「皆さん、本日のイベントは楽しまれているでしょうかー! 本日の目玉であるGGF博物館5周年セレモニー・ガンプラバトルイベント、楽しまれているでしょうかっ!」
GGF博物館内でも一際人が集まる場所があった。
多くの視線を集めながら巨大スクリーンをバックにMCを務めるのは御剣コトであった。今なお現役で活躍するコトの知名度は高いのだろう。彼女の一挙手一投足に歓声が上がる。
どうやらコトはこのガンプラバトル大会のMCを務めているようだ。彼女のバックのスクリーンに映像が映し出される。それは機動戦士ガンダムに登場する開いた傘のような独特な外観の宇宙要塞ア・バオア・クーだった。
「このア・バオア・クーステージが今回のイベントステージです。しかし一年戦争の再現、というとまた違います。今回再現したのはガンプラブームに再び火を点け、後々続くシリーズの始祖ともなったガンダムビルドファイターズの最終決戦のステージなのです!」
どうやらア・バオア・クーをステージにしてもそれは機動戦士ガンダムの最終決戦を再現、というよりはガンプラを扱った作品であるガンダムビルドファイターズをベースにしたステージだったようだ。
「こちらは原作同様にプレイヤー8名によるア・バオア・クー最深部に存在する巨大アリスタの破壊したタイムを競っていただいております。しかしプレイヤーに立ち塞がる相手も伊達でありません。GGFのスタッフが用意した敵機体達、そして運営側が招待したファイターの中からピックアップされた方々が皆様の前に立ち塞がることでしょう!」
ベースをガンダムビルドファイターズの最終決戦にしつつGGF博物館ならではのアレンジが施されているようだ。用意された敵機体も気になるところだがやはり一番は運営側が招待したのはファイター達だろう。
「それでは早速、プレイしているプレイヤーさん達を見ていきましょうっ!」
説明も程々にコトの言葉をきっかけに背後に映っているア・バオア・クーの映像が切り替わり、実際にプレイヤー達が遊んでいるステージの様子が映し出される。
・・・
「いよぉーしっ! 碧、いっくぞー!」
「まったく少しは落ち着きを持ったらどうだ」
バトルステージを映すモニターには風香のエクリプスと碧のロックダウンが真っ先に映り、二人の会話こそ外部には届かないものの迫りくる敵機体とバトルを繰り広げながら二人らしい掛け合いをする。
「敵機体もHGサイズだけなら良かったんだけど……ッ」
「まさかPGサイズが連続で出てくるとはな……」
そんな二人を他所に天城勇が操るバアルと一風留が駆るアストレイブラッドXが巧みな操作でア・バオア・クーから張られる弾幕を搔い潜りながら苦々しい表情を浮かべる。二機の視線の先にはPGクラスのゴッドガンダムとウイングガンダムゼロが行く手をふさいでいた。
PGサイズはその巨躯から攻撃を当てる事自体は容易い。しかしイコールで簡単に撃破出来るわけではなく、その堅牢な装甲と高出力の攻撃はかすっただけでも一たまりもなくプレイヤーを苦しめる。これこそがGGFのスタッフが用意した敵機体のメインだ。
「──きゃあぁっ!?」
その時だ。ストライクレイスを操る一ノ瀬春花が悲鳴を上げる。勇達が確認してみれば、ストライクレイスは大きく被弾し、何とか後方に退くことが精いっぱいのようだった。
「簡単には行かせないぜ。なんたって俺は英雄だからな」
そんなアストレイブラッドX達の前に立ちふさがるのはトールギス・アキレウスであり、ファイターはもちろんアキレアス・アンド蘆屋淄雄レウだ。自信満々に言い放つ彼と共に並び立つのはアリシア・カサヴェテスのダソス・キニゴスとヘラクレス・サマラスのヘラク・ストライク。ここにネオ・アルゴナウタイが集結した。
何故、ネオ・アルゴナウタイが立ち塞がるのか。それは彼らが運営に招待されたファイターだからだ。チームで活躍する彼らの連携にたちまち挑戦プレイヤー達は窮地に追いやられる。これには観戦モニターで自分の番を待っていた風留の知り合いの天音勇太と天音千佳、春花のチームメイトの上代裕喜も不安げな様子だ。
「うおおぉらぁあっっ!!!」
しかしその中で劣勢の状況を切り払うように飛び出したのは挑戦プレイヤーの一人である拓也が駆るBD the.BLADE ASSAULTであった。疾風の如く飛び出し、トールギス・アキレウスに試製9.1m対艦刀を振り下ろすが受け止められてしまった。
「よくやったっ!」
「ああ、ただ負けっ放しってのは柄じゃないんでな!」
すかさず挑戦プレイヤーの最後の二人である蘆屋淄雄のリグ・コンティオとかつてジャパンカップにも出場していた秋田県代表チームの一人、大和清光の試製特参式歩行戦車一番機“暁”の援護射撃が加わり、トールギス・アキレウスを怯ませると自身の武器を受け止められていたBD the.BLADE ASSAULTはその隙にトールギス・アキレウスの片腕を切断することに成功する。
その様子に観戦モニターで固唾を飲んで見守っていたかつての秋田県代表の赤城国広、日向国永、加賀小夜や淄雄と共に遊びに来ていた留守佳那は知人の活躍に喜び、会場もさらに盛り上がる。
・・・
「盛り上がってますねー!それでは次のブロックの様子を見てみましょう!」
立ち塞がるPG機体とネオ・アルゴナウタイに圧されながらもいまだプレイヤー達の戦意は衰えていない。それはこの状況すら楽しむようにも見える。その様子が画面からも伝わってくるなか、コトは違うバトルを映像に映し出す。
