機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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 コントロールAIによって生み出されたネオ・ジオングとの戦闘を行うゲネシスブレイカー達。しかしそのあまりに堅牢な装甲には並みの攻撃は歯が立たず、放つビームはIフィールドによって防がれ、実弾もさほど大きな損傷を与える事が出来ない。

 

「……クッ!?」

 

 アンチブレイカーに大半を破壊されたスーパードラグーンを差し向けるが、それでもネオ・ジオングへはあまり意味をなさず、寧ろネオ・ジオングから放たれる圧倒的な武装の数々を何とか避ける事に手一杯だ。

 

「ここまで来て、終わるわけにはいかないんだッ!」

 

 今、自分達が置かれている状況は負けて残念で済むような生易しいものではない。

 ここで負けては未来がないと思って良いだろう。生死をかけたこの戦いに、一矢は諦める事をせず眼光鋭くネオ・ジオングを見据えると覚醒する。

 

「当たり前だ! ここで終わらせて良いような安い人生じゃないッ!」

 

 放たれるファンネルピットのビームが掻い潜り、一気に近づいて切断するセレネス。矢継ぎ早に放たれるビームを避けながら、一矢の言葉に同意する。

 

≪だからこそ奴を倒し、未来を切り開くッ!!≫

 

 しかしそれでもネオ・ジオングの豊富な武装は脅威であり、放たれた大型メガ粒子砲がセレネスに迫り、それを庇うように割り込んだバーサル騎士が盾装甲を向けて受け、派手に吹き飛ぶがそれでも体勢を立て直して、バーサルソードと電磁ランスを構えてネオ・ジオングへ向かっていく。

 

「そうだよ、まだまだ見てみたいモノが一杯あるんだからっ!!」

 

 一矢と出会い、そこから様々な人々と出会って様々なまだ知らなかったモノを見て来た。きっとそれはこれからも。未来への熱い思いを表すように攻撃を回避したアザレアフルフォースはその身の武装を解き放って、ネオ・ジオングに被弾させる。

 

「その為に……ッ!!」

 

 アザレアフルフォースの攻撃によって硝煙が巻き上がるなか、スーパードラグーンを展開したスラスターウイングから光の翼ともいえる噴射光を表しながら、覚醒の力も相まって、まさに目にも止まらぬ動きで更に加速をし、ネオ・ジオングに接近するとGNソードⅤを逆手に大型アームユニットを一基、すれ違いざまに切断すると、そのままゲネシスブレイカーを拘束しようと残った大型アームユニットが迫る。

 

 しかしそれを察知した一矢は素早くゲネシスブレイカーを動かして距離を取ると、残った一基の大型ビームキャノンと周囲にスーパードラグーンを展開し、GNソードⅤをライフルモードに切り替えて近くのアザレアフルフォースと共に同時に引き金を引く。

 

≪なるほど。あなた達は素晴らしいファイターだ≫

 

 ゲネシスブレイカーとアザレアフルフォースの一斉射撃は本体とそしてシュツルム・ブースターを貫き、シュツルム・ブースターは崩壊して爆発する。しかし、ネオ・ジオングは爆炎からすぐさま飛び出し、堂々たる姿を見せつけるとコントロールAIは素直に一矢達の実力を認める。

 

≪だが、こういうのはどうだ?≫

 

 何かをしようとでも言うのか?

 ネオ・ジオングは両肩部の大型スラスターユニット側面とスカート側面に搭載されたアームを展開すると、光の結晶体と言えるネオ・ジオングの機体を囲めるほどの巨大な光輪・サイコシャードを発現させると、周囲に閃光が放たれ、ミサ達は短い悲鳴をあげる。

 

「なに? こけおどし……?」

 

 しかし機体や武装に何か起きたと言うわけでもなく、戸惑う。

 何であれ、すぐに反撃に転じようとアザレアフルフォースはビームマシンガンの銃口をネオ・ジオングへ向け、引き金を引くがいくら引いたところで反応はなくそれは他の武装とて同じことであった。

 

≪攻撃命令をブロックするウイルスだッ! こんな時に……っ!≫

 

 先程の閃光はウイルスの拡散だったようだ。アザレアフルフォースのみならず、他の三機も同様であり、機体を動かせるが実体剣などを使った攻撃を仕掛けようにも少しでもネオ・ジオングへの攻撃とみなされる動きは制限されてしまっていた。生命維持システムの掌握も迫るなか、カドマツが厄介に呟く。

