機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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「いよいよ本選か……」

 

 ジャパンカップ本選が行われるドーム内の観客席は開始十分前という事もあり、ほぼほぼ席が埋まっていた。

 観客達は宙に表示される巨大な立体映像とまもなく激闘が行われるであろう無数のガンプラバトルシミュレーターを見て、今か今かと熱気に包まれていた。

 そんな中でどこか緊張した面持ちで秀哉が握り拳を軽く打ち付けながら、本選の開始を待っていた。

 

「なんで、お兄ちゃんが緊張してんの?」

「そりゃガンプラを愛する者として、1人のファイターとしてこの夢の舞台は見逃せないからね」

 

 そんな秀哉の様子を不可解そうに首を傾げながら指摘する裕喜に秀哉の代わりに一輝が答える。周りを見渡せば、観客の表情は期待に満ち溢れたものだった。

 

「ところで夕香は……?」

 

 すると貴弘は先程から夕香がいない事に周囲を見渡しながら彼女を探す。

 今、夕香は席を外していたのだ。

 

 ・・・

 

 

「……なんで出くわすのかなぁ……」

「この辺りは本当に複雑ですわねぇ……。まさかライバルの手を借りなくてはいけないとは」

 

 ドームの入り口では夕香が顔を顰めて辟易した様子で愚痴を零す。

 何と彼女の隣にはシオンがいたのだ。そのシオンなのだが、広げたガイドブックと眉を寄せて睨めっこをしていた。

 

「っつーか、機械音痴で方向音痴って救いようなくない?」

「貴女のようにわたくしの事をそのように呼ぶオタンコナスもおりますが、機械も建造物も複雑にしているのがいけないのではなくて?」

 

 まさかトイレの帰りに出会うとは思っていなかった。

 ドームの外で観客席にまともに向かえず、先程からずっとガイドブックを見てオロオロしていたシオンを見つけたと思ったら、こうして声をかけられてしまったのだ。

 観客席に一緒に向かいながら嘆息する夕香に何を失礼なことをと、さも当たり前のように口答えをされてしまう。

 

「まぁ安心なさいな。わたくしの心はゴッグの装甲並みに堅いので貴女の戯言などなんのその。貴女のような庶民を導くのがわたくしの家の役目でもありますし不問としてさしあげますわ」

「わーうれしー。どっちが導いてやってんのか分かんないやー」

 

「ふふん」と鼻で自慢げに笑いながら夕香の一歩後ろを歩くシオンに突っかかるのも疲れたのだろう。半ば自棄になりながらでも夕香はシオンを引き連れて観客席まで案内するのであった。

 

 ・・・

 

 

 選手達に共通のスペースとして用意された広間。

 ここでは試合の様子などがモニターを通じて観戦が出来る。

 

「へぇ、アンタ達ってチームを組んで日が浅いんだなぁ」

「そうなんだよ、あははっ……」

 

 そんな場所で秋田県代表チームとロボ太を背後に控えさせながらミサは会話をしており、国永の言葉にミサは乾いた笑みを浮かべる。

 

「……ところでアンタ達一人足りなくないか? もう一人の話も聞いておきたかったんだが……」

「ど、どこにいったんだろうね?」

 

 清光がこの場にはいない一矢に気付き、僅かに残念そうに問いかけるとミサは引き攣った笑みを浮かべ、視線を泳がせながら答える。

 

(一矢君、絡まれるのが嫌だからって逃げやがったなあぁぁ……っっ!!)

 

 どこに行ったかは知らないが、何故いないのかは見当がつく。

 大方、光り輝くガンプラの使い手として正泰の時のように絡まれるのが嫌でいなくなったのだろう。

 お陰で今、興味を持ったこの場にいるチームの面々から矢継ぎ早に話しかけられるのはミサだ。ミサはこの場にはいないボッチに青筋を浮かべて、内心、煮え滾るような想いだった。

 

 ・・・

 

「……ここまで来たんだね……」

「うん、今までは姉ちゃんはタウンカップ敗退、先輩はリージョンカップ決勝で敗退って聞いてたから俺が入ってもどうなるかって思ってたけど……」

 

 熊本海洋訓練学校ガンプラ部に用意された控室では影二達が第一試合を今か今かと待っていた。今までを思い出してしみじみ呟く皐月に今でも信じられないと言わんばかりに陽太が頷く。

 

 《ジャパンカップ第一試合が始まります。各当チームは準備してください》

 

 すると控室のスピーカーからアナウンスが流れ、皐月達はピクリと反応する。

 どうやら試合が漸く始まるようだ。

 

