機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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深紅の空 燃え立つように

「主任、フィールドに続々とプレイヤーの反応がッ!!」

 

 ガンダムブレイカーが戦場に駆け始めてから数分、フィールドをチェックしていた部下が開発者に報告する。それはこのシミュレーターVRや会場のガンプラバトルシミュレーターの数よりもはるかに上回る反応であった。

 

「良いぞ……。もっと早く世界中のガンプラバトルシミュレーターにこのバトルフィールドに対応させるアップデートを済ませるんだ」

「しかし何故、こうも次々とファイター達がバトルフィールドに集ってくれるのでしょうか……」

 

 この事態を知った多くのファイター達がこのバトルフィールドで戦っている。それはまるでかつての宇宙エレベーター漂流の際に世界中のファイター達が参戦した時を彷彿とさせるではないか。思わず興奮のあまり身体を震わせる開発者に部下の一人が疑問を口にする。

 

「決まっている。彼らは皆、自分の誇り(プライド)をぶつけに来たのだ。無法者にこれ以上、ガンプラバトルを汚させないために」

 

 今、この瞬間も次々に世界中からファイター達が己の自慢のガンプラと共にウイルス達に立ち向かおうとバトルフィールドに参戦している。これから始まるであろう新たなガンプラバトルの歴史をこれ以上、汚させないためにだ。

 

 ・・・

 

「裕喜、何も考えないで好きに撃て!」

「りょーかいっ!」

 

 荒野では秀哉が裕喜に指示を出すと、フルアーマーガンダムは自慢の武装をアンチブレイカーへ放つ。猛々しい攻撃はアンチブレイカーへ向かっていくものの容易く回避されようとしてしまう。だが実際のところ、裕喜の放った射撃は何発かは直撃した。何故なら──。

 

「今だ、秀哉!」

「おうッ!!」

 

 一輝のフルアーマー・ガンキャノンによる掩護射撃があったからだ。僅かに動きが鈍ったアンチブレイカーを見て、一輝が指示を出すと光の翼とゼロシステムを併発させたストライク・リバイブはアロンダイトとハイパービームソードを構えて、接近戦を仕掛けると反撃しようとするアンチブレイカーにファンネルを駆使しながら抑えようとする。

 

 しかしそれでもアンチブレイカーの抵抗は収まらず、旋風竜巻蹴りによってファンネル諸共ストライク・リバイブを弾くが、そこに更に攻撃を仕掛けられる。

 

「気づけばイッチには差をつけられたが、いつまでもそうしてらんないな!」

「ええ、見せてやりましょう」

 

 何とレンのストレイドが損傷を構わずに竜巻に突進してアンチブレイカーに激突したからだ。レンの言葉に頷きながら、ストレイドを破壊しようとするアンチブレイカーにジーナのジェスタ・キラウエアがソードピットによるGNフィールドで防ぐ。

 

「うあぁっ!?」

「クソッ、ワラワラ湧いてるからって雑魚って訳じゃないか……ッ!?」

 

 また近くで純のGNーΩと宏佑のクロスボーンクアンタが別のアンチブレイカーによって薙ぎ払われ、地面に叩きつけられてしまう。そこに更にアンチブレイカーによって追撃がされようとしてしまうなか、誠のフルアーマーユニコーンガンダム plan BWによって阻止される。

 

「俺達は強い訳じゃないけど、それでも皆で行けば……!」

「こうなったらごり押しだぁっ!!」

「おらぁっ、ブルってんじゃねえぞ!」

 

 表情を険しくさせる誠だが、彼の言葉に同意するようにカマセとタイガーのガンプラがアンチブレイカーに突っ込んでいく。

 

「ブレイブゥウウッセイッバアアアアアアァァァァァァァーーーーーアアッッッ!!!!」

「これで……どうだッ!!」

 

 いかに非力であっても、それでも力を合わせれば何とやら。誠やカマセ達が何とか作った隙を炎のハイパーカイザーと龍騎のクレナイがここに来て、漸く目立った損傷を与える。

 

「見知ったガンプラがチラホラいるな」

「みんな、彩渡街のファイターだよ」

 

 その近くでアンチブレイカーを両断したウィルはストライク・リバイブ達の姿を見ながら、記憶を頼りに呟くとNPC機達を文字通り粉砕しながら、夕香が説明する。

 

「大会に出なくとも地方には個性豊かなファイターがいるものだぞ」

「これは坊ちゃまも日本各地に行くべきですね。私も観光……いえ、お供します」

 

