機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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作ろうガンプラ

 歌音によって彼女が叔父に世話になっている家まで到着したルティナは案内されるがまま普段、彼女が使用している部屋にまで到着する。

 

「うわ、汚い」

「はい、素直な感想ありがとう」

 

 部屋に足を踏み入れたルティナの第一声がそれであった。というのも歌音の私室はそこらに漫画本や歌詞が記されたメモなどが散乱しており、お世辞にも整理整頓が行き届いているとは言えないだろう。そんなルティナの反応に言われても仕方がないという自覚はあるのか、引き攣った笑みを浮かべる。

 

「って言うか、すっごいゲームの数だね。ゲーム好きなの?」

「え? あー……うん、まあ、その……やらなくちゃいけないというか、なんというか……」

 

 他にも所狭しと棚に並べられている様々なハードのゲームソフトを眺めながら、ルティナはゲームも趣味なのか尋ねる、歌音はどこか乾いた笑みを浮かべながら、はぐらかすように答えていた。

 

「ま、まあ私のことはさておいて、ガンプラよね!」

「あぁうん……。でも、買いに行くもんじゃないの?」

 

 これ以上、下手な話はさせまいとリードを取るように話をガンプラに戻す。その不自然さに首をかしげてしまうが、実際、彼女が言うようにガンプラを作りたいため、話に乗りながらもガンプラを取り扱う店に行かないのか尋ねる。

 

「ふふん、お姉さんにかかれば買いに行く必要なんてないのです」

 

 するとなにやら自慢げに鼻を鳴らした歌音はそのまま近くのクローゼットまで歩いていき、ルティナも彼女の言葉が解せずに首をかしげながらもその後を追うなか、歌音はクローゼットを開く。

 

 そこにはゲームソフトとは比べ物にならないくらい突き詰められたプラモデルの数々が圧倒的な存在感を放っていたではないか。

 

「うっわ……」

「ふっ……作ろう作ろうと思って買ったけど、作らなかった我が(積み)の数々……」

 

 もはやクローゼットの大部分がプラモデルによって占拠されている状況に流石のルティナも言葉を失い、絶句してしまっている。そんなルティナの反応にどこか遠い目をしながら自嘲気味に歌音は虚しく呟いていた。

 

「ま、まあいつ再販するかも分からないものもあるし、積んでおくのは悪ではないのです、ええ」

「物は言いようって奴だね。さて、どれどれ」

「あっ、待って! 適当に引き抜いたら──!」

 

 まるで自分に言い聞かせるように呟いてはうんうんと頷いている歌音を横目にルティナは早速、クローゼット内に適当に手を伸ばしてプラモデルを引き抜こうとする。だがその行動は何かまずいことがあるのか、気づいた歌音が制止しようとするのだが、時すでに遅く、ルティナはプラモデルを引き抜いてしまった。

 

 次の瞬間、ギリギリのバランスで保たれていたプラモデルは轟音と共に雪崩のようにルティナ達に降り注いだ。

 

「……気が付けば 溜まっちゃうよね プラモデル」

「……字余り」

「……是非もないよね」

 

 奇跡的に無事であった歌音とルティナはプラモデルの海の中でただ虚しく呟くのであった。

 

 ・・・

 

「さて、気を取り直してプラモ作りをしましょうか」

 

 何とか部屋の片付けを済ませた二人は漸くガンプラ作りを始める。テーブルを挟み、歌音は仕切り直すように手をポンと合わせる。最も既にルティナは一連の出来事のせいでかなりやる気が削がれているようだが。

 

「まあ、作ってる最中にごちゃごちゃ言われるのも嫌でしょうし、お姉さんは要所要所で口を挟むから、ルッティは好きなように作って良いよ」

「パーツって手でもげばいいの?」

「Oh……ニッパーを使いましょうか、うん」

 

 プラモの箱を開けなたルティナはインストを眺めているなか、歌音はまずはルティナの好きにやらせようとするのだがランナーを取り出したルティナの発言に額を軽く抑えながらまずは簡単なプラモ作りに使用する道具の類の説明をして後はスミ入れなどの説明を要所でしつつルティナの好きにやらせる。

 

 ・・・

 

 穏やかな時間が過ぎていくなか、ルティナの初めてのガンプラ制作は順調に進んでいる。元々、さして難しくもないキットを歌音が選んだということもあるが、元々のルティナの手際の良さもあって、滞りなくサクサクと組み立てていく。

 

 歌音もその様子を見て、大丈夫だと判断したのだろう。ルティナに助言をしつつテレビを眺めている。今は丁度、歌番組の番宣が放送されていた。

 

「……この子、好きなの?」

 

