機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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エントリーグレードのラーガンダムを作ったんですけど、EGはあまり組んだことはありませんが中々のクオリティで驚いてます。


ブレイカー 次元を越えて

 リミットブレイカーとν-ブレイカーのバトルを見届けた翔はその後、シミュレーターのマップが示す最寄りのベースキャンプへと向かった。一度ログアウトをしようと考えたが、奏、リーナ、風香が意味もなくあのような行動をするとも思えず、暫くはこのVR空間にいる事にした。

 

「──近くで反応があるなぁとは思ってたけど、まさかアナタだったとは」

 

 ブレイカーインフィニティを格納庫に収め、ブレイカーインフィニティから降りてきた翔に声をかけたのは先程までバトルをしていたソウマ・アラタであった。

 

「どーも……って、何ですその顔、いくらこの天っっっ才ガンプラビルダーに久しぶりに会ったからってそんな信じられないものを見るような目をしなくたっていいでしょうに」

「いや、しかし君は……」

 

 やはりν-ブレイカーを操っていたのはアラタで間違いはないようだ。

 しかしだとしても今、自分達の世界にアラタがいるなんてことはあり得ない筈だ。しかしそんな翔の心情を他所にどこ吹く風か、アラタは飄々と三本指をクルリと回す。

 

「なに食ってたら、そんな事恥ずかしげもなく言えるんだ」

 

 そんな翔とアラタの間に入ってきたのはリミットブレイカーを駆る雨宮一矢だった。

 しかし自分の知る一矢は少なくとも実年齢は50歳に近い。だが目の前の一矢は自分にとっても印象深い30年前の青年の姿だったのだ。

 

「翔さん、いつの間にこんなガンプラを作っていたんですね。ブレイカーネクストも良いガンプラだったけど、このガンプラも良い」

「ホントホント。翔さんのガンプラを目にしたのは初めてだったけど、細部までの作りこみ……。マリカちゃんにも見せてやりたいな」

 

 ここでまたしても翔は驚いた。

 アラタは兎も角、ブレイカーインフィニティを見た一矢の反応だ。少なくともブレイカーインフィニティを自分が知っている一矢は知っている筈だ。しかし目の前の一矢は初めて見るようではっきりと表には出さないものの感激しているのが見て取れる。

 

「……すまない、一矢君、アラタ君。状況を教えてくれないか? 君達二人はなぜここにいる? ここは何なんだ?」

 

 遂に耐え切れなくなったのか、翔は口火を切る。

 自分だけが知らないこの状況、少なくとも目の前の二人は何かを知っていると思ったからだ。

 

「……いや、俺達も詳しい事は。気付いたらここにいたとしか言えないんですよ」

「でも、この感覚……。NEWガンダムブレイカーズでしたっけ? あれに似てるってさっき一矢さんと話してたんですよ」

「まさかあの時のガンダムがお前だったとはな。あの時と違って、カスタマイズされたガンプラだったし、興味本位でバトルをしたら熱が入り過ぎてしまった」

「俺もですよ。でも一矢さんってバトルスタイルもイチカさんに似てるんだよなぁ……。本当に兄妹や親戚にいません? 一矢さんに雰囲気がそっくりなんですよ。まるでそう……一矢さんが女性になったような」

「いや知らないが……」

 

 一矢とアラタの会話を他所に翔は思考を張り巡らす。

 

 NEWガンダムブレイカーズ。

 それは翔も関わったゲームの名だ。ゲームとは名ばかりに翔の思惑を持って行い、その際、エヴェイユの力を開放して次元を超えてガンダムブレイカーの使い手たちを一同に会し、一丸となって敵を打ち破った。

 

(ならばここはNEWガンダムブレイカーズのような空間なのか。しかし奏達はわざわざどうして)

 

 目の前の一矢とアラタがNEWガンダムブレイカーズに呼び寄せられた存在なのであれば先程の一矢の反応も、奏達の行動も説明がつく。だとしても自分でも負担が大きかったNEWガンダムブレイカーズの世界を今一度作ろうなどと考えたのだろうか。

 

「──おかえりー」

 

