もう夢のようだ……。もう知った瞬間、ブレーザー君みたいな声が出たもんね(ルロロォォイッ!!!
遂に始まったチーム対抗戦。
制限時間内に多くのポイントを手に入れた方の勝利となるこのバトルは単純に敵チームのガンプラを破壊するのでも良いがフィールド上にランダムで出現するPGクラス、もしくはMAの撃破でより大きなポイントがゲットできるという仕組みだ。
「──まさか君のようなファイターがいるとはね!」
宇宙空間を幾度となくぶつかり合う機体の姿があった。その内の一機は一矢のライバルでもあるウィルが駆るガンダムセレネスだ。
「それはこちらの台詞だよ」
対するはガンブレ学園前生徒会長であり、アラタとも因縁のあったシイナ・ユウキが駆るガンダムアルプトラオムだ。しかし一機に対するセレネスにアルプトラオムは三機で対峙しているのだ。
複数のファイターが複製したガンプラを使用しているのか? 否、三機のアルプトラオムは全てユウキ一人で操っているのだ。
「僕のセンスオブエクスパンションに対応できる存在がいるとは」
実質、三対一の状況にも関わらず、互角以上に渡り合うウィルには普段、気怠げにしているユウキも目を見張るものがあるのだろう。その声色からこのバトルが充実しているものであるのが感じ取れる。
ウィルとユウキのバトルのように下手な実力者では立ち入ることが出来ないバトルがあちらこちらで繰り広げられている。
「強ぇな、アンタ!」
マグマの如く力強い紅蓮の龍を思わせるような苛烈な攻勢を見せるのはアラタの相棒であるトモン・リュウマが駆るレイジングガンダムボルケーノだ。
「ったりめぇだ! お前こそまだ荒削りだが見所あるじゃねえか」
穿つように放たれたマニピュレーターを真っ向から同じくマニピュレーターで打ち返したのはシュウジのバーニングガンダムゴッドブレイカーである。
お互いに近距離特化型であるものの覇王不敗流の使い手であるシュウジに対してリュウマはただの学生だ。
しかしシュウジの言うようにまだ荒削りで未熟な面こそ目立つもののその天性の感の鋭さは目を見張るものがあるのか、相手取りながらもシュウジの声色はどこか高揚しているように聞こえる。
「ったく、あの筋肉バカ。はしゃぎまわちゃって」
「相方が誰かに夢中になってて嫉妬ってところか?」
遠目からでも苛烈な勢いを見せながらぶつかり合うバーニングゴッドブレイカーとレイジングボルケーノ。ガンブレ学園でも同じインファイターでリュウマ以上の実力を持つ者とは中々出会えないのだろう。その声色は明らかに高揚しているのが感じ取れるリュウマの様子にどこかぶっきらぼうな姿を見せるアラタに意地悪く一矢はくつくつと笑う。
「やっすい挑発ですね。味方じゃなかったらバトルしてるところだ」
「ああ、お前とまたバトルするのも良いが肩を並べるからこそ分かることもある。行くぞ」
意地の悪い一矢に不貞腐れたように答える。
今の一矢とアラタは同じチーム。アラタとしても一矢の言葉がなくともまた一矢とリミットブレイカーとバトルが出来るのなら願ってもないことだが今の状況がそれを許さない。
横一列に並び立った2機のガンダムブレイカーは間髪入れずに飛び出し、激しい戦闘に入る。一矢とアラタだけではない、
複雑な事情もなにもない。
ただ所狭しとこのフィールドに存在する素晴らしいファイターとそのガンプラに己の全てを持ってぶつかっているのだ。
「ずっとこんな時間が……」
そこまで言いかけて寂しげな微笑と共に飲み込む。どんなに素晴らしい時間でもそれは永遠ではないのだ。
もう如月翔という存在は人というカテゴライズから外れてしまった。
そこから自分は自分自身でさえ分からないなにかを求めるようになってしまった。それはまるで人から外れてしまった今の自分自身の存在理由を探し求めるかのように。
どんどん底を知らぬ暗闇のような思考の中に落ちていくなか、ブレイカーインフィニティのアラートがけたたましく接近する敵機の襲来を知らせる。
「……漸くお出ましか」
ブレイカーインフィニティに迫る影。
それは翔をこの世界に誘った奏が操るブレイカークロスゼロであった。識別反応を見る限り、奏は相手チームの一人であるようだ。
「父さん、この世界を楽しんでいるか?」
「そうだな、混乱もあったが楽しませて貰っているよ」
いまだ真意を語らない奏。
この世界に翔を誘ったのは何か意図があるものだろう。だが、それを抜きにしてもこの一時は今の翔にとっても価値あるものだと言えた。
