新年あけましておめでとうございます。
前年度はお気に入り登録、感想、評価等のご厚情を賜り、誠に感謝しております。
今年もどうか本小説、並びに前作を含めた小説を私共々よろしくお願い致します。
それでは堅苦しい挨拶もそこそこに、正月特別編をどうぞ。
1月1日 元旦
「……新年だからって神社に行くとか馬鹿じゃないの」
新年一発目から初詣を否定するのは我らがボッチ 雨宮一矢であった。
厚着のトレーナーにスウェット、ちゃんちゃんこを着ている一矢は自室でブレイカーズで購入したガンプラ福袋のHGのガンプラを作成していた。今も小さなヒケをペーパーヤスリで処理している。
それを入口から扉に寄りかかって見ているのは夕香だ。
初詣に行くつもりなのだろう、赤のベレー帽を被っている夕香の服装はキャメルのチェスターコートを羽織り、その下には白のブラウスとネイビーのスカートを着用している。
「人がいっぱいいるところに行くとかさ……。ありえないし」
先程の一矢の言葉もそんな夕香に向けてのモノであった。
今だぶつぶつ文句を呟いている一矢に夕香は静かに部屋に足を踏み入れる。
「初詣を行く奴なんてリア充だろ……。呪っちゃうよ?」
挙句の果てには怨念さえ感じる程、負のオーラをまき散らすほどだ。しかしそんな一矢の話は全く聞かず、しゃがんだ夕香はランナーが入ったガンプラの箱を漁り目当てのモノを見つける。
「大体からして、俺がくじ引きすると吉以上出ないし……「じゃっ、これ貰うね」……あっ?」
「ポリキャップ。返してほしかったら近くの神社に来なよー?」
完全に愚痴を零す事に集中していた一矢は夕香の行動には気づかなかった。ポリキャップをヒラヒラ揺らしながら軽く手を振って夕香は一矢の部屋を後にする。
「……えっ……? ……ねぇ? ……おーい……? ……マジでもってったの……? そこは嘘です♪ってオチじゃないの……?」
そのまま四つん這いで自室の入り口まで移動して廊下を覗き込む一矢。夕香の姿はとっくになく、一階からは玄関の扉の開閉音が虚しく響き、茫然とするのだった……。
・・・
「やっほー。明けましておめでとうー」
「うん、明けましておめでとう! 夕香ちゃん!」
夕香が一矢に指定した神社はこの彩渡街でも一番の敷地の大きさを持つ神社であった。
既にそこにはミサ達が集まっていた。軽く手を挙げて、挨拶をしながら夕香はミサ達に合流するとミサを皮切りに次々挨拶をする。
「そう言えば、一矢は……?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと来るから」
「ホントに? いやー……私が連絡した時、そんなに乗り気じゃなかったから……。やっぱりちゃんと一矢も含めて、ちゃんとお参りしたいし」
夕香は来たが彼女の兄の姿は見えない。
一矢を探すように周囲を見渡すミサに夕香は安心させるように微笑むと、夕香に一矢を連れ出すように頼んだのであろうミサは苦笑する。
「おっ、早速来たみたい!」
そんな二人のやり取りも束の間、裕喜が鳥居の方角を指差せばそこには一矢の姿があった。黒いダッフルコートの下にはVネックのニット、更にその下には白シャツ、手袋、マフラー、マスク、ニット帽と出来うる限りの寒さ対策をした服装の一矢がこちらにのそのそと向かってきていた。
「……コロス」
「来た来た。はい、リバース」
しかしその心中は決して穏やかとは言えないようだ。
そんな一矢もどこ吹く風か、夕香はポリキャップを投げ渡す。
「い、一矢、明けましておめでとう!」
「はいはい、あけおめ……っ!?」
ひとまずポリキャップを取り換えした事に安堵している一矢にミサが新年の挨拶をする。まだ不機嫌の一矢はチラリとミサを見て息を呑む。なんとミサの首にはサンタクロースイッチがプレゼントしたペンダントがかけられているではないか。
「一矢は随分と嬉しそうですわね」
「あの二人の様子を見る限り、あれは雨宮がプレゼントしたペンダント……とか?」
照れた様子ながら、どこか嬉しそうな一矢に不思議がって首を傾げているシオンに拓也が二人と赤くキラリと輝くペンダントを見て、明らかに様子が変わった一矢を見て予想しながらもそのままお参りへ向かう。
