機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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virtual reality

「みなさーん、こんにちは!!」

 

 いよいよ新型シミュレーターのイベントが始まり、イベント会場にも多くの人々が賑わうなか飛ばしたマイクロドローンを前にして、マイク片手にハルがリポートを開始していた。

 

「本日開催されます新型ガンプラバトルシミュレーター完成イベント! その為に今回もあの方をお呼びしております!お願いします、ミスター!」

「皆さん、御機嫌よう! 素敵なガンプラライフを過ごしているかな? ミスターガンプラです!」

 

 しかも今回もハル一人ではないようだ。お待ちかねと言わんばかりにハルはミスターを呼びかけるとカメラの下からモコッとしたアフロが出現し、そのまま振り返りながらミスターが挨拶する。

 

「さて今回、もっとも注目されている新型ガンプラバトルシミュレーターですが、最大の目玉はVR空間を使用してのガンプラバトルということですが、これはまさに新次元のガンプラバトルの幕開けと言う事でしょうか」

「うむ、私も先程、新型シミュレーターの概要を聞かさせてもらったが、VR空間を使用することによって、自分が作成したガンプラに乗り込み、バトルが出来るとの事だ! これはまさにファイター誰しもが夢見た事が現実となったと考えて良いんじゃないかね」

 

 先程、イベントの開会式と共に聞かされた新型シミュレーターの概要について触れる。話していくうちにミスター自身も夢だったのか、話すたびにその言葉に熱が籠っていく。

 

「しかもミスター。今回、用意されている新型ガンプラバトルシミュレーターは通常の物と【機動武闘伝Gガンダム】に登場するモビルトレースシステムをイメージした二種類があるそうですよ!」

「おぉっ、これはスポーツを嗜むファイターには朗報だね! 以前よりGガンダム系などの機体はレバーよりも身体で操縦したいという声はなかったわけではないからね」

 

 どうやら新型シミュレーターには二種類あるようだ。その内容にミスターはこれで更なるバトルの幅が広がると言わんばかりに声を弾ませる。

 

「因みにミスターはスポーツなどはやったりするんですか?」

「ふっ、ならば私の肉体美を見せることで答えようでは──」

「それでは早速、インタビューを開始しようと思います!」

 

 何気なくハルはミスター自身も何かスポーツを行ったりしているのか尋ねると、何かしら体を動かしてはいるのか、自信満々にアロハシャツのボタンに手をかけようとするのだが、被せ気味にハルによって次の行動に移されてしまう。

 

 ・・・

 

「VRかー。確か10年以上前だよね、最初に話題になったのって」

 

 イベント会場は新型シミュレーターのお披露目もあって大混雑だ。イベントの熱もあってか従来のガンプラバトルシミュレーターも多くこの場で稼働しているもののそれでも長蛇の列が出来るほどだ。そんな人混みの中を歩きながら夕香は一緒に来たシオンや裕喜達に話題を振る。

 

「ええ。とはいえ今の時代、最新技術と膨大なデータ量で構築されたVR空間として発展し、過去のものとは比べ物になりませんわ。まさにもう一つの世界と言っても良いでしょう」

「どんなのなんだろうねー。そう言えば、10年前くらいのアニメとかは、そういう仮想世界のモノが流行ってたらしいよ」

 

 夕香の言葉に頷きながら、この時代、この世界のVRについて言及する。シオンの話を聞きながら、裕喜は顎先に人差し指を添えながら過去に放送されたアニメなどに触れている。

 

「しかし、これが一般に広く普及される良いなれば何れは日本を離れても、コミュニケーションを取ることができますわね」

 

 ふとシオンがポツリと零す。シオンは言ってしまえば、このイベントも終了と共にセレナ達と帰国する手筈となっている。今回の新型シミュレーターが世界中に普及される事が出来れば、もしかすれば国を越え、いつでもVR空間で会えることが出来るかもしれない。その時を想像してか、期待に胸を膨らませ、どこか寂し気ながらも優しい笑みを見せる。

 

「なーに? そんなにアタシに会いたいわけ?」

「そ、そういうわけではありませ……っ! ……んこともないわけでも……っっっ~~……。そ、そのっ……! に、日本には質の高いファイターがいて、それでその……」

「もっと素直になっちゃえってー。このこのーっ」

 

