浮遊城での決戦が始まった。決して撤退は考えず、ここで全てを終わらせる、決着をつけるんだという気迫がどの機体からも感じられた。
「やっぱり凄いな……」
それはこの戦場において心を奮い立たせてくれるような存在達がいるからだろう。手痛い損傷を受けながらでも、着実に一機一機を撃破していた愛梨はデビルガンダムと苛烈な戦闘を繰り広げる三機のガンダムブレイカーを見やる。
「今の俺達は……コイツにだけは負けるわけには行かないッ」
フィンファンネルを解き放ちながらデビルガンダムから派生するガンダムヘッドを破壊した翔は眼光鋭くデビルガンダムを見据えるとそのまま彼の瞳は紫色に変化する。
【例えこれが紛い物でも、私たちにとっては絶対に乗り越えなくちゃいけない存在だからッ!!】
スイッチの切り替えのように意識をシーナが主にするとレールガンとビームライフルでデビルガンダムの動きを牽制しながら懐に飛び込み、ビームサーベルを引き抜いてすれ違いざまに一太刀を食らわせる。
【翔が私の全てを受け入れてくれた! だったら怖いものなんてなにも……ないッ!】
自分の世界を巣食う病原とも言える戦争を終わらせたい。
その為にシーナは翔を異世界に呼び寄せた。最初は血で血を洗うような戦争の渦中で心をすり減らす彼に心を痛めていた。
だが彼は自分の世界に一度は戻って迷いながらでももう一度、異世界で戦うと自分自身を受け入れてくれたのだ。であれば自分が恐れることなどなにもない。ただ我武者羅なまでに目の前の出来事にぶつかっていくだけだ。
「ああ、そうだ……。本当の戦いはここからだ」
デビルガンダムから放たれた拡散粒子弾に対して、素早く意識を翔に切り替えると、放ったフィンファンネルを呼び寄せ、ピラミット型に展開してビームバリアを張ることで防ぐ。
すると翔の瞳がシーナと重なるようにオッドアイになると、呼応するようにブレイカー0の腕部装甲が展開され、そのままビームトンファーによるビームのエネルギーが迸る乱舞のような攻撃を浴びせつけ、デビルガンダムから離脱する。
「──俺のこの手が輝き吼えるッ! 未来を掴めと羽ばたき叫ぶッ!!」
離脱したブレイカー0を追撃しようとデビルガンダムが行動を起こそうとした瞬間、荒ぶる龍の如き一筋の機影がデビルガンダムに突撃すると、その機体を大きく仰け反らせる。
「バアアァァァァァァァァニングゥウッ!!!! フィンッッガアアアァァァァァァーーーーァアアッッッ!!!!」
何事かと思い、デビルガンダムを見やれば、そこには背後に日輪を輝かせるバーニングブレイカーの姿があったではないか。
何か反応するよりも早くエネルギーが右マニュビレーターに集中させていたバーニングブレイカーは覇王の魂を震わせるような咆哮に乗せた一撃をデビルガンダムの下半身であるガンダムフェイスに叩きつけた。
大爆発を起こすガンダムフェイスの目の前にいるバーニングブレイカーに対して、ガンダムヘッドが食らいつこうとするが、それを阻むようにフラッシュエッジⅡが突き刺さり、次の瞬間、一瞬のうちに迫った機体によって破壊される。
「
そのままデビルガンダムの上半身まで舞い上がったのは、ゲネシスブレイカーであった。デビルガンダムが何かするよりも早く英雄から受け継いだスーパードラグーンによる効果的なオールレンジ攻撃を仕掛けると……。
「だが俺が今、俺でいるのは多くの出会いから受け継いだモノがあるからだッ! 俺が培った強さこそが
パルマフィオキーナをデビルガンダムの頭部に浴びせつける。しかしそれだけでは終わらない。掌から紅蓮の炎が巻き起こり、バーニングフィンガーに繋げるとエネルギーが頂点に達して爆発させる。
「常識を壊し──!」
デビルガンダムが追撃しようと、爆炎から抜け出してみれば、そこには上空に並ぶ三機のガンダムブレイカーの姿が。
その中で既に二人のエヴェイユの力を解放したブレイカー0は天を貫くような光の刃を形成していた。
「非常識に戦うッ!」
そしてバーニングブレイカーもまた覇王不敗流の最終扇である天然自然のエネルギーをその身に宿して気弾として打ち出そうと両手を組むようにしてエネルギーを集束させる。