・・・
「ねぇ、このまま新年最初のガンプラバトルしない?」
お参りを終え、粗方やる事も済ました一矢達。もう帰るかとそんな話をする中、真実がガンプラバトルの提案であった。
「でも、普通にいつものガンプラでやるのでは、いささか芸がありませんわ」
ファイター達が頷く中、シオンは肩を竦めながら首を振る。確かに彼女の言う通り新年だ。どうせならいつもと違った遊び心を働かせたバトルも良いだろう。
「だったら、カスタマイズした物じゃなくて純正で。どうせなら今年の干支は酉年なんだし、鳥に関連したガンプラでバトルって言うのはどうかな?」
「いいね、やろうっ!」
少し考えた真実はすぐに思いつき、微笑を浮かべ人差し指を立てて提案する。こういう特殊ルールのバトルも面白そうだ。ミサはすぐに乗り、一同、鳥に関連したガンプラを取りに一度、帰宅する。
・・・
再度集合したのはイラトゲームパーク。元旦からでもイラトは子供のお年玉を巻き上げる為、営業している。
フィールド内ではミサが操作するアカツキ オオワシパックの姿がある。そんなミサのシュミレーターにアラームが鳴り響く。どうやら早速、エンカウントしたようだ。
「あはっ、お兄ちゃんに貸してもらっちゃった!」
そこに現れたのはユニコーンガンダム3号機ことフェネクスだ。それを駆るのは裕喜だった。裕喜はアカツキOを見つけ、早速、デストロイモードに変形してアカツキOへ突撃すると、アカツキOはヒャクライで応戦するが、全て悉く避けられる。
「やるね、裕喜ちゃん!」
「でっしょー? 伊達に夕香やお兄ちゃんの傍にいないしね!」
ビームトンファーを展開して斬りかかるフェネクスを寸でのところで避けたアカツキOはビームサーベルを展開して斬りかかると何とフェネクスはビームトンファーで受け止めたではないか。敵ながら裕喜を褒めるミサに裕喜もまた好戦的な笑みを浮かべる。
「へへっ、リージョンカップの時から思ってたがやっぱ強ぇなッ!」
そんな二人のバトルに割って入ったのは拓也のトライバーニングガンダムであった。
「行くぜェッ……鳳凰覇王拳ッ!!」
弾かれるように別れたアカツキOとフェネクス。するとトライバーニングは装甲をパージし全身からまさに炎と化した粒子が放出するバーニングバーストシステムを発動させると、右腕を突き出し巨大な鳥を思わせる炎の一撃を放つ。戦いは終わらない。まだまだぶつかり合いが行われるのだった。
・・・
「夕香とバトルするなんて珍しいから嬉しいな……。でも負けないよ!」
「って言うか、まなみんのガンプラ、どこが鳥と関係あんの?」
空では真実のHi-νガンダムヴレイブと夕香がサンタクロースイッチからプレゼントされたウィングガンダムゼロ炎がブレードとハイパーカレトヴルッフによる激しい剣劇を繰り広げていた。夕香とのバトルに嬉しがる真実のガンプラに詳しくない夕香は疑問を呟く。
「Hi-νヴレイブのブースターは鳥型サポートメカなんだよ!」
夕香の疑問に答えるとともにフィンファンネルを放って、ウィングゼロ炎に差し向けるHi‐νヴレイブだが、「へぇ」と相槌を売った夕香は難なくウィングゼロ炎をさながら火の鳥を思わせるネオバード炎モードに変形させて避けると距離を取る。
「夕香、見つけましたわ!」
「うわっ、メンドーなのが来た……」
Hi‐νヴレイブと距離を置こうとするウィングゼロ炎に背後から紫苑の声と共に砲撃が放たれる。間一髪、旋回して避ける夕香はこちらに向かってくるバード形態のガンダムフェニーチェリナーシタの姿を見てため息をつく。
「ガンプラ貸してあげてんだからアタシのとこに来んなよー!」
「そうは行きませんわ、貴女はわたくしのライバルですもの! 寧ろ、わたくしは貴女しか狙いませんわ!」
互いに言い合いながらそのままドッグファイトを繰り広げるウィングゼロ炎とフェニーチェリナーシタ。夕香の言葉から考えられるように実はこのフェニーチェリナーシタ。実はあのクリスマスプレゼントの一つなのだ。とある事情があって鳥に関係したガンプラを持ち合わせていないシオンに貸している。
「──意外に悪くないね、こーいうのも」
「雨宮君!」
