機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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第三章 過去と今、そしてその先へ
繋がり


「俺とロボ太で前に出る……。ミサ!」

「了解っ!」

 

 ガンプラバトルロワイヤルから数日が経った。

 間もなくリージョンカップが始まる。これを優勝すれば次は全国大会となるジャパンカップに進出出来る。その為にはリージョンカップを突破しなければならない。故に彩渡商店街ガンプラチームは日々、チームによるガンプラバトルに明け暮れていた。

 

 ただバトルをするだけではない。以前、シュウジとのバトルで彼からの助言を無駄にしない為、チームの連携を深めるべく二人で話し合い、結果、一矢が司令塔としてチームを纏めて指示を出していた。

 

 最初こそ自分が司令塔になるのか、と難色を示していた一矢ではあるがミサに半ば強引に押し切られ、今の形に落ち着いている。一矢はジャパンカップの決勝まで進んだ男だ。自分よりも経験がある。ミサはそう判断して一矢に託したのだ。

 

 今も一矢が指示を出して動いている。最初こそバラつきはあったが今では纏まっているほうだ。ミサが返事をしたと同時にゲネシスと騎士ガンダムが動き出す。

 

 それを迎撃しようとするNPC機達だがアザレアの射撃に阻まれ、その隙にゲネシスと騎士ガンダムによって瞬く間に殲滅する。

 

「……」

 

 三機が共にフィールド(戦場)を駆け抜けていく。

 そんな中、本人は気づいていないがシミュレーター内の一矢の口元に僅かに笑みが零れていた。彼は楽しんでいるのだ。無論、そんな事を指摘すればひねくれている彼のことだ。素直にはならずに否定するだろう。だが紛れもなく今のこの自分の環境を彼は楽しんでいた。

 

 ・・・

 

 ここは彩渡駅から少し離れた場所にある私立聖皇学園だ。

 ここは一矢と夕香、裕喜達も通っている学園である。そしてその学園の一室には制服姿の男女数人が机でガンプラの作成やバトルについて話し合っていた。

 

 彼らは私立聖皇学園のガンプラ部。

 世界大会まで開かれるガンプラバトルの人気はもはや地球規模のもので学校でもこうしてガンプラ部が設けられる程である。

 

「リージョンカップまで後少しだな」

 

 そんな中、リージョンカップの話題を出したのはこの聖皇学園のガンプラ部のガンプラチームとして活動している舟木拓也(ふなきたくや)だ。彼の近くには彼がBDシリーズのガンプラをもとにカスタマイズしたガンプラであるBD.the BLADEが置かれていた。

 

「去年はジャパンカップまで行ったんだし、きっと大丈夫……っ!」

 

 それを聞いた近くに座ると腰まで届く茶髪の艶やかな長髪をワンサイドアップに纏めた少女・垣沼真実(かきぬままなみ)が両手をぎゅっと握りしめて自らを鼓舞するように小さく呟く。彼女もまた聖皇学園ガンプラチームのメンバーで紅一点だ。

 

「……そう言えば雨宮一矢ってここのチームにいたんだよね」

「うん……。だけど……雨宮君がどうしたの?」

 

 そんな二人の言葉を聞いて、思い出したように口を開いたのはかつてイラトゲームパークにて一矢がミサとチームを組んだあの日に居合わせた天城勇がふと口を開く。彼もまた聖皇学園ガンプラチームの一人で以上三名によってチームになっている。

 

 勇の言葉を聞いた拓也と真実は顔を見合わせると、どこか複雑そうな顔を浮かべてそれぞれ小さく頷く。そうこのガンプラチームにはかつて一矢が所属していた。更に言えば一矢がチーム戦を止めるきっかけにもなったジャパンカップにまで進出した時、拓也と真実は一緒に戦っていた。一矢が抜けた今、その空いたポジションには勇が加わった。

 

 あの決勝で一矢はチームどころかこのガンプラ部を退部し、元々、他人と関わろうとしない一矢との距離は一気に開いてしまった。しかし今、何故一矢の名前が出てくるのか、と真実は勇に問いかける。

 

「……いや……この前、雨宮が知らない女とチームを組んでる所に居合わせたんだ。あんまり雨宮のこと知らないから声かけなかったけど……。リージョンカップにも出てくるんじゃない?」

「マジかよ!?」

 

