機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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今回は刃弥さんからの原案を元にした投稿です!ありがとうございます!


コト!KOTO!スクール!

覇王達との別れから数週間が経過したここ聖皇学園。そのクラスの一室では落ち着きなく生徒達がざわついていた。彼らの視線の先には教壇があり、そこには一人の少女の姿があった。

 

 

「KODACHIこと御剣コトです。少しの間ですが、よろしくお願いしますっ」

 

 

それは聖皇学園の制服を身に纏ったコトであった。教室の後方にはカメラマンなどのスタッフもおり、カメラが回るなか、転校生のようにコトは挨拶をするのであった。

 

・・・

 

 

「体験入学…ですか?」

 

 

それは一週間ほど前のこと、テレビ局の打ち合わせにてコトは局員であるプロデューサーから持ちかけられた企画の名を口にする。

 

 

「そ。この間、コトちゃん、学生生活を体験してみたいって言ってたでしょ。だから今度やるバラエティ番組の企画の一つとして組んでみようと思っているのよ」

 

 

その番組を担当するプロデューサーの女性はフレンドリーに話しながら、先日のことを話す。実はコトはアイドルとしての活動に専念するために学校に通わずに通信教育で高校生の課程を修了しようとしている。その為、学生生活というものにある種の憧れがあり、それをこのプロデューサーとの食事の際に何気なく話したのだろう。それを番組の企画として面白いと考えたのかこうしてオファーしてきたようだ。

 

 

「因みにコトちゃんはこの学校が良いみたいのある?」

 

「どこか…ですか…」

 

 

企画である以上、当然、面白いものにしたい。これはその為の打ち合わせなのだ。コトの意見を聞こうと、彼女の希望を尋ねるプロデューサーにコトは考える。それこそオファーを出す学校の都合もあるとはいえ、それでも数多くの学校がある。

 

 

「…それなら」

 

 

やがて思い立ったのか、コトは顔をあげてプロデューサーに学校の名を口にするのであった。

 

・・・

 

 

「それで聖皇が選ばれたんだ」

 

「うん、夕香ちゃん達がいるしね」

 

 

昼食を摂りはじめながら経緯を聞いた夕香にコトは知り合いである存在が多く在籍しているこの聖皇学園を選んだことを明かす。

 

 

「でも、コトちゃんがいるなんて変な感じよねー」

 

「あははっ…でも普段通りにしてくれて良いよ」

 

 

するとサンドイッチを頬張っていた祐喜が同じ制服を着て、授業を受けて、そして何よりこうして昼食をとっていることに不思議そうに話すと、その言葉に苦笑を交えながらも気心が知れた者同士、変に気を使う必要はないと話す。

 

 

「コトちゃん、少し良いかい?」

 

 

するとテレビスタッフの一人が夕香達と昼食をとっているコトに声をかけた。

 

 

「あそこにいる雨宮一矢君も知り合いなんだろう?ちょっと誘って、一緒に食事を取ってくれないかな?」

 

 

スタッフは窓側の席で丁度、昼食を取ろうと席を立っている一矢を一瞥しながら昼食を共にして欲しいと持ちかけてきたのだ。

 

 

「あ、一矢君…」

 

「…」

 

 

スタッフの言葉に怪訝そうな様子ながら、コトは一応、一矢に声をかける。丁度、コト達の横を通り過ぎようとしていた一矢は足を止めて、静かにコトを見やる。

 

 

「一緒にご飯でも…」

 

「…今から昼飯食うからいい」

 

 

昼食を共にしようと誘うコトだが、一矢はチラリとテレビスタッフ達を一瞥すると、コトの誘いを淡々と一蹴して、我関せずと早々に教室を去っていく。

 

 

「怒らせちゃったかな…?」

 

「別に怒ってないよ。ただ見世物にされるのが嫌だったんでしょ」

 

 

いつにも増して、素っ気なく感じる一矢の態度に苦い顔を浮かべるコト。そんな彼女に夕香は一応のフォローをする。

 

 

