ニュージェネレーションブレイカーズとチーム・ダイナミックによるアスガルド代表を決める決勝の火蓋が遂に切って落とされた。先程までツッコミに声を張り上げていた奏も操縦に専念してバトルに集中する。
と言うのもチーム・ダイナミックは初見のインパクトは凄まじく出オチだけかと思いきや、その実力は凄まじかった。元々、チーム・ダイナミックの機体は清々しいほどにパーツの構成を再現に全振りしている為、武装の類などは少ないのだが、それを補いきるほどの個々の実力と仲間を最大限に尊重しての連携によってどんな相手であろうと一切、引けを取らないのだ。
「トマホオオォォォォォクッッッブウゥゥゥゥゥメッラァアンッッッ!!!!!!」
下駄一から空を切って大型ヒート・ホークが投擲される。ただ闇雲に投げつけただけではなく、計算されて放たれたため騎士ユニコーンが召還したSD機体が撃破され、そのまま下駄一の手元に戻る。
「俺は少々、荒っぽいぜッ!」
「くっ、本当に出鱈目だなッ!」
一方、昏徒・魔神我とクロスオーブレイカーが実体剣同士で切り結んでいた。決勝という舞台だけあって、一筋縄ではいかず、奏の表情にも薄らと苦みが滲んでいる。
「ちょこまかすんじゃねぇッ!」
「……本物と違い、パチモノだから対抗は出来ますね」
空中ではストライダー形態のNEXをアメイジングレヴAを稼動させ、追いかける魔神我・絶斗。せめてもの救いか、外見の再現の為に射撃兵装はないに等しい。しかしアメイジングレヴAの作りこみは凄まじく、ストライダー形態のNEXに引けを取らないほどだ。
そんなNEXの下方から反応があり、希空が咄嗟にNEXの舵を切って機体を動かせば先程、NEXがいた場所に巨大な光芒が走ったではないか。
「逃さん!」
「……ッ!!」
どうやら下駄一が騎士ユニコーンを相手取りつつ、NEXへ砲撃を放ったようだ。間を置いて、拡散ビームを放つ下駄一に希空は表情を険しくさせ、これを避けるのだが……。
「ロケット(みたいにはならないけど、それぐらい結構強い)パアァーンチッ!!!」
避けた直後に追いついた魔神我・絶斗による勢いをそのまま利用しての重々しい拳が振るわれ、NEXはシールドで防ぐも、衝撃を吸収しきれず、そのまま弾かれるように体勢を崩して吹き飛んでしまう。
そんなNEXを逃しはしないとばかりに魔神我・絶斗が追おうとするのだがその前に魔神我・絶斗を赤い残光が襲う。トランザムを発現させたクロスオーブレイカーだ。
確かにチーム・ダイナミックのメンバーの実力は軒並み高いが、奏もガンダムブレイカーの使い手。その実力は頭一つ抜けていると言っても良いだろう。
大型レールキャノンとツインドッズキャノンを放ち、魔神我・絶斗の動きを牽制すると、その動きを読んで、奏は次の攻勢に出る。
「好きにさせるかッ!!」
魔神我・絶斗に手数を駆使した奇襲を仕掛けるクロスオーブレイカーに損傷を受けている昏徒・魔神我は装飾のための胸部のブーメラン型ブレードアンテナを取り外し、クロスオーブレイカーに投擲する。
「なにっ!」
迫るブレードアンテナは魔神我・絶斗に意識を集中させていたクロスオーブレイカーに直撃すると思われた。しかし直前にクロスオーブレイカーは量子化したではないか。
「ここは私のォ……距離だァアッッッ!!」
次の瞬間、クロスオーブレイカーは昏徒・魔神我の真横に現れる。レーザー対艦刀を抜き放ち、そのまま昏徒・魔神我を左腕を切断すると、すかさず大型レールキャノンを放つことで昏徒・魔神我の動きを封じる。だがクロスオーブレイカーはそれで攻撃の手を緩めることはなく、そのまま魔神我・絶斗に標的を切り替える。
「それ以上、させるかッ!」
半ばクロスオーブレイカーの独壇場と言って良いだろう。そんなクロスオーブレイカーに対して、騎士ユニコーンを相手に有利に進めていた下駄一が仲間の救援の為に駆けつける。
流石に三対一の状況を相手にすれば、クロスオーブレイカーも苦戦は強いられない。特にチーム・ダイナミックはそれぞれえがどう動けば、仲間が戦いやすいかを熟知しているからだ。
