ハリー・ポッターと欲望の錬金術師   作:ドラ夫

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第8話 お茶会

 バーソロミューは午前の授業を終えた後、大広間に来ていた。別に特別な用事がある訳ではなく、昼御飯を食べに来ただけだ。

 確かにバーソロミューは食事が嫌いだし、摂る必要もほとんどない。

 しかしアンとメアリーは違う。

 彼女達は食事をする事を好いてる。それにそもそも、燃費の悪い彼女達は1日に3kg程度の食料を最低5回は摂らなければならない。

 バーソロミューが『ザ・クィブラー』という個人作成の新聞を読んでいる横で、アンとメアリーは山ほどある料理を平らげていた。ちなみに、レイブンクローはふわふわと生徒たちの上を浮遊し、楽しそうに会話を盗み聞きしている

 

「お、この味付けは好みだ。美味いな」

 

 アンが手にしているには大きめのタンドリーチキンだ。普通のモノと比べてやや香辛料が強めに作ってあるそれは、どうやらアンのお口に召した様だ。

 ホグワーツの朝食、夕食は全て英国料理なのだが、昼食は他国の料理が中心だ。

 レイブンクロー曰く、他の国の食を知ることで少しでも国家間の溝がなくなれば、という意図があるらしい。

 今はそうでもないが、レイブンクロー達の時代の魔法族はしょっちゅう国家間で戦争していたのだ。

 せめてホグワーツの子供たちはそんなことがないように、という願いをこめてヘルガ・ハッフルパフはレシピを作ったとの事。

 今ほど情報を手に入れやすくない時代で、他国の料理の調理方法を調べるのは苦労しただろう。

 インドから来たレイブンクロー生のパドマ・パチルがさっきからひっきりなしに他国の生徒からインド料理の説明を求められている様を見て、レイブンクローは感動で瞳をにじませていた。

 尤も、そんな事情を唯一理解し、感動しているレイブンクローを見れるのは、食に興味のないバーソロミューだけなのだが

 

「インド料理まで作れるなんて、流石屋敷しもべ妖精ですね。それとも、ホグワーツにいるのが特別なのでしょうか」

 

「うーん、何とも。屋敷しもべ妖精に関して書かれてる専門書は魔法界に二冊しかないし、『ホグワーツの歴史』にはびっくりする位屋敷しもべ妖精に関する記述が無いからなぁ」

 

 屋敷しもべ妖精について書かれた本は極めて少ない。あっても、図鑑に他の生物とともに描かれている程度だ

 

「屋敷しもべ妖精なんざ、下らない。あいつらの本など書くだけ紙の無駄だ」

 

 バーソロミューは屋敷しもべ妖精が大嫌いだった。何故なら、彼らは自主性や向上心というものがまるでないからだ。バーソロミューはそういった者を何より嫌った。

 その上屋敷しもべ妖精がなまじ才能をもってるだけに、バーソロミューはより一層歯がゆく思っていたのだ

 

「「ごちそうさまでした」」

 

「ああ、じゃあそろそろ行くか」

 

 二人が食事を終えたタイミングで、バーソロミューも『ザ・クィブラー』を読み終えた。時刻は二時を少し過ぎたあたりだ。

 バーソロミューが呼ぼうと思い見てみると、レイブンクローはいまだにパドマ達の上を漂っていた。

 バーソロミューにしか見えないレイブンクローを公共の場で呼ぶことは出来ない。故に仕方なく、本当に仕方なく吸魂鬼の魔力を込めることにした

 

『ひゃあ!ちょっと、急にひょあ!もう、分かってますからぁ!』

 

 

 

    ✳︎     ✳︎     ✳︎

 

 

 

「何だこの、なんだ?」

 

 ハグリッドの小屋の脇に繋がれているそれは、バーソロミューをして見たことも聞いたこともないものだった

 

「おお、お前さんがいっち番だったか、バーソロミュー!どうだ、フラッフィーは珍しかろう」

 

 ハグリッドが誇らし気にそう言った。

 フラッフィーとは頭が三つある犬、つまり三頭犬だ。

 魔法界では未だかつて発見されたことがなく、空想上の生き物とされている三頭犬が普通に飼われているのだ。流石のバーソロミューといえどこれには面食らった。

 珍しい生き物と言っても、精々がユニコーン程度だと思っていたのだ。まさか世紀の大発見を見させるられとは思いもしていなかった

 

「胴体が一つ、にも関わらず頭が三つ……神経はどうなってるんだ?頭一つ一つ独立した思考を持ってるのかそれとも……」

 

 今にもバーソロミューを喰い殺さんとするその三つの頭は、どう見てもそれぞれが意志を持っていた。

 しかしそうなると、どうやって体を動かしているのだろうか?

