機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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我が胸貧乳~されどこの叫びは猛牛の如く~

「まさかえー君達もジャパンカップに進出するなんてね」

 

 イラトゲームパークに向かっているのは夕香が世話になっている美容院の看板娘である暮葉だ。そしてその周囲には三人の少年少女がいた。

 

 1人は右頬に線状の傷あり、その切れ長の瞳など少々、とっつきにくい印象がある青年である秋城影二(あきしろえいじ)だ。そしてその隣にいるのは三つ編みに赤緑の眼鏡を着用している篠宮皐月(しのみやさつき)。そして最後にそんな皐月にどことなく似ている篠宮陽太(しのみやようた)である。

 

 名前で分かる通り、影二は暮葉、そして皐月と陽太は姉弟である。

 しかしここで複雑なのは影二と暮葉は腹違いであるという事だろうか。そして影二、皐月、陽太の三人は熊本海洋訓練学校ガンプラ部に所属し、今度のジャパンカップにも熊本県代表として出場予定だ。

 

「……そう言えばここらの近くが彩渡商店街だったな」

「もしかしたら今から行くゲームセンターで会えるかもしれないですねっ」

 

 ジャパンカップ開催前に再会を約束した暮葉と影二。そしてそれに同行する篠宮姉弟。四人は再会を祝してガンプラバトルをする事となり、最寄りのイラトゲームパークへと向かっていた。

 

 暮葉の言葉に影二が周囲を見渡しながら何気なく答えると、隣を歩く皐月が楽しそうに頷く。今現在において全国の会場にライブ中継されその際、覚醒したゲネシスなど彩渡商店街ガンプラチームは注目されるチームの一つとなっている。

 

「あっ、あれかな」

 

 漸くイラトゲームパークが見え、陽太が指差す。

 少々、古臭さを感じないと言えば嘘になるが、逆にいえば古き良き懐かしさを感じ安心感さえ感じる外観だ。周囲は生活音が聞こえるくらいで騒がしいわけではない。まさに地元の近所にあるゲームセンターと言ったところだ。

 

 ところがそんな雰囲気を打ち砕くかのように破壊音による轟音が鳴り響く。

 和気藹々とイラトゲームパークを目前に迫った影二達は動きを止め、互いに顔を見合わせて困惑した様子を見せると、何が起きたのか確認する為、駆け足でイラトゲームパークに入店する。

 

 ・・・

 

 《オシゴトダイスキー》

 

 眼前に広がる光景を見て唖然とする。

 液晶が割れたゲームの筐体は無造作に倒れ、UFOキャッチャーの強化ガラスも割られて、大小さまざまなガラス片が床に散らばっている。そしてなにより一番目を引くのは壁に大きく開いた穴だろう。

 

 そんなまさに近所のゲームセンターの中には程遠い異様な光景の中、この騒動を起こしたであろうインフォだ。立ち尽くし、首を傾げこちらに普段とは違う赤色のカメラアイを向けるその姿は不気味な印象を感じる。

 

「いい加減にしないか、このポンコツが!」

 《お褒めにあずかり嬉しDEATH》

 

 そんな中でも店主であるイラトはインフォを止めようと、声を荒げて怒鳴る。

 しかしそれでもインフォは治まる素振りを見せない。店内にはイラトとインフォだけではない。この惨状に怯える子供、彩渡商店街ガンプラチームであるミサ、一矢、ロボ太、そして一矢に覇王不敗流を教えていたシュウジと暇潰しのヴェルもいた。

 

「しっかりしてインフォちゃん!」

 《お前のペチャパイこそしっかりしろよ》

「今、なんつった?!」

 

 ミサも悲痛な面持ちでインフォを説得しようとするのだが、すかさず返されたインフォの言葉に悲痛な面持ちも鬼のような表情に変わり、声を荒げる。

 

「──待たせたな、って酷いなこりゃ」

 

 激昂しているミサを他所に再び自動ドアが開くと、慌ただしくカドマツと青年二人が店の中へと足を踏み入れ、カドマツは眼前の惨状を見て、驚く。

 

「やっぱり最近、話題のウィルスか……?」

「多分な」

 

 カドマツと同時に入店した二人組。それはカドマツの同僚であった。千樹准(せんじゅじゅん)はインフォを生み出し、世に出した開発者である孤門憐(こもんれん)に問いかけると、憐は神妙な表情でインフォを見る。

 

