機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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Take Me Higher

 アジアツアーの大会も予定通り行われている。

 そこには当然、沖縄宇宙飛行士訓練商店街チームの面々の姿もあり、現在行われているのは宙に浮かぶそれぞれの陣営に設置されたコアと呼ばれるエネルギー体を破壊すれば勝利というルールのものであった。

 

 既に沖縄宇宙飛行士訓練商店街チームは相手のコアが浮かぶ敵陣地にまで侵攻しており、そこでゲルググをベースに黒い三連星をモチーフにしたかのようなカスタマイズが施されたガンプラチームと交戦している。

 

「これでぇっ!!」

 

 エンファンスドデファンスが横なぎにシュベルトゲーベルを振るい、ビームナギナタで受け止めようとするがシュベルトゲーベルに力負けしてビームナギナタごと真っ二つに切り裂かれる。これで二機目を撃破したところで、後は相手チームは一機しか残ってない。

 

「コア周辺の安全を確保っ!」

 

 敵陣地と言うだけあり、コアの周辺には防衛の為の砲台が設置されている。

 それをガンティライユ全て破壊すると仲間達に連絡する。そこに光の翼ですれ違いざまに最後の一機を撃破した一矢はコアに目をやる。

 

「よし、行こうぜッ!」

「ああ」

 

 ミソラからの連絡を受け、ツキミは一矢に声をかけると同時にエンファンスドデファンスとゲネシスは動き出し、コアに急接近すると、シュベルトゲーベルとGNソードを深々と突き刺し、コアを破壊する。

 

『アジアツアー・コアアサルト! 優勝は沖縄宇宙飛行士訓練商店街チーム!!!』

 

 同時にアナウンスが流れ、アジアツアーでのコアアサルトと呼ばれる今回の大会は一矢達の優勝で幕を閉じた。

 

 ・・・

 

 チームを結成してから、今のようなアジアツアーの大会を怒涛の勢いで勝ち進んでいく。

 しかしシミュレーターから一息つきながら出てきた一矢は優勝をしたと言うのに、どこか不可解そうな表情を浮かべている。

 

(みんなが……。アイツがいたら……)

 

 それはやはりバトルでの事であった。

 別にツキミやミソラに不満があるわけではなく、寧ろ安心して背中を任せていると言っても良い。

 

 しかしペアを組んでいたツキミとミソラに対し、自分はそこに加わったような状況だ。

 やはり連携においても、ツキミとミソラは互いを知っている為、すんなり言っても一矢の場合、二人とは時折、バトルの連携がうまく噛みあわない時があった。ふと無意識で彩渡商店街チームの事を、チームメイトのことを考えてしまう。その一矢の姿を歩み寄りながらカガミが見つめていた。

 

「やったなっ!!」

「また優勝出来たね!」

 

 しかしそんな一矢にツキミが肩に手を回し、その傍らにミソラが駆け寄って優勝を喜んでいる。そんな二人に我に返り、今は限定的とはいえ、この沖縄宇宙飛行士訓練商店街チームに身を置いているのだと集中するために先程の無意識に出た考えを振り払うように頭を振る。

 

「おい、これ見てみっ!!」

 

 優勝を喜んでいるツキミ達にモチヅキがどこか興奮した様子で声をかけて手に持っているタブレットを見せつける。そこにはネットニュースが載っていた。

 

「喋るグリズリー……“ぐりぐり”……」

「そっちじゃねーよ!」

 

 ネットニュースの一覧で目に留まった見出しを見て、声に出すカガミ。しかしモチヅキはこの場でそれを見せに来たわけではないとツッコミを入れ、こっちだと言わんばかりに指を指す。しかしカガミはぐりぐりが気になっているようで、チラチラとぐりぐりの見出しを見ている。

 

「ん? えーっと……“日本人ファイター同士が海を越えて決勝を争う”……?」

 

 モチヅキに指し示された見出しを見やり、ツキミが口にする。

 そこにはアメリカトーナメントでの記事が掲載されていた。

 元々、アメリカにおいて外国人ファイター同士の優勝争いは前例がないため、話題になっているようだ。画面にはニュース内容と優勝を飾ったロクトの写真とその横に並ぶミサの姿もある。

 

「ロクト先輩とミサちゃんが決勝戦だって! 凄いわね!」

「ロクト先輩と張り合うって結構すげーぞ!」

 

 ニュースを読み終えたミソラとツキミが知り合い同士の、そして敗れてしまったとはいえ、あのロクトを相手に渡り合ったミサに驚嘆していた。

 

