機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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答え合わせ

「希空っ!」

「ご迷惑をおかけしました」

 

 浮遊城から現れたジークジオンとの戦闘が始まった。ジークジオンに攻撃が集中するなか、ブレイカーインフィニティ達と共に参戦したNEXFAに気付いた奏はすぐに通信を入れる。

 

「何故ここに……。大丈夫なのですか?」

「はい。私も皆と戦いたいので」

 

 浮遊城との長い戦闘からかそもそも希空が復活したことを知らないラグナは驚きつつも彼女に問いかけると、改めて奏やラグナを前にして微笑みを浮かべながら答える。しかしその中には決してロボ助はいない。そのことに希空が暗い表情を浮かべていると……。

 

「……今はそんな顔をする時じゃない」

「パパ……」

「お前は何の為にここに来た」

 

 そんな希空に一矢が通信を入れる。久方ぶりに聞く父の声にピクリと震えた希空はサブモニターに映る一矢を見つめる。

 

「それは私にとって大切な人達守りたいから……。ずっと一緒にいたいから……」

「なら進め。この場にいなくてもお前の中にいる者は似たようなことを言うんじゃないか?」

「……うんっ」

 

 わざわざこのガンダムブレイカーズに来たのは好奇心などではない。

 ただ純粋に自分の願いを叶えるためだ。そんな彼女に一矢は彼の中に残る覇王達を振り返りながら話すと、その言葉にロボ助を想った希空は強く頷く。

 

「道は俺達が切り開く。お前はただ自分が(のぞ)むまま飛べ」

「分かった……。ねぇパパ……。これが終わったらママを交えて、いっぱいいっぱい話がしたいんだ」

「ああ。俺達の帰りを待ってるママもきっと喜ぶ」

 

 浮遊城の砲撃からNEXFAをアンチビームシールドを展開して庇いつつ、ジークジオンを見据える一矢の言葉に頷いた希空は最後に一矢に声をかけると、その言葉に穏やかな笑みを浮かべて頷く一矢を見て、NEXFAはストライダー形態へと変形してジークジオンへと向かっていく。

 

「おい、さっさと手を貸せ」

「やれやれ、愛娘とはえらく態度が違うものだな」

「当たり前だ。俺はまだお前を許しちゃいない」

 

 NEXFAが少しでも進みやすいようにと援護をする為、クロノに声をかける。最も希空と違い、どこか棘のある言葉に肩を竦めるクロノだが、そんな軽口も吐き捨てるように答える。

 

「だがお前の腕は認めている。お前と力を合わせれば、効率も良いと言う事もな」

「全く都合が良いものだ。だがゲームであれば、それもアリだろう。準備は良いかね」

「ああ。希空の道を切り開く」

 

 人間性はどうであれ、その実力は一矢は高く買っているのだ。リミットブレイカーとルキフェルは同時に飛び出すと、砲台を破壊する為に浮遊城へと向かっていく。

 

「我々はNEXの援護に徹する」

「翔さんも、ですか?」

「終わらせるのは躓いても前へ進もうとする彼女のような若者の方が良い」

 

 ブレイカーインフィニティをはじめとした歴代のガンダムブレイカー達も動き出す。

 翔の指示に優陽は尋ねると、果敢にジークジオンへ向かっていくNEXFAを見ながら、砲口を向けようとする浮遊城の砲台を狙撃して破壊する。

 

「歌音が頑張ってるんなら、ルティナも応えないとねッ!」

 

 フィールドには歌音の歌声が響き渡っている。ブレイカーインフィニティがシャルルのステージである浮遊城を落としたことで勢いが削がれ、優勢に立てたのだ。今もなお一心不乱に情熱に満ちた歌を披露する歌音に笑みを浮かべたシャルルはパラドックスを動かして、ジークジオンに向かっていく。

 

 ・・・

 

「残りの耐久値も少ない……。であれば……ッ!」

 

 ジークジオンの周辺で戦闘を続ける希空達。ジークジオンに幾度も攻撃を仕掛けるが、やはりその堅牢なまでの防御力を前に中々、有効打を出せずにいた。

 しかしプレイヤー側はそうではない。特にずっと戦っていたラグナ達はいくら彼らの実力が高かろうが、シャルルのデバフによる障害で耐久値は残り僅かと迫っていた。この状況にどうすべきか頭を悩ませたラグナはブレイカーブロディアはその機動力を駆使して、ジークジオンの背面に取り付くと、そのまま幾度となくGNバスターソードで斬りつける。

 

「っ!?」

 

 そんなブレイカーブローディアに対して、忌々しそうに目を輝かせるジークジオン。するとブレイカーブローディアに異変が起きた。何と自身を包むように赤い光が発生すると、ジークジオンの前に転移させられたではないか。

 

 次の瞬間、ジークジオンの背にある無数の棘が光り輝き、口から青い炎を吐く。回避するには間に合わず、ブレイカーブローディアは咄嗟にGNフルシールドを展開するが、全てを焼き尽くさんばかりの炎は少しずつフルシールドを溶かしていく。

 

「ガンダムブレイカー……貴様らさえいなければァッ!!」

 

