ごちうさっぽいかもしれない対魔忍というエイプリルフールのおふざけ小説。
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◇
「んほぉ……」
「あへぇ……」
店内に響いたのは魔族の男たちの感嘆の溜息。
無理もない。「
男たちはなおも恍惚とした表情のまま、次の一口を味わうべくカップへと口をつける。
ここは喫茶店、「対魔忍ハウス」。埋め立てによって作られた人工島、「東京キングダム」にあるお店だ。
人間と魔族が入り乱れる東京キングダムだが、実に平和でのどかな街である。
夜になると眩い電飾に彩られる看板。建築基準法などどこ吹く風の奇抜な建物。そして、街中のいたるところで見かけることのできる、可愛らしい野良オーク……。
これらのことからも、いかに平穏でごくありふれた街であるかがわかるだろう。
さて、そんな街にある対魔忍ハウス。そこでは先ほどの客の溜息の他に、今日も看板三人娘の元気な声が響いていた。
「ムッちゃん、カウンターさんにアレンジ1つ追加ね」
「ムッちゃんじゃない。さくら、店ではちゃんと呼べと言っているだろう。……アサギお姉様、2番テーブルのアレンジコーヒー2つ、間もなく出来上がります」
「了解よ、
明るいムードメーカーで元気っ娘であるさくら。
アンゴラオークの
そしてこの店のまとめ役である年長者のアサギ。
ちなみに補足だが、アンゴラオークとは、可愛らしいオークにはまるで似つかない、眼鏡をかけた人間の生首にしか見えない生物である。「ゆっくりしていってね」とか言い出しそうだと述べれば、読者の皆様には通じるだろうか。しかしアンゴラオークという種類は分類上未確認という、胡散臭い存在なのである。
彼(?)がここにいるのには深い理由があるのだが、それはまた別のお話。
それからもうひとつ補足であるが、アサギの妹はさくらであり、紫は慕って一方的に「お姉様」と呼んでいるだけで、血縁関係は一切無い。
「アレンジ上がりました。アサギお姉様、お願いします」
「了解。
アサギの手に持つトレイの上に、紫の手にによって完成したコーヒーが2つ乗せられた、次の瞬間。凛とした声と共にアサギの体はこの狭い店内に吹く風となった。カウンター付近にいたはずの彼女の姿は、移動したことを確認できないうちに窓際のテーブル席まで超スピードで移動している。
店内の構造、客の机までの最短距離、そしてコーヒーを一滴たりとも溢さない運動エネルギーの調整。それら全てに対し実践と計算を積み重ね、完成したてのコーヒーを一分一秒、いや、コンマ一秒でさえも速く客の手元に届けるために研究し尽くして編み出されたのが、この彼女の奥義「光陣華」である。
ちなみにこの名前は知らず知らずのうちに客たちによってつけられていた。「コーヒーだ!」とアサギが言っていたはずだったのにあまりの速度から何か必殺技のように聞こえたという話から始まり、光より速いだとか華が咲き乱れるように美しい動きだとかとまで噂されて空耳に当て字をされ、最終的に今の名称に落ち着いたのだ。
「お待たせいたしました。特製アレンジコーヒー2つになります」
「お、おう……」
「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
超スピードで自分達の目の前に美女が現れ、しかもコーヒーを一滴たりともこぼしていない事実に驚愕しつつ、テーブルのオークたちは適当に相槌を打つことしかできない。
これがこの店の名物のひとつ。アサギの超絶技巧を含む、美人三人娘による接客だ。
しかも美人なだけではない。制服のファンもいる。体のラインがはっきりと浮き出るほどにピッチリと密着するボディスーツ風の制服は、多くのファンの心を掴んで離さない。
しかしいくら魅惑的な制服といえど、ここはあくまで普通の喫茶店である。おさわりなどもってのほか。そういう目的などあるはずもない。いかがわしい店とは断じて異なるのだ。
