機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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この小説を書き始めて一年が経ちました。ここまで読んでくださる皆様に本当に感謝しております。これからも何卒よろしくお願い申し上げます。


誇りを胸に未来へ

 

3月31日 23時58分

 

 

3月31日 23時59分

 

 

 

 

 

4月1日 0時0分

 

 

 

「夕香っ!!」

 

 

日付が変わった時であった。自身の部屋で足をパタパタと動かしベッドの上で携帯端末を操作していた夕香は思い思いの時間を過ごしていた。そんな中、夕香の平穏を打ち崩すように勢いよく入室してきたのはシオンであった。

 

 

「…な、なに…?」

 

「…午後4時過ぎに迎えが来ますわ。それまでにここで待っていてくださいましね」

 

 

部屋に入って来たものの何も言ってこないシオン。顔を見れば、なにか言いたそうなもどかしそうな表情を浮かべている。夕香は戸惑いながらもシオンに用件を尋ねると、そのままもどかしそうにしながらも用件だけ伝えて部屋から去っていく。

 

・・・

 

 

「こりゃすごいね」

 

 

そして午後4時過ぎ。雨宮宅に夕香が帰ってきた。夕香は一矢とは違い、その交友関係はガンプラ関係に留まらず幅広い。朝から夕香は今日と言う日を祝福してくれる友人達と遊び歩いていたのだが、シオンに指定された事もありこうして帰って来た。そこで夕香は自分の家の前の光景を見て驚いている。

 

 

「やぁ待ってたよ」

 

「時間がおしてますわ。早速行きますわよ」

 

 

雨宮宅の前にはリムジンが停めていた。その前にはセレナとシオンがおり、夕香を迎える。二人はそれぞれ夕香に声をかけると、モニカがドアを開け、夕香を連れてリムジンに乗り込む。車内には既に一矢がシートに身を預けて座っていた。

 

 

「ねぇイッチ。どこ行くの?」

 

「…知るか。二人分のガンプラ持って来いって言われたから持って来ただけだし」

 

 

シートベルトを着用し、アルマの運転によってリムジンが進む中、一矢の隣に座った夕香は一矢に一体、どこに連れて行かれるのか尋ねると、詳しい用件は一矢も知らないようだ。

 

 

「別に変なことはするつもりはないよ。僕も久しぶりに日本に来たわけだし、少しガンプラバトルに付き合って欲しいんだー」

 

「ホントにそれだけ?まぁ良いけどさ」

 

 

向かい側に座るシオンが何と答えるべきか視線を彷徨わせていると、助け舟を出すようにセレナが代わりに答えると、訝しんだ様子を見せる夕香だが、そのままシートに身を預ける。

 

・・・

 

 

「おっ来たの。こっちじゃこっち」

 

 

タイムズ百貨店に到着した一矢と夕香はセレナとシオンの2人に連れられて移動するのはガンプラバトルシュミレーターが置いてある地下だ。一矢達に気づいた厳也が手を振る。厳也だけではない、ここには既に影二や正泰達が待っていた。

 

 

「じゃあ早速始めちゃおうか。許可は貰ってるしね」

 

 

挨拶もそこそこにセレナはバトルを促す。この場にはウィルはいないようだが、セレナの言うように許可は得ているのであろう。厳也達が頷いてシュミレーターに乗り込む中で一矢と夕香は互いにまだ分からぬままシュミレーターに乗り込む。

 

・・・

 

 

「ねぇイッチ。どう考える?」

 

「…このまま流されてやるのが一番だろ」

 

 

バトルフィールドである峡谷を一矢が操るエールストライクガンダムと夕香が駆るストライクルージュは行動を共にしている。夕香は通信越しに一矢に尋ねると、一矢は溜息交じりに答える。

 

そんな中、センサーが反応すると共に無数の砲撃が一矢と夕香を襲い、二機のストライクは同時に避けながら相手を確認する。そこにいたのはデュエルガンダム・アサルトシュラウドとバスターガンダムであった。

 

 

「まだまだ行くぞ!」

 

「簡単にはやられないでね!」

 

 

デュエルAを使用する秀哉とバスターを使う一輝はそれぞれ一矢達に声をかけると、再び攻撃を開始し、次々に迫る射撃を回避していた二人だが…。

 

 