シオンに相手を奪われたしまい、相手がいなくなってしまった真実。そんな彼女に通信を入れたのは一矢だった。確認すれば、Hi‐νヴレイブの近くにはウィングガンダムは静かに浮いていた。
「だから、呼べるだけ呼んだ。もう来るよ」
今迄誰ともバトルをしていなかった一矢。それには理由がある。せっかくの特殊ルールだ。もっと人が多い方が良いだろう。彼の言葉通り、すぐさまアラートが鳴る。
「へっへ! 面白そうだから来てやったよ!」
一矢に別のシュミレーターから通信が入る。なんと相手はカマセであった。同時に彼が操るガンプラが姿を現す。彼が持ち込んだのはガンダムヘブンズソードであった。鳥型のアタックモードに変形して大きく翼を広げる。
「あやこさんっ!?」
「一矢君から連絡があった時は驚いたけど、ブレイカーズも元旦はお休みだからね。楽しそうだから来ちゃった」
他にも中破するフェネクスと軽微なアカツキOの間に現れたのは鳥を彷彿とさせるような頭部が特徴的なヤクトドーガであった。センサーに表示されるヤクトドーガのファイター名にはあやこのものがあり、驚くミサにあやこが微笑む。
「──テメェら、皆、俺がぶっ倒してやるよ!!」
そしてオープン回線でフィールド全体に通信が入る。なんだと全てのファイターが意識を向けると地鳴りと轟音がフィールド全体を襲う。
「このハシュマルでなぁっ!」
行ったのはタイガーであった。同時に彼のガンプラが姿を現す。それは白い巨大な鳥を彷彿とさせるMA・ハシュマルであった。ハシュマルの出現もあり、全てのファイターのガンプラがハシュマルを中心にその周囲に集まる。
「なっ、なんだ!?」
ハシュマルは展開した小型サブユニットである無数のプルーマを差し向けようとするが、その前に天から放たれた一筋の獄炎が全て焼き尽くし、タイガーは慌てふためく。
「……酉年ならではのガンプラバトル……。中々、面白い事を考えるじゃないか」
「げぇぇっ!? 如月翔!?」
天から舞い降りたのは紅蓮装 曹操ガンダムであった。そのシュミレーター内では翔が今回のバトルに笑みをこぼす。かつてGWF2024において彼にトラウマを植えつけられたタイガーは驚愕する。
「……さて、俺の相手は誰かな? 君達のバトルを見て、俺もうずいているんだ……。なんなら全員でかかってきても良いぞ。誰が勝つか……」
眼前に見下ろす少しでも鳥に関係したガンプラ達を見ながら楽しそうに好戦的な笑みを浮かべる翔はトランス系のEXアクションを選択する。すると彼の曹操ガンダムは天に手を向ける。
「天は全てを知っている」
曹操ガンダムの周囲に玉璽が現れると天から稲妻の如く落ちた光が包み込む。
すると光の先から翼を閉じた鳥を思わせる巨大な天玉鎧・炎鳳が舞い降り、舞い上がった曹操ガンダムとドッキングを果たし、見せつけるかのようにその機械的な翼を広げる。
「……事記曰く玉璽光り輝く時、天より神器は降臨する……。即ち三候かいたる天玉の鎧……ね。自分で呼んでおいてなんだけど勝てる気しないわ、アレ」
「アハハッ…………。まぁでもさ……意外と全員でかかったら行けるかも?」
天玉鎧・炎鳳を纏い、神々しいまでの風格を見せつける曹操ガンダムに一矢は翔を呼んだ事を後悔すると、ミサもミサで引き攣った笑みを見せる。
「さぁ改めて始めようか。新年最初の記念すべき初ガンプラバトルをッ」
星鳳剣を眼下のガンプラ達に向けた曹操ガンダムは翔の宣言と共に飛び出していく。
彼の言うように新年初めてのこのガンプラバトル。居合わせるファイター達の口元には笑みが零れていた。
少しでも鳥に関係したガンプラを思い浮かぶ限り出してみました。でも、まだあるとは思うんですよねぇ、浮かばなかっただけで…。
さていつも予約投稿なもので、これを投稿している時、私は何しているか分かりませんが、まぁ言える事は今日からDLCを始めることですね。(積みプラの作成も)
感想でも面白いと言う書き込みをいただいておりますので、プレイが楽しみです!もしかしたら本当に更新が遅れるかも…?まぁそれだけガンダムブレイカーが面白いという事で…。
さて、改めまして本年度もどうぞよろしくお願い申し上げます!!