第24話
フリーデンの乗組員はシャトルへと乗り換え宇宙へとやって来た。地球の重力から開放された宇宙で、ジャミルとアムロ以外のクルーは初めての無重力を体験する。
ガロードも初めて体験する無重力に前へ進む事すら苦戦していた。
「うあああァァァッ!? ウィッツ、どいてくれ!」
「無理言うな、お前がどけ!」
「ぶつかる~!?」
モビルスーツを固定させたハンガーを漂う2人は真正面からぶつかり合い、そのまま慣性に流されて今度は後方に動いて行く。
その様子を見ていたキッドは声を荒らげずにはいられない。
「お前らッ! 只でさえ狭いデッキで遊ぶなァァァ!」
「んな事言ったって」
「宇宙まで来たは良いが全員無重力なんて初めてなんだぞ」
「だったら壁にでも捕まりながら動け! 強引に詰め込んだせいでスペースに余裕なんてないんだ。邪魔するくらいなら別の所に行け!」
2人は怒られながらも自分の体を思うように動かす事ができず、物資やら何やらにぶつかってはまた反対方向へと飛んで行く。
まるで無限に続くビリヤードのように反射を繰り返すかに思われたガロードとウィッツだが、やっとの思いでデッキの入り口へ辿り着いたガロードは手すりにしがみ付き慣性を打ち消す。
「ふぅ、ようやく止まった。ぶつかりまくって体中が痛ぇ。取り敢えずブリッジに行くか」
エアロックを解除して扉を開けると通路に出る。壁に取り付けられたアームを手に取り握りしめると握力に反応し、レールに沿ってアームが動き出す。
無重力で浮き上がる体は簡単にアームの動きに引っ張られて行く。
「よっと、到着! 歩くのにもコツがいるんだよな。踵を床に押し付けるように……押し付けるように」
声に出しながら意識して歩かないと力の使い方をミスして天井にまで浮き上がってしまう。ノーマルスーツを着用していれば靴底にマグネットが入っており浮き上がる事もないが、いつもの服装のままのガロードは無重力空間に慣れるしかない。
ゆっくりとゆっくりと進みブリッジの前にまで来ると壁のパネルを操作しエアロックを解除。あまり大きくないシャトルのブリッジでは操縦桿を握るシンゴとその隣に立つジャミル。
「ガロードか、どうした?」
「いや、外はどうなってんのかなぁって」
「新連邦と宇宙革命軍が動き出した。開戦するのに時間は掛からないだろ」
「また戦争になるのか……」
「今となっては止められない。それに私達が最優先でやるべきはティファの居所を掴み救出する事だ。他の事を考えてる余裕はない」
「わかってる」
宇宙に集結しつつある新連邦の大部隊。そしてその先には宇宙革命軍が待ち構えている。シャトルの進行ルートからはズレた場所に集まりつつある両軍の存在に取り敢えず胸を撫で下ろすガロードだが、ふとレーダーを見ると高速で迫る反応が2機。
「このスピード、モビルスーツじゃないのか? こっちに来るぞ」
「シンゴ、進路はそのままだ。カメラを拡大させれば少しは様子が見える」
自らコンソールパネルを操作するジャミル。モニターに映し出される景色が拡大されていき、太陽の逆光に照らされるモビルスーツのシルエットが見えてきた。
それは今までに何度か戦ってきた因縁のある相手。それを見てガロードは目を見開く。
「ガンダムヴァサーゴとガンダムアシュタロン! クソ、こんな所にまで追い掛けて来るのかよ。ジャミル、俺がダブルエックスで出る!」
「待て、ガロード!」
ジャミルの静止も聞かずブリッジから飛び出すガロードだったが、扉を1歩外に出た瞬間に無重力に足を取られてしまい体が天井に浮き上がり一回転した。
「うああァァッ!?」
「何をやっている!」
ジャミルは慣れた様子で床を蹴って移動すると回転するガロードの腕を掴み引き寄せる。再び床に足を付けたガロードは大きく息を付く。
「ふぅ、悪ぃジャミル。助かった」
「焦りすぎるな。そうでなくてもお前は宇宙に慣れてないんだ。兎に角この場を切り抜ける事を優先しろ。無理に相手と戦うな。地球に居た時と違って修理も補給もできない事を忘れるな」
「了解!」
