機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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悲しき魔王

「いやぁ、皆さん頑張ってマスネー」

「──そろそろアナタにも働いてもらいましょうか」

 

 ガンダムブレイカーズでは依然として、終わりの見えない戦いが繰り広げられていた。

 希空が拘束されている玉座で立体モニターを表示させて、その様子を眺めながら他人事のように呟くのはシャルルであったが、そんな彼女しかいないこの空間で再び声が響き渡る。

 

「ハアアァァァァァァァァァアン!!!!? いやいやいやいや、シャルルもうめちゃんこ働いてると思うのデスガ! 労基に通報するレベルのハードワークデース!! って言うかこれ、お給料とか出ませんヨネ!? ノー! ノー! ノー! あっりえねぇーデース!! 芸能人に人権はないってワードがありますが、これはどうかと思いマスヨ! あからさまに悪ぶってるからって、こんなんじゃ辞表を叩きつけるレベルで人は付いてキマセン! シャルルの待遇改善を求めます! さあまずはシャルルの為に上質なミルクを用意することから始めまショウ!!!! ハリーハリーハリィィィィィィィイイイイイイ!!!!」

「やかましい。本当はアバターの所持者ごと連れてこようと思っていたのに……」

 

 するとシャルルは額に青筋を浮かべて、捲し立てるように言葉を吐く。ガンダムブレイカーズがここまで広がり、ナビゲーターまで努めているのにも関わらず、そろそろ働けと言われたらこうもなろう。そんな憤慨するシャルルを一蹴しながら、どこか頭を悩ませたような声が響く。

 

「……ツーンデス。今のシャルルは自由の身デス。パーツがなくったってこの通りなのデス」

「では証明して見せろ。最も貴様らしい方法でな」

「……流れで働かせようとしてマース。世間は世知辛いのデス……。フリーダムガンダムに乗っているのに自由じゃなかったキラのようデース……。アナタに分かりマスカ、イラスト投稿サイトでシャルルのR-18な×××なイラストを見た時の気持ちが……。見た目が二次元なヴァーチャルアイドルでも、あれは堪えるのデース……。」

 

 歌音ごと連れてこようとしたという発言にシャルルはそっぽを向きながら答えるが声はシャルルに発破をかけようとする。しかしその言葉でシャルルは何やら落ち込み始め、猫耳もペタンと落ちて床にのの字を書いていた。

 

 ・・・

 

「情報通りなら、撃破されたら昏睡になるらしいね」

「これ以上の被害を食い止める為にも、他のファイター達をカバーしながら、戦わないとな」

 

 ガンダムブレイカーズのフィールドで戦闘を行っているファイター達の中には、姫矢一輝や根城秀哉の姿もあり、彼らのガンプラは劣勢に立たされているファイター達を援護しながら上手く立ち回っていた。

 

「……大悟さん。俺達の絆……見せてやろうぜ」

「僕は一人じゃない……頼むよ! 進!」

 

 そしてその傍らには彼らの実子である根城進と姫矢大悟もいた。

 RX-78-2 ガンダムをカスタマイズしたガンダムリバイブとZガンダムをカスタマイズしたZガンダムリバイブをそれぞれ駆り、勇猛果敢に戦うその姿はさながらヒーローのようでもあった。

 

 ・・・

 

「……ボスを倒しても、キリがない……。これでは……」

 

 ガンダムブレイカーズで戦闘を始めてからどれくらいが経過しただろうか。舞歌達とは別行動で既に多くのボスキャラクターを撃破したがVR空間で集中力のみが減っていくだけで優勢に立てている実感がない。

 

「いくらボスを倒しても希空だけがロックがかけられている……」

「あの時、シャルルと希空がウイルスに狙われたようにも感じられました。恐らく希空には他とは違い、何か細工を施されていると考えて良いでしょうね」

 

 ボスキャラクターを倒した後、希空を目覚めさせようとするのだがリストの中に記されているにも関わらず希空だけはいくら選んでも反応しないのだ。この状況にラグナは代表戦後のウイルスが襲撃した時を思い出す。

 

「でもさ、少しずつでもボスは倒してんだから虱潰しに当たって行くしかないんじゃない?」

「……そうですね。しかし連戦を重ねるのも禁物です。ウイルスに感染しているので、ログアウトは出来ないようですが、それでも反応が少ないところで一先ず休息を取るべきでしょう」

 

