「なんだこのガンプラ……」
それがバーニングブレイカーを扱って初めて放った一矢の感想だった。
傍から見ても今のバーニングブレイカーの動きはぎこちないものがあり、それはまさに機体に振り回されている、そんな状態であった。
ガンプラバトルに使用されているガンプラはただ上手く作ればいいというものではない。上手く作ったとしてもファイターとしての力量が不足していればそれはただの宝の持ち腐れであり、性能を十分に発揮できない。
今のバーニングブレイカーはまさにそれであった。
その高すぎる完成度には一矢でさえ振り回されている。自分が今まで扱ったガンプラの中でもこれほどのガンプラはない。世辞抜きにしてもゲネシスを上回るだろう。
(ほんの少しでもスティックを動かせば反応するなんて……)
バーニングブレイカーはあまりにもピーキーなガンプラであった。
その敏感なまでの操縦性は一矢でさえ困惑するほどのものであった。その間にもウィルスであるガフラン達はこちらに向かって来る。
「でも、凄い……」
咄嗟にバーニングブレイカーに備わっている刀を使用して迫りくるガフラン達をすれ違いざまに切り捨てる。
まるでバターのように滑らかに斬れ、そのまま爆発四散する。
この刀もシュウジが使うところを見たことはないが、それでも本来の持ち主である彼が使用した時の事を考えると、その実力は想像もつかない。
「ん……?」
バーニングブレイカーの速度はゲネシスに勝るとも劣らない。
全力で、そして元々既に影二達が先行していた事もあり、すんなりと前に進む事が出来、アザレアP達と合流する事は難しくなかった。
・・・
「来たんだね、一矢君」
「……あ、ああ……」
ミサが通信越しに一矢を迎えると、先程、宙に舞った事を思い出し、一矢は表情を引き攣らせつつも答える。
「あっ、紹介するね、さっき教えてもらったんだけどこの人達は熊本代表チームなんだって。つまりジャパンカップに出場するんだよ!」
「秋城影二だ……。近くにいるのは篠宮皐月とその弟の陽太だ。アンタらの事は知ってる、彩渡商店街ガンプラチーム」
フィールドを進む中、自分達の傍にいる三機の見知らぬガンプラを見やる。
共に戦うところを見れば味方である事は分かるが、気になっているとミサがその事について簡単に答えてくれた。
近くにいたガンダムMK‐Ⅵ改を操る影二が代表して話すと、レーダー上にそれぞれ名前が表示されており、FAヒュプノスに乗る皐月とダンタリオンに乗る陽太もそれぞれ簡単に挨拶をする。
「まさかこんな形で一緒に戦うなんてね」
「同じことを思ってるよ」
挨拶もそこそこに奇妙な巡りあわせに一矢も影二も苦笑してしまう。
まさか何れ出会ったであろうライバルとこうして意外な形で出会ったどころか共闘までしているのだ。
「随分、奥まで侵入されているな」
「私達が暴れててインフォちゃんは大丈夫なの?」
「見えてる攻撃や爆発は実際に起きてるわけじゃない。心配ない」
そうして二つのチームが手を組み、共に前に進んでいると、ふとカドマツから通信が入り、彼はそのあまりにもウィルスが侵入している事に表情を険しくしているとミサが懸念していた事をこの際問いかけると元々、そんな負担のかかるような事ならば端からやらせないのか、カドマツは安心するように話す。
「あっ、アレがコアじゃないですか!」
≪その通りだ、アレがウィルスのコアプログラムだ!≫
そうして迫りくるウィルスを撃破しながら前に進んでいると、ふと皐月が何かに気づき声を漏らす。すると前方に遠巻きでも分かるほどの宙に浮く暗色の巨大なコアを発見し、カドマツが同意する。
「ちょっと!? たくさん敵が湧いて来てるんだけど!?」
≪あぁやって自己増殖してるんだ。コアを破壊しない限り止まらないぞ。大丈夫だ、今、こっちでも手は打った。倒しきれるさ≫
バーニングブレイカー達がコアプログラムへ近づいた瞬間、コアプログラム周辺では無数のウィルスが出現し、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
ミサ達も応戦し、まさに乱戦になり、ミサがあまりの数に戸惑っているがカドマツは寧ろ余裕さを感じさせていた。
《コイツが同胞を狂わせた元凶か……。許さんッ!!》
同じロボットであるインフォが歪められてしまった。
その事にロボ太自身、感じる事があったのか、怒りのようなものを感じさせながら騎士ガンダムはナイトソードを振るい、次々に敵を切り裂いていく。
「ダンタリオンから逃げられる……なんて思った?」