「相手は2機だ、アムロも出させる。ウィッツとロアビィは艦の防衛、もしもの場合は私がGXで行く。状況が変われば随時報告する。忘れるな、初めての宇宙だと」
「何回も言われなくても大丈夫だよ。ジャミルは艦を頼んだぜ!」
ジャミルはブリッジへと戻り、壁のアームを握るガロードはダブルエックスの元へと向かう。デッキへモビルスーツを強引に詰め込んだ状態で人の出入りも頻繁になれば怒号も当然飛び交っている。
コンテナや整備クルー達を避けながらなんとか自分の機体の元へ向かうガロードだが、不意に背後から肩を掴まれた。
驚きながらも振り返る先に居たのは白いノーマルスーツを着用したアムロだ。
「アムロ?」
「ノーマルスーツも着ないで窒息死したいのか?」
「ノーマルスーツ? そうか!」
「コレも持つんだ。宇宙では必要になる」
言うとアムロはワイヤーガンをガロードに手渡す。初めて見る装置に思わずマジマジと見てしまう。けれども使い方を説明しないままアムロはワイヤーガンを自分の機体に向けるとトリガーを引いた。発射されたワイヤーの先端が装甲に引っ付くと巻取りが始まり体が引っ張られて行く。
「あんな感じで使うのか。良し!」
ガロードもノーマルスーツを着用すべくワイヤーガンを壁に向けてトリガーを引いだ。
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モビルアーマー形態に変形したアシュタロンに搭乗するヴァサーゴ。コクピットシートに座るのフロスト兄弟は目前に迫るシャトルをモニターに映すとほくそ笑む。
「追い付いたよ、兄さん。あのシャトルにフリーデンの連中が乗っている」
「改良したアシュタロンの機動性、中々の物だな。射程距離まであとどの位だ?」
「2機で加速すればもっと近付けるよ。エネルギーチャージ完了、いつでも撃てるよ」
「良し。サテライトランチャー、スタンバイ」
ヴァサーゴとアシュタロンはメインスラスターを全開にして一気に加速する。2機が合わさる事で機体重量は重くなるが、モビルアーマーの出力は大きく、更にヴァサーゴのメインスラスターの出力とを通常よりも早く動く事が可能だ。
そしてアシュタロンに新たに搭載された新兵器、サテライトランチャーが展開される。機体の全長程はある砲身がモビルアーマー形態のアシュタロンから展開され、ヴァサーゴはマニピュレーターでトリガーを握ると照準をシャトルに合わせた。
「宇宙の塵となれGX」
コクピットでシャギアが右手に握る操縦桿を握り締めトリガーを指に掛けようとしたその瞬間。
「ッ!? 緊急回避!」
「敵の艦隊か?」
強力なビーム攻撃が2機に向かって飛来する。
即座にサテライトランチャーの使用を中断するとヴァサーゴはメインスラスターを吹かして離脱し、アシュタロンも変形を解除しビームを回避した。
すぐさま攻撃を仕掛けて来た方向を見る2人は接近して来るモビルスーツの存在を確認する。
「たった1機だと!?」
「形式番号NRX-016ラスヴェート、奴ら奪ったな!」
「だとするとパイロットはアムロ・レイか」
「兄さんはシャトルを。僕はアイツを抑える」
オルバはペダルを踏み込み機体を加速させラスヴェートの元に向かって飛んだ。
一方のアムロもコクピットの中からアシュタロンが向かって来るのを確認している。
「新型だが良い反応をする。これもキッドのお陰か」
地上からシャトルに移る際にキッドが修理したモノだ。本体のラスヴェートはコクピット部分だけしか破壊されていない。
残りのビットモビルスーツからパーツを回収して修復するのに時間は掛からなかった。それでもシャトルの容量には限りがあり余分なパーツを積み込む事はできない。
そのせいで消耗部品と少ない武器しか積み込んでないので現在のラスヴェートの装備はビームライフルとビームサーベル、左腕にシールドしかない。
それでもアムロの高い操縦技術があれば敵と充分に渡り合える。
白いパイロットスーツ越しに操縦桿を握り締めるアムロはビームライフルを構えながらアシュタロンと対峙した。
「その機体、フォルムは少し変わっているがアシュタロンのオルバ・フロストか」