 ミスターのブレイクノヴァがこれまで見て来たファイター達を振り返りながら、彼に地方でのファイター達の触れ合いを勧めるように声をかけると、名案だとばかりにドロシーが同調しながらメイドガンダムことサーヴィターは帚のようなメイスで敵機を払う。

 

「まあ、それも悪くはないかな」

 

 以前のウィルであれば、下らないと切って捨てるところだが今はそうではない。

 何よりここで精一杯、アンチブレイカー達に抗おうとする名も知れぬファイター達は実力で劣るとはいえ、胸を打つバトルをしているのだ。彼らと触れ合うためにはまずこれを乗り越えなくてはいけない。セレネスは次の敵機へ向かっていくのであった。

 

 ・・・

 

「MAまで来るか……ッ!」

「でも、ここまで来て下がる気はないよッ!!」

 

 また雪山を舞台にしたこの場所ではレイドボスとして用意されていたアプサラスⅢがNPC機達を率いてアンチブレイカー達と猛威を振るっていた。

 アンチブレイカーだけでも厄介な状況なのにアプサラスⅢを見て、苦虫を噛み潰したように唸るユーリを、そんな彼のレナトを庇うようにNPC機を撃破しながら未来のイスカーチェリは次の敵機に攻撃を仕掛ける。

 

「うん……。絶対、引き下がらないッ!!」

「心強いッスね!」

 

 未来の言葉に頷きながら、アンチブレイカーと戦闘を繰り広げるヴェールのルイーツァリ。そんな彼女の想いに触発されたように普段の無気力な様子からは考えられないような好戦的な笑みを浮かべたウルチはモチヅキの作成たガンプラを駆る。

 

「俺達ガンダムブレイカー隊の力、ここで見せてやろうぜ!」

「ええ、翔さん達だけじゃないってこと、示してみせますっ!」

 

 ここ等一帯のアンチブレイカーはガンダムブレイカー隊の活躍によって撃破され、他に比べて数は少ない。その勢いを持って、ナオキが仲間達に叫ぶと、あやこのアイオライトが先行してガンダムブレイカー隊はアプサラスⅢに向かっていく。

 

 ・・・

 

「ここが踏ん張りどころじゃきに、気張って行くぞッ!」

「はい、厳也さんッ!」

「こんな奴らに我が物顔されるのは癪なのよッ!」

 

 また市街地での戦闘は凄惨さを物語るように街は軒並み荒れ果てている。そんな中、土佐農高ガンプラ隊が戦場を駆け、レイドボスのサイコガンダムを咲のロードと文華のフォボス・改の支援射撃を受けた厳也のクロス・ベイオネットがシールドブースターを用いたハイパー・ビーム・ジャベリンによって貫く。

 

「ここでの戦いは絶対に無駄にはならないッ!」

「うん、NPC機達は私達が引き受けないと……!」

「それが一矢達の助けるになるのなら幾らでもやってやる……ッ!!」

 

 サイコガンダムの周囲にはサイコガンダムMk-IIの姿もあり、そこでも激しい戦闘が行われている。影二達の熊本海洋訓練学校ガンプラ部だ。

 磁気フィールドによってメガ・ビーム砲のビームをリフレクター・ピットが反射した豪雨のような攻撃を陽太のGM-セルフと皐月のジム・キャノンⅡSBCが掻い潜りながら、この戦いでの自分達の想いと役割を強く叫ぶと、影二も復帰した一矢達を想って、ダウンフォールのHADESZEROプログラムを発動させながら攻撃を仕掛ける。

 

「クゥッ……!」

「大丈夫!?」

 

 しかしウイルス側も決して一筋縄でいくわけではない。現にジャパンカップで活躍した裕喜(男)のレーゼンを容易く薙ぎ払ったのだ。吹き飛ぶレーゼンを春花のストライクレイスが援護しながら彼を心配する。

 

「無理はするな! 力量を考えて挑むんだ!」

「コトちゃんも無理はしないようにね?」

「勿論。でも色んな人の凄いバトルをこれまで見てきたせいか、少しでもその人達の力になりたいんです!」

 

 素早くアンチブレイカーがオールレンジ攻撃をレーゼン達へ向けるなか、彼らを庇う為にジンのユニティーエースがアンチブレイカーを引き付けるように攻撃をするなか、サヤのジョイントエースがジンを援護しつつ、近くのコトに気を回しながら声をかけると、コトもコトなりに戦おうとストライクノワールを動かす。

 