「俺達もいるからな!」

 

「どんな日でも手加減はしてあげられないわ」

 

 

一矢達と秀哉達を割くように砲撃が放たれ、そこには正泰のフルアーマー ガンダム7号機とシアルのガンダム試作0号機がおり、認識したと同時に再び攻撃を仕掛けてくる。一矢達に攻撃を仕掛けてきたのはこの彼らだけではない、厳也達もまた一矢達を狙って、此方に向かってきていた。

 

 

「気持ちは分からなくはないけど、狙い過ぎは良くないよー?」

 

「分かってはいるけど、な…!」

 

 

そんな中、一矢達に攻撃を仕掛けていたガンプラの中でビームブーメランが投擲され、影二のビギナ・ゼラが弾くと次の瞬間、セレナのジャスティスガンダムが牽制するようにライフルを撃ち、ビギナ・ゼラは回避し続ける。

 

 

「やるな…っ!?」

 

「流石、と言うべきかしら…!?」

 

 

だが狙われているAストライクとストライクルージュだが何もしないわけではない。様子見をするように避け続けていた二機だが、途端に爆発したように動き出し、近くにいたIWSP装備のストライクガンダムとデスティニーガンダムにすれ違いざまに攻撃を与え、空を舞う。

 

 

「普段よりも良い動きやな」

 

 

並ぶAストライク達に珠湖のアルケーがGNファングを放ち、縦横無尽に駆け回るGNファングはAストライク達に迫るが、Aストライクとストライクルージュは互いに迫るGNファングを破壊しながら突き進む。

 

 

「流石、生まれてからの付き合いってわけじゃなッ!!」

 

 

一矢と夕香は互いに意思疎通も合図もすることなく、鮮やかな連携を見せ攻撃が集中する状況でも立ち回る。まるで互いがなにを望み、なにが最善の行動なのか直感で分かっているかのように。単純な連携だけを求めるのであれば、一矢は夕香と組んだ方が意思疎通も必要なく望み通りの行動が出来るのだ。

 

そんな二人の動きを見て、厳也のシュツルム・ガルスがスパイクシールドを両手に装備して襲いかかるが、ストライクルージュは攻撃を受け流して、Aストライクに向けると、Aストライクはそのままシールドの先端で殴るように攻撃する。

 

 

「っ…!?なにっ!?」

 

「あれは…MAっ!?」

 

 

双子の連携は更なる激しさを誘う。だがそんな中で今までの攻撃とは比にならぬ極太のビームの数々が放たれ、咲のシナンジュと文華のスターウィニングガンダムが旋回しながら避けるとその発生源を見やれば、そこにはビグザムやサイコガンダムと言った超巨大MAの数々が地面を揺るがしながら此方に無差別に攻撃を仕掛けてきていた。

 

 

「ただのバトルじゃつまらないと思って、ちょっとした余興を考えましたの。さぁ続きといきましょう」

 

 

MAを動かすのはCPUだ。対人のバトルだけではなく、MAの相手もせざる得ない状況にこの状況を作り上げたシオンは己が操るガンダムキマリストルーパーを操作しながらMSとMA相手に立ち回りはじめ、バトルは熾烈を極めるのであった…。

 

・・・

 

 

「さて、もう良い時間かな?じゃあ、みんな付いてきてー」

 

 

長時間になってしまったバトルも終え、シュミレーターから出てきた面々の中でセレナが腕時計を見ながら、時間を確認すると、そのまま全員を集めて移動をする。

 

 

「さっ、何となく察しはついているようだけど入ってみて」

 

 

移動したのはとあるホテルのパーティー会場であった。先頭を歩くセレナは扉の前で背後の一矢と夕香の表情を見て、彼らがこの先に何があるのか察しているのを見ながら、彼らに促すと一矢と夕香は苦笑交じりに扉を開く。

 

 

「お誕生日おめでとうーっ!!」

 

 

その先で一斉にクラッカーが鳴らされる。パーティー会場にはコトや裕喜達の姿があり、会場には豪華な飾りつけや料理やケーキが置かれており、一矢と夕香はやはりこういう事か笑みをこぼす。

 

 

「夕香、待ってたよーっ!!」

 

「二人とも、おめでとうっ!!」

 

 

