機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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元々一つの話でしたけど、キリが良いので分割しました。


流れ星が秘める想い

「やはり手強かったな。俺も精進するよ」

「……こっちこそ」

 

 彩渡商店街ガンプラチームの勝利で終え、シミュレーターから出てきたジンは一矢に握手を求めるように手を差し伸べる。

 求められた握手に視線を彷徨わせながらも、おずおずとその手を握り返すと、大歓声のなか、それぞれ背を向けて去っていく。

 

 ・・・

 

「──さて、そろそろ出番かな」

 

 今まで控室の壁に寄りかかって試合の中継を見ていたロクトはおもむろに動き出す。

 卓上に置かれるパートナーであるコズミックグラスプを手に取ってケースにしまうと控室を出ていく。

 

【俺達、ロクト先輩のバトル最後まで応援してます! 俺達の分まで頑張ってください!!】

 

 会場へと続く通路を歩くロクトの携帯端末に着信が入る。

 ふと見れば、メールの送り主はツキミであった。敗退してしまった彼らだが、この会場のどこかでロクトを応援しているのだろう。

 

「やれやれ……先輩ってのは大変だね」

 

 今までバトルの前と言う事もあって一本線のようになっていたロクトの口も笑みがこぼれる。そのままおどけた様子で彼は大歓声に迎えられ会場に足を踏み入れる。

 

「来たな……」

「一人でここまで来たのだから、相当な実力者な筈……。油断せずに行きましょう」

 

 一足先にシミュレーターの前に到着していた正泰は入場して、さながらスターか何かのように観客席に手を振っているロクトを見て、緊張した面持ちで迎える。

 それはシアルも同じなのか、油断ならない様子で飄々としながら、視線に気づき、こちらに笑みを向けるロクトを見据え、アナウンスに促されるままシミュレーターに乗り込むのであった。

 

 ・・・

 

 鹿児島県代表と神奈川県代表のバトルの場に選ばれたのは、かつてガンダム作品において登場したことのあるケネディ宇宙空港だ。広大な平原が続き、障害物と言えば、打ち上げの時を待つスペースシャトルがあるのみだ。

 

「やっぱり強い……っ!!」

 

 正泰のアドベントはシラヌイとウンリュウによる二振りの刃を振るうが、ロクトのコズミックグラスプを動じさせることは出来ず、そればかりか闘牛士のようし受け流され、そのまま背面を蹴られてしまう。

 姿勢を立て直そうとするがライフルによる射撃を受け、対ビームコーティングマントのお陰で大したダメージにはならないが、苦々しい表情を浮かべながら正泰はロクトの実力を認める。

 

「……流石にここまで来ただけはあるね」

 

 間髪入れずにコズミックグラスプに砲弾が飛んでくる。

 何とかシールドで受け止め、爆煙が立つ中、撃ってきたシアルのジェガンハウンドを見やる。マゼラ・トップ砲を構えるジェガンハウンドはそんなロクトの呟きも追い詰めるように引き金を引いて追撃をする。

 

「トランザムっ!!」

「おいおい、みんなダブルオークアンタのボディ使いすぎじゃないか」

 

 シアルの射撃を紙一重で避けていくコズミックグラスプだが下方からトランザムを使用したアドベントが両肩の大型ビームランチャーと腰部のヴェスパーを発射しながら近づいて来る様を見て、軽口を叩きながらでもそちらにも気を配る。

 

 トランザム状態となり高速で接近するアドベントはコズミックグラスプを肉薄し、そのライフルさえ破壊する。

 ライフルを失ったことは手痛いが、それでも何もできないわけではない。太刀筋を見切ったロクトはその腕を掴んで、素早く羽交い締めにしてジェガンハウンドに向ける。

 

「っ……!」

「撃てるかい? まっ卑怯だって思うならそれでも良いさ。子供程よく言うだろう、大人は卑怯だって」

 

 射線上で拘束されるアドベントはさながらシールド代わりになっている。

 シアルが苦々しい表情を浮かべていると、自分を皮肉りながらアドベントに反撃される前に腰についているGNフィールド発生装置を破壊するために強く蹴り飛ばす。

 

「くっ……!?」

 

 弾かれたように吹き飛ぶアドベントだが、何もしないわけがない。

 そのままの姿勢でメガガトリングガンと胴体のメガ粒子砲を同時発射すると、回避しながらシールドで防いでいたコズミックグラスプは、マゼラ・トップ砲による砲撃を横から受け、墜落するように地に落ちる。

