザー前方部に取り付くダブルエックス。まるでコロニーを押し返すかのように両腕を突き出して動きを止める。もう推進剤の残量も枯渇寸前。それでも目標地点にまで到達できた。

 

「良し、最後の仕事だ。頼むぜ、ガンダム。マイクロウェーブ、来いッ!」

 

 操縦桿のガジェットを押し込み、月の送信施設からマイクロウェーブが送り込まれる。もはやツインサテライトキャノンも、放熱用のリフレクターすらも失くなったダブルエックス。本来の使い方ではないが、エネルギーを必要充分に供給されてもまだマイクロウェーブを受け続ける。

 

「後はこのまま……パーラ、そっちに乗り移る」

 

「1人乗り用なんだけどな。しゃあねぇから我慢してやるさ。早くこっちに来い!」

 

「行こう、ティファ」

 

「はい!」

 

 パイロットスーツのヘルメットのバイザーを下ろす2人は機体を乗り捨てて、ドッキングしたGファルコンのAパーツに乗り移る。パーラの言うように狭いコクピットの中に何とか収まる2人。窮屈を強いられながらもパーラは操縦桿を両手で握りペダルを踏み込んだ。

 

「良し、乗ったな? ならさっさと離脱するぞ! 地球の引力に引っ張られる」

 

「頼む!」

 

「しっかり捕まっとけよ!」

 

 小型のGファルコンAパーツはダブルエックスから分離すると一目散にコロニーレーザーから離れて行く。

 アムロもオルバと戦闘を行いながらもGファルコンが離脱して行くのをレーダーで確認する。

 

「ガロード達は上手くやったな?」

 

「とどめを刺す! お前達とも、ニュータイプとの因縁もここで終わりだ!」

 

「そうやってお前はニュータイプに囚われ続けるのか? 哀れだな……」

 

「黙れ! お前に何がわかる! お前に!」

 

「そうやって他の道を切り開けなかったからこうにまでなった。シャギア・フロストに依存して――」

 

「そうしなければ生き延びられなかった! 僕達は能力がありながら認められなかった。それを――」

 

「現実を見れてないんだな。だから偏屈した考えにもなる。もうシャギア・フロストは死んだ。これ以上何をする?」

 

「死んだ? 兄さんが……嘘を付くなッ!」

 

 激昂するオルバは操縦桿を力の限り押し倒しビームサーベルを押し付ける。攻撃を受け止めるアムロだが、コロニーレーザーを破壊する為の時間の猶予は残されてない。

 

「力が一時的に強まった? クッ!?」

 

「僕達兄弟はいつも一緒だったんだ。だから間違える筈がない、兄さんの声は僕に届いてる。僕に届いて……兄さん?」

 

「動きが止まった!?」

 

 ビームサーベルでアシュタロンの右腕を斬り上げるラズヴェート。アシュタロンはスラスターに異常がないにも関わらず完全に動きを止めてしまった。

 

「兄さん……兄さん、どこに居るの? 返事をしてよ! 兄さんが居なかったら意味がないじゃないか!」

 

「時間がない。離脱する」

 

 ビームサーベルを投げと回転するビーム刃はアシュタロンの両脚部を切断した。全ての武装を使い切ったアムロは残る推進剤を使い切ってでもコロニーから離れる。

 

「保ってくれよ!」

 

 マイクロウェーブを受信し続けるダブルエックスも遂に限界が訪れる。充填されるエネルギーは放出される事なく、限界を超えた瞬間に装甲は溶解を初めた。膨れ上がるエネルギー。

 瞬間、巨大な閃光が生まれる。

 光は瞬く間に周囲の物質を破壊していき、コロニーの進路をわずかながら反らす事に成功した。

 その様子はジャミルも確認しており、操縦桿のガジェットを押し込んだ。

 

「コロニーの進路が反れた!?」

 

「ガロード達の離脱も確認した行けるぜ、ジャミル!」

 

「良し、サテライトキャノン発射だ!」

 

 マイクロウェーブを受信するGXはサテライトキャノンの照準をコロニーレーザーに合わせる。再び握る引き金は過ちを繰り返す為のモノではない。

 一面に広がる閃光。コロニーレーザーと共にオルバのアシュタロンも光の中に飲み込まれて行く。

 

「僕は……何の為に――」

 

 GXから放たれるエネルギーは正確にコロニーレーザーを貫き、破壊はではいかずとも大きな損害を与え同時に爆発の余波が加速となり地球からの進路から完全に離れて行く。

 この瞬間、宇宙での脅威は消え去った。

 時にアフター・ウォー15年、戦争による脅威は回避されたがこの先を決めるのはこれからの人間だ。今を生きる若者達は何を求め、何を見出すのか。

 けれども未来で何が起きようとも、彼らは決して諦めないだろう。

 

///

 