 三つの頭すべてが同じ動きをしようとしなければ、歩く事すら出来ない。三人で一つの体を動かすなど、はっきり言って不可能だ。

 

「こいつはな、例の“アレ”を守っとったんだが、お前さんのお陰でそれがもう必要なくなったからな。いつまでも小部屋に閉じ込めておくのは可哀相だったんで、ダンブルドア先生に頼んで出してもらったんだ」

 

 “アレ”を守っていたのなら、戦闘力も高そうだ。今は鎖に繋がれているから正確には分からないが、運動能力も低くはないだろう

 

「弱点とかあるのか?」

 

 三頭犬(ケルベロス)は三つの常に頭のうち一つは寝ていると神話にはあるが、今目の前にいるこいつはどう見ても全員が起きている

 

「ああ、あるぞ。音楽をちぃとでも聞かせりゃあぐっすりだ」

 

「ほお、という事は知能も高いのか」

 

 ある一定上の知能を持った動物、サルなどは音楽を理解出来る。こいつもその域に達しているのだろう。獰猛で、強く、頭が良い、まず間違いなく、『M.O.M;XXXXX.』レベルの危険生物だろう

 

「メアリー、少し遊んでやれ」

 

「かしこまりました。ワンちゃん、こっちへおいで」

 

「危ねえ!」

 

 メアリーは躊躇なく、フラッフィーの方へと歩いって行った。

 フラッフィーはこっちに来た(メアリー)を食い殺そうと、素早く前足を振るった。それにもし当たれば、ハグリッドでさえタダではすまない。しかし──

 

「し、信じらんねえ」

 

 牙、尻尾、爪、あらゆる武器()を振り回してのフラッフィーの攻撃を、全て簡単に避けていた

 

「ほらワンちゃん、お手」

 

 上段から振り下ろされるフラッフィーの前足を、メアリーは片手で受け止めた。そのあまりの重量に足が地面に陥没し、地面にひびがはいるが、メアリーには何のダメージもないようだ

 

「明らかに普通の犬の骨格とは異なりますね。というより結果的に犬の様な外見をしているだけで、そもそも全く別の生物だと愚考します」

 

 今度はフラッフィーの頭のうち二つがメアリーに噛み付かんと左右から襲いかかった。

 しかしそれより早く、メアリーは掴んでいた前足を思いっきり持ち上げた。フラッフィーの巨体は呆気なく宙に浮き、そのままヒョイとに投げ飛ばされた

 

「おいでおいで〜」

 

 投げ飛ばされた先にいるのはアン。

 アンは飛んできたフラッフィーを平然と受け止めた

 

「お、中々重量あるな。骨も太そうだ」

 

 その後フラッフィーをゆっくり降ろし、鎖が伸びる範囲を抜けた

 

「こりゃあ驚いた。おめえさん達、一体何者だ」

 

 アンとメアリーは、クスクス笑いながら答えた

 

「「ラブドールです」」

 

 

 

 

   *     *     *

 

 

 

 

 ハリーの機嫌は最悪だった。

 午前中にあった『魔法薬学』でスネイプに信じられないほどいびられたのだ。理不尽な質問から始まり、最後はネビルの失敗に託けて減点された。

 もし午後にハグリッドのお茶会という楽しみがなかったら、きっと午前中を乗り切れなかっただろうとハリーは思った

 

「ロン、一緒にハグリッドのお茶会に行かない?」

 

「ああ、いいよ」

 

 ロンはホグワーツ行きのコンパートメントで最初に出会った友達だ。赤毛の男の子で、ジョークとチェスが上手い。

 魔法界で生まれの魔法界育ちで、ハリーにいつも魔法界の常識を教えてくれた

 

 

「ハーマイオニーは?」

 

「勿論、ご一緒させていただくわ」

 

 ハーマイオニーはホグワーツ行きの電車がホグワーツに着く直前にコンパートメントを訪ねて来た女の子。

 物凄く慌てながらネビルのヒキガエルを探していた。もうコンパートメント内でやる事もなかったから、一緒にヒキガエルを探して仲良くなった。

 どうしようもなくスネイプに呪いをかけたくなってしまう事と、ハーマイオニーとロンがあまり仲が良くない事が、ハリーの目下最大の悩みだ。

 このお茶会を通して、少しでも二人の仲良くなれば良いと思っていた

 

