機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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未来という光

「凄いの出て来た!」

≪これはTR-6か!≫

 

 TR-6・DⅡが現れたと共に襲いかかる。予想もしていなかった機体の登場に誰しもが驚く。アザレアリバイブの攻撃が弾かれる様を見ながらカドマツも驚愕していた。

 

「ワタシは負けられないのです。愛する国民の為にも!!」

「キミは……もしかして王族か何かなのか!?」

「その身分は既にありません。国籍も名前も全て……。ミスターバイラスにお願いしてネ。今ワタシがしていることは彼らにとって何も関係ナイ事になるのです!!」

 

 TR-6・DⅡの激しい攻撃は今のナジールの想いを表したかのようだ。何とかTR-6・DⅡの射撃攻撃を回避し、反撃を試みながらもウィルは今のナジールの言葉に彼の出自を推測する。どうやらそれは当たっていたようで、しかも王族の身分を捨ててまでこんな事をしていると言うのだ。

 

「そこまでして……。国の人はキミがこんな事をするのを喜ぶのか!?」

「……痛いところを突きますね。彼らはきっとやめろと言うでショウ」

 

 そこまでの覚悟を持って宇宙エレベーターを落とそうとするナジールだが国の残された者達はどう思うと言うのだろう。ナジールがそこまでしようとするのだ。決して悪い人々ではないのだろう。ウィルの指摘にナジールは苦々しそうな表情を浮かべる。

 

「でも、そんな彼らだからこそ何とかしてあげたい……。毎日共に汗を流し生きて来た彼らは皆、大切なファミリー。必ず守ってみせます!!」

 

 ウィルの指摘に寧ろそんな人々だからこそ王族として、何より一人の人間として何とかしたいのだろう。たとえそれが人類の英知を、未来の光を奪ったとしても。

 

「譲れないのはこっちだって同じことだ……ッ」

 

 TR-6・DⅡから距離を置くセレネス。間髪入れずにミーティアからの攻撃がTR-6・DⅡを襲う。並みのガンプラならば兎も角、ミーティアの存在は脅威となるのだろう。

 すかさず対象をミーティアに切り替え、TR-6・DⅡとミーティアの巨大兵器の戦闘が繰り広げられる。

 

「何故デス! 例え宇宙エレベーターがなくともアナタ達の生活は変わらない、これまで通りデショウ!」

「こんなものを落とせば被害が出る。例え生活圏でなくともな……! あの星に住む以上、何も変わらないなんてないんだ!」

 

 ウインチ・キャノンをワイヤーによって遠隔制御しながらミーティアに差し向ける。全て回避することは叶わず、ミーティアにも損傷を受けるなか、それでも一矢はナジールの言葉に負けじと叫び、ミーティアの至近距離で大火力を叩きこむ。

 

「俺は漫画の主人公じゃない……。全てを救う事も出来ない! ならせめて……俺が信じるモノの為に……俺が抱いている希望の為に戦う!!」

 

 TR-6・DⅡの巨体が揺らめいた瞬間に薙ぎ払うように振るった最大出力のビームソードによって大きな損傷を与える。すぐにバランスを崩しながらもTR-6・DⅡからの攻撃を密着した距離で受け、ミーティアは大破に追い込まれる。

 

≪行くぞ、遅れるな!!≫

「僕に言ってるのかい!」

 

 だがミーティアのお陰でTR-6・DⅡに隙が出来た。すぐさまロボ太が近くのウィルに声をかけると、スペリオルドラゴンとセレネスは同時にTR-6・DⅡに向かっていく。

 

 ミーティアから離れ、距離を置くように飛びあがりながらセレネスとスペリオルドラゴンを迎撃するTR-6・DⅡだが二機は軽やかに避けて、共に刃を突き出して流星の如き突進でその堅牢な装甲を貫く。

 

「くそっ、まとわりつくナ!!」

 

 深々と刃を突き刺し、TR-6・DⅡにとりついたセレネスとスペリオルドラゴンをその巨体を大きく旋回させて、舞い上がることで振り払う。

 

「私達も!!」

 

