機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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誇りを胸に、未来を掴む

「ついに本選だな」

 

 ついに訪れた世界大会の本選第一試合。間もなく第一試合が始まるという事もあり、観客席は言い知れぬ緊張感が漂っている。そんな場を満たす雰囲気を感じとりながらアムロは第一試合を今か今かと待ち侘びる。

 

「その成長を括目させてもらおう」

 

 一矢達がシミュレーターに乗り込んでいくのを見ながら、シャアは余裕そうな態度ではいるものの、これから始まるであろうバトルに興奮を隠しきれぬようだ。

 

「彼らも来るところまで来たな」

「何だかあっと言う間だね」

 

 アムロやシャアの反応はまさに観客の反応を表すかのように、観客席にいる者達は似たような表情を浮かべ、待ちわびている。ジンやサヤもその一人だ。

 

 ・・・

 

「……ねぇ、アタシを入れちゃっていいの? っていうか、なんで……?」

 

 そんななか、夕香は一人、シオン達とは別の場所にいた。

 一般の観客席とは違い、煌びやかで高級感の漂う内装が広がる一室に柔らかなソファーに腰かけて、落ち着かない様子だ。

 

「ここはVIPルームだ。バトルも見やすいだろう?」

「それはそうだけど……」

 

 夕香の問いかけにガラスを通じて広がる会場の様子を眺めながら答えるウィルはそのまま夕香の隣に座る。

 ウィルが経営しているタイムズユニバースは宇宙エレベーターに出資している。世界大会への参加はその縁で決められたものではあったが、やはり出資者だけあって、例え参加者とはいえ、その待遇は他の代表チームとは違うようだ。

 

「ウィル坊ちゃまは面倒臭い方ですが、悪意があるわけではないので何卒ご容赦ください」

「いや、べつに構いやしないけど……。だからなんで……」

 

 ドロシーはソファーに座る夕香とウィルの前に紅茶を出す。

 シオンがホームステイしてから飲む機会が異様に増えた飲み物だ。お陰でいくらか紅茶の良し悪しも分かるようになったつもりだ。

 ドロシーはウィルのフォローをするような発言をするが、別にその事はどうだって良い。わざわざ自分をここに連れて来たのは、ただの親切心なのか? そうこうしている間にもバトルが始まる。

 

 ・・・

 

 バトルフィールドとなったのは宇宙ステージだ。星々が煌めくなか、彩渡商店街チームの三機のガンプラが相手チーム目掛けて飛行していると、前方がキラリと光った。

 

「来たな……っ!」

 

 次の瞬間、無数の砲撃が放たれる。ただ闇雲に撃ったものではない。

 計算された射撃がゲネシスブレイカー達に襲いかかり、三機は回避行動を取りつつ幾らかシールドで防ぐ。

 

「この距離ならっ!!」

 

 先制攻撃を仕掛けてきたのは、ストライクライザーであった。

 中~遠距離を得意とするストライクライザー。だが、それはアザレアフルフォースとて同じこと。すぐさまアザレアフルフォースはビームマシンガンの引き金を引きつつ、ミサイル群を発射する。

 

「させないっ!!」

 

 

 しかしそれを撃ち抜き、周囲のミサイルごと連鎖爆発させたのはアメリアのストライクSEEDであった。ミサイルを撃ち抜いただけではなく、そのまま此方に接近しながらその銃口を向けてくる。

 

 しかしそのストライクSEEDの引き金が引かれる前に四方八方から無数のビームがストライクSEEDとストライクライザーに襲いかかる。ゲネシスブレイカーが放ったスーパードラグーンだ。きらりと光るビームの雨が降り注ぐ中、二機は備え付けたIフィールド発生装置で防ぐ。

 

「なんてキレのある……ッ!」

 

 光を超えて、宇宙の闇を切るかのようにGNソードⅤをソードモードに展開したゲネシスブレイカーがその目が追い付くのが難しいような圧倒的な高機動を持って、一筋の流星のようにストライクSEEDに斬りかかる。

 

「っ……!」

「だけど……っ!!」

 

 だがGNソードⅤも刃もストライクSEEDの前に現れた実体剣で防がれる。EXアクションで出現した一振りのエクスカリバーだ。咄嗟に防がれた事に一矢が僅かに顔を顰める中、ストライクSEEDはゲネシスブレイカーを押し返す。

 

 しかしゲネシスブレイカーもただ黙って押し返されるわけではない。

 咄嗟に両肩のフラッシュエッジ2を順に引き抜き、ビーム刃を形成するとブーメランの如くストライクSEEDに投擲し、GNソードⅤをライフルモードに発射している間にストライクSEEDが持つエクスカリバーの出現時間が過ぎ、消え去る。

 

「邪魔はさせないっ!!」

「こっちの台詞だ!」

 