「カドマツ、もう手遅れだよ……。インフォちゃん殺して私も死ぬぅっ!」

「落ち着け! ペチャパイくらいで命を無駄にするな!」

「パイは命より重いっ!!」

 

 そんな二人を他所に怒りが収まらぬミサは両拳を握り、呼び出したカドマツに怒鳴るように話すと、カドマツの制止も耳には届かず、もはや錯乱気味に喚き散らし、これには周囲のヴェルなども苦笑している。

 

「ほ、ほらミサちゃん、いつか大きくなる可能性だってあるし……」

「逆に言えば一生そのまま……。可能性に殺されるパタァーン……」

 

 ヴェルが何とかミサを落ち着かせようと、フォローを切り出すが、そのミサの隣にいた一矢がボソッと余計な事を口にしミサがピクリと震える。

 これには流石に近くにいたシュウジも「あっちゃー……」と言わんばかりに片手で顔を覆っていた。

 

「……っていうか元々なにもないなら重いもクソもないんじゃ……」

 《アップルパイにはアップルが入ってるけど、ペチャパイには何が入ってるのー?》

 

 そして再び思ったまま余計な事を口にする一矢とその後に続くようにインフォはミサを煽る。まずいと思ったカドマツがチラリとミサを見るが、もう既に遅かった。

 

「なにもはいってねええええぇぇぇんだよおおォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーっっっ!!!」

 

 それは見る者全てを魅了する一撃だった。

 空に昇る竜のように放たれた拳は標的を稲妻のような苛烈さを持って粉砕しようとする。

 風を切り、魂の叫びと共に放たれたミサの拳が一矢の顎先を直撃した瞬間、彼の身体は舞い散る花びらの如く軽やかに舞い、そして……地に落ちた。

 

「おいカドマツ、色んな意味でインフォより先にそこの坊主とこの娘が壊れちまうよ」

「婆さん、こいつのバックアップデータはあるか?」

 

 倒れている一矢は目を回して気絶し、ミサは鼻息荒くまるで猛牛か何かのようだ。

 その光景にイラトが何とかするようにカドマツに話すと、解決策はあるのか逆に問い返されるも即答で「ねぇよ」と答える。

 

「フォーマットすっか……」

「そりゃ困る! またゼロから仕事覚えさせるのかよぉ」

 

 困ったように頭をポリポリ掻きながら解決しようとするカドマツではあったが、そこに面倒そうに待ったをかけたのはイラトであった。

 

「仕方ねぇ……。ちょっと時間かかるが待ってろ。お前達にも手伝ってもらうからな」

 

 イラトの要望をくみ取り、それ以外での解決策を出す。

 しかしそれには準備がいるのか時間がかかり、まずはシュウジがカドマツの指示の元でインフォの強制停止ボタンを押し、沈黙化させる。

 

 ・・・

 

「準備出来たぞ、シミュレーターでこいつの中に入って直接、ウィルスプログラムを消去してくるんだ。外から誘導するからまずはシミュレーターに入れ」

 

 何やら機器の類がインフォに取りつけられている。

 技術者が何人かいる事もあり、滞りなくスムーズに終わりカドマツは説明をし、いまいちピンと来ていないミサにシミュレーターに乗り込むよう指示をする。

 

 しかしここで一つ問題があった……。

 

「大きな星がついたり……消えたり……」

 

 一矢は完全に気絶しており、武道を扱う経験から医療系の知識を持っているシュウジが当たり所が悪くないか一応、診ていると今も譫言のように何かを呟いている。このままでミサとロボ太だけになってしまう。それでは不味いとシュウジが名乗り出ようとした瞬間……。

 

「……人手がいるなら手伝うけど」

 

 名乗り出たのはシュウジではなく今まで見ていた影二であった。

 それは皐月達も同じなのか頷き、それぞれガンプラを取り出す。人手が多い方が良いという事もあり、カドマツは了承して、ミサとロボ太、そして影二達はシミュレーターに乗り込み、カドマツの指示の元、起動させる。

 

 ・・・

 

「なに……あれ……?」

 

 シミュレーターを起動し、ガンプラが投影されたフィールドは見慣れぬ光景だった。

 ここはインフォのメモリ空間、宙には何やらブロックが複数集まったようなものがふわふわと漂っており、落ち着きを取り戻したミサはカドマツに聞く。

 

≪問題のウィルスだ。今から奴らを退治出来るようにするからな≫

 