その騎士ガンダムの近くでは陽太操るダンタリオンが二つのビームライフルシューティで手早くウィルスを撃破していた。逃げようとしたウィルスに対してもいつの間にか射出したシールドピットによって撃破する。
「私も負けられない!」
そんな弟の活躍に言葉通り、自分もと離れた場所からGNビームライフルロングバレルを構えたFAヒュプノスが撃ち抜く。ロボ太や陽太のような一騎当千ではないが、的確に仲間の援護にその力を役立てる。
「ッ……!」
表情を険しくさせる一矢の操るバーニングブレイカーは徒手空拳による戦いを始めていた。それはバーニングブレイカーを預かる前にシュウジから言われた教わった覇王不敗流を試す為のものであった。
聖拳突き、聖槍蹴り……その他にもシュウジから教わった技をガンプラバトルに織り込んで放つ。まだ覚えたてで難しくもあるが、それでも相手を粉砕するには確かな効果のあるものだ。
「……?」
しかしそんな一矢も何か違和感を感じる。
彼の視線の先にはモニターに映る影二操るMK‐Ⅵ改だ。その動きはどこかぎこちなく感じる。そう、それはまるで自分とバーニングブレイカーのように噛み合っていないかのように。
「拙い……!」
それだけではなかった。
次々にウィルスを撃破しているMK‐Ⅵ改であったが背後から放たれたガフランの攻撃に反応が遅れてしまっていた。このままでは直撃する。そう思い、何とかしようとバーニングブレイカーが動こうとした時であった。
どこからともなくMK‐Ⅵ改を包むように無数のドラグーンがMK‐Ⅵ改を囲い、防御フィールドを形成すると迫りくる攻撃を全て防ぎ切ったのだ。
「──みんな、大丈夫?」
一体、誰が……。そう思っていると通信が全機に鳴り響き、シミュレーターが反応する。
そこにはビルドストライクをカスタマイズしたスターストライクガンダムがこちらに向かって来ていた。そして何より驚いたのはスターストライクを操るのはヴェルであった。
「よぉお前ら、ここが踏ん張りどころだろ」
その近くには一矢のゲネシスもいた。
それを操るのはシュウジであり、あの後、ゲネシスを取り戻した後、シュウジはヴェルと共に出撃したのだろう。カドマツの言っていた手は打った、それは彼らの援軍の事であった。
「シュウジ君、私はまだ慣れてないから支援に徹するよ」
「了解!」
ドラグーンを再び射出しながらヴェルはシュウジに通信を入れる。
ヴェルは旅行に持って行ったりしてはいたが、まともにガンプラバトルを行うのはこれが初めてであった。ヴェルの言葉に頷きながらシュウジが操るゲネシスは飛び出す。
迫りくるウィルスに対し、ゲネシスのGNソードⅢのライフルが放たれ、一撃で撃ち抜くとそのままソードを展開して戦いを始める。
シュウジは別に射撃が出来ない訳ではない。カガミやヴェルには劣るがそれでも人並みには出来る。
ここで一矢とシュウジの違いが現れる。
GNソードⅢで戦う姿は同じではあるが、シュウジの場合、そこに体術を組み込んで戦うのだ。そしてそれを援護するスターストライク。互いに特に合図する事もなくガッチリと息の合ったコンビネーションは瞬く間に敵をせん滅し、そしてそのコンビネーションはヴェルのガンプラバトルに対する経験不足も補う程であった。
「今だ、決めろ一矢ッ!」
そうしたファイター達の活躍はウィルスが増殖するには間に合わない程の活躍を見せる。無防備となったコアプログラムに対し、シュウジが一矢に声をかけると、一矢はEXアクションを素早く選択する。
「───ッ!」
選択したのはバーニングフィンガー。
そして思い出すのはかつての一撃。
まさに見よう見まね。あの時のシュウジには遥かに劣る。
しかし一矢はこれを選んだ。
バーニングブレイカーは背面ジェネレーターを展開させ日輪を輝かせると右腕の甲に前腕のカバーが覆い、エネルギーが右マニピュレーターに集中して紅蓮の光を纏う。
腕に軸回転を加えて、肩、肘、手首の全て内側に捻り込むことで放たれた一撃はコアプログラムを深々と突き刺し、やがて破壊するのであった。
「やったぁ!!」
≪良いぞ、ウィルスは完全に除去することが出来た。再起動するから戻って来い≫
ウィルスのコアプログラムを破壊することに成功し、手放しにミサが喜んでいると、カドマツも褒め称えながら戻って来るよう指示を出す。
・・・
《再起動シーケンス 各デバイスチェック システムオールグリーン 再起動完了》
「うん、どこにも問題はないな」
戻って来た一矢達。丁度そこではインフォが再起動を行っており、先程まで毒々しく赤く光っていたカメラアイも今までのようなグリーンのものになり、インフォの様子にカドマツは安心する。
「インフォちゃん、私が分かる?」