一斉に駆け寄り、裕喜はそのまま夕香に抱き着き、頬ずりしている。そんな裕喜の隣でコトが一矢と夕香を祝福する。

 

 

「どうだい、ガンプラバトルは楽しめたかい?」

 

「いきなりバトルをしようなんて不自然だったけどね。アンタは来なかったの?」

 

「僕達は僕達でこっちの準備もあったからね」

 

 

ジュースが入ったグラスを夕香に手渡しながらウィルが声をかけると、バトルの場にいなかったウィルに夕香が問いかけると、パーティーでの催し物などの準備もあった為にウィル達は此方で準備をしていたことを明かす。

 

 

「雨宮君、もう結婚が出来る年だよね!?」

 

「そうだね、出来るね」

 

 

真実がそのまま一矢にぐいぐいと迫る中、真実から目どころか顔を背けながら適当に答える一矢。彼女達だけではなく、わざわざ二人の誕生日を聞き集まってくれた面々から祝福の言葉が贈られる。

 

そんな中、一矢はある人物達を探すが、やはりこのパーティー会場には一矢が探す人物達はいない。その人物達がこの場にはいない事は分かってはいるが、もしかしたらと思って探しているようだ。

 

 

「一矢君、今はこの場にいる人達と楽しもう」

 

「…はい」

 

 

一矢の様子に気づいた翔は声をかける。そんな翔もどこか寂しそうな様子だ。だが、今この場にいない者の事を考えても仕方がない。一矢は頷きながら、パーティーに意識を向ける。

 

 

「一矢、改めて誕生日おめでとう」

 

 

コトやカドマツ達がパーティーを盛り上げる促し物を行う中でミサが一矢に祝福の言葉をかけ、その傍らに立つ。

 

 

「一矢が私の手を取ってくれたから、私、色んな事が見れた。色んな人に出会えた…。ありがとう、一矢」

 

「…それ…俺の言葉でもあるし…。ミサの手を取らなったら、俺は多分この場にいない」

 

 

ここまで来るのに、様々な出来事があり、出会いや別れがあった。それを齎すきっかけになってくれたであろう一矢に感謝するミサだが、そんな一矢を立ち上がらせてくれたのはミサなのだ。

 

 

「これからも一緒に歩いていこうね。だから…傍にいてね?」

 

「…ああ。これからも…」

 

「うん、よろしくね!」

 

 

これから先の未来も共に。そして一矢とは別れたくないと言うようにどこか不安そうなミサに安心させるように一矢は微笑み、ミサもつられて笑う。パーティーはここから更に盛り上がるのであった…。

 

・・・

 

 

「あー…眠い…」

 

 

パーティーも賑やかに終わり、家に帰って来た一矢達。それぞれ思い思いの行動をするなかで、風呂上がりの夕香は顔を上気させながら階段を昇り、自身の部屋に向かっている。夕香はその交友関係から朝から先程のパーティー会場にいた者達以外の学園の友人達と誕生日を祝して遊んでいた。そのせいで体の疲れは溜まっているのだ。このまますぐに眠れるだろうと、自身の部屋に入ろうとドアノブに手をかける。

 

 

「あら、来ましたわね。さあさあこちらに」

 

 

部屋に戻って来た夕香が見たのは、自身のベッドの上で寝転がっていたシオンが掛け布団どけて此方を迎えている姿であった。

 

流れるように扉を閉めた夕香はそのまま隣の一矢の部屋に向かい、軽くノックをする。数秒後、一矢が開けた扉の隙間から顔を出して、目で要件を尋ねる。

 

 

「イッチ、今日はこっちで寝て良い?」

 

「なに言ってんの」

 

「だよねー」

 

 

一矢に彼の部屋で寝て良いかと尋ねる夕香に顔を顰める一矢。普段の夕香からは考えられない発言だったからだろう。それは夕香も同じなのか苦笑している。

 

 

「ちょっと!!わたくしが特っっ別に添い寝してさしあげようと言うのになにが不満なんですの!?」

 

「全部だ全部」

 

「この機を逃したら次は一年後ですわよ!?」

 

 

そんなやり取りをしていると自身の部屋からシオンが出てきて、ぷんぷんと怒っている。しかしなにが不満も何もそれさえ分からないのかとばかりに呆れた様子の夕香。まぁ分かってたらやらないわけだが。面倒事になると思ったのだろう一矢は既に扉を閉めて、我関せずだ。仕方なく夕香は騒ぐシオンと共に自身の部屋に戻る。