 どんどん思考の渦に呑み込まれていく翔だが、ここで現実に引き戻される。VRだが。

 聞き覚えのある可憐な声が耳に届き、誘われるかのように視線を向ければこちらに向かって手を振りながら駆け寄る南雲優陽の姿があった。

 

「凄いバトルだったねー。アラタ君も一矢が興味を見せただけあるよ」

 

 優陽もまた一矢のように30年前の出で立ちで考えるにNEWガンダムブレイカーズ同様、この世界に呼び寄せられたのだろうか。相変わらず愛らしい容姿のままポンと胸の前で手を叩いて一矢とアラタの健闘を称えると視線をそのまま翔へと移す。

 

「翔さんもやっと来たね。って言っても僕らもこの間みたいだとは思ってるけどそれ程情報は知らないんだけどね」

 

 以前のNEWガンダムブレイカーズにはかつてシーナ・ハイゼンベルグと同化していた如月翔がいたが、今回はどうやら状況が違うらしく、少なくとも優陽達とはまだ出会っていないようだ。

 

「そうだ、そろそろミサちゃんやユイちゃん達のバトルも終わって戻って来るよ。折角だから迎えに行こうよ。年も近いのもあって意気投合してバトルしに行っちゃうんだから微笑ましいよね」

 

 かつてのNEWガンダムブレイカーズはガンダムブレイカーの名を持つ者だけが次元を超えて集結した。しかしだからこそ今の優陽の言葉は決して聞き逃すことは出来なかった。

 

 ミサは当然ながら一矢とチームを組んでいる彩渡商店街の彼女だろう。

 そしてユイ……。恐らくだがこれがアラタが通うガンブレ学園に在籍するアラタの先輩の筈だ。

 

 ミサとユイの年が近い……。と言うのであればミサやユイ達もまた一矢達のようにこの空間に呼ばれたのか? 

 疑問だけが頭に浮かぶが、その後優陽に連れられて向かってみれば、確かにそこにいたのはかつてのミサであり、ユイもまたガンブレ学園に通う少女だった。

 

 ……

 

(奏……。なにを考えている)

 

 その後、このVR空間を回れるだけ回ったが、やはり次元を超え、自分が良く知る存在達がこの場に集まっていた。皆、状況は飲み込み切れてはいないものの各々で割り切っているのか、今はそれぞれこのVR空間でガンプラやバトルを楽しんでいた。

 

 しかしいくら探しても奏の姿はなかった。いや、それどころかリーナや風香もだ。

 ベンチに座って思考を張り巡らせる翔にふと陰が差し込む。見上げてみれば、そこいたのは義理の息子であるラグナ・ウェインであった。

 

「お疲れ様です、父さん。流石に疲れてしまいましたか」

「ラグナ……。お前は」

「ははっ、奏に誘われてこのVR空間に大分しましたが、まさかNEWガンダムブレイカーズのような状況……。いやそれ以上の規模になっていますね」

 

 そのまま流れるように翔の隣に座ったラグナは翔を気遣う。

 少なくとも隣にいるラグナは翔が知っているラグナであるようで、その点に関して安心したようだが、どうやら彼も奏に招待されてこの空間にやって来たようだ。

 

「……こうやって父さんと話すのは久しぶりですね」

「お互い社会人だからな。中々話す機会と言うのもないだろう」

「そうですね……。ですが私はそれでも寂しさを感じてしまいました」

 

 どこかしんみりとした口調で話すラグナに翔は苦笑する。

 翔は一人の経営者であり、ラグナは教職員だ。中々話すだけでも時間を合わせるのは難しい。それは承知の上でもラグナは子供みたいですよねと付け加えながら笑う。

 

「最近の父さんはまるで何か探しているかのようでした。いや、今もでしょうか……。それだけならまだ良い。でも今の父さんは放っておけばこの世界から消えてしまうかのようなそんな印象すら抱いてしまうんです。だからこそ以前、一時的とはいえ消息を絶った時は気が気じゃありませんでした」

 