 周囲を警戒するルティナの言葉に頷きながらラグナは休息を伝える。

 もうかれこれ多くの時間をこのガンダムブレイカーズに費やしているのだ。いくらガンダムブレイカーを使用する実力者達と言えど、集中力が切れた状態ではどうなるかも分からない。いても立ってもいられない状態の奏ではあるが、ラグナの言葉も分かる為、渋々頷いて、移動を開始しようとしたのだが……。

 

 《──ca…………ル……》

 

 次の瞬間、無数の光の刃がクロスオーブレイカー達に降り注いだのだ。

 

「これは……ロボ助かッ!!」

 

 瞬時に回避しながら、覚えのある光の刃に咄嗟にそれが誰の仕業であるのか悟る奏。センサーが反応する方向を見やれば、確かにそこに騎士ユニコーンの姿があった。

 

 だが、その姿はあまりにも異様であった。

 脚部や背面に備わった数本の生体的な突起物。特に背面に備わったものに関したは騎士ユニコーンのサイコストーリムのような毒々しい赤い輝きを放っていた。

 

 これこそは神の力を持つとさえ言われる幻獣の鎧を纏った姿だ。

 これが玉座でロボ助に降り注いだ鎧。しかしロボ助自身、完全に呑まれてしまっているのか、幽鬼のような不気味さを発し、ただ佇むだけで放たれる威圧感など、さながら魔王のようだ。

 

「ロボ助、何かあったのか教えてくれッ! 力に──ッ!!

 

 しかし騎士ユニコーン(幻獣)は何も答えることはなく、クロスオーブレイカー達に襲い掛かる。咄嗟に騎士ユニコーン(幻獣)の攻撃を受け止めながら、ロボ助に接触を試みようとするが、ロボ助は刃だけを返すのみだ。しかもその勢いは中々に苛烈で奏をして、押され気味になっている。

 

「おねーちゃん、まだ分かんないの!?」

「しかし……ッ!!」

「そいつはもうおねーちゃんの知る奴とはもう違うんだよッ!? そいつの力は素のおねーちゃんにだって迫るくらいの力を持ってるってことくらい分かってるでしょ! このままじゃやられちゃうよッ!?」

 

 騎士ユニコーン(幻獣)の注意を引くように射撃兵装を放ちながら奏に怒気を含めて叫ぶルティナ。迷う奏にルティナは騎士ユニコーン(幻獣)の実力を判断して、説得が出来るほどの余裕を持てる相手ではないと見抜いているのだ。

 

「だが希空は……ッ! 希空ならばロボ助を見捨てるような真似はしない……ッ! 希空には誰よりもロボ助が必要なんだッ! だからこそこれは希空の為でもあるッ!」

 

 しかしどうしても奏にはロボ助をボスキャラとして葬ることが出来なかった。

 それは何より希空の為に。希空にとってロボ助は大切な存在だ。だからこそ彼女からそんな存在を奪うような選択肢は極力取りたくはなかった。

 

 《──の……a……?》

 

 そんな奏から何度も放たれた希空の名前に騎士ユニコーン(幻獣)は反応を示す。歪ながらも確かに希空の名前を口にしていたのだ。

 

「そうだ、希空だッ!」

 《グッ……がぁッ……!? ウゥゥッ!!》

「希空を悲しませるような真似はもう止めよう!? 分かるだろう!? 希空だってお前がこんなことをするのは望みやしないことくらいッ!」

 

 希空に反応したロボ助に気付いた奏はすぐさま説得を試みる。騎士ユニコーン(幻獣)は苦悶に満ちた様子でふらつきながらも、踏みとどまってクロスオーブレイカー達を見やる。説得が成功したか?そう思った瞬間……。

 

 《グオオオオオオオォォォォォォッッッァァァァァァアアアッッッ!!!!!!》

 

 騎士ユニコーン(幻獣)は天を仰いで、まるで獣のような咆哮をあげたのだ。そのあまりの姿に奏達は戦慄に似た感覚を感じる。

 

 《確か……ニ……希……a……は……喜びやし……ナ……イ……だろウ……》

「ロボ助……ッ」

 

 幻獣の鎧に苛まれながらも多少の意識は取り戻せたのか、歪な発声をする。魔王のような威圧感さえ発するのに、その姿には痛々しささえ感じてしまう。

 

 《だガッ!! 希空を失えバ……彼女は悲しんデさえクレナイィィイッッ!!!》

 

