機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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ハッピーホワイトデー!!
そう言えばマシュマロなんてここ数年以上は食べてない…。


真っ白な想いを感じたくて

3月14日と言えばホワイトデー。日本発祥であり現在では中国、韓国、台湾などの東アジアの一部地域で定着している文化だ。バレンタインデーのお返しとして主に菓子の類を送るという贈る日だ。お返しを贈ると言う文化はなんとも日本人らしい。

 

 

「ほれ、これ友チョコのお返し」

 

「バレンタインデーで贈り合ってホワイトデーでもって何か変だよねー」

 

 

タイムズ百貨店内のカフェで思い思いの時間を過ごしている夕香と裕喜、シオン。そこで夕香と裕喜は互いにプレゼントを贈り合う。昨今において友チョコなどバレンタインデーの文化というものも多様化しておりホワイトデーもまた様々な形がある。

 

 

「ホワイトデー…。話には聞いておりましたけど本当にお返しをするのですね」

 

「そういや、シオンには馴染みはないんだっけ」

 

 

ストレートティーを飲んでいたシオンは今の夕香と裕喜のやり取りを見て、珍しいものが見たような反応を示すシオンに思い出したように夕香は話す。日本にいれば当たり前のように行われているホワイトデーだが、欧米諸国ではあまり馴染みがないのだ。

 

 

「そー言えば、今日ここでガンプラバトルのイベントがあるって」

 

「うん。イッチもいるって」

 

 

夕香からもらったプレゼントに喜びながらバックの隣に置くと、ふと思い出したように裕喜が今日、このタイムズ百貨店で執り行われるイベントについて話題に出す。近くに張り紙もしていて夕香自身も知っているのか頬杖をつきながら一矢も参加している事を話す。

 

 

「うっそー!?あのイッチが?」

 

「まぁ元々参加するつもりはなかったみたいだけどね」

 

「なんでしたら見に行きません?面白そうじゃありませんの」

 

 

引きこもり体質な一矢がわざわざイベントに参加している事がにわかに信じがたい様子の裕喜。その反応に苦笑しながら夕香が答えるとシオンが微笑を浮かべながら提案する。この後の予定もない為に三人はポスターを見て移動する。

 

・・・

 

 

「おっ、もう始まってんじゃん」

 

「夕香ちゃんっ」

 

 

かつてこの場ではガンプラバトルロワイヤルやガンプラ大合戦が行われた。今回も大々的なイベントなのだろう。見ればミスターガンプラや如月翔の姿もある。そんな中で夕香に声をかけたのはコトであった。近くにはミサがいいる。

 

 

「随分と賑やかじゃん」

 

「まぁタイムズ百貨店と彩渡商店街、ブレイカーズの合同のイベントだからね。コトちゃんもさっきまでトークしてたんだよ」

 

「今回は色んな県から集まっているから、それこそジャパンカップ並みに豪華だよ」

 

 

観客はモニターに映る映像に釘付けだ。中々の盛り上がりを見せるイベント会場の様子を見て、夕香がその事を口にするとミサもコトも楽しそうに話す。

 

 

「やぁ君達も来たんだね」

 

 

「へぇ」と相槌を打ちながら映像を見やる夕香に声をかけたのはウィルであった。チラリと見ればウィルと傍らにはドロシーがいる。

 

 

「アンタは参加しないの?」

 

「パワーバランスを考えたんだよ。折角のイベントだ。もう壊したくはない」

 

 

バトルには参加していないウィルを見て夕香が意外そうに声をかけると、ウィルは軽口を叩きながら肩を竦めてお道化る。その様子を見て夕香は呆れたように笑い裕喜達も苦笑している。

 

 

「ふーん…出てたなら出てたで応援してあげないわけでもなかったんだけどねー」

 

「それは光栄だ。なんだったら違うイベントでタッグで出るかい?間近で見れるよ」

 

 

近くの壁に寄りかかりながら軽い笑みを浮かべる夕香にウィルもまた夕香の隣に立ち、口角を上げながらタッグを組む誘いをすると、夕香は「気が向いたらねー」と答えながらモニターを見やる。

 

・・・

 

 

「面倒臭い…」

 

 

バトルフィールドを駆けるMS-06R-1Aシン・マツナガ専用高機動型ザクII改良型。操るのは重い溜息をついているのは我らがボッチ雨宮一矢。シュミレーター内の様子とは裏腹に高速で動くザクⅡ06Rはまさに白狼のような勇ましさを持って大量のガンプラを次々に撃破していく。

 

 