 

≪さあ続きを始めよう≫

 

 ネオ・ジオングはファンネルピットを展開し、コントロールAIは悠然と告げる。攻撃も出来ない、ただ回避するしかないと言う恐るべき状況に一矢達は戦慄するが、しかし今は再び開始されたネオ・ジオングの猛攻に動き始める。

 

「ッ!?」

 

 ネオ・ジオングの周囲を動き回りながら攻撃をまさに死に物狂いで回避し続けるゲネシスブレイカー達。しかしわずらわしいハエを落とすようにブースターを稼働させながらその巨体に見合わぬ機動力で360度回転しながら、腹部中央に内蔵されたハイメガ粒子砲を放ち、辛うじて避ける事には成功したもののファンネルピットが襲いかかり、一矢達は苦しそうに顔を歪める。

 

≪ぐあっ!?≫

 

 やがて回避にも限界が訪れ、ファンネルピットを受けたバーサル騎士が大きく吹き飛び、データ空間の地を跳ね飛びながら倒れ伏す。

 

 ──これまでか……!

 

 そのバーサル騎士の大きな隙に三基のファンネルピットが眼前に迫って確実に破壊しようと砲口が煌めく。回避するにはもうどうしようもないこの状況にロボ太は苦し気に状況を判断する。

 

 ファンネルピットからビームが放たれ、バーサル騎士に迫る。

 

 しかしビームはバーサル騎士を貫くことはなく、バーサル騎士の前に何か障壁でも発生したかのようにバーサル騎士へ迫ったビームは拡散したのだ。

 

≪これは一体……?≫

 

 突然の事に一体、何が起きたのかロボ太には判断が出来なかった。少しでも情報を知ろうと周囲を見渡すが、それらしい何かは見当たらない。

 

≪──ロボ太さん、大丈夫ですか?≫

≪インフォ殿か!?≫

 

 だがそんなロボ太に地上にいるであろうインフォからの通信が届く。

 先程の自機を守った障壁もインフォが細工したものなのだろう。バーサル騎士は立ち上がり、声だけが聞こえるインフォの名を発する。

 

 ・・・

 

「くっ!?」

 

 またセレネスも四方八方から襲いかかるファンネルピットを何とか回避し続ける。

 だがいくら世界最高峰のファイターと言えど、体力や集中力の問題もある。もうずっと戦闘を続けているのだ。

 

「なにっ!?」

 

 突然、動きは鈍り、既に動きを予測していたファンネルピットが前方に待ち構えていた。それのみならず周囲にはセレネスを取り囲むファンネルピットの数々が。これが限界なのか、ウィルの心情を表すかのようにセレネスは腕を力なく下す。

 

 

 

「!?」

 

 

 

 しかし次の瞬間、瞬く間にセレネスを取り囲んでいたファンネルピットが爆散していく。状況が呑み込めないウィルは唖然とするが、センサーが背後に反応した。

 

≪──腕が落ちたんじゃないのか、ウィル≫

 

 通信越しに聞こえてきたのはミスターの声であった。いや、確かにミスターではあるがミスターガンプラという偶像ではなく、本来の彼としてだ。セレネスの背後にはブレイクノヴァの姿がある。

 

「アナタに言われたくないな」

≪……ウィル……私はあの時、君と全力で戦ったよ≫

 

 ミスターだと分かった途端、どこか複雑そうながらつっけんどんに話すウィルにミスターはかつてのウィルとの間に起きたファイターとして全力で迎えたバトルについて触れる。

 

≪神とガンプラに誓って、ファイターとして恥じるような真似はしていない≫

「だったら何故、ファイターを辞めたんだ!? その上、どうして彼とはバトルをッ!?」

 

 顔を顰め、何も答えないウィルにまっすぐと迷いなくかつての自分のバトルを口にする。その言葉に今までずっと内に溜め込んできたものを吐き出すかのようにセレネスはブレイクノヴァに振り返り、ウィルはその長らく溜め込んだ疑問をぶつける。

 

≪ウィル……君もファイターなら分かるはずだ≫

「チャンプ……」

 