 

 

「大体、こんな機会でもなければアナタと同じベッドで眠るなんてないですわ」

 

「こんな機会があっても寝ないわ」

 

 

部屋に戻った夕香をベッドに潜り込んだシオンが顔を出し、夕香を誘うわけだが、そもそも何故、添い寝をされなければならないのかと夕香は顔を顰める。

 

 

「わたくしが何で今日一番にアナタの部屋に来たのか分かっておりませんの?」

 

「分かるか」

 

 

シオンがやれやれとばかりに肩を竦めながら呆れたような目で夕香を見ると、なんでシオンにそんな目で見られなければならないんだとばかりの夕香。

 

 

「午前0時を過ぎたら、イチバンに届けに来ようと思いましたのよ」

 

「なにを」

 

「happy birthday」

 

 

話は今日、日付が変わった瞬間に部屋に訪れたシオンのことに変わった。あれはあれで他にも理由があったようだ。もっともサプライズパーティーのせいであの時、大きな祝福までは出来なかったが。

 

 

「つまり誕生日を迎えて初めて会ったのが、このわたくしっ!!!」

 

「最悪だ」

 

 

胸に手を置いて、バーンッと効果音が似合いそうな程自慢げにフフンと鼻を鳴らすシオン。好意その物は嬉しいが、そこは夕香の為に素直には受け取らず、頭が痛そうに眉間を抑えているがシオンに手を取られてベッドに入る。

 

 

「あぁっそうだ。わたくしアナタへ手紙を書いてまいりましたの」

 

「うざいうざいうざい…」

 

 

仕方なくベッドに入る夕香だが隣のシオンはメッセージカードを取り出し始める。もう睡魔が襲ってくるなか、面倒臭いのか照れ臭いのか夕香は苦笑気味に布団を大きくかぶる。

 

 

「じゃあ読みますわ」

 

「読まなくて良いから。おやすみ」

 

「何でですの!?」

 

 

わざわざ直筆で描いてきたメッセージカードの内容を読み上げようとするシオンだが耳栓代わりに耳に指を入れた夕香はシオンに背を向けて寝ようとするが、それを許さないシオンによって妨害され、また騒がしくなり始める。

 

・・・

 

 

(…何やってんの、あいつら)

 

 

そんな夕香とシオンの騒がしさは隣の部屋にいる一矢には聞こえており、主にシオンの声だけが壁を通じて聞こえてくる中、ベッドの上にいた一矢はベッドから降りて机に向かう。

 

 

「なんだかんだで色んなことがあったな…」

 

 

そこにはガンダムブレイカーⅢやゲネシスなどの自身が手掛けたガンプラが並んでいる。横一列に並んだこのガンプラ達は言ってしまえば、これまでの自分の軌跡と言って良いだろう。自分のガンプラ達を見て、一矢は感慨深そうに呟く。

 

 

「お疲れさま」

 

 

そのまま柔らかな微笑みを浮かべて、今まで一緒に戦ってきてくれたガンプラ達を労う一矢。今まで様々なことがあった。大きな別れを経験し、辛い事もあった。しかし幸せに思える出来事達も多くあるのだ。

 

 

「…これからも誇り(プライド)をぶつけて行くだけだ」

 

 

この先の未来も何が待っているか分からない。だがそれでも自分はこの胸に宿る誇り(プライド)を持って進み続けるだけだ。

 

 

「また…会えるさ」

 

 

そのまま窓から見える空に気づき、窓辺に移動してガチャリと窓を開けて空を見上げる一矢。空には満点の星空が広がっている。

 

そんな中で一矢はもう近くにはいない、今はどれだけ探しても出会えない別れをした友人達に想いを馳せる。例え今は離れていても進み続けた先で再び出会えることを信じて。




<おまけ>

一周年記念絵(雨宮一矢&雨宮夕香 一周年記念衣装)


【挿絵表示】


夕香「あっ、来た来た。ねぇアタシ双子と遊んでよ。今日はアタシ達が主役なんだからさ。アタシ達がいなくなるその時まで付き合ってよ」

一矢(…ところなんなのこの格好)


改めまして、これからもよろしくお願いいたします!!

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