機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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Burst Breaker

 ビルドバーニングが向かっていくと同時にブレイカーFBがビームライフルの銃口を向け、その引き金を引く。標的となったゲネシスはバーニアを使用して、一気に空に舞い上がる。

 

 だが、更にゲネシスを追撃するように、ビルドバーニングは地を蹴って錐揉み回転をしながら蒼天紅蓮拳を放つ。一矢の予想よりも爆発したような圧倒的な勢いを持ってゲネシスに迫るが、そのマニビュレーターはシールドによって防がれる。

 

 すぐさまシールドを払って、GNソードのライフルを向けようとするのだが問題があった。何故なら、ビルドバーニングだけが相手ではない。

 既に飛び上がったブレイカーFBがビームライフルの銃口を再び向けている為、苦虫を噛み潰したように顔を顰める一矢はビルドバーニングへの攻撃を止めて、スラスターを稼働させる。

 

「なにっ……!?」

 

 二対一の状況であっても、ゲネシスの高機動を活かして立ち回れば良いと考えていた一矢であったが、その考えは覆される。

 何故ならば、フルバーニアンの名を持つブレイカーがユニバーサル・ブースター・ポッドを稼働させて迫ってきているのだから。

 

 すぐにライフルの引き金を引き、数発のビームをブレイカーFBに放つわけだが、まるで飛蝗か何かのようにユニバーサル・ブースター・ポッドを稼働させ跳ね回るように攻撃を避けて、どんどんと距離を詰めてくる。

 

「くっ……!?」

 

 ブレイカーFBは腰部にビームライフルを懸架すると、ビームサーベルを引き抜いて接近戦に持ち込む。

 咄嗟にGNソードの刀身を展開して、受け止めるゲネシスだがユニバーサル・ブースター・ポッドを180度動かし、ブースターを噴射させることによって距離を取ると共にその強烈な噴射光は対面するゲネシスのメインカメラには目眩ましの役割にもなっており、そのあまりにも強烈な光に一矢は思わず目を瞑り、顔を逸らしてしまう。

 

 だがそれによって隙が出来たゲネシスに再びブレイカーFBが迫る。

 ビームサーベルを振るうのではなく、そのまま殴るようにマニビュレーターをメインカメラに叩きつけ、腕部のガトリング砲を展開、ゲネシスの頭部は無数の弾丸で撃ち抜かれる。

 

「この……ッ!!」

 

 メインカメラが損傷したことによって、シミュレーターのモニターにノイズが走るが、ゲネシスはそのまま押しつけられた腕部を掴んで、そのまま一本背負いのように地面に投げる。

 

 しかしまだ気は抜けない。

 注意するようにアラートが鳴り響けば、既にビルドバーニングがマニビュレーターを高速回転させて、ゲネシスに迫っており、流星螺旋拳が避け損ねたゲネシスの左肩を貫いた。

 

 ・・・

 

「おいおい、やられまくりじゃないか」

 

 どんどん損傷を受けて行くゲネシスの姿を見て、モチヅキはその圧倒的なまでの戦力とそして実力の差にやり過ぎたのではないかとカガミを横目で見上げる。

 

「ですが、あのデータ達と違って、彼は生きています」

 

 元々、一矢が勝てると思ってこのデータを組んでいる訳ではない。こうなることなど初めから分かり切ってもいた。

 だが、この圧倒的な差であっても一矢がミスターガンプラとのエキシビションのように戦いながら成長すると踏んでのことであった。そんなカガミの期待に応えるように少しずつ適応するかのようにゲネシスの動きが変わっていく。

 

 ・・・

 

「……俺も、少しは覇王不敗流を知っているんだよ」

 

 脇を閉めてマニビュレーターを放つビルドバーニングの腕部をボロボロの左腕で受け止めたゲネシスのツインアイが輝く、その輝きを全身に広げるようにゲネシスは覚醒した。

 

 機体をビルドバーニングごと旋風竜巻蹴りの要領で高速回転させ、周囲にブレイカーFBの干渉を許さぬほどの竜巻を起こす。その中でもビルドバーニングが反撃に転じようとした瞬間に手放し、ビルドバーニングは竜巻に翻弄される。

 

 辛くも竜巻から抜け出たビルドバーニングであったが、すぐさまゲネシスは旋風竜巻蹴りを繋ぎ技にその身を隕石に変えたかのように聖槍蹴りを放ち、ビルドバーニングは咄嗟に両腕をクロスさせてガードするも勢いまでは殺しきれず、弾かれるように地面に叩きつけられる。

 

「ッ……!」

 

 だが覚醒の光を纏えるのはゲネシスではない。

 その本質は全く別物ではあるが、ゲネシスの覚醒と同じ輝きを放ったブレイカーFBはその一つ一つが強化されたビームライフルのビームをゲネシスに向け、その正確な射撃はゲネシスの至る所を撃ち抜き、損傷させる。

 

「まだ、だッ!!」

 

 更には下方からも発光装甲を燃える炎のように輝かせ、追撃の為に迫ったビルドバーニングが脚部を掴み、そのままジャイアントスィングのように遠心力を利用して、今度はゲネシスが地面に叩きつけられる。

 

「俺はずっと……あの二人の背中を追って来たんだ……ッ!!」

 