「それが……ガンダムブレイカーだッ!」
そしてゲネシスブレイカーもまたGNソードⅤを媒体に覚醒の刃を解き放つ。一矢の咆哮と共に三機のガンダムブレイカーから放たれた一撃はデビルガンダムを飲み込んで、消滅させるのであった。
それはこの場で戦っていたファイター達の活力を与え、歓声を巻き上げる。その中で翔達は機体越しに頷きあうと浮遊城へと突入していくのであった。
・・・
「ふぃー……さっすがにキツイかなぁ……」
一方、浮遊城内の宇宙空間でユグドラシルを相手に単機で挑んでいる優陽は冷や汗を浮かべる。と言うのも脅威はユグドラシルのテンダービームと高出力のビームバリアによる攻防の隙のなさであろう。お陰でユグドラシルに少しずつ損傷を与えていても、EXブレイカーも比例して、それ以上に損傷を負っているのだ。
「でも、カッコつけた手前、やられるわけにはいかないよねッ!」
伸びるテンダービームをシグマシスライフルで逸らしながらユグドラシルへ向かって突撃するEXブレイカー。この機体は見る限り、砲撃に特化した機体だ。にも関わらず優陽は突撃することを選んだ。
ありったけを放つように全てを武装を放ちながら、ユグドラシルに近づいていくEXブレイカー。そのお陰か、テンダービームを寄せ付けず、ユグドラシルに接近するが、放たれた砲撃は局所で張られたビームバリアで防がれてしまう。
「僕はこの機体に誓ったんだッ! どうしようもなかった昔の自分を超越するってッ!」
しかしそれでも優陽の瞳から戦意が衰えることがない。
テンダービームがEXブレイカーに迫るなか、ありったけのエネルギーを溜め込んだハイメガキャノンが放たれ、ユグドラシルのビームバリアと拮抗し、やがては相殺される。
「一矢や翔さん達みたいに、誰かの希望になりたいからッ!」
損傷を受けながらでも、ハイパービームサーベルでテンダービームを薙ぎながら、やっとの思いでユグドラシルに取り付くと前腕部のビームサーベルを出現させて、原作で打ち倒したG-セルフのように鋭く一撃を加える。爆発を起こす中、EXブレイカーは巻き込まれぬように一気に離脱した。
「さてまだやることは残ってるからね。行こうか、この世界の希望を守りに」
後方から三機の反応を知った優陽は笑みを零すなか、そのままユグドラシルを撃破したことで崩壊していく宇宙空間から先へ進むのであった。
・・・
「やはり手こずりはしますか」
一方、沿岸ステージから移動し、海上で展開していた巨大空母の上に乗ったブレイカーブローディアはシャンブロからのアイアンネイルを紙一重で避けながら、戦況を分析する。やはりMAは巨大であり、攻撃を放てばまず外れることはないのだが、その分、堅牢なのおだ。対してこちらはいくら作りこんでもMSでしかない。まともにシャンブロの最大火力の一撃を受ければ、一溜まりもないだろう。
「……いよいよ、本気を出すときのようですね」
とはいえ、両肩のフルシールドを犠牲にしてでももう一方のアイアンネイロはこれまでの戦闘でその機能を殺すことには成功しており、リフレクターピットの数も減らしている。後は、着実に追い詰めるだけだ。
「この剣で得た勝利は我が父へ」
GNバスターソードを両手で突き立て、ラグナは意識を集中させる。
Newガンダムブレイカーズは翔が開発に携わっている。彼がゲームを始めたのも翔の勧めがあったからだ。そしてどうやらこれ以上、戦いを長引かせる気はないようだ。
「父よ、我が勝利をご覧あれッ!」
ならばとシャンブロはさながらドラゴンが火炎を吐くように大口径メガ粒子砲のチャージを始める。今まさにブレイカーブローディアとシャンブロの姿はさながらドラゴン退治の騎士のようだ。
甲板を蹴り、バーニアを稼動させ、シャンブロへ向かっていくブレイカーブローディア。同時に大口径メガ粒子砲が放たれるが、それを上方へギリギリで回避すると、そのまま砲口の頭上でありったけの勢いを利用したGNバスターソードの一撃で貫き、歪を生んだ大口径メガ粒子砲は耐え切れず、大爆発を起こす。
「私は如月翔の息子であり、ブレイカーの継承者。この勝利を更なる栄光へ繋げましょう」
