機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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10000UA記念小説
ネクスト─時を経て─


 かつて一人の少年が異世界に(いざな)われた。

 

 その世界は少年がこれまで生きてきた世界とは、あまりにかけ離れた人々の憎しみと戦いに塗れた世界であった。

 

 少年は交わした約束の為、進むべき未来の為、そこで出会ったかけがえのない仲間達と共に世界を駆け抜け、やがては戦争を終結させて、その世界から姿を消した。

 

 その世界で人々はそんな少年を英雄と祭り上げた。

 

 きっと少年を英雄と呼ぶ人間は彼を気高くそして強い人間だと思うのだろう。

 

 ……否。

 

 そうではないのだ。

 

 彼は決して強い人間などではない。

 

 脆く儚いまでに弱い心を持ったただの……そう、誰とも違わない感性を持つ少年だった。

 

 それでも彼は自分の常識が通用しないその世界で強くあろうとした。

 

 そうしなければ自分の心が壊れてしまう事が誰よりも分かっていたから。

 

 しかし確実にその世界で彼が経験した出来事は彼の心に深く根強く傷跡を残していた。

 

 これはそんな少年のその後の物語……。

 

 

 

 

 ・・・

 

 ──大峡谷に轟音が鳴り響く。

 そびえ立つ大きな岸壁は衝撃で崩れ落ち、深い谷の底へと落ちていく。その周辺にいるのは一機のガンダムだ。

 

 その名はクロスボーンXクアンタ。

 元にしたガンプラはクロスボーンガンダムX1。これはガンプラバトルであり現実で起きている事ではない。

 

 すると突然、クロスボーンXクアンタの周囲に無数のフィンファンネルが飛び出し、一斉にビームを放つと、クロスボーンXクアンタは手に持つザンバスターとGNソードⅤを巧みに利用して防ぎ、そしてそのままビームをある方向へと受け流し、ビームはそのまま受け流された方向へ向かって着弾する。

 

 着弾による砂煙が上がる中、ぼんやりとシルエットが見える。

 それはガンダムタイプの機体であった。そのガンダムはそのまま砂煙を飛び出し、その姿を見せる。

 

 

 ──ガンダムブレイカー0

 

 

 その機体はかつて異世界において同じMSが英雄にも悪魔にもなった機体。宇宙(そら)に七色の光を放った奇跡を起こした一方で人類の英知を破壊して絶望を齎した。

 

 そんなブレイカー0はクロスボーンXクアンタの攻撃を全て予測でもしているかのように避ける一方でこちらからの攻撃は積極的にはせず、ただただ時間だけが過ぎてやがては制限時間が終了する。

 

 ・・・

 

 

「おっ、終わったな」

 

 

 バトルを終え、シミュレーターから出てきたのは以前、ブレイカーズにて夕香にガンプラについて教えていた宏佑であった。彼の手にはクロスボーンXクアンタが握られていて、彼が先程のバトルを行っていた一人である事が分かる。

 

 バトルを外から眺めていたのはかつて如月翔やあやこと共にガンダムブレイカー隊として活動をしていたナオキやルミカであった。

 

「……」

 

 そしてその後、別のシミュレーターから出てきたのはかつて異世界の戦争に身を投じた青年……如月翔であった。

 かつての頃に比べ、その肩まで伸びた女性のような艶やかな髪は後ろに結んでおり、元々の細身もあって、中性的な印象をより強くする。

 

 しかし問題はその表情であった。

 知り合いの前だからか強くは出ていないが、薄っすらとその表情には苦悶の色が垣間見える。

 

「じゃあ今度は俺と──」

「……悪い。体調が悪いみたいなんだ、今日はもう帰るよ」

 

 翔はそのままナオキ達に合流すると、宏佑とのバトルを終え、次は自分もとナオキが名乗り出ようとするのを遮り、今日はこのまま帰宅する旨を伝えると返答を待たずに足早に立ち去った。

 

