機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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夜空の先に

10月31日…ハロウィンの日として知られ、主に古代ケルト人が起源と考えられていた祭のことであり、大本で言えば秋の収穫を祝い、悪霊などを払う宗教的な意味合いを持つ行事だ。

 

 

「…ハロウィンなんて名前だけのコスプレ祭りってイメージしかありませんけどね」

 

 

ハロウィンと定められるこの日は、この時代でも変わる事はなかった。普段、生活の拠点にしている学生寮の宛がわれた部屋で希空はロボ助を傍らに立体モニターでハロウィンの特集記事をフリックして眺めながら呟く。ハロウィンが間近に迫り、希空達の周囲もハロウィンの話題ばかりだ。

 

 

「まあでもお祭りなわけでしょ?」

 

 

そんな希空の呟きに彼女がもたれかかっている後ろのベッドの上から声が聞こえ、横目で見やる。

 

 

「だったら細かい事は気にしないで、心を弾ませればいーんじゃないの?」

 

「ルティナらしいですね」

 

 

ルティナであった。タートルネックとホットパンツ姿の彼女は普段は希空が使用しているベッドの上にうつ伏せで寝転がり、健康的で白い太腿をブラブラと動かしながら携帯ゲーム機で遊んでいた。そんな彼女の言葉に希空は苦笑する。

 

するとこの部屋のインターフォンが鳴り、希空は立体モニターをフリックして画面を切り替え、来訪者が誰か見やると、扉の前でウキウキした表情の奏の姿が映し出されていた。

 

相手が奏であると分かれば、そのままモニターを操作してロックを外す。それと同時にロボ助が玄関に出迎えに行くと、玄関越しに奏がロボ助に挨拶をしている声が聞こえる。

 

 

「うーむぅ…この時期は寒いなぁ…希空ぁ…温めてぇ」

 

 

希空達がいる室内に入った奏は挨拶もそこそこに外気に触れたせいで震える身を温めようと希空に抱き着こうとするが、希空はさっと避けることで奏を回避する。

 

 

「…それで今日はどうしたんですか?」

 

 

希空に避けられたことでガーンと音を立てて落ち込んでいる奏は流れるまま起き上がったルティナの下腹部に抱き着き、よよよ…とすすり泣いている。ルティナがよしよーしと奏の頭を撫でてあやしているなか、希空はここに訪れた理由を尋ねる。

 

 

「あー…うむ。近々、ハロウィンだろう?ガンプラバトルのイベントが行われるらしい。それでチケットが取れたから誘いに来たんだ」

 

「おねーちゃん、ルティナのはあるの?」

 

「勿論だとも」

 

 

尋ねられた奏はルティナから離れながら、自身の立体モニターを表示させ、彼女が口にするイベントのチケットの詳細が記された画面を表示させる。ガンプラバトルのイベントを聞いて興味が湧いたルティナは自身も参加できるのか聞いてみると、奏は幼い妹に接するようにニコリと笑う。、

 

 

「…私はパスです。ハロウィンに興味がありませんから」

 

 

ルティナが喜んで奏に抱き着いてるなか、一方で既に奏の要件に興味を失くしてしまった希空はロボ助が用意してくれたコーヒーを啜りながら自身の立体モニターをフリックしていた。元々誰譲りか、あまり積極的にイベント事に行動するタイプではないのだろう。

 

 

「むぅ…そうは言うが、このイベントのMCはツバコで、サヤナさん達も参加するんだぞ?」

 

「…」

 

 

希空が断りを入れてくるのは想定しなかった訳ではないが、実際に言われてしまうと対応に困る部分がある。とはいえ、このイベントには希空を参加させたい理由がある。それは滅多に会えない知人達と接するまたとない機会なのだ。サヤナ達の名前を出されて希空はピクリと反応する。

 

 

「…分かりました。参加しますよ」

 

 

単純に寮生活だけではなく、住む場所の問題から気軽に会えるわけではない。それは希空も分かっているようで、その事で漸く彼女も重い腰を上げたようだ。

 

・・・

 

 

「もう間もなくだな」

 

 

ハロウィン当日の夜。奏が言っていたイベントに参加するため、希空の部屋に集まっていた。時刻を確認しながら奏が希空達に声をかけると、VRヘッドホンを装着し、VR空間へダイブする。

 

・・・

 

 

「皆さん、こんばんはー!」

 

 

