機動新世紀ガンダムX アムロの遺産   作:K-15

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ローレライの海編
第13話


ティファが感じ取ったニュータイプ、カリス・ノーティラスはガロードとの激闘の末に戦死した。

彼が消える瞬間ガロードはその声を確かに聞いたし、ティファもその思念を感じ取ってしまう。

ガロードは寸前まで意気投合してた相手を殺してしまった罪悪感を感じ、ティファはカリスが死ぬ寸前の精神状態をダイレクトに受け止めてしまった。

けれども他人にはそんな事を知る余地はなく、互いに互いを支えあい自立するしか方法はない。

ティファはガロードの体温を、温もりを感じる事で魂を引きずり込まれる事はなかった。

この件を受けて、ジャミルはフォートセバーンを離れて次なる目的地を目指す。

だがバルチャーは彼らの心情など考慮せず、牙をむき出しにして襲い掛かる。

 

「このォォォッ!!」

 

ビームマシンガンのトリガーを引くガロードは敵モビルスーツの頭部を撃ち抜き、姿勢を維持できなくなり機体は仰向けに倒れ込んだ。

ガロードは操縦桿を素早く動かし、左手のディバイダーを展開し次の相手に向ける。

背を向けて逃げる敵でも容赦なくトリガーを引く。

 

「ディバイダーの射程距離なら……行けッ!!」

 

ハモニカ砲からビームブレイドを形成して射出。

高威力のビームは逃げる機体の背部に直撃し、そのまま上半身と下半身とを分断し巨大な爆発が怒る。

フリーデンに襲い掛かって来たバルチャー達は撤退を始め、レーダーに反応するモビルスーツの数も減っていた。

 

「これ以上深追いする必要はないな。アムロは?」

 

位置を確認して見た先では、フライトユニットを装備したアムロのドートレスが同じタイプの敵機のランドセルを撃ち抜いていた。

空中で推進力を失った機体は為す術もなく重力に引かれて地上に激突する。

ビームライフルに撃ち抜かれたダメージと衝撃で機体は爆発し、確認したアムロも空中で機体の動きを止め攻撃を中断した。

 

「ドートレスにこんな装備があるとはな。大気圏内用のバックパックか、悪くない」

 

「アムロ、新装備の調子はどうなんだ?」

 

「問題はない。前の戦闘で機体に無理をさせすぎたからな。次に何かあればドートレスは限界だ。引き上げるぞ、ガロード」

 

背部フライトユニットの主翼を広げるドートレスはGXと共にフリーデンに向かう。

その最中、コクピットに座るガロードはあの時の感触が頭の中で離れないでいた。

 

(体を動かしてる間は忘れる事ができるけれど……俺よりもティファの方が心配だ。たぶん、ニュータイプの能力のせいで……)

 

フォートセバーンのカリス・ノーティラスの事はすぐに忘れる事などできない。

けれどもいつまでも精神を沈めてる訳にもいかず、ガロードは前を向いて歩くしティファも自分の力で立ち上がっている。

 

「日が沈む、もうすぐ夜か」

 

何気なく見上げた空の先、ガロードは思わず目を見開いた。

辛うじて見える月から照射される一筋の光。

 

「マイクロウェーブ!? 俺以外にGXを使うヤツがいるのか?」

 

「プレッシャーの類は感じられない。どうやらサテライトキャノンは使わないみたいだが……ガロード、急いで戻るぞ」

 

「わかった!!」

 

モビルスーツのレーダーではマイクロウェーブの受信位置までは特定できない。

フリーデンに帰還してからでないと正確な場所を掴む事は無理だ。

月から一筋の光が降りる時、ティファは夢の中で別のモノを感じていた。

 

///

 

(白鳥? 違う、ララァ・スン?)

 

夢で見るのは海を飛ぶ1羽の白鳥。

大きな翼を広げて空を飛ぶ姿は美しく、しかしまた別のビジョンも見えてくる。

それはアムロの思念につられてやって来た10代の少女。

 

(フフフッ、アナタがティファなのね。ティファ・アディール)

 

(アナタはアムロと一緒ではないの?)

 

(アムロは私から離れて行ってしまった。それが成長と言うモノかもしれないけれど。意識が永遠に続くのは拷問かもしれない)

 

(でもシャアはそうではなかった。アムロも言ってた。何かを失う事で少年から成長できたって。その何かがアナタ)

 

(シャアは純粋過ぎたの。私に心の居所を求めていた、そして私も彼を受け入れた。そんな私が手元から離れて、シャアの心から迷いが消える事はもう失くなってしまった)

 

(だからアムロとシャアは戦ったの? そんなの……虚しい……)

 

(アナタは優しいのね。だったら、彼女の声も聞こえるでしょ?)