何とかシャンブロを撃破したブレイカーブローディアはビームコーティングマントを自由に靡かせながら、戦いの残滓を振り払うかのようにGNバスターソードを一振りして、先を急ぐのであった。
・・・
それは圧倒的と言って良いかもしれない。
ブレイカークロスゼロとジークジオンの戦いは一年前の戦いよりも段違いであった。それはやはり如月奏がこの一年で更なる力を得て、成長したからに他ならないだろう。
「……私の全ては満たされている」
Cファンネルが一度、ジークジオンへ向かえば、それはまるで嵐のように激しく切りつけ、ジークジオンがブレイカークロスゼロを捉えようとすれば、量子化して姿を消す。ジークジオンはブレイカークロスゼロを完全に捉えられぬまま損傷を受け続けているのだ。
「それら全てがこの如月奏を作っている。その一つでも欠けない限り、私は真っ白な世界にい続ける」
トランザムによってジークジオンをかく乱しながら向かっていくブレイカークロスゼロに青白い火炎を放つが、量子化して避ける。
するとやがて火炎を出し切れなくなったその射線上に再び姿を現したブレイカークロスゼロはそのままGNソードⅢを展開して、腹部を貫き、貫通した背後に静かに佇むと、ジークジオンは大爆発を起こすのであった。
・・・
「これ、でッ!」
玉座ではNEXdhとFA騎士ユニコーンが同時にフェネクスに一撃を放っていた。シールドで受けたフェネクスは僅かに後方に押しやられ、そのシールドに少し傷がついた程度であった。
それどころかフェネクスはここからが本番だとばかりにデストロイモードに変形する。その煌びやかな姿に希空が顔を顰め、更なる戦闘に身構える。
フェネクスの動きは早かった。一瞬のうちにNEXdhとの間合いを詰めると、ビームトンファーを放ち、NEXdhは咄嗟にシールドで受けるが、勢いまでは受け止めきれず、後方へ吹き飛ばされてしまう。
《希空ッ!!》
希空の身を案じるロボ助に対して、何か行動を起こす前にアームド・アーマーDEのメガキャノンを放って、牽制すると、そのまま近づいてFA騎士ユニコーンを蹴り飛ばす。
「……ロボ助ッ」
ロボ助が危ない。そう感じて、起き上がろうとしたNEXdhではあるが、ビームマグナムの銃口が既にこちらに向けられており、シールドを構えるが、防ぎきれず破壊されてしまう。
「……!」
中央の座まで吹き飛んだNEXdhにフェネクスが迫る。希空が無我夢中にドッズガンを向けるが既にフェネクスはビームマグナムの銃口をNEXdhに向けていた。
「確かに……この結果は見えていたのかもしれません」
フェネクスはその気のなれば、もうNEXdhを撃破していたことだろう。
そのことを悟って悔しさから下唇を噛む。結局、一番初めにフェネクスと戦闘をした時もデストロイモードを発言させてからは手も足も出なかったのだ。
「……ですが、今の私はあの時とは違う」
しかし明確に初めてフェネクスと戦った時とは違うと言えることがあった。
「昨日より今へ、今より明日へ。短時間でも私には紡いだものがありますから」
フェネクスと戦ってから多くの出会いがあった。それは希空にとって、似ていても別人と言えるような人々との出会いだ。そこから交流を深め、紡いだものがある。
その瞬間、フェネクスは咄嗟に振り返ると、五つのビームが自分に迫っており、シールドを構えるのも間に合わず、その身に受けてしまう。損傷を負ったフェネクスが玉座の入り口を見やれば……。
「ああ。俺達はそこで自分の可能性を見付けた」
──争いの連鎖を断ち切る英雄・ガンダムブレイカー0
「限界なんてない。お互いを知れば、知るほどそう思えた」
──輝ける未来をその手に掴む覇王・バーニングガンダムブレイカー。
「一人じゃきっと出会えなかった温かさを得た。その温もりが何度もぶつかろうとする力になったんだ」
──英雄と覇王から受け継ぎし輝ける新星・ゲネシスガンダムブレイカー。
「その温もりを、希望を……消させるわけにはいかない。それを消そうとする絶望もここで希望に変える」
──希望の守り手・EXガンダムブレイカー。
