クラップスタナーは2度鳴る。   作:パラプリュイ

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期末テストのはなし。2時間目

『__________好きだよ』

 

 ボキッ。

 

 A組のある一角に視線が集まる。宍戸先生のまたかというため息に、五英傑の大丈夫だろうかというそわそわした態度。それと言うのも僕がシャーペンを折るのはA組の勉強会が始まってから、もう3度目だからだ。

 

「……今日はよくシャーペンを折るな、浅野」

 

 蓮が呆れたように予備のペンを僕に差し出した。さっきまでは高機能シャープペンシルなんてものを出していたのに、100均で買えるものになってきたということはそろそろ察したのだろう。

 

「え、シャーペンって折れるものか……?いてっっっ!!!お前なあ……」

 

 毛利君が微妙に引いた顔をし、伊藤さんが無言で彼の足を踏みつけた。

 

「浅野君、ここ教えてくれない?」

 

 クラスメイトの女子がタイミングを見計らったかのように僕に数学の問題を見せて頼む。断る理由も無いので立ち上がった。

 

「ああ、今行くよ」

 

 僕が数学の問題を教えている最中も五英傑たちは後ろでこそこそと話していて、それが丸聞こえなのには全く気付いていない様子だ。

 

「誰関係かは言わなくても分かるが、いくらなんでも焦り過ぎじゃないかい、あれは」

 

「今度天使に会ったら言っておくか。あまりうちのリーダーを魅了し過ぎないようにっと」

 

 荒木は新聞のネタを書くはずのメモ帳に何故かソレを書き記した。余計なお世話だ。

 

「ぐはははは、E組が小賢しい」

 

「お前はちょっと変だぞ」

 

 小山の言い方がやけにラスボス臭が漂っており、他の五英傑が苦笑いをする。喋りながら勉強をする余裕がある彼ら以外は沈黙を続けていた。最初は五英傑を教師代わりにしようと張り切っていたが、僕があまりに優秀な教師役をしてしまったため彼らの助けが要らなくなってしまったのだ。僕が教える間に彼らは自身の勉強を出来るため、当初の予定よりずっと効率の良い勉強会となった。

 

「英訳に手こずっている人が多いようだね。これは僕からの提案__________というより課題だけど、『ライ麦畑でつかまえて』の原書と翻訳本を読むといい。村上春樹訳だと特にどういう風に訳すのか分かるはずだ。この小説は確実にテストの一部には出るだろうしね」

 

 黒板に「ライ麦畑でつかまえて」と大きく書くと、生徒たちは一斉にメモ帳にその小説の名前を書き出した。

 言われてみれば、授業でもさり気なく勧められていたと思い出す生徒も何人かいた。しかしその授業に僕は出ていない。

 

「でもお前、授業はE組でだろ?何でその本が出そうだなんて思うんだ?」

 

 瀬尾君が最もな発言をし、他の生徒たちが頷く。

 

「うちのクラスの図書委員からの協力でね、教師が借りた本は全て把握している」

 

 本校舎の教師は学校の図書室利用が多い。参考書のみならず、文学や原書の本も揃っているためテスト問題のヒントが沢山あるのだろう。その為、古典や現代文、英語などの教科は出題文章に目星がつきやすい。

 

「ある意味カンニング……」

 

 小さく聞こえた声を僕は聞き逃さなかった。その声の主はしまったと口を押さえ、目を逸らす。

 

「人聞きの悪い。リサーチ力は社会でも求められる能力さ。その気になれば教師の作る問題用紙全てを予測することだってできるし、君たちが何をしたかなんてすぐに分かるけどね」

 

 クラスメイトがぞくりと怯える姿ににっこりと微笑んでみせた。その中で特に顔色を悪くした生徒たちを頭の中でピックアップしていく。彼らは僕に隠れて何かしらの活動をした者たちだ。五英傑からA組にあるちょっとした不満については聞いていたので、恐らく会合でもあったのだろう。生徒会長という盾を持っているとはいえ、大勢で攻められたら簡単に支配する側とされる側が入れ替わる。それでも僕は思った。

 

「実力で手に入れなきゃ何も面白くないじゃないか」

 

 成績も、信頼も。全て把握した上で手に入れるのと、ゼロから始めるのとでは異なる。

 

 

 

