「なぁ雁夜」
「んー?」
「もし『雁夜』の夢通りなら、お前が大人になる頃に聖杯戦争があるわけだろ」
「うん。27歳…だったっけ? なんかそのへん」
「お前、どんな英霊を呼ぶつもりなんだ?」
「うーん…もし選べるなら、俺ライダーがいいなぁ」
「なんでだ? セイバーってのが最優なんだろう? ゲームでもなんでもバランスいいやつが一番使いやすいだろうが」
「だって、『雁夜』の夢に出てきたライダーすっげぇカッコいいもん。身体すっげぇでかくて、腕なんかこんなムキムキでさ。で、なんか正々堂々としててどーんと構えてて、なんかすっごい安心感なの。俺も兄ちゃんも纏めて肩に乗せてくれそうな感じでさ。まさに王様ー!って感じ。めっちゃくちゃ頼りになりそうな人」
「なるほど、とりあえずお前が体格のいい男に憧れているのはわかった」
「別にガチムチが良いって言ってるわけじゃないんだよ。ガチムチなら他にも何人かいたけどそれじゃなくって」
「なくって?」
「なんか、他の人らはもうぶっ飛んでる狂人とかなんか不幸そうな超絶イケメンとか…なんかあんまり安心して任せられる感じじゃないんだもん。ちなみにマスターの方でいたガチムチはとんでもなく外道で目が死んでた」
「…あー、『雁夜』の英霊はどうだったんだ?」
「狂化してたから一切の意思疎通できてなかった。しかもなんか『雁夜』ってば燃料タンク扱いされてたっぽい? 既に瀕死状態で聖杯戦争スタートしてたのに容赦なく魔力搾り取られてモグモグされてたし。なんかすっごい不幸な香りしかしないよ」
「無しだな」
「うん、無しだよね」
「バーサーカーは却下…と、ちなみに真名はなんだったんだ?」
「さぁ? それもよくわかんない」
「…うん、やっぱ絶対ねぇな」
「うん」
「ライダーが第一希望で、じゃあ第二希望はなんだ? やっぱりセイバーか?」
「セイバーは可愛い女の子だったよ」
「ん? お前、前にセイバーはアーサー王だって言ってなかったか?」
「あ、うん。なんか表向きは男のふりしてたけど中身は女の子だったみたいだ」
「ふーん…よし、雁夜お前セイバーにしろ」
「なんか残念な下心が透け透けだから保留にする」
「ちっ! じゃあ次の候補は? 確か燃費が良いのはアーチャーか」
「金ぴかですっごい偉そうで眩しい英雄王だよ。兄ちゃん苦手なタイプだと思うけど…」
「煮え切らないな。偉そうで眩しい以外に何かあるのか?」
「…『遠坂時臣』のサーヴァントだった」
「よし雁夜! 第一希望のライダーが駄目なら第二希望アーチャーで行こう!」
「なんでだよ!?」
「あの透かした魔術師野郎が御所望の英霊を横から引っさらってって見ろ。絶対最高に気持ち良いぞー」
「うんわかった第二希望はアーチャーにする!」
「よーし良い子だ雁夜。後は確か三大騎士でランサーか。ランサーはどうだったんだ?」
「なんか目茶苦茶美形で輝くイケメンだった」
「なんだそりゃ。リア充か」
「ううん、なんかマスターと仲悪そうだったよ。…っていうか忠義が全力で空回り?っぽい感じだったかなぁ。落ち着いて『雁夜』の夢を思い出すと」
「ふーん、よくわからんな。保留」
「はーい」
「あとは…アサシンとキャスターだったか」
「アサシンはあんまり『雁夜』は知らないみたい。でも金ぴかにズバーンってやられてた」
「あぁ、隠密に特化してて英霊同士のガチンコには弱いってクラスだったよな。頭脳プレーが得意なら戦法次第ではえらく使い勝手が良さそうだが…無しだな」
「え、なんで?」
「…お前、自分がそんな戦略とか立てられると思ってんのか? んん?」
「…無理ですごめんなさい」
「わかればいい。だいたい俺みたいな小者やお前みたいなおつむの弱い奴が選んで上手く使えるクラスじゃないだろ。で、同じ理由でキャスターも無しだな」
「はーい。あ、ちなみにキャスターだよ。さっき言ってたぶっ飛んだ狂人って。なんかでっかいタコのお化けみたいな奴召喚したり猟奇殺人しまくってやりたい放題にしてた。そんでもって監督役の教会の人の提案で、他のマスター達の集団でボコリに行くよう言ってた」
「そんな奴をサーヴァントに持っちまったマスターに同情するな」
「マスターも猟奇殺人犯だったみたいで、まさに相思相愛な主従だったみたいだよ」
「…キャスターだけは絶対に無しだな」
「やっぱライダーが一番だって!」
「はいはいそうだなー」
間桐兄弟、呼び出したい英霊ランキング協議の結果は以下の通り。
第一位 ライダー (イスカンダル)
第二位 アーチャー (ギルガメッシュ)
暫定三位 セイバー (アルトリア)
ランサー (ディルムッド・オディナ)
第五位 アサシン (ハサン・サッバーハ)
第六位 キャスター (ジル・ド・レェ)
絶対圏外 バーサーカー(サー・ランスロット)
兄ちゃんも弟もあのクラスがいいとかなんだかんだ言っていますが、あまり本気ではありません。そのうえ、かなりの独断と偏見が含まれていることは言うまでもありません。実現する可能性の低い旅行の計画を立てているようなお遊び感覚な間桐兄弟です。
この兄弟は父性とか母性とか、なんかそんな無償で守って愛してくれるような存在に憧れをもっていそうな気がします。
ちなみに英霊選びで兄弟が一番重視しているのは「安心感」かもしれません。もしくは「包容力」(笑)。その点、狂犬は文句なしで圏外ですね。安心できる要素がほとんど無いどころか不安しかない。