「じゃあ行こうか」

 

 三時五分前に城を出て、三人は校庭を横切った。ハグリッドは『禁じられた森』の端にある木の小屋に住んでいる。

 戸口に石弓と防寒用長靴が置いてあった

 

「何ていうか、素敵ね」

 

 ハーマイオニーはこういった小屋にノスタルジーを感じるようだ。しばしの間立ち止まって小屋の外観を楽しんでいた。

 小屋に近づくと、既に誰か居るようで談笑する声が聞こえてきた。ハリーがノックしようとすると、その前に扉が開いた

 

「お待ちしておりました」

 

「えっ?」

 

 出てきたのはハグリッドではなく、バーソロミューのお付きのメイド、メアリーだった

 

「わたくしどももお茶会にお招きしていただいてたんですよ」

 

 そういえば、ハグリッドとバーソロミューは面識があったな、とハリーは思い出した

 

「待って、待って!貴女が居るってことは、その、バーソロミューも居るの?」

 

 と、ハーマイオニーが言った

 

「ええ、勿論です」

 

 ハリーはバーソロミューに会えると知ると、少しだけ嬉しくなった。オリバンダーの店であって以来、会おうとしても彼はレイブンクローの談話室に篭りきりで、会えなかったからだ。

 そんなハリーとは反対に、ハーマイオニーは急にあたふたと慌て始めた。そんなハーマイオニーの様子を見たのは初めてだったので、ハリーは驚いた。

 それと、全く接点の無さそうなバーソロミューとハーマイオニーの二人に一体どんな関係があるのか、少しだけ興味が湧いた。

 ハリーがその事についてハーマイオニーに聞こうとしたが、声を出した瞬間に、奥から響いてきたハグリッドの大声にかき消されてしまった

 

「おお、ハリー!来たのか!!まあくつろいでくれや」

 

 中は一部屋だけだった。ハグリッドが『禁じられた森』から採ってきたであろう獲物達が天井からぶら下がり、棚にはホールチーズが並べてあった。

 焚き火にかけられた銅のヤカンにはお湯が沸いている。

 部屋の隅にはとてつもなく大きなベッドがあり、その横のこれまた大きい犬用のベッドがあった。

 そこで寝ていたボアーハウンド犬はロンが部屋に入ってきた瞬間素早く立ち上がり、物凄い速度でロンに飛びかかった。

 ロンの抵抗も虚しく、顔中を舐められていた

 

「退がれ、ファング、退がれ」

 

 ハグリッドはファングの首輪を抑えるのに苦労しながら、ハリー達を招き入れた。

 ハリーが中に入ると、バーソロミューが肘掛ソファーにふんぞり返りながら座っていた。

 ソファーから二歩ほど後ろの辺りの位置にアンが控えている

 

「ひ、久しぶりねバーソロミュー。新聞で貴方の活躍を見たわ。とっても偉大な事だと思う」

 

 ハリーはあのちょっと褒め過ぎなくらいの日刊預言者新聞を思い出した。

 ハーマイオニーは少々、新聞や本を信じ過ぎるきらいがあるので、多分にその記事に感化されていた。

 しかし当のバーソロミューはというと、ハーマイオニーの賛辞の言葉に非常に不愉快そうにした

 

「俺様の前でその話をするな。あれは俺様の功績とは言い難い」

 

 バーソロミューがそうぶっきらぼうに言うと、ハーマイオニーは顔を真っ赤にして口を閉ざした

 

「おい、そんな言い方ないだろ」

 

 意外な事に、バーソロミューに反論したのはロンだった。そして更に意外な事に、折れたのはバーソロミューだった

 

「そうだな。確かに言い方が悪かった。しかし、あの件については触れられたくないのも事実だ。分かるな?」

 

「あ、ああ」

 

 バーソロミューの落ち着いた対応に、ロンは出鼻を挫かれて、すごすごと引き下がった

 

「あー、ハグリッド紹介するよ。ロンとハーマイオニーです」

 

 ハグリッドは大きめのティーポットに熱いお湯を注ぎ、ロックケーキを皿に乗せた。

 ハリーとしてはこの流れで、バーソロミュー達の紹介をハグリッドにして欲しかったのだが、ハグリッドはそれを察せなかった様だ

 