「これも縁だからな!」

「ええ、精一杯のことをしましょう」

 

 ユニティーエースが引きつけたところを正泰のアドベントとシアルのジェガン・ハウンドが波状攻撃を仕掛ける。

 

「驚いたか!」

「喰らえッ!!」

「よし、行ける!」

「小夜の本気を見るのです!!」

 

 そこにジャパンカップで秋田代表を務めたチームが動く。国永の雷と清光の暁がアンチブレイカーをかく乱するなか、国広の響きが援護射撃を繰り出しながら、小夜に合図を出すと電が突貫する。

 

「ヘヘッ、強ぇのは分かるけどなッ!」

「それで大人しくするような私達じゃないわ!」

 

 更にそこにツキミのエンファンスドバランサーがミソラの援護を受けながら、レーザー対艦刀でまさに滅多切りとばかりに数多の斬撃を浴びせ、アンチブレイカーを撃破する。

 

「やれやれ、これなら若者の未来は明るいね」

「なら、大人としてもう少し道を開いてやらなぁね」

 

 活躍を見せるジャパンカップ出場のファイター達。彼らを見ながらロクトは期待を募らせると、彼の言葉に返したた珠湖に笑みを浮かべながら彼女のアサーシンと共に厳也達がバトルをし易いようにと彼らを阻もうとするNPC機達を一掃する。

 

 ・・・

 

「ここで倒す!」

「ああ、だが無理はするなよ、涼!」

 

 市街地に近い沿岸付近では涼のカイウスが恭のG-KYO POと共にザムザザーに攻撃を仕掛け、奮闘の末、撃破していた。

 

「打て! 撃て! ここで後先考えるな!」

「下手な小細工を考えている時よりも活き活きしてるよ、淄雄」

 

 沿岸で指示を飛ばすように叫んでいるのは淄雄であった。彼のリグ・コンティオを横目に笑みを浮かべた佳那のゴトラタンが彼の障害となる敵機を葬っていく。

 

「負けるのは慣れてる。……でも、平気なわけじゃねぇ!」

「ヘヘッ、兄さんがいれば百人力だよ!!」

「うん、絶対勝つ!」

 

 淄雄の指示を受けながら、風留のアストレイブラッドXがアンチブレイカーを何とか食い止めるなか、彼に続くように勇太と千佳のユニコーン・ネクストとバンシィ・ノルンも追撃して、沿岸の攻勢を強める。

 

「ゴミ掃除は得意です」

「そうそう、メイドとしてきっちりこなさないとね」

 

 また陸に上がろうとするNPC機達を瞬く間に一掃したのはレギルスとトランジェントであった。攻撃の手を緩めることなく次から次に攻撃をしながらアルマとモニカは後方を見やる。

 

「さてシオン。ボクらも行こうか」

「ええ、お姉さまとならば、何も怖くありませんわ!」

 

 そこにはタブリスとキマリスヴィダールの姿があったのだ。言葉を交わして、笑みを浮かべ合ったセレナとシオンの麗しき姫騎士達は沿岸部の敵機殲滅の為、飛び立つ。

 

「ふっ……娘達……。立派な太陽になって……ガクッ」

 

 そんな姉妹の活躍を見つめながら、散々盾にされたまきしまむがるとは満足気に力尽きていた。

 

 ・・・

 

「流石にキツくなってきたな……」

「でも、諦めた訳じゃないんでしょ?」

 

 海上では敵機を撃破した莫耶が愚痴のように呟いていた。もうかれこれ長時間の戦闘だ。疲労がない訳ではない。しかしアメリアの言うように彼の戦意その物は衰えておらず、答える代わりにストライクシードフリーダムは次なる敵へ向かう。

 

「まだまだ行けるわね、二人とも」

「さあ、この名に恥じぬ働きをしようか」

「俺達は英雄だからな!」

 

 ネオ・アルゴナウタイもまた莫耶達に触発されたようにその名に恥じぬ働きを見せ、まだまだ戦おうとしているのだ。アリシアの呼びかけにクレスとアキはそれぞれ誇りを感じさせる強い笑みを浮かべると、三機は進軍する。

 

「このフィールドでの出来事、お金で買えない価値がある!」

「どこであろうと足元には気を付けることだな!」

「ガンプラバトル最速伝説はここで塗り替える!!」

「これも縁だ。我らトヨサキモータース、とことん手を貸すぞ」

 

 またフィールド各地には企業のチームもその実力を発揮している。今まさに世界中のファイター達が一丸となって立ち向かっていた。

 