「……やっぱり今の翔君を本気にさせられるプレイヤーはいないんだね」

「……悪いな、宏佑。折角、バトルしてもらったのに」

 

 店を出る翔の後ろ姿を見つめながら、ルミカは寂しげに呟き、ナオキはバトルをするのに誘った宏佑に話しかけると、「気にすんな!」と快活な返答に少しは救われる。

 先程のバトル、長く付き合いのあるナオキとルミカには彼が本気ではないというのはすぐに分かった。それは先程、翔が口にしたように体調が優れないと言うからではない。

 

 ガンダムワールドフェスタ2024が終了して以降、誰も、それこそガンダムブレイカー隊の面々がどれだけ本気でぶつかったとしても彼の本気を引きだせないというのが分かってしまった。

 そして彼がバトル終了後、シミュレーターから出てきた際に時折、覗かせる辛そうな表情を見て何とも言えなくなってしまう。

 

 きっと今の翔には本気でぶつかり合えるライバルがいない。

 バトルに虚無感を感じ始めたのだろうとルミカ達は感じた。だからこそ今日も宏佑とバトルを勧めてみたが、結果は先程の通り、乏しかった。

 

「一矢君がもっと強くなってくれれば……」

「成長はしてるみたいだけど正直、まだ俺達のが強いしな」

 

 翔がガンプラバトルがそれこそ大好きなのはナオキ達も知っている。

 だからこそバトル終了後の表情は以前のような明るい表情であってほしい。今の翔を見ているのは心苦しいものがある。

 

 今の翔に対抗できるのは、かつての翔のように覚醒が使える存在くらいだろう。

 一矢が強くなればきっと翔とも渡り合える存在となりえる筈だ。そうすればきっと翔だって以前の楽しげな様子を取り戻してくれる。だからこそルミカは以前、一矢に翔を救ってくれと言った。

 

 しかし一矢の実力はまだまだだ。

 最近、注目されているようではあるが、それこそテストプレイの段階からプレイしていたナオキ達ガンダムブレイカー隊には及ばない。

 

 だが彼らは根本的な勘違いをしている。

 

 翔は別にバトルに虚無感など感じてはいない。

 バトル終了時に時折、見せた苦悶の表情も全力をぶつけられる相手がいない事への表れでもない。

 

 しかしその事を彼らが知る由もない。

 

 何故ならばそれは翔が経験した事を知らないから。

 この世界に翔を完全に理解できる存在などいないからだ。

 

 ・・・

 

「っぁ……! はぁっ……!」

 

 ゲームセンターから出た翔は胸元を抑え、息荒く苦しげな様子で人気のない路地裏に入ると、そのまま壁を背にズルズルと座り込む。

 

 苦しみから思わず空を仰ぐが、その視界に映る曇り空はぐにゃりと歪む。

 それを振り払うように頭を振るとそのまま路地裏から見える街行く人々に視界を映せば、またそこで変化が起こる。

 

 もう何も見たくはない。

 そう言わんばかりに翔は両手で顔を覆い、そのまま蹲ってしまうのだった……。

 

 ・・・

 

『まっ……何とかはする。だからお前は心配すんな』

(……そうは言われても気にはなる)

 

 

 一方、一矢はブレイカーズに向かっていた。

 その頭の中には旅行の終わりにシュウジに言われた言葉が過っていた。しかし相手は憧れでもある如月翔だ。自分に何か出来なくてもそれでも力にはなりたい。

 

「で、なんでいんの……?」

「いやぁ私、ブレイカーズには行った事ないから気になってたんだ」

「アタシも最近、翔さんとはちゃんと顔合わせてないし暇潰しってやつよ」

 

 そう考えていた一矢ではあるが横目で見やるとたまたま行くと言ったら付いてきたミサと夕香がいた。二人には翔の異変については特に詳しく話していないし、話せるほど一矢も知らない。

 

「……ッ」

 

 ふと視界の端に何かを捉え一矢は思わず立ち止まってしまった。

 そこには男女の集団が何か困った様子で話し合っている。しかしその多くはこの辺では珍しい外国人のようで目立っている。

 