 そこに映っているのはMITSUBAという名のアイドルであり、その可憐な魅力は画面を通してでも十分に伝わってくる。他のアーティストとは違い、どこかMITSUBAのパフォーマンスに集中している様子の歌音に気付いたルティナは問いかける。

 

「うぇっ? あ、あぁ……私は可愛い子が好きだからね、アイドルも例外ではないのです」

「ホントにそれだけ?」

 

 半ば惚けていた歌音はルティナに声を掛けられ、気を取り直しながら答える。確かにその言葉はルティナにも言っていたが、先程、テレビに向けていた視線はどこか羨望のものも含まれているようにルティナには感じられたのだ。

 

「わ、私のことは兎も角、プラモも完成したみたいね。早速だけどバトルしちゃう?」

「歌音がルティナとバトってくれるの?」

「いやいや、お姉さんはあくまで見てるだけ。今ならゲーセンでCPU相手に戦えるでしょうし、早速、行きましょうか」

 

 先ほどのゲームソフトと良い、不自然に話を変えようとする。疑問に思わないわけではないが別にわざわざ踏み込むほどの興味はない。完成させたガンプラを机に置きつつ、歌音にそれ以上の追求はせずに彼女がバトルの相手となってくれるのか尋ねると、どうやら違うらしい。善は急げとばかりに動き出す歌音の後をルティナは追う。

 

 ・・・

 

「ところでルッティはVRGPは持ってるの?」

「ん? 特に何も」

「VRGPを持っているとガンプラのアセンやアバターのカスタマイズが出来たりするんだけど……。うーん……私のお古、まだあったけな……」

 

 早速、ゲームセンターに到着したルティナ達。早速、シミュレーターに乗り込もうとするルティナに歌音が問いかけるも、そんな名称は初めて聞いたのか、ルティナは首を傾げてしまっている。VRGPとは希空達がVR空間に突入する際に使用しているあのヘッドホン型のアイテムのことだ。

 

「んじゃ、行ってくるよ」

 

 とはいえ、VRGPがなくともガンプラバトルそのものは出来る為、今は特に問題はないだろう。ブツブツ呟いている歌音を尻目にルティナはシミュレーターに乗り込んで、早速、バトルフィールドに飛び込むのであった。

 

 ・・・

 

 鬱葱とする森林が広がるこのジャブローをイメージしたフィールドでストライクダガーを操るNPC機がプレイヤー機を探している。この近くにプレイヤー機がいるのだろう。この場から離れる気配はない。

 

 すると次の瞬間、近くの川が巨大な水飛沫が上がる。NPC機がカメラを向けた先にはギラリと光った一筋の光が。同時に突き出された爪がNPC機を貫いたのだ。

 

 そこからの行動は早かった。貫いたNPC機を盾代わりにしつつ、近くの敵機へ投げ飛ばすと、そのまま俊敏な動きで一気に間合いを詰めて、撃破していく。

 

「ヘヘッ……ルティナにかかれば、こんなもんだよね」

 

 沈黙するNPC機の中でただ一機残っているのは独特な外観を持つ機体……ズゴックだ。しかもただのズゴックではなく、あずき色のカラーリングのシャア専用ズゴックである。

 

 それを操るのはルティナであり、撃破したNPC機達を一瞥しながら自慢げに笑うと、制限時間いっぱいまで次の標的を探すのであった。

 

 ・・・

 

「うんうん、シャア専用ズゴックは昔のキットながら、値段と可動域、プロポーションにランナー数など初心者にはピッタシだとお姉さんは思うのです」

 

 ルティナの操るシャア専用ズゴックの活躍を見ながら自分の判断は間違っていなかったと大きく頷いでいると、ガンプラバトルシミュレーターVRからルティナが出てくる。

 

「どうだった?」

「うーん……悪くはないんだけど、これに比べると……」

 

 早速、ルティナに感想を聞いてみるも、やはりバーニングブレイカーに比べると雲泥の差なのか、微妙そうだ。

 

「まあ、それに比べたら出来はダンチでしょうしね。まあスキルアップしつつ自分に合ったプラモを作ればいいわ。お姉さんもいくらでも協力するし」

「ありがと。あぁは言ったけど、やっぱり自分で作ったものだと全然違うよ!」

「でしょう。じゃあ、早速、VRGPを使ったりしましょうかねー。お姉さんのお古を貸してあげるから、一旦帰りましょうか。夕方になると、ちょっと用事があるけど、それまでならいくらでも付き合えるし」

 

 今日は簡単な仕上げで終わったが、ルティナにその気があるのならもっと良いガンプラが作れるだろう。その為なら協力を惜しむつもりはない。

 ルティナも今回の件で本格的にプラモ作りをしようと言うのだろう。満面の笑みで頷くと、一旦、先程の家に戻っていくのであった……。

 


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