 

(彼女の声? ルチル・リリアント……)

 

(シャアだけじゃない。ここにもまだ、迷いを捨て切れない人が居る。ティファならわかるでしょ? 急いであげた方が良い)

 

意味深な言葉だけを残して白鳥の幻影は消えていく。

思わず手を伸ばすが空を掴むだけで、もうララァの姿は見えないし夢からも覚めていた。

 

「迷いを捨て切れない……ルチル・リリアント……」

 

自室のベッドから起き上がるティファはゆっくり言葉を呟く。

数刻が経過して、意を決すると部屋からブリッジを目指して歩いた。

フリーデンのブリッジでは、ジャミルとサラが次に向かう場所を検討している。

 

「ティファの言う事が事実なのだとすれば、フォートセバーンのニュータイプはガロードが撃ってしまったか」

 

「ですがそれは向こうも同じです。ガロードがベルティゴを倒せなければやられてたのはこちらでした。ティファもどうなっていたか」

 

「わかっている、敵対するなら倒すしかない。だがな、私にも迷う事はある。アムロの言う通り、ニュータイプを助けた所で私の罪は消えない。私はそうする事で安息を求めてるだけだ」

 

「人間はそこまで強くなれませんよ。キャプテンがそうであるように、アムロにだって弱い所はある筈です」

 

「いや、違うんだ。そうではない。頭ではわかってるんだ。だが心の底から納得できてない。私は過去に引きずられて今を見れてない。心は15年前から……」

 

苦い顔をするジャミルにサラはこれ以上声を掛ける事ができない。

暗く重たい空気が場を支配する中でブリッジの扉が開かれた。

中へ入って来たのは額に薄っすら汗を浮かべるティファの姿。

足早にジャミルの元へ進むと彼の手を取った。

 

「ジャミル、次の場所へ向かって」

 

「次の場所、何が見えたんだ?」

 

「あの人が居る場所。ローレライの海」

 

「ローレライの海だと!?」

 

「はい、早くしないとあの人が……」

 

ティファの意味深な言葉にサラは理解が及ばない。

それでもジャミルだけは体を強張らせ誰にも聞こえないように呟いた。

 

「ルチル……」

 

///

 

15年前の大戦末期、地球連邦軍が極秘裏に進めていた作戦『オペレーション・L』

しかしその作戦は地球へのコロニー落とし決行により実現される事はなく、開発されたシステムは海の底へと沈んでいった。

15年前の遺物が今、オルバの目の前にある。

 

「ビットモビルスーツの回収が目的だったのに、こんなモノまで拾うなんて。中身はなんだ?」

 

「開けてみない事にはわかりませんね。どうしますか?」

 

「ビットモビルスーツのサルベージ地点に落ちてたんだ。何か意味があるかもしれない。帰還しながら、それが間に合わないなら基地で調べるしかないな」

 

「わかりました。では、そのように」

 

オルバは現在、海で活動するバルチャーであるオルクが所有する潜水艦の中に居た。

目的は格納庫に回収された幾つものモビルスーツ。

細部は異なるが、それはGXをモデルとして作られている。

標準装備であるビームライフルとビームサーベル、背部にはサテライトキャノンも装備されていた。

 

(兄さん、ビットモビルスーツは全機回収したよ。でもそれとは別に気になるモノを見付けたんだ)

 

(Lシステムと表記されたコンテナか。こちらでも調べてみる)

 

(わかったよ、兄さん。僕の方でもできる事はやってみるよ)

 

(最優先事項はビットモビルスーツの回収だ。無理はするな)

 

(了解)

 

兄であるシャギアとコンタクトを取るオルバ。

言われたように本来の目的であるビットモビルスーツの回収作業を終えて、艦長に進路を言いに行こうとした時、艦内に警告音が響き渡る。

 

「なんの音だ!? あの艦長は何をしている!!」

 

「近くに陸バルチャーが現れたみたいで。しかもガンダムタイプのモビルスーツを持ってるって言うんで艦長はそれを」

 

「ガンダムタイプ? だとすればフリーデンか、このタイミングで。艦長に伝えろ、敵はアシュタロンで追い返す。その間に離脱しろ」

 