 かつてイラトゲームパークでチームを組んだ一矢とミサ。

 その場に居合せた勇がその時のことを思い出しながら話すと、よもやチームを抜けた一矢が違う人物とチームを組むとは思ってなかったのか、身を乗り出して拓也が驚く。

 

「……ねぇ天城君。雨宮君が新しく入ったチームの事、詳しく教えてくれないかな」

 

 そんな中、静かに真実が口を開く。

 その雰囲気は先程とは一転して背筋が凍るくらい暗くそして冷たかった。俯いているせいで前髪で隠れて表情が見えないが、正直に話した方が身の為だろう。勇は自分が知っている限りの情報を話すのだった……。

 

 ・・・

 

 翌日、ブレイカーズから少し離れ、隣町の彩渡町にヴェールが訪れていた。

 その表情からは何か深く考えを巡らせているのを察することができる。彼女は先程まで如月翔に会っていた。

 

(やっぱり詳しくは知らなかった、か……)

 

 その目的は如月翔にある人物について尋ねる事だった。

 以前、訪れた際には聞くことは出来なかったが、今日は聞く事ができた。今は店のこともあってピタリと大会に出るのを止めているようだが彼もかつてはGGFやGWF2024のような様々な場に選抜プレイヤーとして、さらにはモデラーとしても出ていたと聞く。そのお陰で様々な人物と交流があると言う事も……。

 

 一番、有名なのはやはりかつて行われたGGFにおいて結成されたガンダムブレイカー隊だろう。プロモデラーのフルアーマーダイテツ、プロゲーマーのLYNX-HMT、今ではトップアイドルのヤマモト✩ルミカなど世間の有名どころで言えば彼らが挙げられ、彼らもまたガンプラに関わる話をする際にはガンダムブレイカー隊の事や翔の名を口にする。

 

 更に言えば彼はガンプラバトルシミュレーターの最初期から関わっている人物であり、ガンダムブレイカー隊の面々とその開発に大きな影響を齎したと言われている。それが如月翔がモデラーとして、ファイターとして知る人ぞ知る有名な理由の一つである。

 

 だがそんな彼でも自分が調べている人物は詳しくは知らないようだ。彼から教えてもらったのは自分が調べている人物はほぼ毎回全国大会に出場していて顔は知っているが、あまり接していないと言う話だ。

 

(他人の空似にしてはあまりにも似すぎてる……)

 

 彼女は偶然、見ていたテレビで自分によく似た男性がガンプラバトルの大会に出ていたのを見た。何か胸に引っかかった物を感じた彼女は両親に聞いては見たもののはぐらかされたり、答えてはもらえなかった。だからこそ彼女は自分であちこち歩いて調べてはいるのだが、これと言った成果が出ずに終わっている。

 

「……?」

 

 そんな彼女の思考を遮るように目を引く人物がいた。

 周囲の様子を伺いながら男性物の薄手のロングコートを着用し、ハンチング帽とメガネを着用した人物だ。目で追ってみるとそのままイラトゲームパークに入っていくのが見えた。特にイラトゲームパークに寄る用事もなかったが、思わず追いかけてみた。

 

 ・・・

 

「今起きたの、一矢君!? もうお昼だよ!?」

≪ごめんなさい≫

 

 今日も今日とて連携を深める為にガンプラバトルをしに来た彩渡商店街ガンプラチーム。時刻は午後の一時を回ったところだ。しかしいまだに司令塔となる一矢の姿がない。

 不審に思ったミサが電話をすると、その着信で目覚めた一矢は言い訳もせずに即座に謝り、その様子から溜息を吐いてこれ以上言うのをやめたミサは早く来るように促すと、電話を切る。

 

「待ってる間にバトルでもしようかな……」

 

 一矢が来るまでの間、バトルをするのも良いかも知れない。

 幸いロボ太もいるし二人でも出来る事はある筈だ。そう思ったミサはロボ太を連れてシミュレーターへと乗り込む。

 

 ミサ達が出撃した後、バトルを映すモニターの前にはヴェールが見かけた怪しげな人物が立っていた。モニターに映し出されるアザレアCと騎士ガンダム。そしてその下に表記されている彩渡商店街ガンプラチームの名前。それを見てシミュレーターへ乗り込んでいく。

 

(バトルをしに来ただけ……?)