「まぁそんな事言わずにさ。これに勝てばネバーランド年間パスポートが、上位になれば景品が貰えるし」

 

「…別に。商店街代表ってだけで出されただけだし」

 

 

愚痴を吐いている一矢を窘めるように後から追い付いてきたのはクロスボーンガンダムX1改・改を操る正泰だ。しかし一矢はまだ気乗りしていないのか文句を言っている。

 

何故、一矢と正泰が行動を共にしているのか?それはこのイベントのルールにある。

 

今イベントはランダムに決められた男性限定のタッグ性であり、制限時間最後にフィールド内に動き回る黄金のハロを所持していた者の勝利となり、ネバーランドのペアでの年間パスポートが配布される。また参加者のガンプラを撃破した際、ポイントは加算され上位者三組にはHGUC百式(GPBカラー)やジムスナイパーⅡ(ホワイト・ディンゴ隊仕様)やガンプラに留まらずケーキバイキングなどの景品が贈られる。

 

 

(…まぁでも…アイツ…見てるんだよな)

 

 

ふと一矢はこのバトルを見ているであろうチームメイトの少女のことを考える。商店街代表として自分を送り出した彼女はこのバトルを見ている。ならば無様な結果などは見せられないだろう。

 

 

「…ほら行くよ。なんだったら勝とうよ」

 

「やっと乗り気になったか」

 

 

時間にすればもう残り7、8分だ。いまだ黄金のハロは見つけられていない。漸くやる気を見せてきた一矢のザクⅡはザク・マシンガンとザク・バズーカをそれぞれ装備して正泰に軽く声をかけてその場を移動する。その様子に苦笑しながらも正泰はその後を追う。

 

 

「凄かったな今の…。俺じゃあっと言う間にやられるよな…」

 

 

その様子を影で見ていたのはザクⅡ改であった。そのファイターの金髪の青年はそれでも何とか黄金のハロを手に入れるために自身も動き出す。

 

・・・

 

 

「…見つけた。黄金のハロっ!!」

 

「流石だな、このまま俺達がいただくぞ!」

 

 

一方、遂に黄金のハロを見つけたのはガンダムXディバイダーの影二とアストレイレッドフレーム改のジンのタッグであった。そのまま空中を浮遊している黄金のハロを手に入れようと動くわけだが銃の弾丸を模したようなGNファングの猛攻が襲い、その対処をする事になる。

 

 

「そいつは困るんでのぉ…。邪魔をさせてもうきに」

 

「受け取れぇ!俺からのプレゼントだぁ!!」

 

 

上方には厳也が操るガンダムジエンドと莫耶のフリーダムガンダムの姿が。GNファングことDEファングを再び放ちながらショットジェンドの銃口を向けるジエンドの隣でウィングを放射状にクスィフィアスエール砲とバラエーナ収束ビーム砲を同時展開するとハイマットフルバーストとして放ち、影二達はそちらに気を向けるしか出来なくなる。

 

 

「悪いのぉ、今回天辺を取るのはワシ等じゃ!!」

 

「…そう言われて、はい、そうですかって言うと思うか?」

 

 

素早くハモニカ砲を発射するXDVの攻撃を掻い潜りながらフィストジエンドを展開して差し向けるジエンドに対して、XDVも対抗して大型ビームソードを引き抜いて激しい攻防を繰り広げる。

 

 

「っ…?」

 

「なんだ!?」

 

 

またフリーダムやアストレイR改もまた戦闘を繰り広げる中、突然、無数の射撃攻撃による横やりが入る。莫耶やジンがそちらに意識を向ければ、そこには一矢と正泰のザクⅡとX1改・改が。いやそれだけではない。タイムリミットが迫る中、他の参戦舎達のガンプラも続々に迫っていた。

 

 

「次から次にッ!!」

 

「ここでくたばれば、そんな事考えずに済むよ」

 

「冗談言うな!」

 

 

もはや大乱戦だ。銃撃が飛び交い激しさを見せるなか鬱陶しそうにしている莫耶に一矢は歪に笑いながら軽口を吐き、ザクⅡがモノアイを光らせながらフリーダムに急接近をして迎撃するビームを避けながらヒートホークで斬りかかるとすぐさまフリーダムはシールドで防ぎ繁劇に転じようとするが、シールドを蹴り飛ばしたザクⅡは距離を取る。

 

 

「一矢、お前さんにも黄金のハロは渡さぬからのぉっ!!」

 

「ああ、あれは俺やジンさんがもらう!!」

 

「チッ…邪魔するなよ…!!」

 

 