 ・・・

 

「諦めた訳じゃないけど、流石の風香ちゃんも疲れて来たよー。甘いもの食べたーい」

「シャキッとしろ、馬鹿者!」

 

 上空ではアンチブレイカーを撃破しながら風香が不満を爆発させていると、風香のエクリプスを背後から襲いかかってくるNPC機をすれ違いざまに碧のロックダウンが切り伏せる。

 

「じゃあ、碧が“風香ちゃんマジ天使”って言ったら頑張っちゃおっかなー」

「……貴様……」

「えー言ってくんないのー?」

 

 そのロックダウンに銃口を向けるNPC機達をエクリプスのシールドピットが全て撃破しながら、冗談めいた事を碧に投げかけると、青筋を浮かべる碧に残念ぶっている。

 

「ふ、風香ちゃんマジ天使……」

「だぁーはっはっはっ!! 本当に言ったよ、碧がぁっ!」

「貴様アアアアァァァァァアッッッ!!!!!」

 

 わなわなと震えながら、風香のやる気を出すために真に受けて風香の言葉を口にする碧だが、風香もまさか本当に碧が言うとは思わなかった為、腹を抱えて大笑いすると顔を真っ赤にさせた碧はエクリプスにショットガンの銃口を向けて乱射している。

 

「あははっ楽しかったぁ。ふぅ……リーナ、大丈夫?」

「うん、風香こそまだまだやれそうだね」

 

 ひとしきり碧をからかった風香は近くで戦闘を続けているリーナに声をかける。風香がここまで余裕なのは様々な意味でリーナの存在が大きいだろう。既に一人でアンチブレイカーを葬り、二桁目に突入したリーナは近くに来た風香に答える。

 

「……私ね、今、能力がなくったってここにいる人達の心、読めるよ」

「うん、私も。そして風香のもね」

 

 ふと風香はどこを見ても戦闘が起きているフィールドを見渡しながら呟くと、その言葉にリーナも柔らかな笑みを浮かべる。ここに集ったファイター達はまさに誇りを持って絶望にとことんまで抗おうとしているのだろう。

 

「じゃあスペシャルな奴、いっちゃおうか!」

「とことん印象を残る奴をね」

 

 リーナの言葉に満足した風香はリーナに呼びかけると、エクリプスはウイングゼロに背を預ける。すると二機はエヴェイユの力を解放し、ツインバスターライフルを連結させて引き金を引くと旋回を始める。ツイン状態のローリングバスターライフルは周囲の敵機を飲み込んでいく。

 

「凄ぇもんだなぁ!」

「本当ねー。私達もあぁありたいものねー」

 

 そんなリーナ達の活躍を横目にマチオの猛烈號とミヤコのジェスタ・コマンドカスタムがMAを相手にしながら、素直にリーナ達を称賛していた。

 

「おっ、来たな」

 

 ユウイチも頷いているなか、セピュロスのセンサーが反応を示す。確認してみれば、三機のガンダムブレイカーが大気圏突入を果たして、降下してきたではないか。

 

「翔……良かった……」

「ミサもそこにいるのか……。何だか幸せそうで何よりだ」

 

 降下したガンダムブレイカー達にリーナとユウイチが通信を入れながら、彼らの到着と共に彼らの顔色とリミットブレイカーに同乗するミサの表情を見て、安堵した様子を見せる。

 

「デクスマキナという機体は降下後、この空域から離脱しちゃった。追いかけようとしたけどここで邪魔が入って……。でもレーアお姉ちゃんやカガミ達がその後を追いかけてるよ」

 

 リーナから一足先に大気圏突入を果たしたクロノの情報を伝えられる。どうやら現在、レーア、カガミ、ヴェルの三名がクロノを追撃しているようだ。

 

「……分かった。奴は俺達に任せてくれ。リーナ達には宇宙での戦闘に参加してもらいたいのだが……」

「任せて。向こうで戦ってる人達の事も知ってるから、すぐに向かう」

 

 状況を把握した翔はリーナ達に宇宙での戦闘の加勢を頼む。あそこにはまだ優陽や真実達といったファイター達が戦っている。リーナもすぐに答え、ユウイチ達も同様に頷いている。

 

「後もうひと踏ん張りだ。すぐに終わらせて、みんなで喜びを分かち合おう」

 

 やる事は決まった。翔の言葉に全員が頷くと、ガンダムブレイカー達はデクスマキナを追い、ウイングゼロ達は現空域での戦闘後、宇宙へ向かうのであった。


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