「ヴェール……」
いよいよ第一試合が始まる。
第一試合はヴェールと未来のチームとあのオルフェウスガンダム・レナトのバトルだ。ヴェールはずっと黙ったままで、このままバトルをして大丈夫なのか、未来が出撃前に通信を入れる。
「……さっきは動揺したけど大丈夫だよ。今は目の前の事に集中するから」
初めて間近でレナトを見た時は動揺した。
自分が探している人物がいるのではないかと。だがそんな事は目の前のバトルが終わった後にでも聞けば良い。時間はあるのだから。ヴェールのその言葉を聞き、未来は安心したように頷き、いよいよカタパルトも表示され出撃を促される。
「三宅ヴェール……ルイーツァリ行きます」
迷うことはない。今は目の前のことに全力をぶつけるのだ。そんな意思を宿した瞳をまっすぐ見据えルイーツァリは出撃するのだった。
・・・
バトルのステージとして選ばれたのは雪の降る荒野だった。出撃したルイーツァリとイスカーチェリは対戦相手となるレナトの姿を探す。
しかし思ったよりも早くレナトの存在に気づく事が出来た。いや気づかされた。レナトは既にこちらに気づいていたのか、ビームキャノンが発射されたからだ。
素早く回避したルイーツァリとイスカーチェリ。素早く反撃に転じ、ルイーツァリのGNソードⅡブラスターと3連装対艦ミサイルランチャーやビームガトリングガンなどによるイスカーチェリの豊富な攻撃を仕掛けるがそれら全てレナトを操るユーリの巧みな操縦によって避けられてしまう。
「ヴェール、行って!」
そのまま射撃攻撃を続けながら未来がヴェールに通信を入れる。
近接戦の得意なヴェールに自分が援護するから前に出させようというのだろう。頷いたヴェールは素早くレナトに接近する。
迫りくるレナトの迎撃による射撃を紙一重に避けて、どんどんレナトとの距離を縮めていき、やがて射撃による牽制は出来ないと判断したレナトはそのシールドからビームソードを展開して薙ぎ払うような一撃を放つ。
それすらも避け、空いたマニュビレーターでビームサーベルを引き抜いて斬りかかるルイーツァリ。だがレナトのファイターであるユーリは一人で本選にまで進出するファイターだ。
「やっぱり強い……ッ!!」
素早くビームサブマシンガンに装備されているビームナイフの刃を出現させ、ビームサーベルの刃を受け止める。
そのまま斬り合いに発展し、何度も何度も機体同士がぶつかり合い。だがヴェールとユーリの差は予選でも分かるほど、差がある。ヴェールもその事は自分が一番、分かっていた。
「でも私は一人じゃないから……ッ!!!」
そうだ。
自分は一人でリージョンカップに臨んでいるわけではない。頼もしい親友がいるのだ。例え一人では勝てない相手でも二人ならば勝てる。確証はない。でも確かにそう思えるのだ。
「──そうだよ、ヴェールッ!!」
そしてそれはヴェールだけが思うことではない。未来だってヴェールとならば、と思っているのだ。NT-Dを発動させたイスカーチェリはハイパービームジャベリンを振り上げてレナトの背後にいた。
「「───!?」」
ハイパービームジャベリンの一撃が入る。
未来がそう確信するが、ルイーツァリを振り払い、アルミューレ・リュミエールを発動させたレナトによって防がれてしまい、ルイーツァリとイスカーチェリは弾かれてしまう。
「……トランザムッ!!」
弾かれたが素早く姿勢を整える。
アルミューレ・リュミエールを発動しているレナトはとても高い壁にさえ見える。
だがその壁に尻込みするつもりはない。壁ならば乗り越えれば良い。もはやヴェールの頭には自分が探している人物などの事は全部消え去っていた。あるのは目の前を超える事。その意思を示すようにルイーツァリはトランザムを発動させる。
NT-Dとトランザムによる高速戦闘が始まった。圧倒的速度で襲いかかる二機に対してもレナトは互角の戦いを見せる。この戦闘を見ている観客はこのハイレベルなバトルに釘付けになってしまう。
しかしこのままで決着がつく前にNT-Dもトランザムも限界時間が訪れてしまう。それは避けねばならない。未来はハイパービームジャベリンをレナトに向かって投擲する。
「なにっ……!?」
だが当然、それはレナトに当たる訳もなく避けられてしまう。
しかしここでユーリは試合後、初めて言葉を発し、目を見開いて驚く。何と回避し避けたハイパービームジャベリンの場所を予測していたルイーツァリが先回りして既にハイパービームジャベリンを掴んでいたからだ
「ぐっ……!?」
そのままグルリと回転しハイパービームジャベリンを振るう。
流石にユーリも避けるには間に合わず、胴体に一撃を浴びてしまった。
そして背後では既にルイーツァリの行動を読んでいたイスカーチェリによる一斉射撃がレナトに襲いかかり、ルイーツァリは粒子化して避け、その一部をレナトはまともに直撃してしまう。