「でもガンダムタイプですよ? 腕1本でも大金になる。こんなチャンスを見逃すだなんて」

 

「チィッ!! 俗物共が」

 

悪態をつきながらもオルバは自らの機体であるアシュタロンに向かう。

ハッチを開放してコクピットシートに座り、エンジンを起動させて操縦桿を両手で握り締める。

 

「もう少しと言う所で欲に目が眩む!! これでビットモビルスーツが回収できなくなったら、兄さんに合わせる顔がない!! オルバ・フロスト、アシュタロンで出るぞ!!」

 

潜水艦から出撃するガンダムアシュタロンは海中へと発進した。

元々は水中用のモビルスーツではない為、水の抵抗により機動力と運動性能が著しく低下してしまう。

それでもモビルアーマー形態に変形する事で通常のモビルスーツよりは動きが早くなる。

 

「レーダーはキャッチした。この反応はやはりフリーデンか。だったら正面に位置するこのモビルスーツ、武装が変わってるがGXだな!!」

 

ペダルを踏み込み加速するアシュタロン。

モノアイを不気味に輝かせ、前方から迫るGXに照準を定める。

 

///

 

フリーデンから出撃するモビルスーツ隊。

エアマスターとドートレスは空中に位置し、GXはバズーカを装備して海中へと出た。

モビルスーツデッキに待機するレオパルドのロアビィは通信越しに軽口を叩く。

 

「たったの3機で本当にやれるの? ウィッツ、操縦ミスで海に引きずり込まれるなよ」

 

「うるせぇ、誰がそんなミスやるかよ!!」

 

「まぁ、何かあっても最後にフリーデンは守ってやるよ」

 

「水中用の調整が間に合わなかっただけだろ。潮風でパーツが錆びつかないように大人しく待ってろ」

 

言い合う2人の間にアムロの声が割り込む。

 

「無駄話は終わりだ。敵の反応が近づいている。ガロードは先行してモビルスーツを叩け。俺達はここでフリーデンを防衛する」

 

「雪の次は海かよ。バズーカも初めてだし」

 

「ガロードのセンスならやれる筈だ」

 

「そうやって煽てても……まぁ、なるようになるか」

 

言われてガロードはGXを先行させて迫る敵モビルスーツを視認する。

太陽の光が届かない海中でレーダーを頼りにバズーカを構えた。

 

「なんだ!? 水中用のモビルスーツってどうなってんだ!?」

 

「やっぱりガンダムタイプだぜ。俺達の独壇場に出て来るなんてよ、ボーナスは頂きだ!!」

 

「こんな気持ち悪ぃ機体にやられっかよ!!」

 

旧連邦軍が開発した水陸両用モビルスーツであるドーシード。

ドートレスから発展させたこの機体は背部に大型スクリューを背負い、肩部には魚雷、更には腕が伸縮自在に伸び縮みする。

発射されたバズーカの砲弾にドーシードはスクリューを使い加速して意図も容易く回避した。

そして肩部からの魚雷をGXに向けて一斉に発射する。

 

「野郎ッ!! 海の中で動けるか?」

 

ペダルを踏み込んで加速するが、地上の時と比べて当然機体の反応が鈍い。

背部からアブクを発生させて動くGXだが、それだけでは間に合わず魚雷が目前に迫る。

 

「そんな!? ディバイダー!!」

 

咄嗟に左手のディバイダーを構えて大型スラスターで加速。

寸前の所で魚雷は足元を通り過ぎて海底へと直撃。

だが安心する暇などなく、次の時には相手の両腕のアームがGXの両脚部を掴んでいた。

 

「しまったッ!?」

 

「フンッ、地上のモビルスーツにはない装備だ。こっちへ引き寄せられる」

 

「何だって? だったら!!」

 

ブレストバルカンで伸びるドーシードの腕にトリガーを引く。

だがこれくらいの攻撃では水陸両用モビルスーツの分厚い装甲は貫けない。

 

「攻撃が通らない!?」

 

「おっと、これ以上イイ気になるなよ? ドーシードに捕まったらもう逃げられない!!」

 

伸びる腕はそのままに背部のスクリューの出力を最大にして一気に加速する。

水の抵抗と加速によるGがコクピットのパイロットにまで襲い掛かって来た。

GXに乗るガロードは必死に操縦桿を握るだけで精一杯。

 

「グゥッ!! 地上で戦うのとこんなに違うのか。何もできないで」

 