「浅野、放課後理事長が呼んでるぞ」

 

 宍戸先生が連絡のついでに言った。

 

「ちっ、こんな時に」

 

「A組の成績をもっと上げろだなんて、おかしな事言うよな。理事長は」

 

「E組の成績が上がってきているからだろうな」

 

「でも浅野君の教え方もかなり上手くなってきているよ。理事長も目じゃないさあれは。誰かから学んだのかい?」

 

 蓮はお世辞ではなく、本心からそう思っているような口調だった。実際本心なのだろう。

 

「E組の担任だな」

 

 初めて殺せんせーの授業を受けた時は衝撃だった。無駄がない授業にアフターケアまでしっかりされたオリジナルの宿題。そんなことは本校舎の教師なら絶対にしないだろう。あの教師はひょっとしたらあの父親を超えるかもしれない。そんな予感をしていたからか、彼の授業での教え方は全て覚え込んだ。

 僕が行う指導方法は殺せんせーのものを複製し、理事長のやり方を組み合わせたものだ。もちろん指導する僕側にも五教科全て隙はない。

 

「教え方上手いのか、あの担任。あの人どっちかっていうと体育の先生に見えたのに」

 

 荒木の鋭い発言にギクリとする。彼が言っているのは烏間先生のことだ。更に言うとその予想は正しい。

 彼は僕の反応に自分が正しいのだと確信した。そしてどういうわけか、自分の中の情報からそれに近いものを選び出していく。

 

「そういえば、最近変な噂多いな。駅前のコンビニスイーツを大量買いする大男とか、夜な夜な裏山を飛び回る魔女と猫なんていうのもあったな。あと、あったり無かったり自動販売機とか」

 

 僕は別の意味で顔を顰める。

 殺せんせーに関係あるのが1つしか無いってどういう事だ。しかも後2つで大男霞んでいるじゃないか。

 

「……それは七不思議的な何かじゃないのか?」

 

 どうにか誤魔化してみたものの、怪奇的なものではないので七不思議というにも無理がある。僕にはその噂が誰を示すのかすぐに分かったし、突拍子もないものならまだしも、いくらか現実味があるような話なのだ。

 

「いや、僕の考えだとこれらの噂は全部E組に一枚噛んでるぞ。もしやE組の担任は実は宇宙人でその手下が魔女と猫______________それか自動販売機を使って洗脳をしてたりするのか?急にE組の点数が上がったのも実は既に入れ替わっているからだったり______________「「「荒木、止めろ」」」」

 

 僕を除く3人が同時に止める。3人はA組の他の生徒が見ているため五英傑の威厳を保つのとで精一杯だったが、すぐに荒木の話をもう少し聞いてやってもいいんじゃないかという気がしてきたようだ。実際、彼の作る新聞のオカルト欄は面白い。

 

「相変わらずお前はオカルト好きだな」

 

 僕が苦笑すると荒木は真剣な表情で身を乗り出した。

 

「それがなあ、今回ばかりはただのオカルトというわけにもいかなくなったんだ。この前もアメリカで野球選手が触手攻めされたというニュースがあったり」

 

 何やってるんだ、あのタコは。

 

「月が綺麗な三日月に破壊されているのは宇宙人がやったのではという意見も多い。更に」

 

「お前がそこに気付けたのはやはり五英傑だからこそか。その頭の鋭さには敬服するよ」

 

 軽い嫌味っぽく褒めると、荒木は僕が本気で褒めていると勘違いして満面の笑みを向けた。

 

「そうか!ちょうどいい浅野。お前に理事長にE組のことについてさり気なく聞いてほし_______「だが、オカルトに興味を持つ暇があれば勉強に集中してほしいものだ」」

 

 僕が淡々と言い放つと、荒木がシュンと大人しくなった。荒木には悪いが、これ以上詮索をされると困るのは僕だ。E組監視役なんて役柄を演じている以上、問題事を放置しているのはどう考えてもおかしい。

 もしも僕がE組に行っていなかったら、荒木同様この話に興味を持っただろう。噂は信じられないが、今回は怪しい点があまりにも多すぎる。

 僕にも殺せんせーに関しての疑問は幾つかあるが。

 いや、それよりも今は渚の自己評価があそこまで低い理由の方が重要か。本来なら人の問題事には首を突っ込みたくないが、渚があの様子だと暗殺にも影響が出そうだしな。ひとまず性別の問題は置いておくとして、問題を整理していくとしよう。