イベント会場となるVR空間に移動した希空達。会場は夜の闇が支配するハロウィンをイメージした小さな村であった。時間もギリギリだったようで、多くの参加者で賑わうなか、希空達が到着して程なくMITSUBAとして活動しているツバコがイベントMCとして設けられたステージ上でパフォーマンスをしており、アバターの服装は機動戦士ガンダム00 1stのフェルト・グレイスのものだ。

 

 

「今回行われるのはハロウィンに因み、二チームに分かれての拠点防衛戦です。襲い掛かるNPC機から守り抜け!またフィールド上にはバトルの勝敗を決めるかもしれない宝箱や両チーム互いにいたずらOKとなっております!」

 

 

前置きも程ほどにツバコから本イベントの概要が説明される。

 

 

「また今回、数多くの一般参加者の他に有名なガンプラファイターの方々を招待してNPC機達に交じった第三勢力として参加していただいております!果たしてどんなバトルが見れるのか楽しみです!」

 

 

本イベントは公式によるものの為、運営側も規模の大きなモノにしようとしているらしい。その証拠に現在、イベントMCを務めているツバコの他に有名なガンプラファイターを第三勢力として招待している。話題性は十分だろう。

 

・・・

 

 

(おんな)じチームだね」

 

「ロボ助も同じで良かったです」

 

 

既にチケットでチーム分けがされていたらしく、立体モニターを表示させてチーム分けを確認すれば、希空、ルティナ、ロボ助は同じチームになっていたようだ。ロボ助と同じチームになれたという事で希空とロボ助は笑いあっている。

 

 

「何故だっ!?何故ェッ!!?」

 

「はいはい、あっち行こうねー」

 

 

…だが、一人同じチームにはなれなかった奏は癇癪を起こしていた。希空達に手を伸ばす奏だが、同じチームの愛梨によって首根っこを掴まれて連れて行かれてしまう。

 

 

「久しぶりね、希空」

 

 

いまだにわーわーと騒いでいる奏に手を振っていると、ふと肩に触れられ、振り返ってみれば微笑を浮かべているサヤナがおり、その傍らには同チームとなる舞歌、進、大悟の姿があった。

 

 

「ルティナさんも上手くやってるようで何よりですー」

 

「楽しく遊べてるからねー。最近、ずっと心が躍ってるよ」

 

 

VR空間とはいえ、久方ぶりの再会に心なしか嬉しそうに微笑んでいる希空。すると舞歌は希空の傍らにいるルティナに声をかけると、彼女もピースサインを浮かべてクイクイっと動かす。

 

 

「もうオイタは駄目よ?」

 

「はいはーい、分かってまーす」

 

 

ここまで来るまで色々とあった為、サヤナがこのイベント会場でもやらかさないようにと一応の注意をするも頭の後ろに手を組んで、煩わしそうに返事をしている為、苦笑してしまう。

 

 

「今のルティナなら大丈夫ですよ」

 

 

一見して真面目には聞いていないルティナ。大悟辺りが注意しようとするが、その前に希空が過去のことを振り返りながらもルティナのフォローをする。その表情は本心からルティナを信頼していることが分かり、ルティナもそっぽを向いて気恥ずかしそうにしている。

 

 

「それでは皆さん、発進してください!!」

 

 

そうこうしていると大会側の準備が整い発進を促される。折角、同じチームとなったのだ。どうせならば勝とうと頷き合った希空達は本イベントの為に作成したガンプラで出撃していく。

 

・・・

 

ハロウィンイベントのバトルフィールドは三日月が照らす二つの西洋城が舞台であった。それぞれの城は両陣営の陣地となっており、早速、両陣営は行動を開始している。

 

 

「これぐらいならどうってことはないな!」

 

 

既にお互いの城にはNPC機となる所謂、ゲテモノの機体群を迎撃しており、防衛チームとして進のXアストレイが他の参加者達と共に迫るNPC機達を撃破していた。

 

 

「っ…。早速来たか!」

 

 

そうしていると、また別の方向から攻撃が仕掛けられる。足元に着弾した弾丸にファントムガンダムを操る大悟が其方の方向を見やれば、相手陣営の物と思われる機体達が接近していた。

 

 

「活躍しちゃうよ!」

 

 

そこには愛梨の操るデスティニーガンダムを筆頭に相手陣営の機体が迫っていた。夜の空から迫るデスティニーは展開している相手陣営の機体へ高エネルギー長射程ビーム砲を発射する。

