機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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 学生寮に戻っていた希空は手早く準備を進める。コロニーカップには間に合わなかったものの元々、グランドカップを見越して作成した為、手間はかからず手早く作業を行うことが出来た。

 

 希空が作成したのは何も新規で作成したガンプラではない。ケースの中にNEXをしまった希空はすぐにでも動き出し、部屋を出る。

 

「──あっ」

 

 扉を開けた先にはヨワイがいた。インターフォンに手を伸ばしているところを見るに、彼女のことだ。押すか押すまいかで悩んでいたのだろう。

 

「……アンタが帰ってきたって聞いたから」

「ご心配をおかけしました」

「べっつに心配なんて…………………………………したけど」

 

 気まずそうに希空の部屋の前にいた理由をそっぽを向きながら話すヨワイ。わざわざ部屋にまで来てくれた彼女に微笑みを見せる希空に、気恥ずかしそうに照れ隠しで否定するのかと思いきやもごもごと口ごもった様子で答えていた。

 

「それで……ガンダムブレイカーズに行くの?」

「そのつもりです」

「そ、そう……。しょ、しょうがないし、アタシも一緒に……」

 

 希空とその腰にあるガンプラが収められたケースを見やりながら彼女に問う。今、あそこでは奏やラグナが戦っている。故に彼女もガンダムブレイカーズに向かうと思ったのだろう。彼女が頷いたのを見て、仕方なさそうにヨワイも希空と共にガンダムブレイカーズに向かおうとするが……。

 

「いえ、ヨワイさんはここで待っていてください」

「なっ!? アンタ、アタシが雑魚だと思って……っ!」

「そういうつもりではないのですが……」

 

 だが希空はヨワイの申し出を断ったのだ。その理由を自身の実力だと思ったヨワイはすぐに食って掛かるが、希空は首を横に振る。

 

「ヨワイさんには戻って来た時に出迎えてもらいたいんです。ヨワイさんは私にとって大切な人だから」

「んなぁっ……!?」

「だから待っててください。そしてまた……私とバトルしてください」

 

 ヨワイを落ち着かせるようにその手を握った希空は彼女の瞳を真っ直ぐ見つめながら話す。最もその言葉にヨワイは目に見えて狼狽え、湯気が出そうなほど顔を真っ赤に染めていた。

 そんなヨワイに微笑みかけた希空はこの場を後にする。後にはぼぅっと惚けた様子でヨワイが立ち尽くしていた。

 

 ・・・

 

「お待たせしました」

 

 再び病院に訪れた希空はそこで待っていた翔と合流する。

 

「あの……優陽さんは……?」

「既に移動している。我々以上に準備の時間が必要だからな」

 

 早速、行動を開始しようとする翔に希空はその後を追いながら尋ねると、近くのタクシーを停めた翔は答えると、運転手に目的地を伝えて、希空と共に移動を開始するのであった。

 

 ・・・

 

「……待たせた」

 

 翔達が移動したのはラグナが協力しているサイバー課であった。そこには既に優陽などがおり、モニターにはガンダムブレイカーズの様子が映し出されていた。

 

 それだけではない。それとは別にモニターには煌くステージのような作りの空間が映し出されており、そこに歌音の姿があった。

 

 モニターに映る歌音はいつものタートルネックやシャルルのような露出度の高い衣装ではなく、麗しい衣装に身を包んでいた。

 確かにシャルルの衣装をそのまま歌音が着るよりも、こちらのほうが歌音に似合っている。希空も一瞬、見惚れてしまっていた。

 

 そんな歌音だが、データ体となってその場から消える。どうやらあの空間はVR空間だったようだ。程なくして歌音がやってくる。

 

「歌音さん、どうしてここに?」

「ちょっとあーちゃん達のお手伝いをね」

 

 そんな歌音に希空が声をかける。希空は病院での歌音と患者達のやり取りを知らない。と言うより、ウイルスによって昏睡させられてしまった希空はそもそも歌音がシャルルであることを知らないのだ。

 