 今なら隙となる筈だ。ミーティアの近くに飛んできたアザレアリバイブはリミットブレイカーに手を伸ばすと二機は同時に覚醒して、残った左側のウェポンアームから天を貫くほどの巨大なエネルギーの刃を形成する。

 

「回避……いいや! 押し通る!!」

 

 その膨大なエネルギーはすぐにナジールも気づいたのだろう。回避しようにも逃れる事は難しくならば正面からその発生源であるリミットブレイカー達へ向かって行くと切り返して突進する。一矢達とナジールは重なるように咆哮をあげ、二つの巨体は真正面からぶつかり合い、轟音と共に周囲を閃光が覆う。

 

「──……ッ……。あいつは!?」

 

 覚醒の力を全て攻撃手段に変えたことでミーティアは耐え切れず、爆発しようとする。すぐにリミットブレイカーとアザレアリバイブがミーティアから離脱して地に降り立つと、すぐにミサはTR-6・DⅡを探す。

 

「──……この程度でやられるくらいなら、こんなところまでやっては来ません!!」

 

 爆炎が立ち上るなか、その中には一機のガンダムがいた。ガンダムTR-6[ウーンドウォート]だ。

 ダンディライアンⅡの部分は失われたようだが、いまだMS形態は無事なようでコンポジット・シールドブースターを構えながらリミットブレイカー達へ向かっていく。

 

「……俺達もここでアンタを止められないなら……ここまで来た意味はない」

 

 執念を見せるナジールに一矢は真正面から向き合う。そんなリミットブレイカーの堂々たる姿に気圧されながらもTR-6はビームキャノンを放つが、リミットブレイカーはカレトヴルッフを振るってビームを弾く。同時にスーパードラグーンとCファンネルを展開してTR-6に差し向ける。

 

 何とかして回避しようと動き回るTR-6。しかし大前提としてナジールは一矢達に比べてガンプラバトルの経験などないに等しい。ビームもコンポジット・シールドブースターのIフィールドで防ぎ続けるのも最初だけで、やがて無数のCファンネルがTR-6の白く華奢な機体を傷つけていく。

 

「祖国の為にワタシは……っ!!」

 

 一機だけでも圧倒的な力を見せる一矢とリミットブレイカー。実力は天と地ほどの差がある。だがそれでも祖国の為に、家族と言える愛する国民達の為に自分はここで負けるわけにはいかない。

 

 だが負けられないのは一矢達とて同じことだ。ピットに気を取られている間に接近したリミットブレイカーのバーニングフィンガーを頭部に受けて、TR-6は大きく吹き飛び、電脳空間の地にゴム毬のように叩きつけられる。

 

「なんと……手強い……ッ!」

 

 コンポジット・シールドブースターを支えに何とか立ち上がるTR-6。しかしミサ達からしてみれば、まだ立ち上がるその執念に驚くばかりだ。

 

 だがこんな戦いは終わらせなくてはいけない。TR-6に相対するリミットブレイカーは静かに歩を進める。もう言葉は必要ない。言葉で言いあったところでこの戦いは終わらない。ならば後は想いを、誇りをガンプラに乗せてぶつけるだけだ。

 

「しかしっ!」

 

 リミットブレイカーがカレトヴルッフを構えて向かってくる。目にも止まらぬ速さだ。だがだからといってここで引き下がるわけにも負けるわけにもいかないのだ。リミットブレイカーに対抗するようにTR-6も向かっていく。

 

 リミットブレイカーとTR-6が間近に迫り、カレトヴルッフとヒートブレードが振るわれる。ガンッと甲高い音が鳴り響くと同時に互いの機体は弾かれ合う。

 

「ぬああああああぁぁぁっ!!!!」

 

 だがそれでも何とか踏ん張ってヒートブレードを振るう。ただ我武者羅に負けるわけにはいかないと。

 

「──ッ!」

 

 振るわれたヒートブレードを僅かギリギリで避けるリミットブレイカー。ただ前だけを見つける一矢は眼光鋭く細め、すれ違いざまにカレトヴルッフの一太刀を入れる。

 

「……やはり……ガンプラバトルでは勝てませんか……」

 

 静寂が電脳空間が包む中、ナジールの呟きがただ静かに響き、リミットブレイカーの背後でTR-6は爆散するのであった。


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