「イッチは静止軌道ステーションを二回も救ったし、ウイルス事件を解決した立役者だしね。体験入学ったってテレビ的にも盛り上げる為に多少なり一矢に注目しようとするでしょ。【KODACHIはあのガンダムブレイカーとも友人!】ってね。でもそれはテレビの都合だし、そんな見世物にされるのはイッチも嫌なんだと思うよ」

 

「見世物って…。私はそんなつもりは…」

 

「そうだね。だからコトは悪くないよ。イッチもカメラが関係ないところなら普通に接してくれると思うし」

 

 

一矢はインタビューの類はミサに丸投げするほど目立つのは好きではない。夕香の言葉に突き刺さるものを感じたコトは否定しようとする。確かに聖皇学園を選んだコト自体に悪気があったわけではないだろう。そんな彼女を気遣い、言葉をかける。

 

 

「まあコトが来てるって時点で皆、浮き足立ってるんだし、そこにカメラもあるからね。コトに声をかけようとする人もいれば、カメラがあるからって遠慮してる人もいるし、普段通りってのは土台無理な話だよ」

 

 

夕香は周囲をチラリと見やる。確かに良い意味でも悪い意味でもクラスがざわついており、他のクラスの生徒達もコト目当てでこの教室に訪れたりしているのだ。

 

 

(普段の、か…)

 

 

確かに先程、普段通りにしてくれていいと言ったが、確かにそれは無理な話なのかもしれない。一矢が教室をさっさと出て行ったのも、この空気感が嫌だったのだろう。悪いなと感じつつもコトはふと普段の一矢達について考え始めるのであった。

 

・・・

 

 

「えっ?普段の雨宮君?」

 

 

休み時間、コトが声をかけたのはたまたま集まっていた聖皇学園ガンプラチームであった。突然、一矢のことを聞かれた真実は僅かに驚いた表情を浮かべる。

 

 

「そうだね。雨宮君はまず朝起きられないし起動するまで兎に角長いから、髪のセットとかネクタイは夕香がやってるらしいよ。で、登校中もまだ完全に目が覚めてないからそこで雨宮君に声をかけると、いつもと違った可愛さがあるんだ。でも、そんな雨宮君も一転して授業を受けてる時とか一人でいる時のミステリアスな感じがさっきの可愛さとのギャップになって凄く格好良いんだよね。あぁこれ昔撮った写真ね。雨宮君は世俗的なことに興味がないんだけど、だからこそガンプラやガンダムの話を持ちかけると静かだけど言葉に熱を入れてくれるんだ。でもそんな雨宮君も授業で分からないことがあれば、面倒臭がりながらでも親身に教えてくれたりと──」

 

「アイツ、雨宮の話になると早口になるよな」

 

「…諦めたって言っても、これまでの好感度がスッパリと0になる訳じゃないってことでしょ。最早、布教だよ」

 

 

聞いた相手が悪かったようで自身の携帯端末のデータから過去の一矢の盗撮(写真)を見せながら捲し立てるように話す真実に押され気味のコト。そんな真実を見ながら白い目で呟く拓也と勇だが、とりあえずそんなことを言った拓也は真実に腿の裏を蹴られる。

 

 

「ところでこの間、雨宮君が後輩と話してた時のことなんだけど」

 

「あ、あぁその話は今度で良いかな…。そ、そうだ!普段の夕香ちゃんとかはどうかな?」

 

 

一人悶絶してる拓也を他所に再び一矢の話に戻ろうとする真実っから慌てて話を変えるコト。このままでは一矢の話だけで学園生活が終わってしまう。変えた話題は彼の妹である夕香だった。

 

 

「夕香の話ならおまっかせー!」

 

 

そこに背後からコトに抱きつきながら話に乱入したのは祐喜とそれを宥める貴広であった。

 

 

「夕香はやっぱクラスの中心よねぇ。しかもわりと先輩後輩関係なく顔も広いんだよ!夕香の携帯って基本、鳴りっ放しだもん!」

 

「成績に関しても、特に勉強した様子もないのに赤点も取らず、難なくスルーするからね。あれは羨ましいよ」

 