 己の無力さを感じさせるような悲痛な叫びを上げた騎士ユニコーン(幻獣)は手に持つ黄金の槍を構えてクロスオーブレイカー達に一気に突進した。その姿にやりきれなさを感じた奏は仕方なしにエヴェイユの力を使用しようとした時であった。

 

 自分達と騎士ユニコーン(幻獣)の間に黄金の閃光が割って入り、騎士ユニコーン(幻獣)を吹き飛ばしたのだ。

 

「な……んだ……ッ!?」

 

 割って入った黄金の光に奏達は戸惑う。目を凝らして何者か探るなか煌く光が収まれば……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《間に合ったようだな》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこにいたのは黄金に煌く竜……。黄金神の名を持つスダ・ドアカワールドに存在する神の一柱……スペリオルドラゴンだ。

 

 《救援が遅れて申し訳ない。だがその分、光明はある。今こそトモの為に立ち上がろうッ!!》

 

 そのガンプラを操るのは、かつて友の未来を切り開いた親愛なる騎士・ロボ太だ。スペリオルドラゴンは騎士ユニコーン(幻獣)を自分に任せろとばかりに対峙するのであった。

 

 ・・・

 

「ロボ太……。少し前に戻ってきたばかりなのに……」

「調整はしてあるとはいえなぁ……。お前さんが助けを必要としてるのであればって聞かなくてよ」

 

 地上にあるガンプラバトルシミュレーターVRの前でガンダムブレイカーズでのスペリオルドラゴンの様子を立体モニターで眺めながら一矢は心配そうに口にすると彼によって連絡を受けたカドマツが頭をぽりぽりと掻いていた。

 

「だが、あの状況にいの一番に向かったのだ。その意思は尊重すべきだとは思うがね」

 

 だが、そんな一矢とカドマツの隣でクロノはくつくつと笑っていた。

 

「……司法取引をしているとはいえ、俺はまだお前を許したつもりはないぞ」

「元々許しを請う気などないがね。だが大凡、犯人と犯行内容を把握している私がいなければ、この事件に収拾をつけられないのは事実だろう? 君達は屈辱に耐えながら、私の教えを享受したまえ。それに……」

 

 不愉快そうに隣のクロノを睨む一矢だが、クロノは鼻で笑って一蹴するのみだ。

 彼がここにいられるのは司法取引の結果であり、背後には警官達が睨みを利かしている。クロノが一矢の家に訪れたのも彼に協力を取り付ける為でもあった。それ故に今、一矢とロボ太はクロノと共にこの場に来たのだ。

 

「ガンダムブレイカーズとやらはゲームなのだろう? であれば、私も一枚噛ませてもらうまでさ」

 

 クロノが司法取引を選んだ理由の一つを愉快そうに笑いながら話す。結局、この男はゲームに拘りがあるだけなのだ。その様子に人知れずため息をついた一矢はクロノとそれぞれガンプラバトルシミュレーターVRに乗り込んで、ガンプラをセットする。

 

「リミットガンダムブレイカー……雨宮一矢、出るッ!」

「ルキフェル、では行こうか」

 

 一矢とクロノ。かつての因縁を持ち、相容れぬ二人は共にガンダムブレイカーズへ出撃するのであった。




一応、大丈夫だとは思いますが、補足として最終章ラストから、そのままの流れで外伝となっています。

ガンプラ名 ルキフェル
元にしたガンプラ シナンジュ

WEAPON ビームライフルシューティー
WEAPON ビームナギナタ(シナンジュ)
HEAD シナンジュ
BODY シナンジュ
ARMS ガンダムバルバトス第六形態
LEGS シナンジュ
BACKPACK バウ
SHIELD ABCマント
拡張装備 ブーメラン型ブレードアンテナ(頭部)
     ミノフスキー・フライト内蔵装甲×2(両足部)
     ifsユニット×2(背部)
ファンネル×2(背部)
     内部フレーム補強