 去年まではむしろ2周目だからか自分に自信があるように見えたんだが、気のせいか?そうなると、やはり家族関係のトラウマか。その上、カンニング騒動があったことを考えると_______________自信喪失の理由が出来上がってくる。自信を与える方法は思いついただけで10はあるが、決定的なものはない。精神的な問題は相手の考えを変えた方が解決し易いし効果も高い。しかし、それではやり方も決まってきてしまう。

 

 とすると、これを解決するには少し癪だがあの人の手を借りるしかないか。

 

「理事長室に行ってくるよ。皆復習はしっかり行うようにね」

 

 クラスメイトたちが頷くのを確認し、僕は教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドアを3回ノックした。「入りなさい」という返事に従い、トロフィーや賞状で埋め尽くされた理事長室へと足を進めていく。この部屋に入る時、いつも感じるのは威圧感だ。父親であるはずの理事長が出す圧迫した空気に押し潰されそうになりながら、息を吐き出した。

 ふと上げた視界に目新しい認定証を発見した。また検定を受けたのかとよくよく目を凝らし、ぎょっとする。

 

 認定証

 ー1級ー

 浅野学峯殿

 上の者 本協会認定のアロマテラピー検定1級試験に合格したことを証する。

 

 アロマテラピー検定だって?最近よく家で誰かがアロマ焚いてるなとは思っていたが。

 まさか父親の方だとは……

 

「何か?」

 

 首を30度傾け、理事長は言った。すぐに笑いが引っ込み、咳払いをする。

 

「いえ。貴方の意向通り……A組成績の底上げに着手しました」

 

「ご苦労様。しかし、浅野君。君はその事に関して何か言いたげのようだね?」

 

 良い具合に勘違いしてくれた理事長に感謝し、僕は頭をフル回転して相手の質問に素早く答える。

 

「そうですね、1つだけ。E組が他の生徒を上回ってはならない。その理論は分かりますが、それなら本校舎での教育体制を変えるべきなのではないかと」

 

「ほう。そう指摘する君には何か意見があると」

 

 理事長が興味をそそられたような素振りを取ったため、僕は気分が高揚した。彼が僕の意見を聞くなんて滅多にないことだからだ。

 

「まず、一方的に聴かされるだけの受け身授業は全くの無駄です。範囲が進むのが早いという以前に、分かりにくいかと。E組では速い授業以前に生徒の興味を引き出すような教え方をしていましたからその差は歴然。本校舎の生徒が追い越されるのを心配なされるのであれば、まずは教師の育成に力を入れてみるのはいかがでしょう?」

 

 自分の意見を全て口にしてから喋り過ぎたと反省する。理事長は僕の意見に何度か頷いていたので賛成する点もあるようだ。

 

「教師の育成については同意しよう。だが、君の言い方はまるで本校舎の生徒たちがE組に追い越された時の言い訳のように思える。教え方が下手?それが何の言い訳になる。E組の教師が他より優秀なのは彼らのハンデだと思えばいい。弱者にハンデが与えられているのは当然のことじゃないか」

 

「はい?」

 

 聞き間違えなのか、彼はあっさり本校舎の教師が殺せんせーに劣ることを認めたように取れた。更にそれがE組のハンデだと言う。

 だが僕はすぐに理事長の言う意味は彼の思想にある弱者と強者から来るものだと分かった。ハンデを決して良い意味で言っている訳ではないということも。

 

「彼らは弱者だ。弱者は武器が無ければ闘えない。浅野君。本当の強者というのはね、武器を持った弱者による攻撃を物ともせず、容赦無く叩きのめす______________そんな怪物のことだ」

 

 理事長の醸し出す雰囲気が正に彼の言う怪物そのもので、得体の知れない恐怖に僕は冷や汗をかく。超生物よりよっぽど化け物染みている。

 つまり理事長はE組が少しばかりハンデを持っていようがA組が本気を出せば敵にはならないと言いたいのか。

 

「それではあなたの言う強者とは、勝ち続けた者であると」

 

「そうだ。強者としての条件はA組が各教科で1位を独占し、総合で50位以内を独占する。強者というものは時に冷徹に残酷なまでに強くなくてはならない」

 