 近距離での戦闘を行うゲネシスブレイカーとストライクSEED。ゲネシスブレイカーへ銃口を向けようとするストライクライザーであったが、アザレアフルフォースの射撃攻撃をGNフィールドで防ぎつつ、お返しとばかりにGNマイクロミサイルとファンネルを発射する。

 

≪トルネードスパークゥッ!!≫

 

 しかしアザレアフルフォースへ迫る攻撃もその前に躍り出たバーサル騎士が電磁を纏った電磁ランスを掲げ、雷の嵐を巻き起こして、迫る来る攻撃を防御フィールド代わりに無効化する。

 

「っ……やるな……っ!!」

 

 激しき雷の嵐が目を眩ます閃光になるなか、バーサル騎士のサポートを受け、ミサイル、そして大型ガトリングとビームマシンガンを同時に発射したアザレアフルフォースにストライクライザーは咄嗟にIフィールドとGNフィールドを張って防ぎきるが、エネルギーの消耗は激しく、また防いだことには成功したが周囲には硝煙が発生する。

 

≪もらったぁっ!!≫

 

 その間にバーサル騎士がラクロア王国の宝剣であるバーサルソードと電磁ランスを構えて突撃する。硝煙を掻い潜り、ストライクライザーへバーサル騎士が苦手であろう接近戦を仕掛けようとするが……。

 

「トランザムッ!!」

 

 莫耶の叫びと共に紅く発光したストライクライザーは忽然とバーサル騎士の前から消え去り、バーサル騎士の放った刃は虚しく空を切る。

 しかし直後、本来与えるつもりであったダメージが激しい衝撃と共にバーサル騎士を襲い、吹き飛ばされる。その最中、ロボ太が見たのは大型対艦刀を振り下ろしていたストライクライザーであった。だが、それだけでは終わらず、ストライクライザーはツインバスターライフルを放ち、バーサル騎士に更なる損傷を与える。

 

「ロボ太っ!」

 

 まともに攻撃を受け、大破間際にまで追い込まれたバーサル騎士にミサが咄嗟にロボ太の名を口にしつつも、これ以上の攻撃はさせまいとビームマシンガンを発射するが、その無数の弾丸をストライクライザーは盾代わりに構えた大型実体刀で防ぐと、そのまま放棄し……。

 

「こいつをまともに受けて耐えきれた奴はいないぜ」

 

 そのままストライクライザーはの全ての武装をアザレアフルフォースに放つ。

 回避には間に合わず、咄嗟に両肩部のフルシールドで防ごうとするアザレアフルフォース。しかし、その攻撃を受けて、まともにはいられなかったのか何とか耐え切ったものの、両肩のフルシールドは無残に破壊され、その下のアザレアフルフォースにも甚大な被害が及んでいる。

 

「くっ……!」

「やらせないっ!!」

 

 ロボ太とミサが窮地に追いやられているのを見て、ゲネシスブレイカーが何とか援護をしようとするが、それをストライクSEEDが許さず、既にアザレアフルフォース達とストライクライザーが戦闘を行っている間に発動させたのだろう。トランザム状態と化したストライクSEEDが肉薄する。

 

「いつまでも……ッ!!」

 

 このままではどんどん不利に追いやられる。

 ゲネシスブレイカーは振るわれるビームサーベルを持つストライクSEEDの腕部目掛けてシザーアンカーを放ち、ぶつけることでビームサーベルの刃の切っ先を逸らすと、そのまま回転する勢いを利用してビームサーベルを装備する腕部をGNソードⅤで切り裂く。

 

 腕部を落とされたストライクSEEDであったが、咄嗟に両腰のレールガンを放ち、ゲネシスブレイカーに損傷を与える。だが、ゲネシスブレイカーはそれでも勢いが止まらず、GNソードⅤを胸部に突き刺す。

 

「まだやられたわけじゃないッ!!」

 

 しかし、それでもアメリアの闘志は消えず、カリドゥス複相ビーム砲が感づいて回避しようとしたゲネシスブレイカーのGBソードⅤを装備する腕部を貫くと右肩だけを残して爆散させる。だが、それでもゲネシスブレイカーは物ともせず、フラッシュエッジ2をビームサーベルのように形成し、ストライクSEEDを両断する。

 

「これじゃあまだまだ莫耶には追いつけないな……」

 

 ストライクSEEDが爆散し、アメリアが一人、呟くなか、ゲネシスブレイカーはすぐさまストライクライザーのもとへ向かっていく。

 

 ミサもロボ太もこの世界大会に向けて己の腕を磨いてきた。

 例え激しいストライクライザーの攻撃を受けたとしても、そのボロボロの機体状態でさえストライクライザーと渡り合っている。

 

「一矢、援護するからっ!!」

 

 それもこれも距離があった一矢と共に進むため、大破状態でありながらミサは一矢に進むべき道を示すようにストライクライザーの武装を少しずつ破壊すると、一矢は頷いてゲネシスブレイカーはストライクライザーに向かっていく。

 

≪主殿の邪魔はさせん!!≫

 