「ガンダムタイプがこの程度なんてな。おい、リック聞こえるな?」

 

『OKだ、こっちでも確認できてる。あと20秒もあれば合流できる。そうしたら次はガンダムの腕を固定するんだろ? そうなれば相手は何もできない』

 

別方向から迫るもう1機のドーシード。

ガロードは激しいGに耐えながらもモニターを視界に入れ、ディバイダーとメインスラスターの出力を全開にした。

引きずり回されてただけの状態から自らの意思で一気に詰め寄る。

 

「コイツ!? 逃げられないからって自分から」

 

「こうなったら、やられる前にやるしかない!!」

 

ディバイダーに使用されたスラスターは本来モビルアーマーに使われてた部品。

水の抵抗を物ともせず敵モビルスーツに肉薄する。

相手が攻撃するよりも早く、展開されたディバイダーは強力なビームを発射した。

 

「ビームだと――」

 

GXの動きを封じてたドーシードは至近距離からのビームに装甲を焼かれる。

パイロットはビームにより消し飛ばされ、機体も至る所から海水が流れ込み海の底へと沈んで行く。

 

「至近距離からならディバイダーも使える。もう1機?」

 

「やってくれたなガンダム!!」

 

「バズーカの弾はまだある!!」

 

トリガーを引くガロード。

相手も魚雷を発射すると互いに弾頭が直撃し巨大な爆発が起こる。

それを合図にバズーカを手放しバックパックからビームサーベルを引き抜いてまた加速。

視界が悪い中をディバイダーを構えながら敵機へ肉薄し、ビームサーベルのグリップを胸部へ密着させた。

海中で出力は低下するが装甲を貫ける。

 

「ビームサーベルも使いようってね。まだ来るのか?」

 

もう1機のドーシードが海底へと沈む。

それでもガロードには休む暇などなく、レーダーの反応を見ると接近して来る機体は因縁のあるオルバのガンダムアシュタロン。

モビルアーマー形態で加速しながらGXに迫る。

 

「捕えたぞ、GX!!」

 

「オルバなのか!? なんでこんな所に!!」

 

「邪魔をするな!!」

 

巨大なアトミックシザースを突き出しながら接近するアシュタロンはGXに体当たりを掛ける。

ペダルを踏み込むが間に合わずGXに衝撃が伝わり、姿勢を崩した瞬間を狙って両腕を掴みあげた。

 

「これなら動けまい」

 

「悪いけど、今のGXにはこう言う事もできるんだ!!」

 

ディバイダーのスラスターの出力を全開にする。

大量のアブクが発生して一瞬の内に視界が効かなくなると同時に2機は海上に向かって浮上した。

 

「これは!? シールドにスラスターが付いてるだと!!」

 

「メインスラスターの出力もあれば行ける筈だろ!!」

 

2機はもつれたまま海から飛び出した。

オルバはアトミックシザースのビーム砲のトリガーに指を掛けるが、それよりも早くにGXは右脚部でアシュタロンを蹴り上げる。

激しい衝撃がコクピットに伝わりアトミックシザースもGXを手放してしまう。

 

「ぐぅっ!? やってくれたな!!」

 

「いつもそっちの思い通りになると思うなよ!!」

 

「フンッ、装備が多少変わった程度で!!」

 

互いにビームサーベルを引き抜くと大きく振り下ろした。

2つのビームが交じり合い激しい閃光を生む。

瞬間、またしてもアトミックシザースが動いた。

GXの左腕は強力なアームで掴み取る。

 

「これでそのシールドは使えまい!!」

 

「だから何だって言うんだ!! もう1発蹴っ飛ばせば!!」

 

「いいや、僕が狙ってるのはキミじゃない!!」

 

もう片方のアトミックシザースが向く先、そこには海上を進むフリーデンが居る。

 

「しまった!? 間に合うのか?」

 

「もう遅い!!」

 

向けられる銃口から強力がビームが発射される。

 

///

 

戦闘が始まってしまい、ティファはブリッジに残るしかなかった。

揺れる艦内でジャミルの座るシートに手を伸ばしなんとか体を支える。

他のクルーは目まぐるしく変わる戦況に対応してる中、ティファは頭の中に語りかけてくる声に呼び掛けていた。

 

(アナタは……誰なの? アナタがララァ・スンの言ってた人?)

 

(私の声が届くと言う事は、アナタもニュータイプ。ティファ……ティファ・アディール)

 

(ルチル・リリアント、 どこに居るの?)