「ウィーズリー家の子かい。え?」

 

 ロンの赤毛とソバカスをチラッと見ながらハグリッドが言った

 

「おまえさんの双子の兄貴達を森から追っ払うのに、俺は人生の半分を費やしてるようなもんだ」

 

 ハリーがロックケーキにかぶりつくと、“ガリッ”という嫌な音が響いた。歯こそ折れてないものの、歯茎が傷ついたようで血の味が口の中に広がった

 

「痛っ!」

 

 ハーマイオニーから鋭い悲鳴が上がった。見ると、ハーマイオニーのやや大きめの前歯がわれて、血が滴り落ちていた。

 ハーマイオニー自身もどうしていいか分からない様で、ロックケーキ片手に口を開いたまま突っ立っていた。口から血とよだれが混じったものが溢れ出ている

 

「おお、こりゃあいかん!保健室に連れていかにゃ」

 

「いや待て。さっきの詫びに、俺様が直してやろう」

 

 そう言うや否や、バーソロミューはアンが取り出した羊皮紙に物凄い速度で何かを書き出した

 

「この羊皮紙の上に頭を置け」

 

 ハーマイオニーは数瞬迷ったものの、言われた通りに羊皮紙の上に頭を乗せた

 

「目を閉じてろ。光りで目を悪くするぞ」

 

 今度は言われてすぐに、迷う事なく目を閉じた。

 ハーマイオニーが目を閉じると直ぐに羊皮紙が光った。その後一秒ほどして羊皮紙の光が収まると、見事にハーマイオニーの血は止まっていた

 

「大きさはサービスだ」

 

 ハーマイオニーがハグリッドの小屋にあった大きな割れた鏡を見ると、出っ歯が短くなって理想的な大きさになっていた

 

「これ、錬金したの?」

 

「ああ。ふむ……このままではロックケーキが食べられないだろし、それも兼ねて、おまえ達に錬金の触りというものを教えてやろう」

 

 そう言うと、バーソロミューは再び羊皮紙に何事か聞き出した。そしてその上に、ロックケーキをちょこんと乗っけた

 

「まず、この羊皮紙には水が書かれている」

 

 ハリーが羊皮紙を見ると、そこに水滴の様な絵と、何かの化学式の様なモノが書かれていた

 

「この羊皮紙に書かれた水に、その上に置かれているロックケーキを俺様の頭の中(・・・)でひたす。その際、どの位の量の水か、どの位の時間ひたすかなどをを設定する。そうだな、だいたい二十秒ほどすっぽりひたせば十分だろう」

 

 そう言ってバーソロミューが指を鳴らすと羊皮紙が光った。

 傍目には何も変わって見えなかったが、ハリーが突いてみると、ロックケーキは良い塩梅にふやけていた

 

「とまあこんな感じだ。錬金術とは、過程を飛ばす技だ。今のはロックケーキを水にひたすという過程を取り除き、ふやけたという結果のみを残した」

 

 ハリーにはバーソロミューが何を言ってるのかよくわからなかったが、ハーマイオニーは何やら興奮していた。

 どうやらバーソロミューも最初からハーマイオニーにだけ伝えようしていたらしく、それ以上特に何も言わなかった

 

「さて、俺様はフラッフィーの観察に戻らせてもらう」

 

 バーソロミューはハーマイオニーの様子をチラリと見た後で、そう言った

 

「おお、お前さんが行きゃあフラッフィーも喜ぶだろう。またいつでも来いや」

 

「「失礼いたします」」

 

 バーソロミューについていく形で、アンとメアリーもハグリッドの小屋を去っていった。

 ハリーはバーソロミューに声をかけようとしたが、何と言っていいか分からず、結局無言で見送った

 

「フラッフィーって?まさか、また犬?」

 

 ロンがべったり顔についたファングのよだれを拭いながら言った

 

「ああ、そうだ。ただし、フラッフィーはファングとは比べ物にならねえ位大きいぞ。俺が育てたんだ。こーーんな小さい時からな」

 

 “こんーーんな”、といってハグリッドが手で表した大きさは大型犬位あった。ハグリッドは誇らし気に言ったが、ロンはそれを聞いて青い顔をした

 

「それにな、フラッフィーは顔が三つもあるんだ」

 

「一人の時も寂しくなさそうだね」

 