 

「終わりだぁっ!!」

 

 バックパックからアロンダイトを展開したアドベントはトランザム状態も相まって、地に落ちたコズミックグラスプにとどめを刺すように加速して向かっていく。

 

「終われる筈がないだろッ!」

 

 勝利を確信していた正泰だが、アロンダイトは空を切る。

 二基のシールドブースターによって紙一重で避けたからだ。そのままビームサーベルを引き抜いて、アロンダイトを持つ片腕を落とす。

 

 しかしジェガンハウンドの砲撃が再びコズミックグラスプを襲い、メインカメラに直撃したこともあり、横っ飛びで倒れる。

 

「嘘だろ……!?」

「どうして……っ!?」

 

 今度こそとどめだ。

 そうビームトンファーを展開して突っ込んだアドベントだが、膝立ちで立ち上がったコズミックグラスプは素早く避けると、その腕を掴んだのだ。その決してやられる事はないという執念は二人には恐怖となり、戦慄させる。

 

「どうして? 愚問だね……。お互いにここまで来る過程で色んなモノを背負って来た筈でしょ」

 

 ググッ……とゆっくりと立ち上がっていくコズミックグラスプ……。シミュレーターの中でロクトは何を言っているんだと言わんばかりに軽い笑みをこぼす。

 

 ジャパンカップ本選。

 ここまで来るのに、どれだけの勝者と敗者が生まれただろうか。

 ツキミのメールを思い出す。彼らは自分に敗れて敗退してしまった。悔しいはずだ。だがそれでも勝者に自分達の想いを託した。自分達が勝った相手が頂点になって欲しいと。

 

「昔からそうなんだよ。勝者ってのは敗者の想いを背負って生きていくんだ」

 

 ロクトは現役の宇宙飛行士だ。

 その過程で様々な事を経験してきた。

 宇宙飛行士訓練学校を卒業出来たとして、実際に宇宙飛行士になれるのは一人か二人と言われている。それは見上げるだけで手が届かない流れ星のような存在だ。

 

 最初は同じスタートラインに大勢の人間が肩を並べていた。

 精一杯駆け抜け、やっとゴールに辿り着いて振り返った時には、何人残っていただろう。

 

 宇宙飛行士を目指したものの、人それぞれの理由で志半ばで夢を断念し左折していったかつての友たちをどれだけ見てきたことか。彼らだって地球を飛び出し、宇宙に旅立ちたかったはずなのに。

 

 だからこそ自分はそんな彼らの想いを背負って、これまで宇宙飛行士の職務を全うしてきた。それこそが自分に出来るかつての友たちへの最大限の手向けになると信じて。

 

 それはガンプラバトルに限らず、どの競争においても同じことだ。

 

 日本一になりたいという夢を持って、大会に挑み敗れ去った敗者達。

 そんな彼らの想いを背負う限り、簡単に敗れるわけにはいかないのだ。

 

「それにね、後輩が見てるんだ。カッコ付けたくなるもんでしょ」

 

 敗者達の想いを背負う覚悟で挑むロクト。そんな主人の想いに呼応するかのようにコズミックグラスプのツインアイは鮮やかに光り輝く。

 

 危険な気がした。

 アドベントはすぐさま振りほどいて、後方へ飛ぶ。

 

 すぐに放たれるマゼラ・トップ砲の砲弾を二基のシールドブースターを最大限に活用して避けるコズミックグラスプはそのままジェガンハウンドへ向かっていく。そうはさせまいと後を追うアドベントだが反応が遅れて、距離が生まれてしまう。

 

「早過ぎるっ!?」

 

 目まぐるしくそれこそバッタのように俊敏に飛び回るコズミックグラスプを捉えきれないシアル。しかしその間にもコズミックグラスプは近づき、ツインアイの輝きの残光を走らせ眼前に迫るとマゼラ・トップ砲を一太刀で破壊する。

 

 すぐにビームサーベルを引き抜いて対応しようとするが、その前に伸ばした腕をコズミックグラスプに斬り落とされる。

 宙にジェガンハウンドの腕が舞う中、ジェガンハウンドの頭上から股先にかけて切り捨てされ、撃破された。

 

「俺達だって背負って来たんだっ!!」

 

 シアルが撃破され、悲痛な表情を浮かべる正泰だが、ロクトが言った言葉は自分達にも当てはまる。

 