「お姉さんはバトルは出来ないけど、それでも何かを届けることは出来るのです。だからあーちゃんもアナタの空を飛んで」

「……分かりました」

 

 胸に手を置いて先程の患者達の笑顔を思い出しながら、話す歌音。歌音は歌音なりに自分に出来ることをしようとしてくれている。ならばと希空は歌音の言葉に頷きながら、翔を見やる。

 

「細かいことは警察(彼ら)がやる。我々に出来るのは所詮はバトル……。だが、だからこそ集中できる」

 

 希空に気付いた翔は周囲の警官達を見やりながら話す。彼の言うとおり、所詮はガンプラファイター。誰かを捕まえるような真似はできない。しかしそれでもガンプラを用いたバトルならばお手の物だ。

 

「破壊しよう。輝かしい未来を創造する為に」

 

 もうこんなゲームは終わらせなければならない。静穏ではあるが、意志の強さを感じさせるような強い言葉に頷いた希空は翔達と共にガンプラバトルシミュレーターVRへと向かう。

 

「頑張って、誇り高き人達。私も……一緒に頑張る」

 

 シュミレーターに向かった翔達を見送りながら、歌音もVR空間へダイブすると、自分が設定した衣装に姿を変える。

 

「始めよう、姫川歌音のファーストライブッ!!」

 

 VRを駆使して鮮やかで目を奪われるような演出が起こると同時に歌音の手に粒子が集まり、特製のマイクが具現化して握られる。

 勇壮なイントロが流れるなか、歌音は決意を宿したその瞳でただ前を見据える。これよりはシャルル・ティアーナではなく、姫川歌音のステージだ。

 

 ・・・

 

「私にとっての大切なもの……」

 

 その歌はこれから発進する希空達のシュミレーターにも響いていた。勇気付けられるような歌を聴きながら、希空はNEXのコックピットで集中力を高める。

 

「パパ達には沢山の仲間がいる……。でもそれは私も同じ……。負けないくらい大切な人たちがいる……。それは私もパパの娘だって誇れるほどに」

 

 父は多くの仲間達がいる。お互いに切磋琢磨することによって高めあってきた間柄だ。例えガンダムブレイカーでなくとも自分には父のように大切な人達がいる。それこそ父にも負けぬくらいの、いや父の娘であることを誇れるくらいに。

 

「ガンダムNEXフルアームド……雨宮希空、行きますッ」

 

 ストライダー形態でセットされたNEXはこれまでのものとは異なっていた。大きな特徴は通常の四枚羽を装備している肩部に新たにAGE-2のダブルバレットウェアにある二つのAMBACバインダーを装備していることだろう。

 細く鋭利な四枚羽も巨大化しており、全体的に大柄となったこの装備はフルアームドウェアと呼ぶ。NEXフルアームドはカタパルトを飛び出していくのであった。

 

 ・・・

 

「この歌は……っ!?」

 

 一方、バトルフィールドでは依然としてシャルルに何の手立てもなかったクロスオーブレイカー達の下に、いや全てのフィールドに歌音の透明な歌声が響き渡る。

 

「歌音っ!!」

 

 それが歌音の歌であるといち早く気付いたのはルティナであった。たちまち明るい笑顔を浮かべながら、歌声を調べれば、特製のステージで歌う歌音の姿が映し出されていた。

 

 歌声を届ける歌音の表情には緊張やプレッシャーのようなものはない。ただ純粋に歌に集中し、楽しんでいることが画面からも伺えた。

 

 そして効果はすぐに出た。シャルルの歌にも負けぬ歌声はやがてリミットブレイカー達を苦しめていたデバフを打ち消したのだ。

 

「攻撃が通るッ!」

 

 すぐさま奏が浮遊城目掛けて攻撃を放てば、今まで鉄壁の如く損傷を与えられなかった浮遊城がここで漸く損傷を与えることが出来たのだ。

 

「──よくやった」

 

 すると静かに、そして確かに響き渡るような声が届き、奏やラグナ達が強く反応する。この声を良く知っている。彼の英雄・如月翔のものだ。

 

「あれは……っ」

 