 ふわふわと浮いていたウィルスプログラムはカドマツと言葉と共にその姿をガフランに姿を変えると、ミサ達は信じられないような表情でモニターを見つめる。

 

≪ウィルスをガンプラに見えるように細工したんだ。そんでお前達の攻撃にはワクチンプログラムが付加してある≫

「って事はあのガンプラの姿をしたウィルスをいつもみたいに攻撃して倒せばいいの?」

 

 驚いているミサ達にカドマツが何なのか説明を終えると、ミサの問いに「その通りだ」と答えられる。

 

「……やる事は分かった、行くぞ」

「うん、よろしくね!」

 

 ならばいつも通りガンプラバトルの要領でやれば良い。

 既にウィルスであるガフランはこちらに攻撃をしかけようとする。影二はそんなガフラン達を捉え、相棒と呼べる程の愛機であるガンダムMK‐Ⅵ改を操作すると、ミサは笑顔で答えミサ達と影二達はウィルス除去へと向かう。

 

 ・・・

 

「……ぅっ……」

 

 ミサ達が戦闘を開始してから漸く一矢が目を覚ました。

 目を開けた一矢が見たのは、意識を取り戻した自分に気づいたシュウジだ。彼に身体の状態を問われ、特に問題もなく彼の手を取って起き上がる。

 

「今、ミサ達はインフォのウィルス除去に当たってる、大丈夫そうなら今すぐ行こうぜ」

「ああ……。……あれ……?」

 

 簡単に説明を受け、シミュレーターを親指で指さすシュウジに一矢が頷き、ゲネシスが入ったケースを取り出そうとするが、ある筈のものがない。

 何故だ、そう思い、周囲を見ると先程殴られた反動で離れたのだろう瓦礫の下に滑り込んでしまっていた。

 

「……仕方ねぇ……。あっちは何とかしてやっから今はひとまずこれ使え」

 

 どうしようかと右往左往している一矢にため息をつきながらシュウジはケースからバーニングブレイカーを取り出し、一矢に向ける。

 

「別に誰にでも貸してるって訳じゃないんだぜ。それに教えてやった覇王不敗流を試す良い機会じゃねぇか」

 

 良いのか、そう目で問いかけるようにシュウジを見る一矢に頷きながら暴れて来いと言わんばかりにその手に握らせる。

 

「ありが……とう……」

「ああ、これに懲りたら少しはデリカシーってモンを持てよ」

 

 おずおずと礼の言葉を口にする一矢に微笑を浮かべ、シミュレーターに向かって一矢の背中を軽く押すと一矢はカドマツの呼び声に頷きながら向かっていく。

 

「デリカシー……か。シュウジ君も色々とアレだしねー」

「止めてくださいよ……」

 

 一矢とシュウジのやり取りを黙って見ていたヴェルが悪戯気味に笑いながらシュウジをからかうと、彼も自覚はあり、過去に色々と問題もあったのか、気恥ずかしそうにそっぽを向きつつ瓦礫の間に滑り落ちたゲネシスの元へ向かうのであった。

 

 ・・・

 

  ≪どこかにウィルスを増殖させるコアプログラムがある筈だ。それを見つけて破壊するんだ≫

「……分かった……」

 

 シミュレーターに乗り込んだ一矢はカドマツからの説明を聞きながら、改めてシュウジから預かったバーニングブレイカーを見つめる。二度、戦い、そして圧倒的な強さを持って自分に勝ったガンプラを動かす事になるとは思いもしなかった。

 

「バーニングガンダムブレイカー……雨宮一矢、出る」

 

 しかしこれも良い機会だ。

 他人のガンプラであってもそこから学べる事もある。投影されいつもとは違うモニターに広がる光景を見ながら、一矢はバーニングブレイカーと共に出撃するのだった。




<いただいたオリキャラ&俺ガンダム>

エイゼさんからいただきました。

キャラクター名:秋城影二(アキシロエイジ)
熊本県代表チーム…熊本海洋訓練学校ガンプラ部主将、二年生17歳
身長:178cmの多少筋肉質
肌:褐色
髪型:ショートウルフ
目:切れ長
顔:右頬に線状の傷あり
性格:寡黙で、顔に表情が出にくいが…困ってる人を放っておけず手助けする一本筋の通った少年。
見た目で損するタイプであるものの、一度話すと大体好感を抱けるタイプでもある。本来は三年生だが、去年後述の篠宮 皐月(シノミヤサツキ)を交通事故から庇い、一年間の授業不参加の為である。
ガンプラバトルに関しては、オールラウンダーであり…機体性能を100%引き出し、また使える物は何でも使用するタイプで、必要なら…ライフルやシールドさえ、囮に使う。
後アイドル(KODACHI)のファンである