「これで終わりじゃないだろ。どんなに足掻いてでも俺達は勝つんだ。それに……このジャパンカップが三人で出来る最後の機会かもしれないしな」

 

 すると今まで黙って話を聞いていた影二が静かに立ち上がりながら口を開く。

 影二の言葉、それは姉の暮葉以外の肉親の死の関係で今年の10月末には転校が決定しているのだ。

 

「……そんな顔をするな。最後になるかもしれないからこそ、このジャパンカップ、最高の物にしょう」

 

 影二の前にはMK‐Ⅵ改とは違う新たなガンプラが置いてあった。

 ジャパンカップに備え、新たに作り上げたガンプラであり、これで予選を勝ち抜いた。

 

 そのガンプラを一瞥しながら寂しそうな顔をする皐月と顔に出さないながらでも内心では寂しがる陽太の頭をそれぞれ軽くポンと手を置くと、微笑を浮かべながら話す。影二のその言葉に二人はそれぞれ強く頷くのであった。

 

 ・・・

 

「ここにいたようじゃの」

 

 一方、一矢は選手入場口の近くからポケットに手を突っ込み壁に寄りかかってここから立体映像を見つめていた。そんな一矢に声をかけたのは厳也であった。

 

「……考えてる事は同じ、か」

「まぁ一度は肩を並べて戦った者同士だしのぉ。なるべく近くで見たいんじゃ」

 

 流し目で厳也を確認する。

 どうやら彼一人だけのようだ。

 

 一矢の隣に移動しながら立体映像を見上げる。

 その理由は分かっていた。一矢も厳也の言うように近くで見たいためにこの場にいた。すると影二達が歩いてくるのが見える。

 

「前言っていた考えとやら楽しみにしてるきに」

「無様だったら笑ってやるよ」

「フッ、目ェかっぽじってよく見てろ」

 

 厳也と一矢がそれぞれ彼らなりに影二達を送り出すと、微笑を浮かべた影二や皐月達は歓声の中、シミュレーターの場所へ向かっていくのだった。

 

 ・・・

 

「……そうだ、よく見てろ……。これが俺の……新たなガンプラ……」

 

 ガンプラバトルシミュレーターに乗り込んだ影二は新ガンプラをセットし、切り替わって表示されるカタパルト映像を見ながら呟く。その瞳は戦意に燃えていた。

 

「ネクストフォーミュラー……秋城影二……出る……ッ!!」

 

 出撃の合図と共にペダルを踏みこんだMk‐Ⅵ改に続く新たなガンプラ……ネクストフォーミュラーが勢いよく戦場に飛び出すのであった。

 

 ・・・

 

「この試合も優勝も、我がトヨサキモータースがいただくッ!!」

 

 どこまでも続く森林地帯で相手チームであるトヨサキモータースとはすぐにエンカウントが出来た。

 彼らが駆るのは二機のPGガンダムアストレイレッドフレーム改。それぞれのカラーリングで黒を基調にしたのが漆、金をイメージしたのが煌と表示されていた。

 

「損傷は軽微……ッ!!」

 

 手始めに皐月のFAヒュプノスがメガ・ビーム・キャノンとミサイル群を放ち、その全てが巨体に直撃して揺らぐが、目立った損傷はなく皐月は苦虫を潰したように歯を食いしばる。その間にも煌がタクティカルアームズIILをアローモードに変形させて、射撃を開始しネクストフォーミュラー達はそれを掻い潜って接近する。

 

「チョロチョロとォッ!!」

「くぅっ!!?」

 

 その間にも漆が接近し、ガーベラストレートとタイガーピアスを竜巻のように舞い上がって振るうとその巨体からは信じられない俊敏な動きにダンタリオンはツインビームソードを盾代わりにするものの弾かれて吹き飛んでしまう。

 

「よう君っ!? っ……流石、本選まで進んだチーム……桁違いに強い……ッ!!」

「──だからどうした……!」

 

 吹き飛んだダンタリオンを見て、皐月が悲鳴に似た叫び声をあげ、トヨサキモータースの実力に戦慄する皐月に一喝するような影二の声が轟く。見ればネクストフォーミュラーは今だ果敢に戦闘を繰り広げていた。

 

「さっきも言ったはずだ……! どんなに足掻いてでも勝つんだって!!!」

 

 これが最後になるかもしれない。

 どんな結果であれ、満足する為に最後まで抗うのだ。そんな影二の燃え盛る炎のような想いに触れ、陽太と皐月は目を見開く。

 