デッドエンドフィンガーによる高出力ビームとハモニカ砲のエネルギーを溜めたビーム刃がザクⅡに迫る。その二つをギリギリで避ける中、こちらに迫るジエンドとXDVを見やり面倒そうに舌打ちをしながら渡り合う一矢。

 

これはガンプラバトル。例えザクであろうがその出来栄えで主役級のガンダムにだって対抗できる。それこそ極端な話、ボールが∀ガンダムを撃破できるような世界なのだ。

 

 

「残り時間も後少し…!!そろそろいい加減にッ!!」

 

「させるかッ!!」

 

 

X1改・改とアストレイR改がビームザンバーとガーベラストレートで剣戟を結ぶ中、残り時間も既に一分を切ってしまった。っこのままではジリ貧だと判断した正泰がアストレイR改をあしらい、黄金のハロを目指そうとするがそうさせるジンではない。黄金のハロを手に入れるためにジンも動くが、もう30秒を切った。他の一夜や影二達参加者達も動き出す。

 

 

「レイイイイィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーンンンッッッッ!!!!!!」

 

「ティファアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーァアアアアッッッ!!!!!」

 

「アイナァアアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーーーァアアアアアッッッ!!!!」

 

「ガンダァァァァァァァァァーーーーーーーーーーァアアアアアッッッッムゥッッ!!!!」

 

 

一矢達とはまた違うそれぞれの参加者が大切なモノの為に思いのたけを吐き出すように叫びながら黄金のハロに手を伸ばす。半ば雪崩のような状況になる中で我こそがと黄金のハロへ目指す。

 

 

「やった…やったぞ、アル…。二人で作ったザクで勝ったんだ!クリス、喜んでくれるよな…?」

 

 

タイムアップ。黄金のハロをその手にしかと掴んだのはボロボロのザクⅡ改であった。ファイターである金髪の青年は自身のザクが掴む黄金のハロを見て信じられないような表情を浮かべるが、やがて歓喜の笑みを浮かべイベントは終了するのであった。

 

・・・

 

 

「はぁーっ…」

 

 

イベント終了後、優勝は出来なかったもののポイント上位者としてガンプラは手に入れた一矢。他にも厳也や影二達はそれぞれ好きな景品を手に入れ、それぞれの想い人との時間を過ごしている。そんな中、一人、人気のない場所で一矢は座り込んで重いため息をつく。結局、優勝する事は叶わなかったのだ。

 

 

「お疲れ、一矢」

 

「…ん…ありがと…」

 

 

そんな一矢に一人、ミサが缶ジュースを持って声をかける。労ってジュースを差し出してくれるミサに一矢は礼を言いながらジュースを受け取る。

 

 

「それじゃあ私行くから、ゆっくり休んでてよ」

 

「…」

 

 

何だかんだで実力者が集まった今イベント。一矢の表情にもうっすらと疲労感もある。一矢を気遣ってミサはその場を去ろうとするが、一矢はミサのジャケットの裾を掴んでその動きを止める。

 

 

「…これ」

 

 

振り返ったミサに一矢はラッピングされた小箱を向けている。言葉こそないが、ホワイトデーのプレゼントなのだろう。驚いているミサに一矢は早く受け取れと言わんばかりにじっと見ている。

 

 

「ブレスレット…?」

 

 

一矢から小箱を受け取ったミサは一矢からの了承を得て開封すると、そこには二連のホワイトとピンクを基調としたブレスレットであった。自身のガンプラや名前の元となった花の色に似ている。

 

 

「ありがとう…」

 

「…どうしたの?」

 

「…いや、一矢ってさ。こういうのはくれるんだけど…あんまりちゃんとした言葉はくれないなーって…」

 

 

嬉しそうにしているミサだが、どこか寂しそうな様子でもある。なにかあったのかと問いかける一矢にミサはその理由を教える。一矢は確かにプレゼントをくれる。だがいつも言葉は少ないのだ。

 

それは彼の性格もあるし仕方のないことかもしれないが、やはり一矢の気持ちが知りたい。それこそ人が眠っている時にプレゼントを渡しに来るのではなく

 

言葉で

 

行動で

 

一矢の自分への気持ちがちゃんと見えないからこそ示してほしかった。

 

 

「わっ!!?」

 

 

視線を彷徨わせている一矢を見て、やっぱり駄目だったかと諦めるミサ。疲れているだろうからとその場を今度こそその場を立ち去ろうとするミサだが、強引に引っ張られ体勢を崩し、座る一矢の股の間に座らされてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりなにするの、と抗議しようと眉尻を吊り上げるミサだが振り返る寸前に肩に顔を乗せて、小さくか細い声で囁かれた一矢の言葉で動きを止めてしまう。