そもそも思い出してほしい。ここは東京キングダム。平和でのどかな街だ。そんな風営法に引っかかるような店などあるはずがないのである。
ちなみに、この対魔忍ハウスは夜になるとスキンヘッドにサングラスのマスターがアルコールを提供するバーへと様変わりする。が、それでも当然のようにいかがわしい店にはならない。
しかし酒を求め肴を求め彷徨う客たちはかなり癖があるらしい。例えば浅黒い肌に片目が潰れてしまっている人材派遣業の魔族の男だとか、全身をラバースーツに包んで顔まで隠した正体不明の女だとか、褐色肌の美女をはべらせている吸血鬼の始祖を自称するオッサンだとか。
兎にも角にも、昼は喫茶店、夜はバーとして人気なのが、この対魔忍ハウスなのである。
さて、先ほど凄まじい光景を目にして完全に怯み気味のオークたちであったが、とうとう運ばれてきたコーヒーへと口をつけることにしたようだった。
まだ熱いであろうコーヒーを冷ましながら一口。そしてそれを飲み込むや否や――。
「んほぉ……」
「あへぇ……」
新たなる感嘆の溜息が店内へと生まれたのだった。醜い……もとい、可愛らしいオークの表情が幸せに満ちたように一気に緩む。
甘度3000倍コーヒーの異名を持つ、特製アレンジコーヒー。それも看板三人娘に負けず劣らずのこの店の名物である。味覚でも脳でも情報処理しきれないほどの凄まじい甘さは飲んだ者に多幸感を与え、思わず先の2人のような溜息をこぼさせる。
それ故に看板娘目当ての客だけでなく、甘党の客は勿論、ここのコーヒーのせいで甘党になったという客まで多く訪れるのだ。
無論言うまでも無いことだが、認可されていなかったり、依存性を植えつけるような違法な原材料など何も使っていない。
もう一度思い出してほしい。ここは東京キングダム。平和でのどかな街だ。そんなアブナイ代物など存在するはずもなく、また売りさばく売人などもいるはずがないのである。
「こんなすげえコーヒー初めて飲むぜ……」
「ああ。看板娘だけなら俺達行きつけの『アンダーエデン』でもいい勝負できそうだが……。このコーヒーはここだけだな」
互いに感想を述べ合って、再び一口。またしても「んほぉ」「あへぇ」という至福の歓声が口をついて出た。
なお、今2人の会話で出たアンダーエデンとは、対魔忍ハウスの近所にある喫茶店である。この店同様の体のラインがはっきりと出る密着スーツを制服としている。時には感謝デーと称して布地の非常に少ない水着のような制服で接客することもあるお店だ。
しかし今一度思い出してほしい。ここは東京キングダム。平和でのどかな街だ。当然のように奴隷だの娼婦だの、そんないかがわしい単語とは無縁の街である。アンダーエデンも言うまでもなく風営法に違反していることなどまるでありえない。そもそも支配人のリーアルという男も、パトロンの矢崎という男も、誠実でまじめだともっぱらの噂だ。
そしてそこではゆきかぜと凜子という2人の看板娘が働いている。アサギたちと仲が良く、見習おうとしているまだまだフレッシュな2人だ。
彼女らは所謂お金持ち学校に共に通っており、エリート学科に所属。年下のゆきかぜは立派な淑女を、先輩である凜子は一流のメイドを目指し、勉学に励むと同時に喫茶店の店員としての顔も持ち合わせている。
だがゆきかぜはなかなかの気苦労体質、あるいは不幸体質であるらしい。父は出稼ぎで家に不在。そのせいで体を持て余しているのか、母はイケメンガングロ兄ちゃんと不倫との噂。おまけに同じ学校の非エリート学科に通う友達以上恋人未満の幼馴染(しかも凜子の弟)は、金髪巨乳眼鏡の女教師に誘惑されてそっちに気が向いているのではないかという寝取られ疑惑。
胸のように日常までも平坦に、とはいかないようである。
一方の凜子も少々困りごとを抱えている。ゆきかぜの恋人候補は彼女の弟。そして彼女は重度のブラコン。
弟は大好きだけどかわいい後輩の幼馴染のためなら、などと思っていたところで突然の金髪巨乳眼鏡の女教師という泥棒猫の登場である。彼女としても内心穏やかではない。