 土煙が舞い上がり、中破したゲネシスがぎこちない動きで何とか立ち上がり、上空で此方を見下ろすブレイカーFBとビルドバーニングを見上げる。

 ブレイカーFBとビルドバーニングは勝負を決めるつもりなのだろう。輝きを放つブレイカーFBはビームサーベルの刃を巨大な剣のように出力を増大させて振るい、ビルドバーニングもデータの主が誇る最終奥義たる自然の輝きを表すかのような気弾を放つ。

 

「いつまでも……見上げるだけで終われるかァッ!!!」

 

 決して屈しはしないと言う主の意志を表すようにゲネシスのツインアイを輝く。

 同時に覚醒の光がGNソードの刃に集まるかのように、その実体剣を媒体に輝く巨大な刃を発生させる。そのままこの力を確かめるかのように一振り、横薙ぎに振るうと切っ先を天に向け、こちらに迫るブレイカーFBとビルドバーニングの切り札に立ち向かおうとする。

 

 膨大なエネルギー同士はすぐさまぶつかり合い、拮抗する。

 そのあまりの力と力のぶつかり合いにゲネシスが踏みしめる足は地に陥没する。だがそれでもゲネシスが纏う光は留まる事なく更に力を増して、強烈な光を発してバトルフィールドを閃光が包み込んだ。

 

 覚醒で得られる全てをぶつけた事で中破していたゲネシスの機体は耐え切れず、各所でスパークを起こして動く事さえままならない。

 だがそれでも先程の一撃はあのブレイカーFBとビルドバーニングに通じたのだろう。あの二機も機体に損傷を受けている。

 

「ゲネシス……。良くやってくれたな……」

 

 ゲネシスガンダムはミサの手を掴んだ事でもう俯かず、前に進む為に作り上げたガンプラだ。そのゲネシスは今までどんなライバル達を相手にしても、今この瞬間でさえ己の全てを持って主たる一矢が前に進む為に応え続けてくれた。

 

 ここまで機体が限界に達しているにも拘らず、ゲネシスは最後まで主の願いである前に進む事を果たそうとするかのように、倒れる事もなく確かに地に足を踏みしめている。

 その瞳にあたるツインアイに灯っていた輝きは主の労いを受け、満足するかのように静かに消えていき、同時にタイムアップとなるのであった……。

 

 ・・・

 

「……正直、タイムアップに助けられた感じです」

「……そうね。でも、アナタは今、あのバトルの中でさえ成長していた。きっとあの二機をも倒せる時が来るわ」

 

 シミュレーターから出てきた一矢の顔は苦い。

 無我夢中に放った覚醒の一撃にも応えたゲネシスには感謝しているものの、あの後では満足に動く事も出来ず、タイムアップがなければあの二機に撃墜されていただろう。

 その事を認めつつ、だが、その中でも一矢が覚醒の新たな力の使い方を見出したのを見抜いていたカガミは励ますように言葉を送る。

 

「アナタは生きている。前に進もうと高みを目指す限り所詮は過去のものでしかないデータに負ける事はないわ」

 

 生ある者は前を向き、成長している。

 ブレイカーFBやビルドバーニングのような過去のデータは手を加えなければ、あれ以上の進歩はない。一矢が前に進み続ける限り、いずれはあの二機を易々と乗り越える事は出来るだろう。

 

「それにアナタの前には目指すべき目標があるみたいね……。彼らも今この瞬間でさえ前に進んでいる。そしてアナタの後ろにいる人達も……。ボヤボヤしていたら置いていかれるわ」

「はい……。……でも、大丈夫ですよ」

 

 モニター越しにバトルの最中の一矢の発言を聞いていたカガミは一矢が追う二人を見抜いているのだろう。

 

 彼らは前に進み続けている。

 そしてジャパンカップまでに戦ったライバル達もこの瞬間も成長している。その事を口にするカガミに一矢自身も分かっているのだろう。だが自信ありげに頷く。

 

「今なら形に出来る気がするんです。あの二人の背中を追う中で色んなものを見て来た俺だからこそ作れるものが」

 

 空に舞い、秘めたる力を解き放って圧倒的な力をぶつけるガンダムブレイカー0。猛る龍のように堂々と、人を魅了するような技を見せつけたバーニングガンダムブレイカー。

 今でもガンダムグレートフロントで、イラトゲームパークで、そしてこれまで、そして今もあの二人の戦いはすぐにでも鮮明に思い出せる。何故ならば、彼らを目指し、彼らより強くなりたいと思っているからだ。

 そんな自分だからこそ、先程のバトルも含めて今まで学んで吸収してきた全てを明日へ、前へ、何度も誇り(プライド)をぶつけて進む為に今に満足することなく、また新たな力を作り上げる必要がある。

 

「ツアー中だから並行してになりますけど絶対に作り出して見せます。今の俺だけが作れる……。俺の新しい……そう、“俺ガンダム”を」

 

 手中にあるゲネシスを見やる。

 このゲネシスは当時の自分の全てを注いで作り上げたガンプラと言って良い。だが、あの頃とは違う。

 

 翔にも誓ったのだ。

 今の自分ならば新たな力を、新たな誇り(プライド)の結晶を形作る事が出来る筈だ。


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