 

 

「迂闊な行動はするなよ」

 

 

一部の機体に損傷を与えるデスティニー。その姿を傍らからIWSP装備のストライクがおり、操縦する男性は愛梨を心配しながら彼女の掩護を行っている。

 

 

「悪いけど。こっちにも心強い味方がいるんだ!」

 

 

デスティニーの攻撃を回避しながらファントムとXアストレイが向かっていく。デスティニーとIWSP率いる相手部隊に向かって行きながら、進が自信ありげに叫ぶ。

 

 

「そう言う事だ。簡単にはいかないぞ」

 

 

進のXアストレイに並ぶようにストライクノワールが飛び立っていく。ストライクノワールはストライクIWSPを引き付けるように交戦を始めるのであった。

 

・・・

 

 

「…そろそろ見える頃ですね」

 

 

一方、愛梨達が攻め入っているように希空達もまた相手陣地に向かっていた。希空達の機体はそれぞれ希空はガンダムAGE-2 ダークハウンド、ロボ助は呂布トールギス、ルティナはガンダムデスサイズヘル、サヤナはガンダムアストレイ グリーンフレーム、舞歌はクロスボーンガンダムX1フルクロス TYPE GBFTを操っていた。

 

Gストライダー形態で移動している希空はマップを確認しながら呟くと前方のモニターがキラリと光り、極太のビームが森林ごと焼き払いながら向かってくる。

 

 

「あれは…どうやら貴文お兄様のようですね」

 

 

被弾は免れたものの前方を見て、モニターを確認した舞歌は攻撃を仕掛けてきた相手を知っているようで軽い笑みを浮かべながら呟く。そこにはガンダムフェニーチェリベルタの姿が。

 

 

「ふっ…そう上手くいかないか。だがこれ以上は!」

 

「ここは私が!」

 

 

舞歌の言う通り、リベルタを操っているのは貴文だったようだ。避けられる事も織り込み済みだったようで微笑を浮かべるものの、すぐに表情を切り替え、バイク形態へ変形して向かって行くと、迎え撃つように舞歌のフルクロスがピーコックスマッシャーを構えて向かっていく。

 

 

「貴文さんだけじゃないぜ」

 

「僕達もいるよ!」

 

 

だが待ち構えていたのは貴文のリベルタだけではない。涼一のZⅡトラヴィス・カークランドカラーと明里のフルアーマー百式改もいるではないか。すぐに攻撃を仕掛けてくる二機にAGE2DH達はすぐに回避する。

 

 

「…若い奴らは血気盛んで良いな」

 

 

涼一たちの姿を見ながら、ジャイオーンを操る男性は涼一達にかつての自分を重ねるように微笑ましそうに笑いつつ、彼らの掩護をするため、攻撃を仕掛けていく。

 

 

「ここはルティナの出番かな」

 

「手伝うわ。希空、任せるわ」

 

 

ZⅡ達の攻撃を回避しながら、ルティナのデスサイズヘルが囮になるように前に出ると、サヤナのグリーンフレームも希空に声をかけ、後に続く。

 

 

「…任せます」

 

 

接触してそれほど時間も経っていないというのにもう既に激しいバトルが行われている。サヤナに言われた希空は頷き、ロボ助と共に先を急ぐ。

 

 

「さーて、じゃあ皆で心を躍らせよっか」

 

 

AGE2DHが素早く先へ向かったのを確認したルティナは追撃しようとするZⅡ達の前にグリーンフレームと共に立ち塞がり、夜空に浮かぶ三日月に劣らない輝きを放つビームシザースを構えながら向かっていくのであった。

 

・・・

 

 

「見えました」

 

≪希空、警戒を≫

 

 

呂布トールギスを乗せて飛行するAGE2DHを敵城をモニターに捉えながら呟くと、ロボ助から注意を促され頷く。

 

 

「…来ましたね」

 

 

すると同時にセンサーが鳴り響き、希空とロボ助は警戒する。

 

 

「ひとーつ…人の世生き血をすすり…」

 

「は?」

 

 

するとセンサーが反応したと同時にAGE2DHに通信が入り、その声に希空は顔を顰める。

 

 

「ふたーつ…不埒な悪行三昧」

 

≪こんなことをするのは…≫

 

 

三日月をバックに浮かび上がる一機の機体。その姿を見ながら既にロボ助は呆れている。

 

 