 

(ルチル・リリアントと呼ばれた人間はもう居ない。私はもう、意識だけの存在でしかない)

 

(意識だけの存在……)

 

(Lシステムに組み込まれてしまった私にできる事は限られてる。今の状態では何の力にもなれない)

 

(だったら……私の体を貸します。だからお願いします、ジャミルを導いてあげて)

 

(ジャミル、懐かしい名前……)

 

ティファの意識が遠のいて行く。

目を閉じて深く呼吸をすると同時にもう1人の意識、ルチル・リリアントが彼女の体に乗り移る。

そして再びまぶたを開けた時、ティファはルチル・リリアントとなった。

ゆっくり視線を傾けた先には成長した彼の姿が映る。

 

 

「ジャミルなの?」

 

「ッ!! ティファ!? いや……」

 

失われたニュータイプとしての能力ではない、ジャミルの心がルチルの存在を感じ取る。

けれども戦闘はまだ続いており、サラの声に再びモニターを睨む。

 

「ガロードが敵のガンダムタイプと交戦中です!!」

 

「アムロを向かわせろ。フリーデンの防御はウィッツにやらせるんだ!!」

 

「高熱源体接近!! 間に合いません、キャプテン!!」

 

アシュタロンから発射されたビームがフリーデンに迫る。

回避しようにも艦艇では間に合わず直撃は免れない。

その時、ルチルはティファの体を使ってジャミルの手に触れた。

 

「私が何とかする。見てて」

 

静かにまぶたを閉じる。

意識を集中させてティファのニュータイプ能力、そして彼女自身の能力を呼び覚ます。

2人の力に反応して、モビルスーツデッキにワイヤーで固定されていたアムロのνガンダムにも反応が見られた。

機体のコクピット部分から淡い光が溢れ出す。

デッキに居たキッドは偶然にもその光景を目の当たりにする。

 

「なんだ!? ガンダムから光が出てるのか?」

 

光はνガンダムから出るとティファとルチルに導かれてフリーデンの前面に膜を張る。

直撃するかに思われたビームは光にぶつかると相殺されてしまう。

アシュタロンのコクピットから見るオルバは見た事のない現象に目を見開く。

 

「ビームが弾き返されただと!? 何の光だ!! こうなったらGXだけでも」

 

「やらせるか!!」

 

合流したアムロのドートレスは上方からアシュタロンの頭部を蹴り上げる。

姿勢を崩しアトミックシザースもGXから手放してしまい、衝撃に歯を食い縛りながらもオルバは距離を取った。

 

「その機体、アムロ・レイか!!」

 

「ここで押し返さなければ戦況が傾く」

 

アムロは素早くビームライフルを向けてトリガーを引く。

スラスターを吹かし回避するアシュタロンもビーム砲を向けてドートレスを狙う。

ペダルを踏みメインスラスターから青白い炎を噴射させて機体を動かすアムロだが、パイロットの反応に機体が追い付いてなかった。

咄嗟にシールドを構えてビームの一撃を受け止める。

 

「チィッ!! シールドの性能はまだ生きている!!」

 

シールド裏のミサイルを発射させる。

4発の小型ミサイルは真っ直ぐにアシュタロンに向かうが、装甲に直撃する前にビームに貫かれ爆発が起こった。

それを起点にアムロはビームライフルを腰部へマウントさせ、ビームサーベルを握り距離を詰める。

爆発の黒煙を通り抜け右腕を振り下ろす。

 

「フンッ、甘いよ」

 

オルバは右手のビームサーベルで横一閃するとドートレスのビームサーベルとぶつかり合う。

激しい閃光が両者を照らしながらもアトミックシザースで攻撃を仕掛ける。

 

「キッド、反応が鈍いぞ!!」

 

瞬時に動くアムロはシールドを構えながら距離を離した。

だが目の前の巨大なアームに構えていたシールドを持っていかれてしまう。

 

「アムロ・レイ、逃がすものか!!」

 

「なんだ!? 何の光だ?」

 

フリーデンから溢れ出る淡い光はこの領域全てを包み込む。

光に触れた機体は敵味方を問わず、パイロットの操縦を受け付けなくなってしまう。

 

「動け!! 動けアシュタロン!!」

 

「GXが動かなくなった!? この光のせいなのか?」

 

困惑する戦場の中でアムロだけは唯一知っている、この光が何なのかを。

 

「この光――」

 

 

 

第13話 サイコフレームの光

 

 

 




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