 その言葉に思い当たるものがないと言えばウソになる。

 翔は確かになにかを探している。それは自分でさえはっきりと分からない曖昧なものだ。だからこそ世界を渡り、アラタ達に出会った。最もその世界の移動に費やしていた時間のせいで何も知らないラグナ達にはいらぬ心配をかけてしまったが。

 

「そうだな……。確かに俺は何かを探しているのは間違いない。だが心配をかけてしまったのは反省しなければな」

 

 翔はエヴェイユを超えた存在だ。だからこそこんな自分の意味を探していた。

 シーナ・ハイゼンベルグ、ルスラン・シュレーカーの能力を受け継ぎ、如月翔という個が曖昧になってしまったからこそ曖昧なまま答えを探していた。しかしそれでも翔にとって心配をかけさせてしまったのは本望ではないのだろう。ラグナの頭を撫でながら困ったように笑い、つられるようにラグナも笑うのだった。

 

 ……

 

「VRなら空間だって気にしなくて良いし、思いっきりPGア・バオア・クーを作るぞー!」

「「「おぉーっ!」」」

 

 その後も翔は改めてこのVR空間を回ってみた。

 すっかり意気投合したのか、ミサを筆頭にユイ達と協力して夢のPGア・バオア・クーを作ったり

 

「ラグナ先生、すんげぇ鍛えこみだな! どんな筋トレしてんだ!?」

「お前はそればかりだな筋肉馬鹿」

 

 筋トレが趣味のアラタの相棒であるトモン・リュウマは衣服越しでも分かるラグナの鍛え抜かれた肉体に目を輝かせて詰め寄るがすかさずアラタのツッコミが入り、ラグナも思わず苦笑してしまっている。

 

「「えっ」」

「パパと……似てる……。やっぱり女の子のパパ……?」

 

 異世界の、それも異性になっている自分にばったりと出くわし、目を丸くする一矢の横で娘である希空もアラタ達の世界に訪れた際に見かけた事のある目の前にいる驚きでパクパクと口を開けるアマミヤ・イチカに視線を向ける。

 

 どこもかしこも賑やかだ。

 思わず翔も笑みを零してしまうなか、手持ちの携帯端末に着信が入る。相手は如月奏であった。

 

≪バトルフィールドで待ってる≫

 

 文面にはそれだけしか書かれていなかったが同時にVR空間の至る場所で立体映像が表示される。

 

『ハーイ、みんな! この空間は楽しんでる? 新しいイベントをお知らせに来たよ』

 

 映像には優陽の姪である姫川歌音の姿が。

 どうやらNEWガンダムブレイカーズのようにナビゲーターを務めているらしい。

 

『いよいよ本イベントの目玉であるチーム対抗ガンプラバトルが開かれるよ! 我こそはと思うファイターはVRハンガーへ向かってエントリーしてね!』

 

 バトル内容は大型チーム戦。どうやらエントリーして自動で割り振られたチームによって勝敗を決するような内容のようだ。このVR空間にいるファイター達にこのイベントを無視するという選択肢はそもそも存在しないのか、我先にとチーム戦へのエントリーを行う。

 

「乗りかかった舟という奴か……。奏、お前がなにを考えているか分からないが最後まで付き合ってやる」

 

 この空間自体、何らかの奏の思惑が絡んでいるのだろう。

 だが相手は奏だ。決して悪いようにはしないだろう。翔のまたチーム対抗戦にエントリーを済ませてコックピットに乗り込む。

 

「ガンダムブレイカーインフィニティ 如月翔、出る!」

 

 チームが割り振られ、いよいよ出撃の時となった。

 多くのファイターが参加するであろうバトルに胸躍るなか、ブレイカーインフィニティはバトルフィールドとなる宇宙空間へ出撃していくのであった。




半年前に描いた優陽

【挿絵表示】

何かこの話の最後にイラストを投稿しようと思ってますがどの組み合わせが良いでしょうか?(24/3/5まで)

  • 一矢&希望
  • 翔&奏
  • 翔&一矢&アラタ
  • リーナ&夕香&レイナ
  • 一矢&夕香
  • 夕香&シオン
  • 希望&奏
  • 一矢&優陽

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