空中戦艦ーDeus ex machina 出撃する!   作:ワイスマン

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第5話 戦争前夜

 

 

 深海棲艦の飛行場の捜索を開始し、二日後。

 マキナに搭載されている各種レーダー装備のおかげもあってか、二人は短期間で目標を発見することができた。

 インドネシア・チルボン。かつて一つの都市があった場所を押しつぶすように

深海棲艦は二本の滑走路を設置し、大量の航空機と異形の兵士を常駐させていた。

 昼間の空には偵察機が飛び回り、数多の対空・機銃陣地で守られる飛行場は

さながら難攻不落の要塞と化していた。

 そこでマキナはU-890に対し、飛行場の諜報活動を命じる。

 U-890はすぐさまその命令を受諾し、自身の船体に乗って移動を開始した。

 

 

 

 

 

――――1999年5月5日 インドネシア チルボン近郊

 

 

 

 午前一時を過ぎた頃、チルボン近くの浜辺。

 墨を零したような真っ黒の海の中から、U-890はゆっくりと顔を出し、周囲の様子を

窺いながら上陸を果たした。

 彼女は月明かりに照らされた長い銀の髪を揺らしながら浜辺を歩き、浜辺近くにあった廃墟の教会の中に入っていく。

 教会の中ほどまで進んだ彼女はその中で地面に手を当てて一言囁いた。

 

 「さぁ、ベルンハルト小隊の皆さん。お仕事の時間ですよ」

 

 その直後、 U-890を中心に黒い影が広がり、各々が人の形をとり始めた。

 そして彼女の周りには、30名のほどのナチス軍服を纏った男達が音もなく

立っていた。

 その中で小隊の指揮官で軍曹が笑みを浮かべながら一歩歩み出てU-890に質問をした

 

 「楽しいお仕事の内容は?」

 「敵飛行場に対しての諜報活動です。強襲作戦開始まで飛行場に関するありとあらゆる情報を集めてください。特に高射陣地の座標はすべて集めてください。

 一つでも取りこぼしがあった場合、私がマキナさんにお仕置きされます」

 

 U-890は嫌な想像をしたのか、ぶるりと肩を震わせ指揮官の質問に答えた。

 気分を変えるため軽く咳払いをすると、分隊全員の顔を見回し開始の宣言をした。

 

 「私達の戦争を始めましょう」

 

 

 

 

 

 飛行船の司令部作戦室でマキナはU-890から送られてくる情報の整理をしていた。

 

 「飛行場の防衛戦力は歩兵級が2500名、軽戦車級が80両…砲兵級150門…連隊規模と

高射砲陣地が32か所、戦闘機が300機と爆撃機は…まいいか。かなりの戦力だな」

 

 艦息と艦娘が一人ずつで相手をするには荷が重すぎる兵力を目の当たりにしても

マキナのにほとんど動揺の色は見られなかった。

 

 「初戦にしてはいい相手だな。そろそろあいつ等も待ちきれないだろうし、

に招待状を送るか」

 

 司令部作戦室の中央でマキナは手をかざし、宣言をした。

 

 「来い前線豚ども!戦争だ!」

 

 

  艦娘の中には自身が使ったことのある、または使うように設計された装備や部隊を

召喚することができるという能力を持つ者がいる。

 例えば揚陸艦の艦娘は陸戦隊や戦車を召喚できる、空母が自身の艦に所属していた

航空隊の本人を召喚できる、というように。

 この能力で呼び出された兵士は生前と変わらぬ力を持ち、かつ艦娘と

契約を結んでおり、例え戦場で死んでも当人が望めば、艦娘が健在な限り、何度でも

蘇ることが可能となる。

 連続で召喚できない、強力な装備や錬度の高い兵士はすぐに使えない、などの制限が

あるが非常に強力な能力であることは間違いない。

 U-890はこの召喚の能力で自身に乗艦し、共に欧州を駆け巡ったベルンハルト小隊を

呼び出すことができた。

 ではマキナはどうか。

 彼はミレニアム空中艦隊旗艦ーDeus ex machinaとしてすべてのミレニアム隊員を

乗せたことがある。

 そして大隊指揮官に反旗を翻した艦長や一部のドイツ海軍士官を除いた大半が生粋の戦闘狂であり召喚に応じないという選択肢など彼らには最初から存在しない。

 かくして彼らはマキナからの招待状を受け取り、次々と召喚されていった。

 

 

 




Fa〇eの英霊召喚のイメージです

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