 全く難しい条件ではないな。そう僕は感じた。E組の成長度合いは確かに脅威であり、今回彼らが1位を目指すことも不可能ではない。一方、殺せんせーの教え方が良い分上がるのは彼を真似した僕の教え方でもある。A組の理解度が勉強会を開く度に上昇していくところからしてそれは間違いないだろう。両者が平行線のまま成長すれば勝つのはA組。

 よって、理事長の条件は僕の手でいとも簡単に達成出来る。

 

「ではその条件を僕自身の力でクリアしましょう。その前に息子として貴方に少しおねだりをしたいのですが」

 

「父親に甘えたいとでも?」

 

 まさか。

 僕は笑みを浮かべて首を振る。僕が父親に対して支配欲に駆られることはあってもそんな幼稚なことはしたくない。第一需要がないだろう。

 

「いえ、僕はただお聞きしたいだけですよ__________」

 

 僕は対先生ナイフを相手に投げ飛ばした。それは瞬時に掴みとられたが、僕が彼に情報の書かれた紙を見せることで彼の表情が一変する。

 

「貴方の得意な洗脳の方法をね」

 

 理事長の顔には驚きが見て取れた。その書類には彼が今までに洗脳してきた人物の記載とその目的があり、政治家などのスポンサーを中心とした名前が書き込まれていた。これは理事長の弱みというには大したことのない代物だ。E組にあの怪物がいるということの方が大スキャンダルであり、洗脳したなんて言っても誰も信じないのが常識だからだ。しかし、この書類が用意できるということは僕のリサーチ力を示す材料になる。普段殺せんせーに使っている力がここで発揮されたというわけだ。

 理事長はその書類を速読で読み終えるとクックックッと笑い声を出す。

 

「まさかE組が君にそこまでの影響を与えるとは」

 

「悪影響だと思いますか?」

 

「良い兆候だろう。私を支配することばかりを考えるよりもずっといい。尤も君は近頃私に教えを請うのを嫌っていると思っていたが?」

 

 心底楽しそうな笑顔で理事長は言った。理由が分かっている癖にわざわざ聞くのはどういうことだと思いながらも返事をする。

 

「ええ嫌いですよ。貴方の教え方が良いのは分かりますが、僕の成績の良さを貴方のおかげだとは考えたくないので」

 

「なるほど。期末テストには少々時間が無いようだが20倍速で教えるから問題ないね」

 

 誰も期末テストのために使いたいとは言ってないのに全てお見通しということか。

 意地の悪そうな顔をした理事長に対抗して人前で見せる優等生的な笑みを向ける。

 

「何歳の頃から貴方の教えを受けたと思ってるんです?20倍速だろうが50倍速だろうがついていけますよ」

 

 2人で相手に心の中を見せないようにポーカーフェイスを作る。どちらも腹の探り合いだ。もしも誰かがその様子を見たら親子で何をやってるんだかと呆れたことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしかしたらまだ居るかもしれないという淡い期待を抱き、僕はE組の教室を開けた。残念なことにその場にいたのは教科書を顔に被せて寝るカルマのみで、つい先程起きた出来事を思い出し胸糞が悪くなる。告白するなとは言わないがもう少し他にタイミングは無かったのか。あの返事を言わせない告白のやり方も酷いだろう。というかお前は奥田さんが好きじゃなかったのか。言いたいことは脳がパンクするほどあったが全て追い払い、カルマの顔にかけられた教科書を持ち上げる。

 

「んー何?」

 

 眠たそうな瞼を持ち上げて、カルマはあくびをする。

 

「渚がどこにいるか知ってるか?」

 

「渚ちゃんなら今図書室だよ」

 

「そうか。お前がまだ残っているなんて珍しいな」

 

 しかも教科書が何冊か机に置かれているところを見ると勉強していたようだ。普段なら「さらっと勝っての完全勝利」とか言う癖に今回ばかりはやる気らしい。他の生徒たちも自宅勉強を好み帰るところをカルマは学校の方が勉強が捗るのだろう。

 

「学秀君に喧嘩吹っかけるために待ってた」

 

「お前が待ってたとか言うな。喧嘩は買わない主義だ」

 

 ため息を吐いてドアに手をかけると待ったの声がかかる。

 