この2人についてはドタバタな日常やエピソードが数多く存在するのだが、やはりそれはまた別の話。
ともあれ、看板娘はいい勝負。この周辺の喫茶店の人気を二分する両店は、コーヒーの対魔忍ハウスか、サービスのアンダーエデンかと言われるほどである。
しかしこの日、誰も予想だにしない事態が起きた。それが、第3の勢力の登場である。
「いらっしゃいま……ッ!?」
その来客は突然だった。
カウンターで作業をしていたアサギは客の来店に気づき、普段のように歓迎の挨拶を口にしようとした。だが、その相手の顔を見て思わず固まったのだ。
姫カットにした紫色の髪。赤いレオタードのような、アサギたちの制服と似通った服装。そして不気味に妖艶な、口元に浮かべた微笑。
店員が案内するよりも先に窓際のテーブル席に腰掛けた女を、しかしアサギはただ言葉を失ったまま見つめているだけだった。やがて思い出したように、その口からある名前がこぼれる。
「……
ポツリと呟いたところで、ようやく彼女は己の本分を思いだした。お冷をトレイに乗せ、普通の歩行速度でそのテーブルへと近づく。光陣華は使わない。それはあくまでコーヒーを一瞬でも早く届けるための方法であり、水の場合は使う必要がないからだ。
「……いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりましたら……」
「随分と澄ました態度じゃないの、アサギ。かつての大親友が来たんだから、もう少しもてなしてくれてもいいんじゃなくて?」
挑発的な言葉。しかし一瞬表情を険しくしたものの、アサギは己のペースを貫いた。
「……ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「もう決まってるわよ。でもその前に少しぐらい話してくれてもいいじゃない。……今度この近所に『ノマド』っていう新しい喫茶店がオープンするのは知っているかしら? 将来的には全世界へのチェーン展開も視野に入れている、多国籍複合喫茶店よ。ここまで言えば薄々予想はつくでしょうけど、看板娘は勿論この私。それで今日はそのための挨拶と、敵情視察ってことで来たの」
「なんですって……?」
「この店、珍しいコーヒーを出すそうね。この私の舌にかなったなら、盗ませてもらって私の店でも出してみようかと思って。独自のルートを持つうちの店ではありとあらゆるコーヒー豆を仕入れることができる。オーナーがとても偉大な方だからね」
「そう。できるものならやってみればいいわ。お前にうちのコーヒーが盗めるのなら、ね。……ご注文承りました。特製コーヒーおひとつですね」
それまでのドスが利いた声から一転して、営業モードである媚び気味の声へ。一瞬のうちに接客スイッチを切り替えたアサギに朧は僅かに気圧された。
これが噂に名高い伝説のアサギ。その妙技を目の前で今見せつけられているのだと、朧の表情から余裕が消える。
「ご一緒にケーキなどはいかがでしょうか? コーヒーとセットですと、100円引きでご提供しておりますが」
そこから流れるようにケーキが勧められる。見事すぎる手法だ。朧も反射的にメニューへと目を移しまっていた。
「紫特製! かわいい箱型キューブケーキ」、「うん、この味! 甘さひかえめ懐かしの黒かりんとう」といった食べ物のラインナップが並ぶ。キューブケーキというあまり見ない名前に危うくそれを注文しかけた朧だったが――。
「……ッ! い、いらないわ。この店の名物といわれているコーヒーだけを頂戴」
「かしこまりました」
あくまで事務的に返答して離れていくアサギの背中を見送りつつ、朧は
(あ、危なかった……! あの一瞬でこちらのペースを崩し、日本人が弱い「セット値引き」をちらつかせながら客単価を引き上げるにもってこいのフードメニューを勧める手法! 腹立たしいけど、やはり私のライバル……因縁の相手だというわけね……!)