「今ではまだ私だけじゃ貴方に追いつけないかもしれない……。でも……いつかは対等になって見せる……ッ!」
そして再び姿を現したルイーツァリはGNソードⅡロングとGNソードⅡショートを引き抜いて。そのまますれ違いざまに攻撃を浴びせる。その攻撃によりレナトは両断され爆発する。バトルはヴェールと未来のチームが勝ったのだ。
・・・
「──あのっ!!」
試合が終わった。
シミュレーターから出たユーリは敗者は去る、そう言わんばかりにいなくなろうとするが会場の外に出たところで追いかけて息を切らしたヴェールに呼び止められる。その背後には未来も追いかけてきた。
「まさか……お前は……っ!?」
振り返ってヴェールの顔を見るユーリは目を見開いて固まる。自分に瓜二つの少女が目の前にいるからだ。そのことから考えるのは容易い。
「そのまさかですよ、岡崎ユーリさん……。いえ、三宅ヴェインさん。彼女……三宅ヴェールは貴方の妹です」
驚いているユーリに対して、後から来た未来は静かに口を開き、その事実にユーリもヴェールも驚く。
「未来、知ってたの……!?」
「うん……。ちょっと前に偶然、ユーリさんを見つけてね。ヴェールのおじさん達に聞いちゃったんだ……。今までお兄さんの存在を知らなかったヴェールにいつ言えば悩んでたんだけど、こうやって出会う事が出来たからもう隠さなくてもいいかなって……」
未来が知っていたことに驚くヴェールは、なぜ言ってくれなかったんだと目で訴える
ヴェールに申し訳なさそうに答える姿から、彼女も彼女で悩んでいたのだ。その事を察したヴェールはそれ以上の追及を止める。
「──彼女を悩ませてしまったのには私達に責任がある」
「お父さん……お母さん……!?」
すると背後からヴェールにとっては聞きなれた声、ユーリにとっては懐かしい声が聞こえる。振り返ればヴェールの両親がいた。驚いているヴェールとユーリ。両親は未来がヴェールがユーリを追いかけた時点でこうなるのを予測して連絡をしていたのだ。
「二人には謝らなくてはいけない事がある。まずヴェイン……お前にはお前がガンプラバトルをやりたいと言うのに私達がやらせたいことと一致していなかった……。そのせいでお前が家を出た。ガンプラの道を極めると言う置手紙を残してな……。お前が家を出た後、お前の頑張りを耳に入れる事が多くなった。お前がほぼ毎回、全国大会に出てると言うことも……。その事を誇らしく思うのと同時に何でもう少し歩み寄れなかったのかって後悔している……。本当にすまない……」
「ヴェール……貴方にヴェインの事を言えなかったのはヴェインが家を飛び出した時、貴方はまだ生まれてなかったから……。私達も教えようか悩んだわ。でも教えられなかったんだ……。今まで一人だった貴方に、いきなりこの人が貴方のお兄さんって言っても混乱すると思っていたから……。でも隠していた事に関しては謝るわ、ごめんなさい……」
ヴェールの両親が胸に秘めていた思いと謝罪を聞いてヴェールとユーリは互いの顔を見合わせる。互いにこうやって顔を合わせるのは始めてだ。
「……別に構いやしないさ。俺は俺でこの道を選んで辛い事もあったがそれ以上に得た物も大きかった」
「……正直、すぐに飲み込めるって訳でもないけど……でも……今からでも遅くはないよね?」
家を飛び出し、その後、ガンプラバトルが広く普及されるようになりユーリもバトルを始めたが最初はほぼ勝てなかった。一人で生きてきて辛いこともあった。何よりもそんな生活でもこの道を選んで良かったと思える程の経験やガンプラの喜びを知った。何よりユーリが家を出る程の行動をしたから今、両親の反省でヴェールはガンプラバトルを出来ている。こうやってバトルが出来たのも今までの自分があったからだ。
ヴェールもチラリと再びユーリを見る。
偶然テレビで見た時も思ったが自分によく似ている。でもだからと言って、まだ兄妹という実感が湧かない。でもそれはこれからの人生で感じていったって遅くはない。時間はあるのだ。兄妹として過ごせなかった日々をこれから取り戻せば良いのだ。
≪リージョンカップ第二試合聖皇学園ガンプラチームVS彩渡商店街ガンプラチームのバトルが始まります≫
「……このどっちかが次のお前達の相手だ。頑張れよ」
そんな中、第二試合のアナウンスが会場から聞こえる。
それを聞いたユーリは未来と、そしてヴェールの顔をジっと見て激励をする。それは兄妹として初めての兄から妹へ送られた言葉だ。ヴェールはそんな兄の言葉に強く頷く。この2人の止まっていた兄妹としての時間は今、動き出したのだった……。
・・・
「一矢君、機体の調子はどう?」
「……問題ないけど」