 ジークジオンを操る者はブレイカーブローディアを憎々しげに見つめながら、炎の威力を強める。このままではフルシールドのみならず、ブレイカーブローディアその物が溶けてなくなってしまう。

 

 しかしその直前に頭部に無数の高火力を誇るビームが降り注ぎ、ジークジオンは攻撃を中断せざるえなくなる。ストライダー形態のNEXFAだ。ジークジオンが気付いたのも束の間、その隙にNEXFAはブレイカーブローディアを背に乗せる。

 

「希空、助かりました……。ありがとう」

「いえ、寧ろ間に合って良かったです」

 

 ブレイカーブローディアを背に乗せながら、ジークジオンの周囲を旋回するNEXFA。その間にラグナが希空に礼を口にすると、希空も安心したように微笑む。以前の希空ならばガンダムブレイカーを相手に助ける行為を一瞬でも渋ったかもしれない。でも今は真っ先に助け出したのだ。

 

「ハエのようにぃっ!」

 

 NEXFAに対して、ジークジオンが標的を定める。すぐに先程のブレイカーブローディアのように自身の目の前に転移させようと言うのだろう。しかしその前に上空から飛来した黄金の龍がジークジオンの腹部に突進し、その巨体を吹き飛ばす。

 

 《待たせた!》

「アナタは……」

 

 それはロボ太のスペリオルドラゴンであった。

 NEXFAに通信を入れるロボ太に、その姿を見て、希空は過去の記憶を思い出す。それは写真だ。幼い頃、両親のアルバムを見た時に今、映っている者はいた。

 

 《初めまして、かな。君に会えるなんて夢のようだ》

「ロボ、太……?」

 《うむ、だが話は後だ。これを終わらせて語り合おう。君が最も大切にしている存在も待っている》

 

 自身を見て、穏やかな声を発するこの存在の名を口にする希空。希空の問いかけるような呟きに頷きながら、起き上がろうとするジークジオンを見やる。

 ロボ太の言葉に頷いた希空はブレイカーブローディアと離れ、ジークジオンへと向かっていく。出し惜しみをせず、ありったけの火力を注ぎ込む。

 

「ちぃっ! 塵芥の分際でぇっ!」

 

 攻撃を繰り出すのは、NEXFAだけではない。多くの機体がジークジオンに攻撃を注ぎ込むなか、ジークジオンは真正面から迫るNEXFAに狙いを定めると、青き炎を解き放つ。

 

「白黒つける時だ」

 

 NEXFAに迫る全てを焼き尽くさんばかりの炎。しかしその直前にNEXFAの前に量子化して現れたトランザム状態のクロスオブレイカーがGNソードⅢを構える。

 

「私達はまだ何も分からぬ真っ白な明日を掴む」

 

 ジークジオンを見据える奏の瞳は虹色に光り輝いていた。GNソードⅢを媒体に解き放った虹色の光の刃は炎を容易く切り裂き、そのまま後ろに控えるジークジオンにも届いたのだ。

 

「今度は間に合ったな……」

 

 クロスオーブレイカーの一撃でジークジオンが大きく仰け反るなか、奏は安堵したように背後で健在なNEXFAを見やる。コロニーカップの時は間に合わなかったが、漸く自分の手で希空を助けられたことに安堵していた。

 

「ありがとう、奏お姉ちゃん」

「んんんっっっ!!!!? 希空!? 希空ーっ!!? 今、なんて!? もう一回!! ワンモア!! ワンモアァアアアアアアッッ!!!!!!!!」

「何も言ってませんよ」

 

 すれ違いざまに希空は奏にか細い声で礼を言うと、その言葉を決して聞き逃さなかった奏は噴出してしまいそうな衝撃を受けながら、希空に強請ろうとするが、微笑みを浮かべながら希空にあしらわれ、体勢を立て直そうとするジークジオンの頭上にたどり着く。

 

「確かに私は塵のような存在です……」

 

 ジークジオンが目を見開くなか、NEXFAはその全ての銃口をジークジオンへ向け、希空は静かに呟く。

 

「ですが私の周りには多くの人がいます。大切なものを教えてくれる人たちが……。例え塵に過ぎなくても、少しずつ集まれば塵でも大きくなれる……!」

 

 エネルギーが集まり、ジークジオンへ解き放つ。全てがジークジオンを貫き、やがてデータ体となって消滅するのであった。

 

 ・・・

 

「いよいよだね」

 

 ジークジオンの撃破後、半壊した浮遊城の中にクロノ、そして一矢がいた。ラスボスとも言えるジークジオンを撃破後、ガンダムブレイカーズは機能を停止してサイバー課によって制圧が行われていた。そんな中、彼らの前には玉座へ続く扉があり、クロノは愉快そうに手をつく。

 

「……犯人は誰だ? お前は知っているのだろう」

「焦る必要はない。この扉を開ければ分かることだ。さあ、答え合わせといこう」

 

 犯人はクロノの頓挫した計画を知っていた。一体、何者なのかを尋ねる一矢にクロノはわざと焦らすような様子で扉を開け、二人は玉座に足を踏み入れるのであった。


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