しかし一方のアサギもまた、紫にアレンジコーヒーのオーダーを入れてから、無言で思考を巡らせている。
(あの流れで飲まれなかった、か……。初来店なら値引きをチラつかせれば、普通はケーキの注文に転ぶというものなのに。朧……相変わらず一筋縄ではいかない女だわ)
ふう、と意図せずため息をこぼしたアサギの背中が、ちょんちょんと小突かれた。
「ねえねえ、お姉ちゃん。今オーダー取ったあの客、もしかして……」
「名前ぐらいはあなたも知っているんじゃないかしら。あの女は朧よ。かつては私と夢を共にして、一緒に
「アサギお姉様と一緒に……? でも今の話し方だと仲違いをしたように聞こえたのですが……」
「最終的にはね。顧客満足度優先という考えの私と、売上利益優先という考えの朧。最後は喧嘩別れみたいに
昔を懐かしむようにそう述べたアサギ。次には自嘲的な笑みを浮かべこそしたものの、すぐにその顔は決意を秘めたものに変わり、そして看板娘のそれへと変わる。
(私との過去や関係はどうあれ、朧は今はこのお店を訪れている客の1人であることに変わりはない。ならば……私がやることはひとつ)
心を静かに昂らせながら、コーヒーを煎れている紫の様子を窺う。そろそろ煎れ終わる頃合だ。完成したコーヒーを一瞬でも早く客席へと届ける。それこそが己のなすべきことだと、トレイを持つ手にも力が篭った。
「アサギお姉様、お願いします!」
「光陣華ッ!」
朧からしてみれば、文字通り瞬きする間に、であった。そろそろできる頃だろうとカウンターに目を移し、アサギの持つトレイの上にコーヒーが乗ったと思ったら目の前にその当人が現れたのだ。驚くなと言う方が無理な話だ。
「お待たせいたしました。当店特製アレンジコーヒーでございます」
思わず息を飲む。これが己と決別した後もいかに客を満足させられるかを研究し続けた女の出した答え。できたてのコーヒーを早く届ける。単純でありながら最も奥が深い給仕の行き着く究極系を目にし、朧は言葉を失っていた。
そして机の上へと移されたアレンジコーヒーへと視線を移し、再び彼女は我が目を疑った。
コーヒーを色でいうならば茶色、であろう。しかし目の前のものを形容するならば、白、であった。
白の水面の上にそびえるような白の巨塔。おそらくはホイップクリームであろう。コーヒーの種類で最も近いものを上げるとするならばウィンナーコーヒーといったところか。
まだ熱いことはわかっていた。それでも新しい喫茶店の看板娘を自称する朧は、悲しいかな、すぐにでも飲んでみたいという好奇心を抑え切れなかった。
カップを持つ手が震える。これから飲むこのコーヒーの味が予想できない。
朧は怖れていた。これから自分に訪れる衝撃に。認めたくない相手の店のコーヒーを認めざるを得ないと思ってしまうかもしれないという状況に。
「なっ……!?」
だが一口飲んだところで、そんな雑念など吹き飛んでいた。その顔に浮かぶのは驚愕の色だけ。そこには、嫉妬も疑念も何もない。ただただ、驚くことしかできない。
そして同時に、アサギの顔には会心の笑み。
甘い。誇張も何もなく甘い。甘度3000倍。なるほど、その異名がよくわかるほどの甘さであった。
コーヒー牛乳など相手にならない。フラペチーノもまだまだ大人の飲み物に思えてくる。今では伝説と噂される黄色い缶の激甘コーヒーですら凌駕していると言っても過言ではない。
味覚が限界を超えた甘味を知覚しきれない。脳が情報を処理できない。甘いという感想だけが頭も心も占め、そもそも甘いとは何だったのかゲシュタルト崩壊が始まる。甘い甘い甘い。そういえば廿って漢字は甘によく似てたっけなどとわけがわからないことまで浮かんでは消えていく。