間もなく第二試合が始まる。
もうすでに両チームはガンプラバトルシミュレーターに乗り込み、出撃の時を今か今かと待ち望んでいた。そんな中、セッティングを終えた一矢に出撃前にミサから通信が入る。
──雨宮が負けた
──雨宮なら勝てると思ってた
──雨宮だったらって信じてた
「……」
過去に身を置いていた聖皇学園が相手と言う事だけあって過去の記憶が一矢の脳裏に蘇る。スカウトされた時点でガンプラ部でも抜き出た力を見せた一矢。だがそれがガンプラ部の人物が彼への期待を強めた。それは真実と拓也もそうだ。小さくても自分ではよくやったと思ったものでもガンプラ部はお前なら出来て当然だろ、と笑って済ませ。彼らが求めたのはより凄い結果だけだ。
「……? どうしたの?」
ふと通信画面に映るミサの顔を見つめる。
彼が彼女に対して今、なにを思っているのかは彼にしか分からない。ミサが首を傾げて問いかけるが、一矢は目を閉じてなんでもないと首を横に振る。
(……バトルの強さだけじゃない。俺が知った強さ……。見せに行こう、ゲネシス)
真実にも言った。
バトルの実力でチームを組んだわけじゃない。
強さだけ求めるならば、それこそ彼の憧れである如月翔など名のあるファイターを選ぶ。でもそうじゃないのだ。真実にそれを証明する為にチームの為にその一部に新たな装備を加え、姿を変えたゲネシスに語り掛ける。
「ゲネシスアサルトバスターガンダム……雨宮一矢……出る……ッ!!」
そんな主の想いに応えるようにゲネシスのツインアイが発光する。
ゲネシスを初めて動かした時の事は覚えている。
ただ前に進む事だけを考えていた。
その気持ちは変わっていない。だが一人で進むわけではない。彩渡商店街ガンプラチームとして進むのだ。そんな思いを胸に一矢とゲネシス……いやゲネシスアサルトバスターガンダムは仲間達と出撃するのだった……。
ガンプラ名 ゲネシスアサルトバスターガンダム(ゲネシスAB)
WEAPON GNソードⅢ(射撃と併用)
HEAD ビルドストライクガンダム
BODY アカツキ
ARMS デュエルガンダムアサルトシュラウド
LEGS クロスボーンガンダム
BACKPACK V2バスターガンダム
SHIELD 試製71式防盾
拡張装備
BACKPACK 大型ガトリング×2(元々装備していたもの)
LEGS ミサイルポッド×2(ゲネシスが両肩に装備していたものを両腰に移した)
スラスターユニット×2(元々装備していたもの)
元々、組み込んでいたデュエルとV2のパーツを変えただけで武装は増えましたがそれ以外は特に変わってないです、前作のガンダムブレイカーフルバーニアンみたいなもんですかね、とはいえ、あっちは機体が大破したからあぁなったわけですが。
<いただいたキャラ&ガンプラ>
ヴェルるんさんからいただきました。
キャラクター名:岡崎ユーリ(本名は三宅ヴェイン)
性別:男
家族構成:自分
容姿:三宅ヴェールと身長と胸以外ほぼ同じ。身長は170程度。
年齢:32歳
性格:言葉がところどころ喧嘩腰だが、とある人(三宅ヴェール)のことになると必死になる。こう見えて家族想い。
設定:三宅ヴェールの実の兄。ヴェールが生まれる前にガンプラの道を極めると置き手紙を残し、祖父の形見であるハイペリオンガンダムを持って家出をした。最初はほとんど勝てず、ただぼろぼろになっていくハイペリオンを見て落ち込んでいたが、家族の応援を受けて自分なりにハイペリオンを改修。その後、負け試合もあるものの少しずつ勝てるようになり、今ではほぼ毎回全国大会に出場する程。現在は自分に妹ができたと知り、ガンプラを作りながらも実の妹に会ってみたいと思っている。
口癖:「地獄から這い上がってこい」
キャラクター名:三日月未来(みかづきみく)
性別:女
容姿や性格:150㎝程。スタイルはヴェールとほぼ同じ。性格は穏やかで少し天然
設定:ヴェールの親友。ヴェールの兄、ユーリの存在を知っているが、ヴェールには話せずにいる。小学生のころ、男子四人にいじめられてユニコーンガンダムを壊されたが応急処置してユニコーンガンダム・リペアを作り、一人で自分をいじめた男子四人に勝った過去を持つ。機動力を上げるために付けたデストロイ・アンチェインドが発動すると、機動力は上がるがほとんど制御できないため悩んでいる。
ヴェール絡みの話を書くという事もあって彼女の生みの親であるヴェルるんさんにメッセージでやり取りをさせていただきました。元々詳しい設定ありのキャラと言う事もありますが、お陰でより話を考えやすく書かせていただきました。この場を借り、改めてお礼申し上げます。ありがとうございます!
そして何より素敵なキャラやオリガンのご投稿ありがとうございました!