 だからこそ負けたくはない。

 アドベントはコズミックグラスプに追い付き、ビームトンファーによってコズミックグラスプのビームサーベルを持つ腕部を突き刺し、そのまま切りあげる。

 

 武装を失い、すぐにもう一本のビームサーベルを引き抜こうとするが、その前に再びビームトンファーの刃が迫り、コズミックグラスプの左足を斬りおとす。

 顔を歪めるロクトだが、その間にもヴェスパーの攻撃がコズミックグラスプに被弾してしまう。

 

 半壊して硝煙をあげながら落ちていくコズミックグラスプ。

 今度こそ、今度こそは、とそのままビームトンファーを突き出すアドベント。その光の刃がコズミックグラスプに迫る。

 

「──人生の先輩として、一つだけ教えてあげよう」

 

 後数cmで刃が届くかと言った瞬間、シールドブースターを利用して更に下方に下がるコズミックグラスプによって、的を見失ったビームトンファーの刃は空を虚しく切る。

 

「背負うことは誰にだって出来る。でもその重荷で前に進むことは本当に難しい事さ」

 

 そしてそのままアドベントを回り込んで、更に上へ舞いあがる。

 振り返ったアドベントのカメラ越しに正泰が見たのは、まさにこちらに向かってくる見上げる空を駆ける流星。

 

「君はまだ若い。まだまだチャレンジ出来るし、何かを背負ってもそれを支えてくれるパートナーだっている。君達とまた大きな舞台でバトルが出来る日を待ってるよ」

 

 流星は隕石のようにアドベントにぶつかり、そのまま地面に轟音と激しい土煙を巻き上げる。

 土煙が消えた先には大きなクレーターの中心にもたれるようにアドベントにビームサーベルを突き刺すコズミックグラスプの姿が。

 

 そのままアドベントは爆発し、ロクトは勝利する。

 これによって次の対戦カードは影二達と清光達。そして一矢達とロクトによる準決勝が待ち受けるのであった。




<いただいたキャラ&俺ガンダム>

キャラクター名 神無月 正泰(かんなづき まさや)
性別 男
年齢 主人公達の一つ上
容姿 紫の髪で、身長170cm
心配性だが、やるときはやる男
心配性の性格のせいで暖かい飲み物が手放せない
ガンプラバトルの間は腹痛にはならない
丁寧な口調で話す
ガンプラバトルを楽しむのをモットーとしている
主に近接戦が、多い
軽度のシスコン 妹の名前は経子(きょうこ)小6で素直
一人称 俺
二人称 君

ガンプラ名 アドベントガンダム

WEAPON シラヌイ/ウンリュウ
WEAPON メガガトリングガン
HEAD ガンダムAGE-3 フォートレス
BODY ダブルオークアンタ
ARMS シナンジュ
LEGS  V2アサルトバスターガンダム
BACKPACK ディステニーガンダム
SHIELD 対ビームコーティングマント
拡張装備 太陽炉(背中)
メガ粒子砲(胴体内部)
大型ビームランチャー(両肩)
V字型ブレードアンテナ(頭部)
フェイスガード(頭部)
GNフィールド発生装置(腰)

カラーリング は白と紫を使用していて頭部のアンテナや腕部のレリーフが金 アンテナのエンブレム的な奴は赤
フェイスガードも角に見立ててつけている

キャラクター名 麻沼 シアル (あさぬま しある)
性別 女
年齢 正泰と同じ年齢
容姿 銀髪でかなりの巨乳 身長164cm
フランスからやって来た銀髪の美少女、父の転勤に家族でついてきた。性格は照れ屋でクールな女の子。神無月に好意を寄せている
主にライフルを使用し相手が近づいてきたらサーベル戦うスタイル

一人称 私
二人称 貴方
ガンプラ名 ジェガンハウンド
元にしたガンプラ ジェガン
WEAPON ビームサーベル(ガンダム)
WEAPON  マゼラ・トップ砲
HEAD ジェガン
BODY ガンダムF91
ARMS ジムカスタム
LEGS  ドラゴンガンダム
BACKPACK ガンダム
SHIELD ローゼン・ズール
拡張装備 ビームピストル(背中)
レドーム×2(背中)
Iフィールド発生装置(背中)
V字アンテナ(頭部)
丸型バーニア(腰)
カラーリングは水色と濃いグレー。センサーは緑

こっちにも引き続き書いているのは、私の中の一区切りだと思ってください。完結後にでもこちらは修正する予定です。

素敵なオリキャラと俺ガンダムありがとうございます!

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