「男子三日会わざれば、か……。こいつは女だけど。帰るの楽しみだなあ?」

 

 ミサもまた成長しているのを知り、モチヅキが同じチームメイトである一矢に晴れやかな笑みを浮かべながら声をかける。そんな一矢はニュースの内容をジッと見ていた。

 

「……そっか。アイツ……強くなってるんだ……」

 

 準優勝とはいえ、かつてロクトとバトルをした際には手も足も出なかったミサだが、今ではロクトと張り合うまでに成長しているのだ。心なしか思わず一矢の口元に優しい笑みが浮かぶ。

 

「アナタも負けないようにしなくてはね」

「分かってます」

 

 今、この瞬間もミサは強くなっている。

 発破をかけるようなカガミの言葉に頷く。

 

 言われずとも分かっている。

 立ち止まっていられない。自分はこのままミサに見合えるように前に進み続けるまえでだ。そしてその為には完成させなくてはいけないものがある。

 

(アイツの笑顔……最近、見てないな)

 

 会場を後にしながら、先程のニュースに掲載されていたミサの写真を思い出す。

 優勝したロクトの隣に立つミサはとても晴れやかなものであった。

 

 その笑顔を思い出しながら、ジャパンカップに入り、時折、憂いたような顔をする事が多かったミサを思い出す。

 アメリカに旅立つときもそうであった。

 タウンカップで初めて覚醒した際、自分はミサの顔を曇らせたくはないと思ってしまった。でも、もしかしたら再会した際、笑顔が見れるのかな、とそう思いながら会場を去っていく。

 

 ・・・

 

「……バーニングフィンガーが強力だけど、それだけの為にゴッドのパーツを使うわけにはな……」

 

 一矢は近くの模型店の作業ブースでガンプラを制作していた。

 ツアーももう殆どの日程を無事に終え、佳境に入っているなかで、合間に作り続けていた新ガンプラの前で一人呟く。

 まだ未完成であり、塗装を施したパーツが乾くのを待ちながら未完成のガンプラを手に取る。

 

 それはまさにフレームの状態であった。

 RGやMG、そして一部のHGキットにはフレームが採用されており、一矢もまた新ガンプラには新しくフレームを導入している。それだけで完成度は高まり、こだわりを持って仕上げた外装パーツを取り付ければ、ゲネシスが耐え切れなかったバーニングフィンガーも対応外のパーツとはいえ、フレームの導入によって二、三発は耐えられるという計算だ。

 もっとも作成に至り、その予算はゲネシスを作成した時よりも倍以上に膨れ上がり、学生には中々厳しいものになってしまった。

 

「翔さんの戦い方も……やっぱり参考になるな」

 

 フレームの可動範囲も確認し終え、待っている間、動画サイトでブレイカー0のバトルの映像を見つめていた。

 ブレイカー0から放たれるフィンファンネルはまるで一つ一つが意志を持っているかのように縦横無尽に駆け巡って相手を撃破していっている。最近こそシュウジに影響されているが、やはり翔のバトルはまだ届かない存在だからこそ学べるものが多い。

 

「──こんなところにいたんだ」

 

 そんな一矢に声をかける者がいた。

 おもむろに顔を見上げてみれば、そこにはリージョンカップの準決勝で激闘を繰り広げたヴェールの姿が。

 

「久しぶりだな」

「最近、凄い活躍してるみたいだね。全部、チェックしてるよ」

 

 ジャパンカップでは同じ場所にはいたものの顔は合わせていなかった一矢とヴェール。久しぶりの再会に一矢が懐かしんでいると、ヴェールはそのまま一矢の隣に座る。

 

「ここにいるってことは……」

「うん、アジアツアー」

 

 ヴェールがここにいるのはツキミ達と同じであろう。

 一矢の考えは的中し、ヴェールはクスリと笑いながら頷く。

 

「お兄ちゃんもチームに加わってるし、私もあの頃とは違うよ」

「俺だってそうだ」

 

 どうやらリージョンカップの時とは違い、ヴェールや未来だけではなく、新しくユーリも参加しているらしい、

 リージョンカップから月日も経ち、また一段と強くなっているのだろう。ヴェールも一矢も久方ぶりのぶつかり合いが出来ると感じ、笑みを交わす。

 

「楽しみにしてるね、そのガンプラも今の実力も」

 

 予定はあるのだろう。

 立ち上がったヴェールは既に買い物を済ませた袋を持って、去り際にそう言い残すと模型店を出て行き、一矢は久方ぶりに出会ったヴェールとのバトルを楽しみに感じながら、作業を再開するのであった……。