「それを今からアナタは身を持って知ることになるでしょう。我々が紡いだ力を」
──栄光を守護する気高き獅子・ガンダムブレイカーブローディア。
「真っ白なほど輝かしい未来を掴めるだけの可能性をな」
──目醒めし最強の遺伝子・ガンダムブレイカークロスゼロ。
そこには六機のガンダムブレイカーがいたのだ。
その瞬間、背後から放たれたアンカーにフェネクスはその身を拘束され、すかさず高圧電流を流されると一時的な機能不全に陥る。その隙にNEXdhはFA騎士ユニコーンと共にガンダムブレイカー達と合流する。
「行きましょう。皆さんのお力、お借りします」
ガンダムブレイカー達と合流したNEXdhはそれぞれを見て、声をかける。彼らは今、たった一つの目的のために動いている。ここで異を唱える者はいなかった。
「行きますよ、翔さん!」
「ああ、任せろ」
すると機能を回復したフェネクスが動き出そうとする。すかさず優陽が翔に声をかけると、EXブレイカーとブレイカー0は前に出る。ブレイカー0のオールレンジ攻撃と共に放たれた狙撃が着実にフェネクスの装甲を削るなか、EXブレイカーのシグマネスライフルが放たれ、フェネクスは何とか回避するが……。
「バーニングゥッ……!!」
「フィンガアアアアァァァァァーーーーーーーーァアアアッッ!!!!」
既にそこにはゲネシスブレイカーとバーニングブレイカーが回り込んでいたのだ。二機同時に放たれるバーニングフィンガーにシールドを構えるが、未来を掴むその一撃を前に容易く打ち砕かれ、そのままフェネクスに直撃する。
「奏、遅れたら補習ですよ」
「私はお兄ちゃんっ子なんだ! 離れる筈がないさッ!」
更に追い打ちをかけるようにゲネシスブレイカー達を飛び越えたブレイカーブローディアとブレイカークロスゼロの自慢の実体剣が穿つように放たれ、腹部に大きな損傷を受けたフェネクスは大きく仰け反って膝をついてしまう。
《行こう、希空。終わらせるんだッ!!》
「うん!」
そんなフェネクスを見て、瞬時にロボ助が希空に声をかけると、頷いた希空は機体を変形させ、FA騎士ユニコーンを乗せると、フェネクス目掛けて突進する。
「希空、行っけぇっ!」
「道は我々が開きましょう」
NEXdhへの攻撃を阻む為、NEXdhの背後からブレイカークロスゼロとブレイカーブローディアがそれぞれライフルモードに切り替えて、引き金を引く。
「どうせならハッピーエンドが良いよねっ」
「悪いが、希空に手出しする奴は許す気にはなれなくてな」
すかさずその後を追うようにEXブレイカーがシグマシスライフルを、ゲネシスブレイカーがGNソードⅤをライフルモードにしてNEXdhの援護に徹する。
「これでフィニッシュだ! ここまで来たんだし、とことん手伝ってやるぜッ!」
「ああ。この戦いをここで破壊する」
【だから進んで、希空ちゃんっ!!】
そしてバーニングブレイカーはバーニングフィンガーを照射し、ブレイカー0も狙撃を始める。六機のガンダムブレイカーがそれぞれの想いを乗せた攻撃はフェネクスの装甲を少しずつ破っていた。
それでもフェネクスは抗おうとビームマグナムを何とかNEXdhに向けようとする。照準をNEXdhに合わせ、引き金に指をかけたその時であった。
「さあ、勝利を組み立てようか」
横から放たれたビームがフェネクスのビームマグナムの銃口を逸らしたのだ。ビームマグナムその物は無傷であっても、銃口を逸らすのには十分な役割を担ったのだろう。射線上の先にはRX-78-2 ガンダムの姿があった。
「《いっけぇえっ!!!》」
希空とロボ助の声が重なる。その瞬間、がら空きとなったフェネクスの胴体をNEXdhとFA騎士ユニコーンが突き破り、大爆発を起こす。爆発に巻き込まれていないか、誰もが希空とロボ助の身を案じるなか……。
「──終わり、ました」
爆発から一筋の隆盛が抜け出し、NEXdhとFA騎士ユニコーンがその姿を現す。健在であるその姿を見て、翔達は安堵して、笑みを浮かべるのであった。
「……無事か」
「そこは流石、俺の娘って言ってあげれば?」