 新連邦と宇宙革命軍との小競り合いは未だに続いている。前総統の戦死により統率の崩れた軍ではあるが、互いに持ち直すと共に再びそれぞれの道を歩み出す。

 それでも行く先は今までとは違う。後に和平交渉を結び休戦協定が交わされ、地球と宇宙は平和の為の1歩を進んだ。

 青年へと成長したガロードは夜の荒野で空を見上げた。傍で燃える焚き火と月明かりだけが唯一の明かり。

 

「みんなどうしてるのかな? あの時、月まで行っただなんて今じゃ夢みたいだ」

 

 見上げる月はどこまでも遠く、そして今も変わらずに夜空を照らしている。

 焚き火の奥に構えたテントからやって来るのは、出会って以来共に行動を共にして来た少女。ティファは串に刺された肉を火の傍に置くとガロードの隣に座る。

 

「何を見ていたの?」

 

「いいや、月を眺めてただけさ。みんなどうしてるかなって。別れてから暫らく経ったよな」

 

「わからないけれど、いつかまた会える」

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「永遠の別れだなんて悲しいから。せめて希望を持たないと。みんなもそう思いながら生きてると思う」

 

「そうか……そうだな。ウィッツとロアビィはまだモビルスーツ乗りやってるのかな? ジャミルは新連邦のお偉いさんになったみたいだから会いにくそうだ。そう言えば……アムロはどこ行っちまったんだろ? 戦争が終わってから会ってないや」

 

「アムロともきっとどこかで会える」

 

「そうだな、そう思わないと」

 

(あれからララァ・スンの声も聞こえない。それはアムロが居なくなったから、それとも私がニュータイプを捨てたから……)

 

 アムロもまた夜の道を歩いていた。ひび割れてボロボロになったアスファルトの上をただひたすらに歩き続ける。

 何時間歩いただろうか、どこまでも広がる荒れ果てた大地と夜空以外のモノがようやく視界に写った。

 

「店がある……なにかありつければ良いが……」

 

 明かりの灯る店の扉を開けるアムロ。カウンターのある店内で客は1人しか居らず、白髪の店主が食器を水洗いする音が聞こえる。

 カウンターに座る只1人の客はまだ10代の少女だ。アムロは少女から2つ隣のカウンター席に座ると店主に声を掛ける。

 

「取り敢えず飲み物をくれるか? 何でも良い」

 

「はいよ。でも珍しい事もあるもんだ、こんな時間に2人だなんて」

 

「そうだろうな。済まない、車も何もなくてな」

 

「ほぅ、若いのに苦労してるな。あいよ、ビール」

 

 カウンターにコースターを置く店主はグラスに入ったビールを渡す。アムロもソレを見るとグラスを口元に運んで一気に喉奥に流し込む。

 

「久しぶりの水分だ、生き返る」

 

「こんな辺鄙な土地で何をやってるんだい? 宇宙ではまた小競り合いが起こってるらしいが」

 

「別に何をやりたい訳でもないが、今を生きるのに必死なだけかもな」

 

「自分にもそんな頃があったかな。時が過ぎれば忘れてしまうもんか」

 

「時間か……店主、料金だ」

 

 言うとアムロは懐から金を取り出しカウンターの上に置いた。

 

「もう良いのか?」

 

「あぁ、遠いが街に向かう。それに……」

 

「それにどうした? そこまで急ぐ必要があるのか?」

 

「今日は月が綺麗だ」




 以上で完結になります。最後までご愛読してくださった皆様、ありがとうございます。
 完結させるのに1年以上も掛かってしまいすみません。他にもいろいろとやりたい事があるせいでどうしても遅くなってしまいました。
 当分の間は新しい長編小説を書くつもりはありません。ですが構成は練っています。

1 鉄血のオルフェンズ×Gのレコンギスタ
 これが次回作に1番濃厚です。相も変わらずガンダムを題材としたものですが。

2 ガンダムUC×閃光のハサウェイ
 これも考えると面白いのですが構築が中々に難しい。でも楽しいんだよなぁ。ですが閃ハ
サがマイナーなので読む人がわかるのかどうかも問題になってきます。

3 インフィニット・ストラトス×Gのレコンギスタ
 Gレコを題材として何か作れないかなと考えた結果、インフィニット・ストラトスに白羽の矢が立ちました。これを考えてる時は鉄血も1期の途中でしたので、ソレ以外となるとこれ以外に思いつきませんでした。

4 ガンダムSEED×ガンダムΖΖ
 SEEDの世界にハマーン・カーンが行くと言う設定。ですがこれはまだまだ構築が全く出来ておりません。

 次に新作を投稿するとしても半年くらいは休憩したい所。上記の4つの内のどれかを考えております。
 もしもご意見などがありましたら感想ではなくメッセージでお願いします。返事は返させて頂きますので。

 あとがきも長くなってしまいましたが最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
 ご意見、ご感想お待ちしております。

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