《はい、ミサさん。ご迷惑をおかけしました》
再起動をしたインフォに恐る恐る問いかける。
するとちゃんといつもの様子でインフォは答えてくれ、ミサは先程まで弄られていた胸をなで下ろす。
「まったくこの店のありさまどうしてくれるんだい」
《マスター、申し訳ありませんでした。私を廃棄なさいますか?》
そんな中、イラトは店の惨状に文句を口にする。
確かにこれでは暫く営業は難しいだろう。そんなイラトにインフォがウィルスに侵されていたとはいえ己の行いの責任を取ろうとする。
「馬鹿言ってないでさっさと片付けな!」
しかしそんなインフォの言葉になにを言っているんだとばかりに怒りを見せるイラトは片付けの為、歩きだしてしまう。
《マスターありがとうございます……》
そんなイラトの背中を見つめながらポツリと感謝の言葉を呟いたインフォは主の後を追うのであった。
「ふふっ、私達も手伝おっか!」
「……ああ」
そんなイラトとインフォのやり取りを見て、良かったと笑うミサは二人だけでは大変だろうと手伝いをしようと一矢に持ちかけると、手伝う事自体に異論はないようで、頷きながら片付けに向かう。
しかし一矢は一度、影二を一瞥した。
当の影二自体、なにか考えるようにずっとMK‐Ⅵ改を見つめ、一矢の視線に気づくことはなかった。
さて、これにて四章も終わりです。本来、ゲーム通り進めるならば次回はジャパンカップですがその前に10000UAを記念した番外編を書こうと思います。
そしてその主人公は前作主人公こと如月翔です。
果たして今、彼に何が起きているのか、どう向き合っているのか、そして彼に起きた事件。そんな話を次回以降、予定しております。
まぁ実際、話の流れ的にはこの後の事でジャパンカップの前の話ではあるので本編に組み込んでも良いのですが、正直、前述のようにこの話は翔が主人公のようなモノなのでこの形となりました。
<いただいたオリキャラ&俺ガンダム>
エイゼさんからいただきました。
ガンプラ名:ガンダムMK‐Ⅵ改
WEAPONビームサーベル(Hi‐ν)
WEAPON ビーム・マグナム(バンシィ・ノルン)
HEAD:Zガンダム
BODY:ZZガンダム
ARMS:Hi‐νガンダム
LEGS:ライトニングガンダム
BACKPACK:Hi‐νガンダム
SHIELD:アームド・アーマDE(ユニコーン)
拡張装備:角型センサー×2(両肩)
シールド・ブースター×1(バックパック)
ビームランチャー×1(右肩部)
シールドビット×1(バックパック右側)
六連装ミサイルポッド(バックパック左側)
オプション兵装:頭部バルカン、フィン・ファンネル、腕部マシンガン、シールド・ブースター、シールドビット、ビームランチャー、ビームサーベル(ライトニング)×2
ガンプラ名FAヒュプノス
WEAPON:ハイパービームソード
WEAPON:GNビームライフルロングバレル(ジンクスⅢ)
HEADケルディムガンダム
BODYダブルオークアンタ
ARMSフルアーマガンダム(サンダーボルト)
LEGS:ファッツ
BACKPACK:V2バスターガンダム
SHIELD:シールド(フルアーマガンダム)
拡張装備:レドーム×1(右肩)
角型センサー×1(左肩)
Iフィールド発生器×1(胴下部)
GNフィールド発生器×1(バックパック下部)
マイクロミサイル×2(バックパック両側)
オプション兵装:二連ビームライフル、ロケットランチャー、メガ・ビーム・キャノン、マイクロミサイルランチャー、Iフィールド、GNフィールド、スプレー・ビーム・ポッド
切り札:二連ビームライフル切り上げ、トランザム
ガンプラ名:ガンダムダンタリオン
元にしたガンプラ:ガンダムバルバトス
WEAPON:ツインビームソード
WEAPON:ビームライフルシューティ
HEAD:バルバトス
BODY:ガンダムヴァサーゴチェストブレイク
ARMS:ガンダムデスサイズヘル
LEGS:レジェンドガンダム
BACKPACK:デスティニーガンダム
SHIELD:耐ビームコーティングマント
拡張装備:角型センサー×2(胴体両側)、フラッシュバン×1(左腰部)、ハンドグレネード×1(右腰部)、シールドビット×1(左肩後部)、ブレードアンテナ×1(頭部)
オプション兵装:シールドビット、高エネルギー長射程ビーム砲、ハンドグレネード、ディファイアント改ビームジャベリン、フラッシュバン、アロンダイト
切り札:トリプルメガソニック砲、光の翼(デスティニー)、ハイパージャマー
素敵なキャラやオリガンのご投稿ありがとうございました!