『思い入れがあってそのガンプラを使うのもアリだが……勝ちに行くのなら、今のままじゃ厳しいな』

「そう、俺達は……勝ちに行くんだ……ッ!!」

 

 脳裏に過るのはかつてネバーランドでのバトルで言われた言葉。

 勝ちに行くために自分は新たなガンプラを作り上げたのだ。燃え上がる闘志は留まる事を知らず、影二はECアクションを選択する。

 

 その名はZEROシステム。

 登場したガンダム作品では危険な曰くつきのものだ。

 

 しかしガンプラバトルにおいては期待の性能を大幅に向上させるEXアクションの一つ。

 それを表すようにネクストフォーミュラーの動きは段違いに様変わりして、トヨサキモータースを肉薄する。

 

「そうだよね……。私達は足掻いて勝ちに行かないと……これまでもこれからもッ!!」

「先輩ばっかに良い恰好させんのは癪だしね」

 

 そんな影二に皐月は自信を得たように笑みを浮かべると、復帰したダンタリオンから通信が入る。どうやら陽太も同じ思いのようだ。篠宮姉弟は頷き合って向かっていく。

 

「はぁあっ!!」

 

 ネクストフォーミュラーへ刀を振るおうとする漆に光の翼を展開したダンタリオンはバックパックからアロンダイトを構えて受け止める……いや、それどころか押し返したではないか。

 そのまま懐に飛び込んで一太刀入れると切り札であるトリプルメガソニック砲を発射して漆を大きく仰け反らせる。

 

「今っ!!」

 

 そしてそれを逃す皐月ではない。

 トランザムを発動させたFAヒュプノスはバッと予測したダンタリオンが飛び退いたと同時に一斉射撃を繰り出して漆の各処を砲撃、その巨体を沈め撃破する。

 

「やられたか……っ! だがぁっ!!」

「甘いな……。この距離は……まだコイツのレンジ内だ……!」

 

 漆が撃破された事に動揺しないのは流石、本選まで進めたファイターだ。

 アローモードで迎撃する煌をネクストフォーミュラーはバックパックのファトゥム01を発射させ、同時に煌を翻弄、各部位を攻撃していく。

 

「俺達はこれからも勝ち進む……ッ! その為の……一歩だッ!!」

 

 ファトゥム01と再度、ドッキングした後、ビームサーベルの出力を上げ、エネルギーが不安定になるほど肥大化させ切っ先を向ける。

 

 そのままUFOのように直角に高速で煌に突っ込む。

 煌はそのあまりの速さに対応しきれず二対の刀を攻させて防ごうとするが、ネクストフォーミュラーを止める事は出来ず、そのまま二対の刀は砕かれ、煌は貫かれるとともに爆発四散するのであった。

 

 途端に大歓声が轟いた。

 ジャパンカップ本選の第一試合は熊本海洋訓練学校ガンプラ部の勝利で幕を閉じるのであった。




バレンタインアンケート締め切りました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました!詳しくは追記に書きましたが協力いただけた皆様にはバレンタイン話で細やかながらのお礼代わりの事をしようと思っております。

<いただいた俺ガンダム>

エイゼさんよりいただきました

ガンプラ名:ネクストフォーミュラ-
元にしたガンプラ:ガンダムF91
WEAPON:ビームサーベル(Gセルフ)
WEAPON:ビームライフル(V2)
HEAD:F91
BODY:ウィングゼロ(EW)
ARMS:ケルディムガンダムGNHW
LEGS:ガンダムDX
BACKPACK:∞ジャスティス
SHIELD:シールド(AGE‐2)
拡張装備:腕部グレネード(右腕部)、IFジェネレータ(左手首から肘裏の間)、角型センサー(両肩)
影二並びに篠宮姉弟の合作機体であり、MK‐Ⅵの後継機として、影二がファイターを務める。各種スペックは高水準にまとまっているが…扱いにくさもあり、ファイターを選ぶ機体となった。
特殊機能並びにオプション兵装:ZEROシステム、ビットにセミオート、マニュアル制御機能追加、ライフルビット+シールドビット、ファトゥム01、頭部バルカン、マシンキャノン、腕部グレネード、IFジェネレータ、ハイパービームソード

カラー:頭部はデフォルト、ボディは下部の白を赤に、マシンキャノン開口部を白に脚部、腕部、バックパックはライトニングカラーを選択した上で灰色部分を白に、ライトニングブルーをウィングゼロ(EW)の青に変更してます。盾も同様です。

グローカラー:ネクストフォーミュラーはMK‐Ⅵ同様水色

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