 その中で一番、最年少であろう少女と目が合った。

 ブラックを基調としたワンピースにホワイトのロング丈の羽織を着用した少女だ。

 

 煌く金髪を風に揺らし、その切れ長の紫色の瞳はまるで自分の事を見透かされているようで思わずドキリとしてしまう。

 

「……あの、この辺りに如月翔という人はいますか」

 

 少女はそのまま立ち止まった一矢に向かって歩いて来ると、何とその少女から聞かれたのは翔に関する事であった。

 

「いるも何もアタシ達、今からその翔さんの所に行くところだよ」

「……そうですか。なら私達も一緒について行って良いですか?」

 

 如月翔には外国人も会いに来るのかと驚いている一矢やミサを他所に夕香が代わりに答える。すると少女は自身の後ろにいる集団を指しながら同行の許可を求めると、別に問題はないのか一矢達は互いに顔を見合わせた後、頷く。

 

 少女は「ありがとうございます」とペコリと頭を下げた後、後ろで待っている集団にその事を話したのか、集団と共に戻ってきた。

 ある程度、日本語も話せるようで彼らに口々に挨拶されて、一矢達は恐縮しながらもブレイカーズに案内する。

 

「ありがとう、リーナ。お陰で何とかなりそうね」

「うん、お姉ちゃん」

 

 ブレイカーズに向かう道中で一矢達に声をかけた少女の隣を歩く姉であろう少女に似た美しい女性が少女の名前……リーナ・ハイゼンベルグの名を口にしながら礼を言うと、リーナは前を歩く一矢達を見る。

 

「待っててね、翔……」

 

 このまま彼らについて行けばきっと如月翔に会える筈だ。

 そう思い、リーナによく似た女性は翔を想って空を見上げる。

 

 彼女の名前はレーア・ハイゼンベルグ。

 

 リーナの姉であり、未来に再び翔との再会を願った女性であった。




如月翔(Mirrors)

【挿絵表示】


前作のEX編は翔が訪れたあの世界の、そしてそこに生きる人々の後日談の意味を持つ話でした。ですが今回は完全に主役を翔に置いた話。言ってしまえば翔にとってのEX編と言ったところでしょうか。

さて余談ではありますが本小説における前作キャラの年齢を軽く…

如月翔(24歳)
シュウジ(実年齢不明。大凡の年齢は18~20)
リーナ・ハイゼンベルク(外見年齢18~19。実年齢10歳行くか行かないか)
カガミ・ヒイラギ(22歳)
ヴェル・メリオ(同上)

私の中ではこんな所ですかね。リーナの実年齢は数字で書くとアレですがまぁ設定が設定なのでこんな感じです。

<いただいたキャラ&俺ガンダム>

仮面ライダー大好きさんからいただきました。
キャラクター名
深田宏祐(フカタコウスケ)
一人称:俺
年齢:21歳
身長:175cm
体重:53
性格:基本的には誰とも話せる為とんでもない人脈の持ちの持ち主でもある

ガンプラ名
クロスボーンXクアンタ
元にしたガンプラクロスボーンガンダムX1
カラーリング:メイン黒・サブ:赤
WEAPON:ザンバスター
WEAPON:GNソードⅤ
HEAD:クロスボーン・ガンダムX1
BODY:ダブルオークアンタ
ARMS:ダブルオークアンタ
LEGS:ダブルオークアンタ
BACKPACK:クロスボーン・ガンダムX1
SHIELD:ABCマント
拡張装備:太陽炉(バックパック)

人物設定
よくトイショップかブレイカーズなどでガンプラを買う自称ガンプラ兄さんと自分でいてるが今の所は誰からにも言われてない。
ガンダムの知識はかなり高くよく色んな人にアドバイスをしている。
昔はジャパンカップ、世界大会で優勝をしたことがある。現在は暇さえあればオリジナルガンプラを作っている

素敵なキャラやオリガンのご投稿ありがとうございました!

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