 スッと迷える少年を諭すようにブレイクノヴァはセレネスの肩に手をかける。ファイターを辞めたのも、ミスターにもミスターなりに考えての事であった。ウィルは肩に手をかけるブレイクノヴァの姿を見つめるが……。

 

≪違うぞウィル。今の私はミスターガンプラだ!≫

 

 だが今の自分はミスターガンプラでもある。

 セレネスに背を向けたブレイクノヴァは己の姿で夢を与えるかのように、果敢にネオ・ジオングへと向かっていくのであった。

 

 ・・・

 

「マズ……ッ!」

 

 そしてゲネシスブレイカーやアザレアフルフォースも迫るネオ・ジオングの猛攻を避けてはいるのだが疲労感は体を蝕み、二人の額には汗が滲む。僅かに乱れた操縦は隙を生み、アザレアフルフォースにファンネルピットが一か所に集まって、その砲口を向けられ、戦慄してしまう。

 

「一矢っ!?」

 

 シールドを構えようにも間に合うかどうかが分からない。

 そんなアザレアフルフォースを庇うようにゲネシスブレイカーが割って入る。別に考えも何もない。無意識でミサを守ろうとしての行動であった。

 

 だがそんなファンネルピットも二機を襲う事はなく、上方から放たれたビームが正確にファンネルピットを撃ち抜き破壊する。

 

「え……誰……!?」

 

 一体、何があったのか?

 上方を見上げるアザレアフルフォース。だがそこにはミサにとってとても覚えのあるガンプラ達の姿があった。

 

≪──ミサァアッ!!!≫

 

 そして聞こえてくる懐かしい声も。

 そこにはBDシリーズをカスタマイズした彩渡商店街のトイショップに置かれていたガンダムゼピュロスの姿が。ファイターであるユウイチは愛娘の名を叫びながら、ビームサーベルを引き抜いてファンネルピットを破壊する。

 

≪遅くなってすまない≫

「と……父さん!?」

 

 アザレアフルフォースの前に降り立ったゼピュロス。

 何故、父が、そしてそのガンプラがこの場にいるのか?疑問が次々に生まれ、予想もしていなかったユウイチの登場にミサは驚く。しかし親子の再会を水を差すようにファンネルピットが周囲を包囲するが、それも撃ち抜かれる。

 

≪腕は鈍ってないわねぇ≫

 

 撃ち抜いたのはジェスタをミリタリーカラーにカスタマイズしたミヤコのジェスタ・コマンドカスタムが滞空しながらおっとりとした発言とは真逆に正確に周囲のファンネルピットを撃ち抜いていたのだ。

 

≪懐かしいなあ!!≫

 

 そしてその近くには豪快にファンネルピットを殴り飛ばす。一見してレスラーか何かを思わせるような屈強にカスタマイズされたマチオの猛烈號だ。

 

≪お待たっ≫

 

 更には夕香のバルバトスルプスまでもが現れ、ソードメイスがファンネルピットのビームを弾いて、そのまま薙ぎ払って破壊したのだ。

 

「夕香ちゃん!? それにマチオさんもミヤコさんもどうして!?」

 

 ユウイチだけではなく、物心ついた頃から知っている大人達、そして夕香が何故、ここにいるのかと驚いてしまう。それもそうだろう。自分達以外にファイターはこのフィールドに現れる事はないと考えていたからだ。

 

≪カドマツさん! 我々に出来る事は!?≫

≪今、そいつらはあのデカブツの輪のせいで武器が一切使えない! そいつを何とか出来れば!≫

 

 答えたいのは山々ではあるが、今は時間が惜しい。ユウイチが見ているであろう地上に呼びかけたカドマツに指示を仰ぐと、カドマツはネオ・ジオングを指しながら説明する。

 

≪だが、それだけじゃなく別にウイルスがステーションのシステム達を掌握しようとしているんだ! 強化ウィルスを生み出しているし、それも何とかしなけりゃ……≫

≪そっちは大丈夫だよ≫

 

 問題はまだある。

 ネオ・ジオングとの戦闘をしている間にもシステムの掌握は進んでおり、危険な状況には違いない。数は増えたが、それでもまだ手が足りないと言って良いだろう。焦るカドマツに夕香は自信満々に答える。

 

 ・・・

 

「──ウオラァッ!!」

 