「宇宙戦でもそれだけ動ける。間違いない、貴様はアムロ・レイだな!」
「地上から俺達を追って来たか」
「パワーアップしたアシュタロンの攻撃、受け止められるか!」
ギガンティックシザースを広げ右手にはビームスピアを装備、銃口を向けて一気にトリガーを連射する。
放たれるビームが目に映るよりも早く、アムロは敵意を感じ取り操縦桿を動かす。今までの量産機とは違いワンオフ機であるラズヴェートはパイロットの反応に付いて来る。
スラスター制御とAMBACでビームを回避し左手でビームサーベルを手に取った。瞬時に射程距離にまで迫り袈裟斬り。
「甘いよッ!」
「遅いッ!」
オルバも匠に機体を制御しビームサーベルでコレを受け止める。同時にギガンティックシザースのビーム砲をラスヴェートに向けるがアムロの動きも早い。
右手のビームライフルからビームが発射されアシュタロンの左のギガンティックシザースを根本から撃ち抜く。だがギガンティックシザースはもう1つある。
巨大なアームが本体を狙い鋭く突く。
「機体の反応は俺に付いて来る!」
すかさず左手のビームサーベルを引きシールドで攻撃を受け止めた。そして脚部を伸ばし相手の装甲を蹴りつけて距離を離し、ビームライフルを向けてビームを発射するがアシュタロンはコレを避けた。
生死を分けるギリギリの所で生還したオルバだったが心情は穏やかでない。
「パワーアップしたアシュタロンの3段攻撃をこうも簡単に避けるなんて!」
第24話 悪魔かアイツはッ!
「まだ来る? 新連邦の艦隊も近い。派手には動けない」
「逃がすものか!」
怒るオルバは果敢に攻める。距離を詰めながらビームランスのトリガーを引きラズヴェートを狙い撃つ。
向けられる銃口に反応するアムロは機体を動かし装甲にビームはかすりもしない。
「ガロードとも距離を離せない。チィッ!」
互いにビームライフルを向けての中距離戦。アシュタロン・ハーミットクラブは両腕と更にギガンティックシザースがある。片方は破壊したが、それでも接近戦をわざわざ挑む必要はない。
そして宇宙に出た事でアムロのニュータイプとしての反応が上昇している。無限と言える程に広い宇宙空間で適応する為に進化したとも言われているニュータイプ。
アムロの高い反応速度にオルバは付いて行く事ができない。攻撃は完全に見切られ差は開く一方だ。
「どう言う事だ! まさかアイツもニュータイプだとでも言うのか? でなければ説明が付かない!」
「機体を改良したか、相手の動きも早い。が!」
「何だって言うんだッ!」
ビームを連射しながら距離を詰めるラスヴェートにオルバは攻撃を何とか回避するので精一杯。機体性能ではアシュタロンに分があるお陰で一方的に負けはしないが、それでも防戦一方の状況。
せめてもと牽制でビームを放つがそんな攻撃に当たるアムロではない。
「うおおおッ!」
腕を突き出すラスヴェートはアシュタロンの頭部を殴り付ける。衝撃はコクピットにまで伝わりすぐに反撃できない。そのまま2回、3回と殴り続け、加速して背後に回り込む。
「貰った!」
「やられる!?」
ビームライフルを突き付けたアムロは即座にトリガーを引いた。発射されたビームは確実にアシュタロンの背部へ直撃したが装甲を貫くまではいかない。
亀の甲羅のように固く分厚い背部装甲がビームの一撃を防ぎきりパイロットを守った。
「クッ! こうも損傷しては。ごめん、兄さん」
「引き際はわきまえているか。ジャミルとガロードはどうしている?」
撤退するアシュタロンをアムロは追い掛けようとはしない。モビルアーマーに変形したアシュタロンの加速性能にラスヴェートでは到底敵わないのもあるが、シャトルとその防衛に当たるガロード達の様子も気になった。
機体を方向転換させて、距離が離れてしまったシャトルに向かってメインスラスターを全開にして飛ぶ。
その頃、ダブルエックスに搭乗するガロードは初めての宇宙での戦闘に困惑していた。
「地球とは全然違う! 上も下も見ないとダメなのか。スラスター制御だけじゃ推進剤が無駄に減る。機体の反応が敏感過ぎて!」