 ハリーは自慢気に語るハグリッドを持ち上げようと、精一杯お世辞を考えたがそれが限界だった

 

「うんにゃ、そんな事はねえ。俺がいてやらないと、あいつは寂しがるんだ。バーソロミューは大した奴だ。やっこさんのお陰で、俺はまたフラッフィーと一緒に居られる」

 

「そりゃあ最高だね」

 

 と皮肉げにロン。ハーマイオニーはそんなロンを睨んだ

 

「バーソロミューのお陰でって、彼は何をしたの?」

 

「ああ、詳しくは言えねえが、フラッフィーはダンブルドア校長に貸してたんだ。でも、バーソロミューが問題を解決しちまった。それでもう、フラッフィーが“アレ”を守る必要がなくなったっちゅうわけだ」

 

「“アレ”?フラッフィーは何を守ってたの?」

 

「おっとこりゃいけねえ!この話は無しだ。いいな?誰にも言うんじゃねえぞ」

 

 ハグリッドは慌てて誤魔化した。そして、急いでティーポット・カバーの下にあった紙切れを引き抜き、暖炉に入れた。

 ハリーはそこに何が書かれていたのか物凄く気になったが、ハグリッドは絶対に教えてくれなさそうだったので諦めた。

 その後三人で談笑を楽しんだが、ハリーの頭の中にはあの紙切れの事がずっと居座っていた

 

 

 

   *     *     *

 

 

 

「私、あの紙切れに何が書かれていたのか知ってるわ」

 

 ハグリッドの小屋を出た瞬間、ハーマイオニーがそう言った

 

「ちょっと表紙が見えたんだけど、それで分かったの。あれは日刊預言者新聞よ。日付は確か──そう!八月三日よ。内容はグリンゴッツの強盗について。七月三十一日にグリンゴッツに強盗が入ったんだけど、既に空だったって記事よ」

 

 ハリーはロンがそんな様な事をコンパートメントで話しているのを思い出した。しかし、あの時は日付までは言っていなかった

 

「僕の誕生日だ!僕、その日ハグリッドとグリンゴッツにいた!それに、ハグリッドは七百十三番金庫をから何か茶色い包みを持ち出して、空にしたんだ!ハグリッドは、ダンブルドアからの命令だって言ってた!」

 

「その“何か”をフラッフィーとかいう野獣が守ってたのか……。あいつが解決したって、どういうことだろ?」

 

「多分、その“何か”を狙ってたのがクィレルなんじゃないかしら?最近バーソロミューがした事と言えば、その事だし」

 

 と、ハーマイオニーは顔を赤らめて言った。

 またあの褒めすぎな記事を思い出してるに違いないとハリーは思った

 

「……なあ、変だと思わないか?」

 

 と、ロンが神妙な顔で言った

 

「パーシーが言ってたんだけど、クィレルはとても死喰い人になる様な奴じゃなかったらしいんだ。いつもおどおどしてて、でも生徒に優しかったらしい」

 

 でも、人は見かけによらないという言葉がある。それだけでは説得力があまり無かった

 

「それに、今世紀最高の魔法使いと言われてるダンブルドアが見抜けなくて、どうしてバーソロミューは見抜けたんだ?」

 

 それはハリーも違和感を感じている事だった。

 それに、バーソロミューは言っていた『あれは俺様の功績とは言い難い』、『あの件については触れられたくない』。

 普段傲慢なバーソロミューが、クィレルの件に関しては妙に殊勝だった。

 ハリーの中で、違和感が大きくなっていくのを感じた

 

「実は、あの件は誤認逮捕だとしたら?その“何か”を狙ってる犯人を捕まえたと見せかけて、油断させる作戦だとしたら、辻褄が合うと思わない?」

 

 ハリーは、あの日の事を思い出した。初めてバーソロミューにあった日の事を

 

「実は僕、グリンゴッツに強盗が入った日、バーソロミューに会ったんだ。あの日、彼はあそこにいたんだ!」

 

 ハリーとロンの議論が白熱する中、ハーマイオニーは黙りこくっていた

 

『俺様がボーバトンを蹴り、ホグワーツに入学したのは究極の物質、『賢者の石』を追ってきたからだ』

 

 あの日、ホグワーツ行きのコンパートメントで、バーソロミューは確かにそう言った。ハーマイオニーはその言葉が、頭から離れなかった








ハグリッドのお茶会に丸々一話使ってしまうとは……

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