 それでもストライクライザーに残った武装が迫るゲネシスブレイカーに放たれるなか、バーサル騎士がバーサルソードと電磁ランスを巧みに利用して、ゲネシスブレイカーへの攻撃を捌き切り、その間にもゲネシスブレイカーは更なる加速を持ってストライクライザーに迫る。

 

「くぅっ!?」

 

 だがそれだけではない。

 力を振り絞るように覚醒したゲネシスブレイカーの左腕の掌は光り輝く。

 咄嗟に構えられたツインバスターライフルを突き出されたパルマフィオキーナによって粉砕されるなか、そのまま左腕は勢いを持ってストライクライザーの胸部を抉り、莫耶が顔を苦々しく歪める。

 

「だが、それ以上は……ッ!!」

「……どうかな」

 

 ストライクライザーの腹部に埋まるゲネシスブレイカーの左腕だが、いくらパルマフィオキーナとはいえ、いつまでも保つわけではない。

 パルマフィオキーナの輝きが段々と弱弱しくなり、莫耶が残ったビームランチャーや頭部バルカンでゲネシスブレイカーの装甲をどんどん破壊しながら叫ぶが、静かに一矢は否定する。

 

「俺にはまだ未来を掴むことが出来る」

 

 その瞬間、ストライクライザーの腹部を抉っていた掌の収束しつつあるパルマフィオキーナの輝きが紅に燃えるように轟々しく再び輝けば、バーニングフィンガーが遂にストライクライザーを貫き爆発する。後に残ったのは闇を照らすように輝くゲネシスブレイカーとその傍らにいるバーサル騎士とアザレアフルフォースであった。

 

 ・・・

 

「面白ぇ使い方をすんじゃねぇか」

 

 彩渡商店街チームの勝利によって大歓声が響くなか、試合を観戦していたシュウジは満足そうに口角を上げる。例え元は自分の技であっても、それが使用者が変われば、また違うバリエーションが生まれる。今のゲネシスブレイカーのパルマフィオキーナからのバーニングフィンガーもそうだろう。

 

 ・・・

 

(……やったね、イッチ)

 

 VIPルームで観戦していた夕香も一矢達の勝利に胸を撫でおろす。元々、一矢達を信じていたが、それでも世界大会と言う事もあり、不安は当然あった。だがこうして第一試合を勝利で迎える事が出来て、心なしか微笑んでいる。

 

「確かに強くなってるようだね」

「でしょ。アンタもボヤボヤしてると足元すくわれるよ」

 

 一矢、そしてミサ達の実力もジャパンカップのエキシビションマッチで相対した時よりも成長しているのを観戦して更に感じ取ったウィルは口にすると、夕香は兄たちを自慢げに思い、そして挑発するようにウィルに笑みを向ける。

 

「まあ良いさ。僕もそろそろ行くとしよう」

 

 これでますますバトルが楽しみになってきた。彩渡商店街チームとバトルをするなら勝ち進まなくてはいけない。ウィルは自身の試合も近い事から立ち上がる。

 

「君の兄達じゃなくて、僕の事も応援してくれるんだろう?」

「しょーがないねぇ……。ちゃんと見ててあげるから頑張りなよ」

 

 かつてガンプラ大合戦の後のやり取りを思い出しながら、ウィルはドアノブに手をかけながら夕香に期待するように顔を向けると、言った言葉に偽りはないのか、夕香はやれやれと肩を竦めながらも、ウィルに微笑む。

 

「すぐに戻ってくるよ」

(……えっ、アタシ、全部の試合中ずっとここで観戦すんの?)

 

 夕香の微笑を見て、ウィルもつられるようにクスリと笑うと、扉を開きそう言い残してVIPルームを後にする。残された夕香はドロシーが代えの紅茶を用意する中、ウィルの口振りからシオンや裕喜達のいる観客席には戻れないのかと唖然とするのであった。

 

 ・・・

 

 日本代表とアメリカ代表のバトルが火付け役となったかのように世界大会は更なる苛烈さを見せ、一つ一つのバトルにドラマが生まれ、見る者を熱狂させる。そしてまた次なるバトルが始まろうとする。

 

≪続いての試合はイギリス代表チーム・フォーマルハウトVSギリシャ代表チーム・ネオ・アルゴナウタイです。各当チームは準備をお願いします≫

 

 コントロールAIのアナウンスが会場に響き渡る。続いての試合は世界大会のトーナメントを勝ち進み、巡り合ったフォーマルハウトとネオ・アルゴナウタイによるバトルだ。

 

「さて、行こうか」

 

 世界大会を更に勝ち進んだチームだけあって、ここまで来れば世界最高峰のファイター達によるバトルは予想もつかない。そんな中でもコントロールAIのアナウンスを聞いたセレナはゆっくりと立ち上がり、その笑みは崩れず、強者の余裕ささえ醸し出しアルマとモニカを引き連れながら、会場に向かって歩き出すのであった。


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