「みっつ醜い浮世の鬼を…退治てくれよう生徒会長!」

 

「≪あぁ、やっぱり…≫」

 

 

一輝に接近してくる機体…それはガンダムエクシアダークマターであり、操るのは奏であった。予想通りというかなんというか。希空とロボ助の呆れ交じりの呟きがシンクロする。

 

 

「えぇい、こうなったらお姉ちゃんらしく強いところを見せてやるもんね!!」

 

「…はあ」

 

 

接近するダークマターとAGE2DHがぶつかり合う。直後に激しい近接戦を繰り広げる二機だが、奏の言葉に希空はため息をついてしまっている。

 

 

「昔から希空のことはよく知っているからな。戦い方などは…」

 

 

だがやはりそこはガンダムブレイカーの使い手。近接戦において少しずつではあるが、AGE2DHを圧して行っている。しかも相手は希空という事もあり、近くでいたからこそその戦い方の対処法は分かっていた。

 

 

「ッ…。ロボ助か。相手にとって──」

 

≪奏≫

 

「ん?」

 

 

そんな中、ダークマターとAGE2DHの戦闘に割り込む存在がいた。ロボ助の呂布トールギスだ。そのまま破塵戟を振り回してダークマターへ攻撃を仕掛けていく。近接戦闘を得意とするロボ助に笑みを見せる奏だが、ロボ助から通信が入る。

 

 

≪希空のことは私の方がよく知っています≫

 

「えっ」

 

≪知 っ て い ま す≫

 

 

どこか冷たく聞こえるロボ助の声。思わず奏がだらりと冷や汗を流すなか、呂布トールギスはどこか禍々しいオーラを発しながら攻撃を強めていく。

 

 

「…これなら行けそうですね。ロボ助、任せるね」

 

 

実力云々ではなく、呂布トールギスというより、ロボ助の勢いに圧されている奏。その姿を見ながらAGE2DHは再度、Gストライダー形態に変形して向かっていく。

 

 

「ここから先へ行かせない!」

 

 

だが、敵陣に向かえば向かうほど攻撃の手は強くなっていく。AGE2DHの姿を見つけた少女はシスクードを駆り、AGE2DHを迎撃する。

 

 

「クレア、慎重にな」

 

 

シスクードを操る少女の名を口にする男性。どうやら彼女の親のようだ。ガンダムAGE-3グラフトを操りながら共にAGE2DHへ向かっていく。

 

 

「…わざわざ作ったんですか」

 

 

シスクードとガンダムAGE-3グラフトを見ながら呟く希空。とはいえ攻撃を仕掛けられている以上、回避に専念する。

 

 

「「ッ!?」」

 

 

すると再度、センサーがけたましく鳴り響く。同時にソードピットがAGE2DHとシスクード達に襲いかかり、何とか回避しながら見やる。

 

 

「あれは…例の招待プレイヤーですか」

 

 

こちらに接近する機体。それはダブルオークアンタ、ヴァイスシナンジュ、Hi-νガンダムインフラックスであった。その完成度を見て、希空はツバコが言っていた事を思い出す。

 

 

「好きに暴れて良いというのじゃから、そうさせてもらおうかの」

 

「ああ、遠慮はしないぞ」

 

 

ヴァイスシナンジュとダブルオークアンタを操るファイター達は共に笑みを浮かべながら、AGE2DHとシスクード達に攻撃を仕掛けていく。

 

 

≪私は希空が誕生した時から知っているんです。奏とは過ごした濃度が…≫

 

「い、いやだから別にロボ助より詳しい何て一言も…」

 

 

そしてこちらもロボ助の淡々としつつも迫力のある物言いに気圧されている奏。

 

 

「た、宝箱!よ、よし」

 

 

地上に降りた二機。ダークマターが周囲を見渡すと、ツバコが言っていた宝箱の一つを見つけ、不利な状況ということもあり、咄嗟に回収して中身を見やる。

 

 

「な、なんだこれは!!?」

 

 

すると眩い光がモニターを覆い、咄嗟に目を瞑る。目を開けた時、何があったのかと周囲を見渡していると、ふと自分自身に違和感を感じ見やる。するとなんと奏のアバターの服装は露出の多い狼少女のような格好となっており、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

 

しかも手に装着された肉球型ハンドのせいで操縦もままならない。その隙を見た呂布トールギスはインフラックスに向かって行くとビームが迫り、咄嗟に避ける。

 

 