 

同時に彼の腕が一矢の股の間に座る形となっているミサの下腹部の辺りに回され抱きしめられる。

 

 

「えっ、えぇっ!!?」

 

「…嫌なら言って。ミサに嫌われたくないから…」

 

「い、嫌じゃないけど…」

 

 

今の自分達の態勢を見て、途端にカァーッと顔を真っ赤にさせしどろもどろになっているミサ。そんなミサに一矢は相変わらずミサの耳元で囁くと湯気が出る勢いのミサは恥じらった様子を見せる。

 

 

「…俺…良い言葉が思いつかないけどさ…。ミサがいるのが俺の中じゃ当たり前になってる…。でも…ミサがいなくなったら…俺…耐えられない…。誰かが傍にいるなら…ミサ以外に考えられない…」

 

 

ただ静かな空気が流れる。こんなに体を密着させていては一矢に高鳴る心臓の鼓動を感じられてしまうかもしれない。だがそんな中、一矢の言葉が響き、それはそれで聞き逃したくはないので黙って大人しくしている。

 

 

「…俺…人付き合いとか上手くないし…暗いし…どうしようもないけど…。でも…ミサの傍に居たい…。ミサといるだけで…俺…満たされるんだ…」

 

 

言葉に出さなくてはいけないのは分かっている。でもそれは難しい事だ。一矢自身もミサの想いが分からないのだから。だから言葉の大事さが分かる。

 

 

「ミサとの思い出は大事だよ…。でも…ミサと過ごす”今”には勝てない…。ミサとずっといたい…。楽しい時も…悲しい時も…一緒に居たいんだ…」

 

 

かつて翔に言われた言葉がある。この先の未来はまた今とは違う自分だと。だとしたら、ミサへの想いだってきっと、今よりも好きになっているだろう。それこそミサの喜怒哀楽の全てを見逃したくなくなる程。

 

 

「…ごめん。今、こっち見ないで…。酷い顔してると思う…っ」

 

 

不器用ながらでも何とか言葉を吐き出した一矢はそのままミサの肩に額を置いて顔を隠す。今まで慌てていたミサだが、その顔もほころぶ。横目で見れば一矢は耳まで真っ赤にしていたからだ。あの一矢がここまでして自分の気持ちを露わにしてくれた。それが何より嬉しかった。

 

 

「…ねぇ、暫くこのままで良い…?疲れてるんだ…」

 

「疲れてるのに?」

 

「疲れてるからだよ」

 

 

とても暖かく優しい空気が流れ一矢がミサを抱きしめる腕に力が籠る。その言葉は嬉しいが、少し意地悪をしてしまう。もっと気持ちを引き出せると思ったのだろう。だが顔を隠す一矢の口元には笑みが浮かぶ。

 

 

「…疲れてるからこそ…ミサとこうしていたい」

 

「そっか。うん…このまま傍にいるよ」

 

 

ミサだからこそ近くにいて欲しい。そんな一矢にミサは愛おしそうに微笑みながら一矢に身を預ける。お互いに目を瞑り、その姿はまるで今の時間も互いの気持ちも共有するかのようだ。ただ人知れず二人の時間は過ぎていくのであった…。




作者がモノアイ病にかかったせいで一矢にしわ寄せが…。因みに手元にはHGのシン・マツナガ専用高機動ザクとマラサイ(ユニコーン)があります。組み立てなきゃ…

さて本編終了後のイメージですが、この時点で一矢とミサはどんな関係でしょうね?まぁそれは本編でいずれ分かる事ですけどね。

そうそう、またアンケートと言うか募集と言うか、また企画がありますので良ければご協力をお願いします。

<おまけ>

雨宮一矢&シュウジ(ホワイトデー絵)


【挿絵表示】


一矢&シュウジ「「どっちにする?」」


真実「雨宮君っ!!雨宮くうぅぅーーんっっ!!!今夜はいくらでも貢ぎますぅぅぅっっ!!!」

拓也「ホストかよ!?テメェ雨宮!こうなるの分かっててやってんのか!?」

ヴェル「シュウジ君のスーツ姿って珍しいですね…。結構…格好いいかも…」

カガミ「馬子にも衣装ですね」

ヴェル(後で写真、一緒に撮ってくれたりなんて…。あははっ…)

※トライブレイカーズ三人の絵は前作のEX Plus─戦士起つ─にありますが、何れこっちにも貼る予定です。

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