アサギの会心の笑みは、こうなることを予測していたからであった。このコーヒーの前では、誰もが感嘆のため息を漏らす。朧とてそれは例外ではない。そう直感的に気づいていたからだった。
同時に、「盗む」と言っていたことに対する嘲笑でもあった。
盗めるはずがないのだ。このコーヒーのために特別なすごい豆を厳選して探し出し、特殊なすごい方法で焙煎してから独自の割合でブレンドした後に、すごい挽き方とすごい煎れ方によって作り出されたすごいコーヒーなのだ。おいそれと豆の種類や製法などがわかるわけがないのである。
気づけば、熱いにも関わらずに朧は一心不乱にコーヒーを飲んでいた。熱い液体が喉を通るたびに次を飲みたくなる欲求が抑えられない。そうしてカップの中が空になったところで、ようやく手に持っていたカップをソーサーへと戻した。
「んほ……」
危うく感嘆の溜息を漏らしかけ、慌てて朧は口を噤む。
(耐えた、か……。さすがは朧、というわけね。このコーヒーを飲めば本能から溜息をこぼすことがほとんどだというのに、意地だけでそれを抑えたというわけね)
アサギは改めて朧という女を評価しなおす。軽んじていたつもりはない。それでも、自分が勝つに決まっているという思いは、コーヒーの注文を受けた瞬間から抱いていた。
一方の朧は完全に余裕を失っていた。好敵手に見せるわけにはいかない無様な姿。それを晒すことはどうにか避けたものの、敗北の感覚が心の中へと広がっている。
「……いいわ。今日は様子見だもの。ひとまずは私の負け、ということにしておいてあげる」
それでもどうにか余裕を纏いなおすと、コーヒー1杯分おつり無し丁度の小銭を机へと置きながら、朧は立ち上がった。
「でも忘れないことね。私のお店は多国籍複合喫茶店。客をバンバン呼び込んで将来は世界へと飛躍するんですから。こんなチンケな店、すぐにでも消し飛ばしてあげるわ」
「やれるものならやってみるといいわ。お前にだけは負けない。この店を甘く見ないことね」
しばらく続いた両者の視線の交錯の後、朧は不敵に笑って視線を逸らした。そのまま店を後にしようとする背中に対し、あくまでアサギは己の本文を貫いた声をかける。
「ご来店ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
返って来たのは、扉が閉まる音だけだった。完全に見送ったことを確認すると、緊張が解けたようにアサギの口からため息がこぼれた。
「何よあの女! 塩持って来ようか、塩!」
「やめなさいさくら。まだお客様がいるんだから」
「でもさすがはアサギお姉様です! どうなることかとヒヤヒヤしましたが……見事な対応でした!」
駆け寄ってきたさくらと頭の上にアンゴラオークを乗せた紫にそう声をかけられ、ようやくアサギの表情に笑みが戻る。
「今回はなんとか、ね。でも相手はあの朧。まだまだ油断はできないわ。……新たな戦いは始まったばかりなんだから」
「そうだよね……。どうする、お姉ちゃん?」
「どうするもこうするもない。アサギお姉様に任せておけばどうとでもなる! ……そうですよね、アサギお姉様?」
妹と後輩から全幅の信頼を寄せる視線を受けて、先ほどの笑顔が苦笑へと変わる。少々期待されすぎな気がしないわけでもない。それでも、2人を安心させ同時に己を鼓舞させる意味でも、アサギは会心の笑みを浮かべて口を開いていた。
「勿論よ。お姉ちゃんに、任せなさーい!」