 

 ・・・

 

『いよいよ最後の日程となりました、アジアツアー! 最後を飾るのはアジアツアー・バトルロワイヤルです!』

 

 ヴェールとの再会からもアジアツアーでの日程を進めつつ、新ガンプラと、そしてカガミが用意していたプログラムとのバトルを行っていた一矢だが、いよいよアジアツアーも最終日を迎えた。

 

「ようやく最終日か……」

「お兄ちゃん! ほらシャッキっとして!」

「最終日ぐらい優勝しようよ」

 

 アジアツアーだけあって一矢のみならず、日本人ファイターの参加者もちらほら見受けられる。中には ジャパンカップの会場にいた風留、そして双子の千佳と勇太もいた。

 

「抜かるなよ」

「はいっ! 一矢君もいることだし楽しみだね!」

「うん、久しぶりだからね」

 

 そしてリージョンカップでぶつかり合った三人も今では一つのチームとなり、ユーリが注意をすると、未来がこのバトルロワイヤルに参加しているであろう、一矢のことに触れるとヴェールもクスリと笑う。

 

「ねーむーい……」

「大丈夫、モチヅキちゃん……?」

「このガンプラバカ、ガンプラは完成させたのに、アセンブルシステムはまだ未完成だったから遅くまで手伝ってたんだよ……」

 

 当然、一矢達も既におり、眠たそうに瞼を握った手で擦るモチヅキにどうしたのかとミソラが心配していると、寝不足の理由をモチヅキは明かす。

 

「って事は出来たんだな。楽しみにしてるぜ」

「良いか、ガンプラバカ! 負けたら祖国の土は二度と踏めないと思え!!」

 

 恨めしそうに一矢を見ているモチヅキの話を聞き、少し前から話には聞いていた一矢の新ガンプラが遂に実戦に出れる事を知ったツキミは心の底から楽しそうに笑いかけると、一矢も任せろとばかりに微笑みながら頷く。夜遅くまでつき合わされたモチヅキもビシッと一矢を指さしながら叫ぶ。

 

「行くか。ツキミソラ」

「「ツキミソラ!?」」

 

 いよいよバトルの時刻が迫った。

 一矢はツキミとミソラを略して声をかけると、二人は驚きながらもその後を慌てて追う。いきなりの略称であったが、このアジアツアーでチームを組んだこともあり、ジャパンカップの頃よりも心を開いているのだろう。

 

 ・・・

 

「漸くか……」

 

 シミュレーターに乗り込んだ一矢は新たに完成させたガンプラをセットする。

 それは全体的にゲネシスの印象を受けるものの、背中の翼のような可変式機動兵装ウイングや両腕はパルマフィオキーナも組み込まれ、ゲネシスガンダムの時よりも接近戦に特化した印象を受ける。

 それは彼が目指す二人の戦い方から学び、ゲネシスに組み込んだ新たなガンプラであった。

 

「ただ前に進むんじゃない……。もっと高く……。あの笑顔と一緒に……」

 

 両目を閉じ、自分自身に言い聞かせるように呟く。

 その脳裏にはチームメイトが自分に手を差し伸べてくれた時の笑顔が過る。あの笑顔と共にこれから先も輝かしい未来を切り開いていきたい。すると漸くマッチングが終了し、出撃が促される。

 

「ゲネシスガンダムブレイカー……雨宮一矢、出る」

 

 ゆっくりと目を開けた一矢に呼応するように新ガンプラ・ゲネシスガンダムブレイカーの瞳にあたるツインアイが光り輝き、産声を上げるかのような起動音が鳴り響く。

 英雄と覇王から受け継いだ力を形にしたように、新たなガンダムブレイカーが遂に発進するのであった……。




ガンプラ名 ゲネシスガンダムブレイカー

WEAPON GNソードⅤ(射撃と併用)
HEAD ビルドストライクガンダム
BODY アカツキ
ARMS デスティニーガンダム
LEGS クロスボーンガンダムX1改・改
BACKPACK ストライクフリーダムガンダム
SHIELD ビームシールド

ビルダーズパーツ

内部フレーム補強
スラスターユニット×2(両足)
腕部グレネードランチャー×2(両腕)
大型ビームキャノン×2(背)

詳しい外見やカラーリングなど活動報告の【ガンブレ小説の俺ガンダム】にマイハンガーのリンクが貼ってあります。因みに其方には私だけではなくキャラを投稿していただいた方の一部の俺ガンダムのリンクも貼ってあります。

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