 そんなシオンの腕に自身の腕を絡ませて身を寄せた夕香は彼女を悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、シオンを弄り始めると先程とは一転して、頬を真っ赤にさせながら否定しようとするものの完全には否定しきれず、カーッと更に顔を真っ赤に染めながら自身が着ているワンピースの裾をギュッと掴んでゴニョゴニョと何か呟いている。

 しかし夕香からしてみれば、その反応がとても面白いのか、シオンの染まった頬を突っ突きながら更にからかう。

 

「そぉ言ってる夕香だって、今日はずっーとシオンの傍にいるよねー。そんなに傍にいたいのかなー?」

「ゆ、裕喜!?」

「夕香がそんなにベタベタするのってあんまりないよねー。少し妬いちゃうかなー」

 

 流石に見兼ねたのか、裕喜が夕香をからかい始める。まさかの裕喜の一言に珍しく頬を染めながら動揺する夕香だが友人として長年一緒にいてこうやって絡んでいる夕香は非常に珍しく、それこそ過去に何度か一緒に自宅の風呂に入った事があるとはいえ裕喜自身そこまでないのか、シラーっとした様子で話している。

 

「あっ、夕香ちゃん!!」

 

 そうやって賑やかにしていると、前方から声をかけられる。そこにはコトなど見知った顔ぶれがこちらに手を振っており、更に賑やかさは増していくのであった。

 

 ・・・

 

「さて開会式をやっている間に全員のスキャンが終わったし……そろそろ始めようか」

 

 開会式も終わり、イベントに参加するファイターが集まるなか、開発者が代表しての説明が行われ始める。

 

「今回の新型シミュレーターはVR空間を使用してのものだ。それ故にこれからここに集まった皆にはVR空間に飛んでもらい、バトルをしてもらう事になる。大まかなバトルの操作などは変わらないが、強いて言うのであればよりリアルになっている」

 

 改めて開発者による新型シミュレーターの説明が行われ、集まったファイター達は決して聞き逃すまいと聞きいっている。

 

「まあ流石に撃墜と共にシミュレーターが爆発はしないよ。ただ攻撃を受けたりすると多少シートが揺れたりエフェクトが発生したりする。一応、ガンプラバトルは全年齢対象のゲームだからプレイヤーの心身への安全面を考えて設定しているので安心して欲しい。流石にリアルに寄せ過ぎてパニックなられたり、問題が起きたら我々としても対処はしきれないからね」

 

 軽くユーモアを交えながら話す開発者。その内容に実際の戦闘を知っている翔やシュウジ達は顔を見合わせて軽く笑っている。

 

「とはいえ、中には初めてのVRなどで具合を悪くする者も出てくるかもしれないから、その時はゲームを中断して申告するように。あくまで楽しくバトルをして欲しい」

 

 VRとはいえ慣れない状況や、そもそもVRとのマッチングが上手く合わない場合なども想定して注意する。あくまで楽しんでもらう為の物であって苦しみながらやって欲しくはない。

 

「さて後は実際、プレイしてもらおうか。みんな、待ちきれないようだしね!」

 

 最後に開発者が周囲を見渡せば、今か今かとその時を待っている。その様子を笑みを浮かべた開発者は話を締め括る。

 

「先ほどのスキャンによって君達のアバターは既に作成してある。これが一般に普及されれば何れは君たち自身で好きなだけカスタマイズ可能だよ」

 

 ファイター達が自身に合った新型シミュレーターに乗り込んでいくなか、開発者はVR空間でのもう一人の自分であるアバターについても触れる。

 

「良かったね、ミサちゃん。これでVRだったら幾らでも盛れるよ」

「な に が ! ?」

 

 ミサが新型シミュレーターの扉に手をかけた瞬間、優陽が先程のアバターについてミサに朗報だと言わんばかりに無邪気な笑顔で話しかけると、その言葉に青筋を浮かべたミサは怒気を含めながらわなわなと震え、その勢いで扉を開く。もっとも勢いあまり過ぎたせいでミサの傍らにいた一矢に扉が思いっきり直撃して倒れる。

 

「……おー……こりゃま……お前、再会する時にはちゃんと五体満足でいるんだぞー?」

 

 倒れた一矢に近くを通りかかったシュウジがしゃがみながら声をかけると騒ぐミサとそれを軽く流している優陽の声を聞きながら、俺もそうしたいと涙目で呟くのであった。




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