そこに真っ先に映ったのはウィルが操るセレネスとシオンが操るキマリスヴィダールの激しい近接戦であった。
・・・
「……」
そしてその様子を死んだような目でいるのは夕香であった。彼女が操るバルバトスルプスレクスも覇気もなくただ宙に漂っている。その視線の先にはセレネスとキマリスヴィダールがおり……。
「いい加減に諦めたらどうだい!」
「それはこっちの台詞ですわぁっ!」
セレネスとキマリスヴィダール、どちらもファイターの好みもあって近距離を主としている。そんな二機を操るファイター達は幾度となく自身の獲物を交わしながら接触回線で叫ぶように言い合っていた。
当初こそ夕香とシオンを含めた8名でプレイをしていたのだが、招待ファイターとして行く手を阻んだのはよりにもよってウィルのセレネスであり、シオンとぶつかり合うのにそう時間はかからなかった。
「本当に夕香が絡むといつもあぁだよな」
「それだけ大切な存在って事なんでしょうけどね」
ウィルと同じく招待ファイターであり、挑戦プレイヤーに立ち塞がっていた村雨莫耶とアメリア・マーガトロイドが何とも言えず苦笑しており、こんな所でもまたやってるよと言わんばかりだ。
「いつまでも粘るじゃないか。さっきもそのせいで決着がつかなかったが、ここで終わらせるよっ!」
「ぬぬぬぅぅっ! 勝った方が夕香とという約束でしたがアナタに負けるくらいならわたくしの服とお父様の服を一緒に洗った方がまだマシですわっ!」
「フンッ、僕はこの日を心待ちにしていたんだ。君に譲るくらいならミスターのアフロを継いだ方がマシだね!」
元々、実力を持ち合わせているシオンだがそれでもウィルを相手にするには分が悪いのか何とか落とされないようにするのが精一杯だった。しかし僅かな隙が命取りとなり、遂にキマリスヴィダールの左腕ごとバックパックを切断されてしまう。
負けず嫌いのシオンがこれ以上になく歯を食いしばり、画面に映るセレネスを眼光鋭く睨みつけるがその行動がウィルの行動を阻めるわけでもなく遂にセレネスが刀を振り被る。
「──なっ」
しかし直後に閃光の如し影がセレネスを吹き飛ばしたのだ。
「あれは……ガンダムタブリス!?」
「どうして……? 彼女は挑戦プレイヤーの中にはいなかったでしょう?」
誰もが予想しなかった出来事に啞然とするなか、張本人であるガンダムタブリスがキマリスヴィダールを守るようにその場にいるではないか。思わずこのフィールドの挑戦プレイヤーの一人である神無月正泰と麻沼シアルが理由が分からず困惑した様子を見せる。
「──ビルドファイターズの最終決戦には援軍がいただろう?」
「それが私達というわけです!」
そんな正泰達にPG Zガンダムがビームライフルを向けようとする中、上方からの攻撃に破壊されてしまった。次から次に起こる出来事に挑戦プレイヤー達が戸惑うなか、PG Zガンダムを流れるように撃破したのは御剣ジンのユニティーエースガンダムと御剣サヤのジョイントエースガンダムであった。
ジン達は招待ファイターだ。しかし何故、エネミーではないのか。それは彼らの言葉通りだ。運営側が用意したPG機体と世界最高峰のファイター達。ただそれが相手ならば挑戦プレイヤーはあまりにも不利だ。だからこそ運営が用意したのは一定時間後にまた別の招待ファイターを援軍として参戦させることであった。
「まっ、そういうわけさ。シオンを守るのはボクの役目だし、君との決着もついてなかったしね」
これに関しては挑戦プレイヤーにはサプライズだったようで誰もが驚いている。最も同じ招待ファイターであるウィルはその事自体は知っていても折角のチャンスによりにもよって世界トップレベルのセレナに邪魔されたことで苦虫を嚙み潰したようタブリスを見つめている。そんなウィルを知ってか知らずか、そよ風を受けたかのような涼し気な表情を見せながらセレナのタブリスはセレネスに向かっていくのであった。
・・・
「──それでは最後にこのガンプラバトル大会を締めくくる最後のバトルです!」
それから数十分後、応募者のバトルを全て終えたのを確認したコトはMCとして観客に告げる。
「最後は招待ファイター8名による攻略戦です! 条件はこれまでのステージよりも跳ね上がった難易度ですが、どれほどの活躍を見せてくれるのか! それでは紹介を兼ねての出撃です!」
招待されたファイター達は知名度のあるファイター達だ。自然と観客の注目が集まるなか、コトは大きく手を上げると背後のモニターの映像が切り替わり、今まさに出撃しようとするカタパルト画面を表示させる。
・・・
「秋城影二、ダウンフォール……行くぞ」
「砂谷厳也、クロス・ベイオネット……出撃じゃ!」
「ガンダムゼフィランサス フルバーニアン、オリバー・ウェインで行くのよォん!」
「セレナ・アルトニクス、ガンダムタブリス、飛翔するよ」
「ガンダムセレネスだ。出すよ」
「南雲優陽、EXガンダムブレイカー……推して参るよ!」
「アザレアリバイブ、行きまーすっ!」
「雨宮一矢、リミットガンダムブレイカー……出るっ!」
選ばれたファイター達はそれぞれの誇りを胸にア・バオア・クー宙域に出撃していくのであった。
セレナのイラストがNewガンブレ小説からの使い回し? そいつぁ言わねぇお約束よ。予定では次回で完結予定です。