 

 シミュレーターへと乗り込んで行った姿を見る分には、特に何か仕出かそうと言う訳でもなくバトルをしに来ただけのようだ。ならば安心かと折角だし、バトルを見て行こうかとモニターを見つめる。

 

 ・・・

 

 

≪主殿のゲネシスの機動力は目を見張るものがある。主殿に攪乱などを頼んでみるというのも良いかもしれないな≫

「そうだね。はぁっ……一矢君さっさと来ないかな……ってあれ?」

 

 ロボ太と共にバトルをしていたミサ。やはりNPC機相手ではすぐに撃破してしまう。とはいえバトルシミュレーターの中で言えばロボ太とちゃんとしたコミュニケーションが取れる。そんな訳で周囲を散策しながらロボ太と戦法などを話し合いながら、一矢が来るのを待っていると、ふとアラートが鳴り響く。

 

「一機だけ? でもなんか……」

 

 この場合のアラートなど他プレイヤーとのエンカウント以外あり得ない。

 ミサはこちらに向かってくるライトニングブルーのガンプラを見て何か違和感を覚える。ガンプラが遭遇戦がメインであるのはファイターならば誰もが知っている。つまり制限時間内に出会う時もあればそうでない時もある。だがこちらに迫ってくるあのガンプラはまるで自分達を探していたかのように真っすぐこちらに向かってくるのだ。

 

「G-リレーション……?」

 

 こちらに向かってくるガンプラをロックすると機体名が表示される。

 G-リレーション……それがあのガンプラの名前だった。所々に光るクリアパーツやそのパーツを見るに恐らくはGセルフを元にしたガンプラだろう。

 

「聖皇学園ガンプラチーム……!?」

 

 そして同時に小さく表示されている所属チームの名前。聖皇学園と言えばこの近辺にある私立の学園だ。そしてミサには他にも覚えがある。かつて一矢を調べた際、彼がジャパンカップに出場した時に所属していたチームは確かこのチームと同じ名前だった筈だ。

 

 まさか一矢の元チームメイトなのか?

 自分が感じた違和感、あのガンプラは自分が目的なのか?

 その理由は一矢が今、自分のチームにいるからなのか?

 

 ミサの頭の中で様々な考えが入り交じるが、今はそれどころではない。

 G-リレーションはこちらに向かって既にビームライフルを構えているからだ。戦闘は避けられない。それに逃げる理由もない。アザレアCはマシンガンを騎士ガンダムはナイトソードの切っ先を向け、交戦開始するのだった……。




垣沼真実

【挿絵表示】


ガンプラ名 G-リレーション
元にしたガンプラ Gセルフ

WEAPON ビームライフル(Gセルフ)
WEAPON ビームサーベル(Gセルフ)
HEAD ガンダムAGE-2
BODY Gセルフ
ARMS ガンダムAGE-2ダークハウンド
LEGS Gセルフ
BACKPACK アストレイゴールドフレーム天

カラーリング ライトニングブルー


<いただいたキャラ&ガンプラ>
感想でご意見を頂けたので今回から登場した投稿していただいたキャラやガンプラの設定などをこちらにも載せようと思います。改めて投稿いただきありがとうございます!


ヴェルるんさんからいただきました。

キャラクター名:三宅ヴェール
性別:女
家族構成:父親、母親、自分
容姿:身長は150cm程。胸は標準より少し大きめ。
髪の色は白(ロング)、目の色は白に近い水色。
年齢:主人公たちと同じくらい
性格:物静か。子供扱いされると一人で膨れる
設定:日本人(母親)とロシア人(父親)のハーフ。何故かみんなに頭を撫でられる。撫でられるのは嫌いではないが、少しだけ子供扱いされている気分になる子

怠惰な眠りさんからいただきました。

キャラクター名天城 勇
性格 好きなことには全力を出すタイプ(例 ガンプラには全力だが、それ以外には興味を示さない) いつも首にヘッドホンをかけている本気でやるときはヘッドホンをしてガンダム系の音楽を流す テンションの落差が激しく普段は口数が少ないがバトルしてるときはガンダムのセリフを口走るほどテンションが高くなる。

八神優鬼さんからいただきました。

機体名 BD.the BLADE

使用武器 試製9.1m対艦刀 又は 虎鉄丸(今回は対艦刀の方を使わせていただきます)
頭部 BD2・3号機
胴体 Zガンダム
腕部 クロスボーンガンダムX1
脚部 試作3号機
スラスター BD2・3号機

オプションパーツ バルカンポット 双刀(腰部)対艦刀(肩部)

素敵なキャラやオリガンのご投稿ありがとうございました!

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