 そしてすぐにセンサーに反応があり、目を向ければ、そこには浮遊城で戦っていた三機と覇王を除くラグナより前の歴代のガンダムブレイカーがそこにいたのだ。

 

 そしてその中心に王の如く存在しているのは如月翔のガンダムブレイカー。だがかつてのブレイカーネクストではない。その名はガンダムブレイカーインフィニティ。ユニコーンガンダムをベースにカスタマイズが施された新たなガンダムブレイカーであったのだ。

 

「っ!? 離れろ!!」

 

 ブレイカーインフィニティはビームサーベルを抜刀すると、天高く掲げる。その姿に何か感じ取った一矢はすぐに指示を出すと浮遊城周辺にいた機体達は一目散に浮遊城から離れていく。

 

「──0から始まり、今を超え、次に進み、無限へ至る」

 

 ブレイカーインフィニティはかつてとは違い煌く虹色の輝きを纏えば天に突き上げたビームサーベルは空を裂くほど巨大なビームサーベルを生み出すと轟々と大気を震わせながら、一気に浮遊城めがけて振り下ろしたのだ。

 

 轟音が鳴り響いた。

 何とブレイカーインフィニティの一撃によって浮遊城は地に墜ちるほどの大きな損傷を受けたのだ。

 

「あれが……原初のガンダムブレイカー」

 

 それを共に出撃していた希空は唖然とする。かつて異世界において英雄に対して神と例えようとした者もいたが、このような光景を目の当たりにすればそれも頷ける。

 

「全く……だから彼はバランスブレイカーだと言うのだ。ラスボスの居城に入らずに真正面から叩き潰す者がどこにいる……」

 

 そんなブレイカーインフィニティの攻撃にクロノは頭が痛そうに重いため息をついていた。

 

「だが、まだ終わりではないようだな」

 

 一矢も癪ではあるがクロノの言葉には頷くしかない。

 しかし浮遊城は沈黙したわけではない。地が鳴るような轟音が響くと、浮遊城を突き破り、そこに潜んでいた悪意ともいえる存在が姿を現す。

 

「ガンダムブレイカー……やはり貴様らは忌々しい……ッ!!」

 

 それはスダ・ドアカワールドの征服を成し遂げようとする闇の皇帝ジークジオンであった。勿論、データによって生み出された存在であるが、それ故、そのサイズはこの場にいる機体達を悠々と見下ろすほどの巨躯を誇る。そして何よりジークジオンから言葉が発せられたのだ。それはロボ助に幻獣の鎧を与えたものと同じであった。

 

「……闇の皇帝……。終わりと言うのなら相応しいのかも知れません。だからこそもう終わらせます」

 

 ジークジオンを見やりながら、希空は臆することなく決意を口にする。浮遊城の砲台が固定砲として機能するなか、ジークジオンとの戦闘が始まるのであった。




ガンプラ名 ガンダムNEX フルアームド
元にしたガンプラ ガンダムAGE-2

WEAPON ビームサーベル(ダブルサーベル)
WEAPON ハイパードッズライフル
HEAD ライトニングガンダム
BODY ガンダムAGE-2
ARMS ガンダムAGE-2 ダブルバレット
LEGS ガンダムキュリオス
BACKPACK ガンダムAGE-2
SHIELD ガンダムAGE-2

拡張装備 大型ビームランチャー×2(バックパック)
     ウイングバインダー×4(両肩)
     内部フレーム補強

ガンプラ名 ガンダムブレイカーインフィニティ
元にしたガンプラ ユニコーンガンダム

WEAPON ビームサーベル(Hi-ν)
WEAPON ビームライフル(ν)
HEAD ユニコーンガンダム
BODY フルアーマーユニコーンガンダム
ARMS ユニコーンガンダム
LEGS ユニコーンガンダム
BACKPACK Hi-νガンダム
SHIELD ユニコーンガンダム

拡張装備 レールキャノン×2(両腰)
     ニーアーマー×2(バックパック)
U字型ブレードアンテナ(頭部)
追加装甲板×2(両肩)
     内部フレーム補強

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