「どうしたガロード? なんなら前衛変わってやっても良いんだぜ?」
「うるせぇ、ウィッツ! そっちだって宇宙は初めてだろ!」
「そうだけどよ、久しぶりに乗るエアマスターの性能も試してみたいんだよ」
以前の戦闘で損傷していたエアマスターも今では完全に修復されている。その際にキッドの提案で元々の状態ではなく予てから計画していた武装強化プランを実行した。
機首下部に載せられた大口径ビーム砲。両翼にはブースターを増設し更に前部には2連装ビーム砲を装備。
カラーリングも白と青を基調としたモノに変更されている。
改修されたのはレオパルドもそうだ。インナーアームガトリングは実弾からビームへと変更され両腕に装備されている。
ジェネレーター出力を向上される事で実弾武装をビーム兵器へと大幅に変更できた。バルカンもビーム砲へと変わり、両肩にはショルダーランチャー。
元々は緑だったカラーリングも赤に塗り替えられた。
「遊んでる場合じゃないでしょ。宇宙に慣れてないのはみんな一緒だろ? 作戦通りに行くぞ。俺とウィッツでシャトルの防衛、ガロードは前でゲテモノの相手だ」
「わかったよ」
右足でペダルを踏むガロードはダブルエックスを加速させる。レーダー上ではシャトルとの距離が離れて行くがガロードの感覚では中々距離が変わらない。
地球とは違い360度どこまでも見渡せる宇宙空間では距離を図る目安となる物体がどこにもないから、実際には距離が離れていても自覚するのに時間が掛かってしまう。
レーダーに反応するシャギアのヴァサーゴ・チェストブレイク。気が付いた時には射程距離内にまで近づいていた。
「もうこんな所にまで!?」
「ダブルエックスを奪い取ったか。だがそんな動きで私に勝てるか?」
「来るか?」
宇宙戦に不慣れなガロードの方が動きが鈍い。先に動くシャギアのヴァサーゴは両腕を伸ばしクロービーム砲を向ける。
いつもの感覚で操縦桿を操作するガロードだが機体の反応は地上での時と違う。メインスラスターから青白い炎を噴射するダブルエックスは発射されるビームを回避するが、機体は必要以上に大きく動きグルグルと無意味に回転してしまう。
「ぐぅッ! 姿勢制御……スラスター、AMBAC」
目が回るのを必死に耐えながら何とか回転を殺して姿勢を戻した時には目の前からヴァサーゴの姿は消えている。すぐにレーダーに目を向けて敵の位置を確認するが、その時にはもう背後に迫っていた。
「折角のガンダムの名が泣くぞ、ガロード・ラン!」
「お前なんかに負けてられない! 俺はティファを助けるんだ!」
ストライククローを伸ばし鋭い爪が白い装甲に突き立てられるがギリギリの所でディフェンスプレートが間に合う。それでも激しい衝撃はコクピットを揺らし、ダブルエックスは姿勢を安定させる事ができず後方に流されながらまたグルグルと回転してしまった。
なまじ地上での戦闘に慣れてしまったせいで宇宙での動き方をすぐには習得できない。
「無重力の感覚がこんなにも難しいだなんて知らなかった。でも、そんな事言ってられない!」
「流石はガンダムか。一撃で仕留めるしかない!」
「やってやる! お前なんかに負けられない!」
ヴァサーゴは腰部にマニピュレーターを伸ばすとビームサーベルを引き抜き一気に加速。距離を詰めると同時に大きく振り下ろす。
ダブルエックスもサイドスカートからハイパービームソードを引き抜きコレを防いだ。激しい閃光が両者を照らす。
「この野郎ッ!」
接近を許してしまうガロードだが頭部バルカンとマシンキャノン、ブレストランチャーを一斉に発射する。銃声が鳴り響き無数の弾丸が赤い装甲に直撃するが改良されているヴァサーゴ・チェストブレイクはそのくらいではびくともしない。
「無駄だ」
左脇から伸びるストライククローに反応できないガロード。爪は装甲に直撃し機体は吹き飛ばされてしまう。
「ぐぁぁぁあああッ!」
「弱すぎるぞ、ガンダム!」
「クッ、でも少しわかったぜ」
ストライククローから発射されるビーム。ガロードは機体の姿勢を急いで元に戻し加速しながらビームライフルの銃口を向けた。