 着々とシステムの掌握を続けるコアプログラム達。そのうちの一体は空から猛る龍のように迫る機体によって蹴り飛ばされ、システムから離される。

 

「ヘヘッ……待たせちまったな」

 

 システムを守るようにコアプログラムとの間に現れたのはバーニングゴッドブレイカーであった。軽やかにステップを踏み、拳を合わせるとファイターであるシュウジは好戦的な笑みを浮かべて、コアプログラムへ向かっていく。

 

「雨宮君達の戦いもカドマツさんの声も全部届いてたよ。だから来たんだ、私たちの出来る事の為にっ!」

 

 電力配給システムを侵食しようとするコアプログラムにGNマイクロミサイルが降り注ぎ、近くに現れたのは真実のG-リレーション パーフェクトパックであった。

 

「今、陽太達やジンさん達……いや、世界中のファイターがここに集まろうとしている……ッ!」

 

 そしてまた別のシステムには影二のネクストフォーミラーが駆け付け、コアプログラムとの戦闘を始めながら一矢達に通信を入れる。影二の言うように、コアプログラムが生み出し、空間上に飛散した強化ウィルス達にユニティーエースやストライクライザー達が戦いを繰り広げていた。

 

「友のピンチじゃ。宇宙でもどこでも駆け付けるわいッ!」

 

 高度制御システムを掌握しようとするコアプログラムには厳也のクロス・フライルーが攻撃を仕掛ける。友人である一矢達が今まさに危険にさらされているのだ。一人のファイターだけではなく、友として、今立ち上がらねばいつ立ち上がると言うのだ。

 

「絶対に帰ってくるんだよ。ボク達は……いや、世界中が君達を待っているんだからね」

 

 まだ残るコアプログラムにも割り当てられており、セレナのバエルがコアプログラムの頭部を力いっぱい掴むと、そのまま地面に叩きつけ、地を削るように低空を飛行しながら、地面をすり減らしたコアプログラムを投げ、システムから遠ざける。

 

「だから、こいつらは俺達に任せろ……ッ!」

 

 生命維持システムを犯そうとするコアプログラムの触手のみを正確に狙撃され、コアプログラムはシステムから距離とを置くと、その間にガンダムブレイカーネクストが降り立つ。

 今この瞬間、コアプログラムと無数の強化ウイルスを相手に世界中のファイター達が立ち上がったのだ。

 

 ・・・

 

「みんな……」

 

 今まで紡いできた繋がりが今、天と地を結び、大きな力となった。

 シミュレーターに届いたシュウジ達の声に 一矢は感極まった様子を見せる。

 

≪イッチのこと、ガンプラ越しじゃないと触れないなんてね……≫

「夕香……」

 

 そんなゲネシスブレイカーにバルバトスルプスのマニビュレーターが触れられる。

 接触回線で夕香の寂し気な声を聴きながら、一矢は芽の間のバルバトスルプスを操る夕香の名を口にする。

 

≪……絶対に帰って来てね。最後に触れあったのがガンプラ越しだなんて絶対に許さないんだから≫

「……ああ」

 

 ガンプラ越しでは温かみも何もない。地上にいる夕香は操縦桿から手を離し、寂しそうに抱えるように両手を合わせて胸に抱くとモニター越しに見えるゲネシスブレイカーを駆る一矢に約束を取り付けると、己の半身のようなたった一人の双子の妹を悲しませないように確かに頷く。

 

「父さん……」

≪……こんなに近くに見えているのに36000キロか……。ゴメンな……。父さんじゃミサを助けられない≫

 

 ミヤコ達がネオ・ジオングとの戦闘を続けている間、地上にいるユウイチはモニター越しに見えるアザレアフルフォースの姿を見つめながら、歯痒そうにどこか己の無力さを嘆く。

 

≪だから娘のことは君に任せる≫

「……はい!」

 

 だがそれでも娘を守れなかったとしても、娘の為に出来る事はある。

 ユウイチはアザレアフルフォースの隣に立つゲネシスブレイカー越しに一矢を見るようにまっすぐ見つめると、ミサの事を託し、一矢は驚くが確かに頷く。

 

 一矢の力強い返答に満足そうに頷いたユウイチは夕香のバルバトスルプスと共にセピュロスのバーニアを噴射させて、娘達の為にネオ・ジオングへ挑んでいくのであった。


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