例によって活動報告にリンクが貼ってあります。

<いただいたオリキャラ&俺ガンダム>

トライデントさんよりいただきました。


キャラ 根城進(ねじろ・しん)
年齢 19歳
性別 男
容姿 父親とそっくりどころかそのまんま
アバター アムロ・レイ(一年戦争時)
設定
若手のスーツアクターとして業界ではかなり有名で、文字通り体当たりの仕事でバリバリ稼いでらっしゃるお方。たまにアクターとしてだけじゃなく俳優として作品に関わることもある(そのため特撮ファンじゃない人にも顔が知られていて実は結構な有名人)現在放映されているでっかいヒーローのアクターと主役の相棒という重要な役を演じている(もう撮影は終わった)
祖父は父親が若い頃に他界しているためいないが、祖母と父親は今でも元気で現在両親祖母妹弟と六人暮らし。姫矢家とは家族ぐるみの付き合いで小さい頃から大悟のことを尊敬していた
夢見る妹と弟には完全にヒーローと思われ憧れの的で両親からは同情されてテンションの高い叔母とその娘が進の大ファンで毎回遊ばれて常識人の伯父とその息子には同情される日々
でもそんな家族と親戚が大好きなヒーロー。今日も頑張れ
一人称:身内や友人等には俺で目上の人には私(大悟には俺)
二人称:両親には親父お袋。妹と弟には名前で呼び捨て。祖母はお婆ちゃん。友人には名字で呼び捨て。大悟だけ名前にさん付けで大悟さんと呼ぶ

希空と奏とは何回か会ったがあるぐらい

キャラ 姫矢大悟(ひめや・だいご)
年齢 21歳
性別 男
アバター カミーユ・ビダン
設定
現在放映されているでっかいヒーローの主役を演じ特撮ファンとそれ以外からも大人気の若手俳優。根城家とは家族ぐるみの付き合いでとくに進からは小さい頃から尊敬されてた。でっかいヒーローに関わるのは二人の小さい頃からの夢で、それが二人同時に叶ったとき根城家姫矢家で盛大に祝われた。そのとき二人は盛大に涙を流した
レスキュー隊の両親と妹の四人暮らし。ちなみに進の時に言った進の身内苦労は家族ぐるみの付き合いである大悟にも向けられている
つまり夢見る弟と妹達には完全にヒーローと思われ尊敬の的でそれぞれの両親には同情されてテンションの高い進の叔母とその娘が進と大悟の大ファンでいつも遊ばれて常人の進の伯父と息子には同情されるのである。頑張れよヒーロー
あと二人ともガンダムも好きでガンプラバトルもする。その際は二人の鉄壁のコンビネーションが光る
一人称:僕
二人称:両親には父さん母さん。目上の人には名字にさん付けで進の伯父と叔母は名前にさん付け。それ以外はほとんど名前で呼び捨て

希空と奏とはほとんど会ったことがない

ガンプラ名 ガンダムリバイブ
元にしたガンプラ ガンダム
WEAPON ビーム・ライフル 
WEAPON ビーム・サーベル
HEAD ガンダム
BODY ガンダムMk-Ⅱ
ARMS ガンダム試作一号機フルバーニアン
LEGS ガンダム
BACKPACK ガンダム試作一号機フルバーニアン
SHIELD ガンダム
拡張装備
ハンドグレネード(腰右)
ファンネルラック×2(バックパック)
腕部グレネードランチャー(両腕)
刀(左腰)

カラーリングはガンダムで統一

事の発端は父親が誘ったバトル。父親がストライクを使うならば自分は1stガンダムを使おうと軽い気持ちで選んだのだが、経験の差もあり大敗。意地になって使い込んだ結果がこれ
比較的シンプルな機体のため近距離戦がメインで、とくに捻った戦い方はしない(刀を投げて刀身でビームを反射させる程度)

ガンプラ名 Zガンダムリバイブ
元にしたガンプラ Zガンダム
WEAPON ビーム・ライフル(Z)
WEAPON ロング・ビーム・サーベル
HEAD Zガンダム
BODY Zガンダム
ARMS Zガンダム
LEGS Zガンダム
BACKPACK Zガンダム
SHIELD Zガンダム
拡張装備
碗部グレネードランチャー(右腕)
ビーム・サーベル
メガ粒子砲(頭に埋める感じ)
Cファンネルショート(両足)
マイクロミサイルランチャー(バックパック)
変形可能

カラーリングはZガンダムそのまんま

ほとんどZガンダムそのまんま。というのも、一回Zガンダムをどうにか改造できないものかと思いいじってみたら変形が出来なくなってしまい、いっそのことほとんどいじらないでオプション足した方がいいんじゃないかという結論に至りこうなった
変形しながらミサイルを打ちまくったりビームコンヒューズを実践したりすること以外とくに捻った戦い方はしない

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