反撃に打って出るが宇宙での戦闘はシャギアの方が上手である。
「そんな直線的な動きで何ができる?」
ビームサーベルを腰部に戻すとまた別の武器を手に取る。2丁の小型ビーム砲を連結させてダブルエックスに照準を合わせた。合計で8門ある小型ビーム砲から一斉にビームが発射され、直線的に動いているガロードのダブルエックスは回避する事ができない。
「そんな武器まであるのかよ?」
「シールドと装甲に阻まれるのはさっきのでわかっている。メガソニック砲で仕留める!」
「何とかしないと。何とか……」
シャギアの予測通りビームはディフェンスプレートに阻まれ強固な装甲に目立ったダメージはない。それでもビーム攻撃により機体はまたも流されてしまう。
その隙を突くシャギアはヴァサーゴの腹部装甲を展開させトリプルメガソニック砲のエネルギーをチャージ。
「間に合えぇぇぇッ」
「間に合うものかッ!」
右手に握る操縦桿のガジェットを押し込むガロード。両腕と両足、背部のリフレクターが展開されツインサテライトキャノンがヴァサーゴに向けられる。だが月からマイクロウェーブが受信されるよりも早くトリプルメガソニック砲がら強力なビームが発射された。
ガロードはマイクロウェーブが受信されてないのを承知でサテライトキャノンのトリガーを引く。本来ならマイクロウェーブのエネルギーを使用して発射されるサテライトキャノン、それを強引に機体に搭載されているジェネレーターで代用した。
発射されるビームは本来の威力と比べれば格段に弱くなっているが、向かって来るビームを防ぎ時間を稼ぐくらいならできる。
ビームとビームがぶつかり合い再び激しい閃光が走った。あまりの眩しさにパイロット2人は思わず目を閉じる。
「くっ、小賢しい真似を」
「今しかチャンスはない!」
トリプルメガソニック砲を辛うじて回避するダブルエックス。だが本来の使用用途とは違う強引な使い方をしたせいでジェネレーターは悲鳴を上げビーム兵器が安定して使えない。
そんな状態になってもガロードは全力でペダルを踏み込み機体を加速させた。ヴァサーゴの位置まで追い迫ると左腕のディフェンスプレートを突き出しトリプルメガソニック砲の砲身に突き刺す。
「こいつ!?」
「うぉぉぉおおおッ!」
「やらせるか!」
密着した状態ではビームサーベルを手に取る時間すらない。右腕のストライククローを伸ばしダブルエックスを叩くがガロードはそれに反応した。
スラスター制御とAMBACでストライククローを避けると伸びる関節を両手で掴み股関節に蹴りを叩き込む。
激しい振動がパイロットに襲い掛かり右腕が引きちぎられてしまう。
「ぐっ!? ガンダムめ!」
(ごめん、兄さん)
「オルバ!? 後方からはアムロ・レイも来ているか。革命軍の動きも早い。ここは引く」
「どうにかなった……」
撤退するヴァサーゴにガロードは胸を撫で下ろす。初めての宇宙戦は明らかにガロードの方が負けていた。それでも相手を退ける事ができたのは咄嗟の機転と、短い時間ではあるが無重力空間での動きに慣れて来たのもある。
撤退するのを追い掛けようとはせず、合流して来るアムロの機体に接触した。
「機体の状態が酷いな。ガロード、無事か?」
「俺は何ともないけどダブルエックスはボロボロだ。宇宙がこんなに難しいなんて……」
「機体は修理すればどうにでもなる。それよりも急ぐぞ。別の機体が接近してる」
「別の機体?」
視線を向けた先、メインスラスターから噴射される炎が小さく輝いて見える。メインカメラで姿を捉えると見えて来たのは戦闘機タイプのモビルアーマー。
更には別方向から宇宙革命軍のモビルスーツ部隊までも迫っている。
警戒を強めるアムロはその時、脳裏に敵の存在を感じ取った。
「この感覚……シャアじゃない。カミーユとも違う。誰だ?」
アムロが感じ取ったのと同じように、敵のパイロットもアムロの事を感じている。
只でも遅いのに諸事情により更に遅れております。申し訳ありません。
ご意見、ご感想お待ちしております。