そんな状況にNEXと騎士ユニコーンが加わるも希空の表情は険しい。それはやはり奏の活躍だろう。奏に助けられただけではなく、チーム・ダイナミックが一つになって仕掛けてくるほどの強さを見せている。それは最早、このバトルフィールドで最も注目されていると言っても良いだろう。
「クッ……このままじゃあ……ッ!」
乱戦の末、機体の損傷はチーム・ダイナミックのほうが激しい。一方、ニュージェネレーションブレイカーズはNEXと騎士ユニコーンが中破しているが、クロスオーブレイカーは比較的に損傷は少ないほうだ。この状況に魔神我・絶斗もファイターは表情を苦ませる。
「諦めるなッ! 俺達は諦めるわけには行かないッ!!」
「これで終わりだッ!」
そんな魔神我・絶斗を下駄一のファイターからの檄が飛ぶ。どうやら彼は奥の手を使おうと、胸部装甲を展開する。それを感じ取ったのだろう。トランザムの活動時間を確認しながら、クロスオーブレイカーも下駄一から距離をとる。
「ゲ○タアアアァァァァァァァッッッーーーーーーーーーービイイィィイッッムゥウウッ!!!!!!」
「トランザムゥウッッッライッッッザアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーァアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!!!」
下駄一から放たれた巨大な光芒と天高く突き上げたGNソードⅢを媒体に肥大化させたエネルギーの塊ともいえる光の刃が互いの負けられないという信念を表すかのようにぶつかり合う。
「グゥゥゥッッッ!!!」
トリプルメガソニック砲とトランザムライザーソードが真正面からぶつかり合い、拮抗するが、やがて下駄一が押され始める。そんな状況に下駄一のファイターは歯を食いしばるが……。
「大丈夫だ、俺達もついてる!!」
「死なば諸共だ!!」
そんな下駄一を魔神我・絶斗と昏徒・魔神我が支える。そんな仲間達の想いに後押しされたように下駄一は更なる出力を上げる。しかしだ、それは機体への負担をかける行為であり、トランザムライザーソードによる圧を受けた結果、やがて自壊していき、そのまま光の刃がチーム・ダイナミックを飲み込むのであった。
・・・
「……何とか勝てたな」
「どこもかしも大声で叫んでうるさかったです……」
「大体、最後のはゲッ○ービームじゃなくてトリプルメガソニック砲だろうアレ……。なんであぁも堂々と……」
勝利を収めたニュージェネレーションブレイカーズはアスガルド代表の栄光を掴み取ることが出来た。控え室に続く道を歩きながら奏と希空は表情に疲労を滲ませている。
「ひとまずはお疲れ様です」
そんな彼女達を控え室でラグナが出迎えた。しかし彼の表情は優勝という結果にしては非常に厳しかった。
「……ですが今回のバトル、決して褒められたものではありません。チーム・ダイナミックの連携は脅威でしたが、今回、勝利を収められたのも単純な力押しによるものです」
先程のバトルは確かに奏の活躍があってこそだ。
だがそれがラグナには思うところがあったようだ。
「特に希空、私は言いました。内に抱えるものに囚われるな、と。今回の勝利はまぐれであり、チームとしての実力ではない。この事を深く胸に刻むように」
ラグナは鋭い視線を希空に向ける。そのあまりの眼光に希空も僅かに体を震わしていた。そんな彼女にラグナは厳しい言葉を送りつけ、彼はこの場を後にする。残った希空は表情を曇らせ、奏とロボ助はかける言葉が分からず、重苦しい沈黙が包むのであった。
・・・
「アスガルド代表は奏ちゃん達かぁ。お姉さんは誇らしいのです」
全てのバトルを終え、観客席がまばらになっていくなか、サイドテールを揺らした女性はクスリと微笑む。どうやら奏達の知り合いのようだ。
「生で見たいって言うから、こっちに来るついでに連れてきたけど、満足した? だったらお姉さんは嬉しいけど」
女性はそのまま隣に座るくせのある髪の金色の瞳の少女に声をかける。
その顔立ちを見るに恐らくはハーフだろうか。どうやらこの女性がこの会場に訪れたのは、この少女からの頼みがあったからのようだ。少女は女性の問いかけに、まるで内なる衝動を抑えきれない狂戦士のような獰猛かつ好戦的な笑みを浮かべるのであった。