「なになに〜生徒会長。俺に負けるのが怖いの?」

 

「冗談はさっきの告白だけにしてほしいね」

 

 僕は苛立ちからカルマの挑発に乗ってしまった。気がついた時にはカルマは本題を言った後で後悔する。

 

「どっちが総合1位を取れるか、勝負しない?」

 

 瞬時に断ろうとしたが、相手の目の真剣さに溜息を吐く。これは断ろうとしても断らせてくれないパターンだ。

 

「お前は言っても聞かないからな。で、何を賭ける?」

 

 ここで突きつけられそうなものは何となくだが分かる。カルマのことだから今更本校舎に戻る気などない。だとすれば僕を悪戯の対象にしようとするか、僕の持っている何かを要求するかだ。下手すればE組に正式に入れなんていう命令が来てもおかしくない。

 さあ、何を要求する。

 

 カルマは珍しくシリアスな表情で僕の質問に答えた。

 

 

 

 

 

「渚ちゃんの誕生日にどっちがデートに誘うか」

 

 僕は相手の言葉を頭の中で確認する。

 どちらがデートに誘う?どちらがデートに……聞き間違えじゃないのか。何を考えているんだ、こいつは。

 

「…………賭けの内容くだらなすぎないか?」

 

 拍子抜けしてカルマにそう口にする。カルマはフッと馬鹿にしたように笑って続けた。

 

「それなら俺が単独で誘うけど______________「それは断じて許さん渚に近づくな」うわっ、即答」

 

 落ち着け、カルマのペースに持って行かれているじゃないか。

 僕は頭の回転を速めてカルマの賭けを断る理由を探す。

 

「第一、両方が同時に誘ったらどうなるかなんて目に見えてるじゃないか。どちらの付き合いが長いと思ってる。従ってこの賭けを受ける理由が僕にはない」

 

「学秀君さあ、考えてもみてよ。渚ちゃんは優しいけど、超がつく鈍感だよ?そんな状況になったらきっと______________俺ら3人でデートだ」

 

 どんな状況だ。確かに渚ならそんなことになってもおかしくないが。

 ふと頭に誕生日1週間前の大石渚を仮定として置いてみた。カルマと僕が同時に遊びに行こうと誘った場合、どちらを選ぶ確率が高いか。もちろんその結論は_________

 

『えっと、3人一緒で行けばいいんじゃないかな』

 

 渚の声がリアルに再現されて脳内イメージに登場する。その結論はないだろうと言ってやりたいが、本人が決めたことだしと逆らえない自分とカルマが思い浮かび顔が引きつっていく。

 とても現実染みた具体的な想像で怖い。

 

「確かに渚ならあり得るな」

 

「それなら賭けは成立ってことでいい?」

 

「そういうことだ」

 

 教室のドアを開ける。そこにはメモ帳片手にしきりに書き込む殺せんせーの姿があった。

 

「フムフム。渚さんとのデートを賭けて浅野君とカルマ君が総合1位を争うっと……これはこれは。期末テストの結果が楽しみですねぇ。ヌルフフ_______________にゅやっ、浅野君ナイフ投げないで下さい!!!それ避ける時文字が書きづらいんですよ!」

 

「「知るか」」

 

 ナイフを振りかざした2人の声が重なる。

 翌日、E組の掲示板に「赤羽VS浅野」という見出しで校内新聞________E組新聞とやらが掲載されていた。どこのタコだか知らないが猛烈な殺意に駆られた。

 




原作からの変更点

・カルマの告白を学秀君が思い出す度にシャーペンが犠牲になっていくシステム
・A組での教師役が学秀君のみ
・荒木君はオカルト好き
・理事長との関係が微妙に良好に。ねだったものが違えば色々変わるはず。
・カルマが賭けを持ちかけてきた!そして賭けるものがくだらない。

以上、浅野学秀視点でした。原作だとこの時期が彼の初登場ですが、かなりの違いがありますね。余談ですがこの作品の浅野学秀はE組にいた分殺せんせー暗殺が目標なので、理事長への支配欲に凝り固まらず、1周目浅野学秀なら絶対に受けないような下らない賭けをしてしまう程度にE組に染まってます。ある意味パワーアップ。少し煩悩が増えた状態ですね。
次回、試験当日と試験結果。渚ちゃんにも変化が__________?

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