「…まったく何やってるんだ」

 

 

ビームを放った方向を見れば、そこにはインフラックスの姿が。外からでも慌てふためているダークマターを見ながらインフラックスを操る男性は重い溜息をつく。

 

 

「まあ良い…。纏めてかかって来い」

 

 

すると直後にダークマターにも攻撃を仕掛ける。呂布トールギスとダークマターが警戒するなか、インフラックスはブレードを構えて二機を相手に突進するのであった。

 

・・・

 

 

「ッ…流石にこれは…!!」

 

 

敵陣の機体と招待プレイヤー達と交戦するAGE2DH。たった一機と言う事もあって、苦戦を強いられており、どんどん表情は険しくなっている。

 

 

「もらった!」

 

「ッ!?」

 

 

それが隙となったのだろう。ヴァイスシナンジュの大型剣であるモーントシュヴェールトを回避したAGE2DHだが、背後からシスクードが迫っている事に気づかなかった。既にシスクードはビームサーベルを振りかぶっており、回避が間に合わないと希空も歯を食いしばった時だった。

 

 

「…?」

 

 

だがシスクードの一振りはAGE2DHに届かなかった。シスクードとの間に何かが割り込んだのだ。希空はゆっくりと何があったのかモニターを向ける。

 

 

「AGE-1…?」

 

 

そこには此方に背中を向けるガンダムAGE-1レイザーの姿が。レイザーブレイドでシスクードのビームサーベルを受け止めている。

 

 

「!」

 

 

AGE1レイザーの背中は希空にとって非常に大きく見えた。するとAGE1レイザーはゆっくりとAGE2DHを見やる。それはまるで早く行けと言わんばかりに。その意を感じ取った希空はすぐにGストライダー形態に変形して相手の城へ乗り込んでいくのであった。

 

・・・

 

 

「おめでとう、希空ちゃん!大活躍だったね!」

 

 

イベントも終わり、MCを務めていたツバコは希空に駆け寄り、称賛の言葉をかける。勝敗は希空達に軍配が上がり、立役者となった希空をツバコは褒め称える。

 

 

「本当に見事でした。流石希空さん」

 

「…違います」

 

 

同じチームであった舞歌も希空に笑みを見せながら、自軍を勝利に導いた希空を褒める。しかし希空はゆっくりと首を振っていた。

 

 

「…道を開いてくれた人がいましたから」

 

 

あの状況では希空は全くの不利で後退も考えていた。しかしあの時現れたAGE1レイザーは道を切り開いてくれたのだ。あの時のファイターは何も言わなかったが、不思議と誰かは分かる。希空は温かな心を感じながら微笑みを見せるのであった。

 

・・・

 

 

「…」

 

 

月明かりが照らす夜の街の片隅で一人の男性が静かに佇んでいた。その手にはAGE1レイザーが握られている。

 

 

「──最初は乗り気じゃなかったくせに途端に動き出すから驚いたわい」

 

 

そんな男性に後方から声をかける者がいた。男性はその人物を見やる。後方には二人の男性がおり、どうやら知り合いのようだ。

 

 

「聞いたぞ。希空のピンチにすぐに動いたそうじゃないか」

 

 

先程、声をかけたヴァイスシナンジュを持つ男性が愉快そうに笑っていると、ジャイオーンをケースにしまいながら、その隣にいた男性が口を開く。

 

 

「…別に。アイツの道はアイツが勝手に決める事だろ」

 

 

すると声をかけられた男性は再び前を見ると、漸く口を開く。

 

 

「その道が狭まるのなら、この手を伸ばしてこじ開けてやるのが俺の役目なだけだ」

 

 

AGE1レイザーを手に持った男性は夜空を仰ぎ見る。まるで空の先にあるモノを想うように。その口元には温かで優しい笑みが浮かんでいた…。




<おまけ>

奏(バニータキシード)&ちびのあ(魔法使い)&ちびるてぃな(小悪魔)


【挿絵表示】


奏「…何故、こんな格好を…」

希空「負けた罰ゲームでしょうか」

ルティナ「似合ってるよ、おねーちゃん」

奏「全く嬉しくは…──」

ちびのあ&ちびるてぃな「「にあってる!にあってる!」」

奏「…このおチビちゃん達は私が世話をしても」

希空&ルティナ「「ダメです」」

※二頭身というか、ちびきゃらを描いたの初めてなんですけど意外と難しいんですねぇ…。

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