キャラクター名:篠宮皐月(シノミヤサツキ)
身長:168cm痩せ型、胸はそれなり
髪型:三つ編み
顔・肌:色白で赤縁眼鏡着用
性格:基本的には内向的な面が見受けられるが、勇気を出して人と接していける上、偏見を持たない為に結構友人がいる。
眼鏡を取ると、かなり美少女だが…本人は余り好きではない。
熊本海洋訓練学校ガンプラ部副将二年生16歳で秋城影二の同級生。
本来は後輩なのだが、去年部活帰りにて…道に出てた猫を助けようとし車に引かれる所を秋城影二に救われる。
本人はかなり罪悪感を覚えており、当初は避けていたものの、影二自体の許しや、タウン・リージョンカップを通じて、仲の良い同級生となっているようだ。
ガンプラバトルに関しては…基本的には狙撃タイプの機体を使うが、タウン・リージョンカップを経て…射撃寄り万能タイプに成長しており、又機動狙撃戦に関してはかなりの実力者として有名になりつつある。




キャラクター名:篠宮陽太(シノミヤヨウタ)
身長:164cm痩せ型
髪型:ショートカット、黒
肌:色白
性格:かなりのお姉ちゃん子で甘え上手。
他の人に対しても、基本礼儀正しいものの…影二に対してはかなり毒舌である。
内心は実力性格共認めてはいるらしい。男らしくあろうとするが…下手すると女子より女子らしさがあるらしい。
ガンプラバトルに関して:基本的に荒削りな点は否めないものの、近距離の戦闘に対しては天性の才と云うべき実力者。
奇襲強襲、一騎打ちもかなり強いものの、射撃はまだまだ改善余地ありらしい。

キャラクター名:秋城暮葉(アキシロクレハ)
年齢:22
身長:172cmモデル並み
胸:かなりのサイズ
性格:人当たりも良く、気が利くタイプ。但し、怒らせたら駄目なタイプ。
秋城影二の姉(母親違いの姉)彩戸商店街近くの美容室の美容師さんで、かなりの腕前であり、看板娘である。一時は影二と不仲ではあったが、現時点ではかなり良好な姉弟関係である。


トライデントさんからいただきました

名前
千樹准(せんじゅじゅん)
年齢
21歳
性格
正義感と野心の強い熱血青年
設定
姫矢と孤門の幼馴染みで、一人称は俺
元はカメラマンを目指していたが実を結ばず断念
今は孤門に頼まれハイムロボティクスで孤門の手伝いをしている、カドマツとも孤門経由で接点があり、よく酒を飲みに行く仲
ガンプラは好きだがバトルはしない(一応やってみたことはあるが、あまりしっくり来なかったとか)
好きな機体は陸戦型ガンダム(初めて見たガンダムが08小隊だからなんだとか)で、プラモを持ってるが装備させるのは100mmマシンガンという謎のこだわりを持っている。

孤門憐(こもんれん)
年齢
21歳
性格
明るく人懐っこい
設定
姫矢と千樹の幼馴染みで、一人称は俺
小さい頃からロボット工学に興味を持ち、勉強し続けた結果ハイムロボティクスの技術者となった、カドマツとはよく一緒に仕事をする仲
過去に様々なロボットを創り、世に出した実績を持つ(イラトゲームパークのインフォちゃんの産みの親なんだとか)
今はカドマツとは別のトイボットを創りたいと考えているらしい
好きな機体はガンダム試作一号機フルバーニアン、デザインやその他諸々が気に入ったが、0083での登録抹消という扱いに納得できてないんだとか(現にトイボットも試作一号機FBがモデル)

姫矢と千樹と孤門は高校時代、文化祭限定で『nexus』というバンドを組んでたが、それが大人気となり、学校を飛び出し世間でも話題となり今でもファンがいるらしいが、その時学校やクラスに頼み本名を明かさずに活動していたため同じ学校だった人間しか姫矢達が『nexus』の正体とは知らない(秀哉達ですら知らない)

素敵なキャラやオリガンのご投稿ありがとうございました!

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