「それは良かった。私としてもそうでなければ意味はない。どうせなら父さんには穏やかに、楽しいと感じている中で最後を迎えてもらいたい」
「随分と嫌な言い方だな」
奏も翔が楽しんでいる状況は喜ばしいものなのだろう。
しかしその言い方は語弊を招きかねず、思わず苦笑してしまう。
「そうだな。だがあえてそう言わせてもらう」
翔に合わせて奏も釣られて笑みをこぼすが、それも一瞬ですぐに思考を遮断するように目を閉じ、再びゆっくりと開く頃にはその瞳は明るく天真爛漫な奏には想像もつかない程、冷徹な瞳をブレイカーインフィニティに向けていた。
「これは英雄殺しの為の舞台なのだからな」
GNソードⅢの切っ先をブレイカーインフィニティに向けた冷淡な言葉。その娘の言葉は少なからず翔にとってショックを与えたようで思わず目を見開く。
「ッ」
が、その瞬間ブレイカーインフィニティの周囲からファンネルによるオールレンジ攻撃を仕掛けられる。
すぐさま回避行動に入るブレイカーインフィニティだがまるで挨拶代わりのようにすぐさま主の元へと戻っていく。翔も思わず相手は誰なのか目で追うが再び翔に衝撃を与える。
「ブレイカー0に……ネメシスだと……!?」
それはかつて翔か異世界で共に駆け抜けた愛機とも言えるブレイカー0とその世界で未来を切り開く為に散った機体であるネメシスであった。
思わぬ機体の登場に翔が動揺しているなか、ブレイカークロスゼロを挟むようにブレイカー0とネメシスは動きを止める。
「……どういうつもりだ、奏。それにその機体達は……!」
「言った筈だ。これは英雄殺しの舞台だと。その最後を迎えるには相応しい演者とは思わないか」
ブレイカー0、そしてネメシスは翔にとっては安易に触れられたくはない存在だ。だがそれ以上に奏がその2機の存在をなぜ知り、なぜ並び立ったいるのかという疑問も浮かび、複雑な感情のまま険しい表情を見せる翔に奏は以前として冷たい表情を崩さない。
話は終わりだとばかりに飛び出すブレイカークロスゼロ。斬りかかろうとするブレイカークロスゼロから咄嗟に距離をとろうとするもすぐさまブレイカー0とネメシスも行動を起こす。
(早い、しかしそれ以上にこの動きは……!)
奏だけでも相当な実力者だがブレイカー0とネメシスも負けず劣らずの動きを見せる。だが翔にとってはそれ以上にその2機の動きはある存在達を脳裏に過らせる。
「しまった……ッ!?」
少なくともそれが多少の動揺として現れたのだろう。
ブレイカークロスゼロに近づかれ、彼女の得意な距離に持ち込まれる。同時に背後からもブレイカー0とネメシスが近づいてくるのが分かる。このままでは翔と言えど撃破されるのは時間の問題であろう。
「……っ」
だがその時は今ではなかったようだ。
遠くに流星のように煌めいた光が走ったかと思えばそれはすぐさまブレイカーインフィニティとブレイカークロスゼロの間に入り、ブレイカークロスゼロが振り下ろした刃を受け止める。
「一矢君……!」
「大丈夫ですか、翔さん」
それは一矢が駆るリミットブレイカーであった。
思わぬ救援に驚く翔とは対照的に一矢は穏やかな声色で話しかけながらそのままブレイカークロスゼロを振り払う。
だがいまだ背後には迫るブレイカー0とネメシスの存在がある。だがその2機も突然自分達に放たれた高エネルギービームに阻まれ、距離をとる。
「アラタ君か!」
「どーも。招待状はないんですけど飛び入りでも構いません?」
そのままブレイカーインフィニティに合流したのはアラタのν-ブレイカーであった。相も変わらぬ飄々とした態度に翔は思わず微笑をみせる。
「──役者は揃った、といったところかな」
いつの間にかブレイカークロスゼロもブレイカー0とネメシスに合流し、三機のガンダムブレイカーに相対する。リミットブレイカーとν-ブレイカーは想定の範囲内だったのか奏に動揺は見られなかった。
「ならばフィナーレを迎えようか」
同時に奏の瞳は虹色に変化し、ブレイカークロスゼロは輝きを纏う。それは巨大なプレッシャーとしてガンダムブレイカー達を襲うなか、英雄殺しの舞台は幕を開けるのであった。
現在、このファイナルの最後にイラストを投稿しようと『ひさかたの』からアンケートを取っております。
よろしければご協力お願いします!
何かこの話の最後にイラストを投稿しようと思ってますがどの組み合わせが良いでしょうか?(24/3/5まで)
-
一矢&希望
-
翔&奏
-
翔&一矢&アラタ
-
リーナ&夕香&レイナ
-
一矢&夕香
-
夕香&シオン
-
希望&奏
-
一矢&優陽