希空達の無事を確認して、安堵のため息をつく一矢を見て、途端に優陽はからかい始める。一矢がそれにムキになっていると玉座にGAME CLEARと大々的に表示され、ファンファーレのような音楽が聞こえてくる。
「どうやら終わったようだな」
「さぁて、この後どうなるんだか」
フェネクスを倒したことで表示されたGAME CLEARの文字を見ながら翔とシュウジはこの後に起きることを考える。希空達は現実に帰るだろうが、自分達はどうなるのだろうか。
「あっ……」
するとポツリと希空が声を零す。視線の先にいるブレイカー0からEXブレイカーまでの四機が淡い光に包まれているのだ。
「……成る程。データっつーのもやっぱ間違ってなかったってことか」
「あははっ……。なんか変な感じだね」
翔達も自分の状態に気付いたのだろう。己の状態を確認して、シュウジも優陽も何ともいえない様子で苦笑すると、四機はコックピットを明け、ファイター達が姿を現す。
「一時的とは言え、お前と出会えて良かった。娘と言われてもピンと来ないけど……。でも、うん……。純粋にそう思える」
「パパ……」
希空達もコックピットを開くなか、希空に対して柔らかな表情を浮かべる一矢に希空も切なそうに目を細める。
「ここで消え去った後、俺達には何も残らないかもしれない。だが、俺達はそれぞれが未来を切り開いていくのは変わらないだろう。だからお前達も……」
「ええ、きっと明るい未来へ進んで行きます」
データであろうが、その実、影法師であろうが、これが元に影響するかは分からない。
だがどの時間軸から移動して来ても、そこにいる翔達はそれぞれの未来を切り開き、栄光を手に入れた。だからこそ希空達もそうであって欲しいと話す翔に希空達は頷く。
「こんな時、どんな別れの言葉を使えば良いのか分からないな……」
何となくだが、もう間もなく自分達が消え去るのが分かる。翔はその前にキチッと別れを告げたいと最後の言葉を探す。だがやがて、導き出したのだろう。希空達に微笑むと……。
「また、未来で」
その言葉を最後に翔達は消え去る。束の間ではあるが、何とも不思議で温かい時間を過ごしていたことには変わりない。その時間を希空達が噛み締めていると……。
「ふぃー……。あぁ一応、俺も良いかな?」
ふと横から声をかけられる。そこにはガンダムの姿が。忘れていた。彼もまた最後、手を貸してくれていたのだ。だが、彼のガンダムもまた淡い光に包まれていた。
「……先ほどは援護、感謝します」
「物珍しいもんだから、この世界を廻ってたら決戦中で驚いたもんさ。まっ、縁があったし、お節介を焼いちゃったんだよ。でも、これで俺も帰れそうだ」
最後の最後に手を貸してくれた彼に礼を口にする希空。そんな彼女に軽くおどけながらでも、自身を包む淡い光を見ながらどこかホッとした様子を見せる。
「これで終わりなんでしょ? お疲れさま。疲れたんなら甘いものを食べときな、シュガードーナツやクルーラーがオススメだよ」
「ドーナツが好きなんですか?」
「ああ。特にユイ姉ちゃ……あぁ、俺の知り合いが知ってる店のドーナツは最高でね」
元々の性格なのか、どこか軽薄に話す青年のオススメに希空が苦笑していると、確かに美味しいのか、青年は声を弾ませていた。だが、青年を包む淡い輝きは少しずつ強くなっていく。そえはまるでもうすぐ消え去ってしまうかのように。
「アナタはどうするんですか……?」
「どうせならお嬢さんとも一緒にいたいけど、この天才を必要としている幼馴染みがいてね。俺が力になってあげないと」
このままでは翔達と同じように消えてしまうだろう。
翔達のその後は知っていても、彼に関しては何も知らない。果たして、彼は此の先、どんな道を進むのだろうか。だが少なくともかつてのミサが一矢にそうしたように彼を必要とする存在がいて、彼はそれに全力で応えようとしているようだ。
「まっ、あんた等ももう休みな。こっちのことは任せろよ」
青年のその言葉を最後に、彼とガンダムは翔達のように消え去る。残された希空達はゲームクリアと共に彼女達もNewガンダムブレイカーズの世界から消えるのであった。