 

まさに自慢話をするかのように夕香の話を始める祐喜。そんな彼女に苦笑しながらも貴広もそれに乗って、普段の夕香について話す。

 

・・・

 

 

(…私、特に一矢君とはあまり接してないけど、それでも夕香ちゃんを含めて、やっぱり知らない部分って多いんだなぁ…)

 

 

話を聞き終えたコトは廊下を歩きながら、物思いに耽る。確かに顔馴染みではあるものの、やはり四六時中一緒にいるわけではない。当人以外の友人達からの話を思い出す。一矢も夕香も差はあるものの、誰一人としてマイナスな話をしていないのだ。そしてその話の一つ一つが自分にとって知らないう一矢達を教えてくれた。

 

 

「あっ」

 

 

そんなコトだが、ふと廊下の先にいる人物を見て、足を止める。一矢だ。廊下の開いた窓に寄りかかって外を見ていた一矢もコトに気付いたように視線を交わす。

 

 

「…どう、学校は」

 

「楽しいよ。私の知らないこといっぱいあったから」

 

 

周りにカメラマンなどがいないことに気付いた一矢は自分から彼女に声をかける。そんな一矢に夕香の言葉を思い出しながら、柔らかな笑みを浮かべて満足そうに頷く。

 

 

「…この学園はアンタがいる以上、普段通りになんてことにはならない。でもそれはアンタもだろう。少なくともカメラの前にいるアンタはKODACHIの筈だ。生憎、俺は朝と飯の時くらいしかテレビを見ないからKODACHIについては詳しくない。まったく知らないと言っても良い」

 

「…」

 

「でもKODACHIではなく、御剣コトのことなら少しは知ってる」

 

 

壁に背を向けて、そのまま寄りかかってコトに話しかける一矢。少なくともテレビである以上、イメージ、演出、台本、キャラなど求められる部分はKODACHIとして大きく、コトも可能な限りは答えようとするだろう。だが当人が言うように、テレビなどメディアの類に興味がない一矢からすれば、KODACHIとしての彼女と同じカメラに映っても話の種など持ち合わせてはいない。知っているとすれば知人の恋人である御剣コトのことなら少しは知っている。

 

 

「アンタ、KODACHIとしてのこの後の予定は?」

 

「放課後に今日の纏めをしたら今日のこの企画は終わりだよ。夜に別の仕事があるけど」

 

 

すると一矢はコトにこの後の予定について尋ねると、今日のスケジュールを思い出しながらコトは答える。

 

 

「なら俺の知り合いの御剣コトとして放課後、少し付き合ってくれないか?ミサや優陽が制服姿のアンタが見たいってずっと連絡してきてな。夕香も祐喜達を誘って、学校終わりにそのまま皆で遊びに行こうって言ってたし」

 

 

一矢は詳しくないKODACHIではなく知り合いの御剣コトに放課後に遊びの誘いをする。そんな彼の口元の笑みは確かに友人に接しているように穏やかなものであった。

 

 

「うん、私でよければ喜んで!」

 

 

通信教育ではスクーリングとして学校に行くことはあっても、こうやって学校帰りに友達と遊んだりなんてことは仕事の都合もあって、まずない。言ってしまえばコトにとってもそれはかねてより羨望していた魅力的な誘いであろう。そして何より一矢はありのままの御剣コトとして誘っているのだ。そんな彼に頷きながら、放課後、制服姿のミサや優陽と合流して彼らは町に繰り出す。短時間ではあるが充実したコトの聖皇学園の生活はテレビでも好評のまま終わるのであった。




<おまけ>

一矢(ブレザー)&夕香(カーディガン)

【挿絵表示】


夕香「ねぇイッチ、あれ美味しそうじゃない?」

一矢「は?…どれ?」

夕香「あれだよーあれー」


ミサ「…ナチュラルに腕組んでる…。私もしたいのに…」

優陽「そこは空いてる腕に行くべきだよ。あっコトちゃん、一緒に写真撮ろー?」


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