機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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再びこの地で

『宇宙空間に展開されたソーラーパネルは地上とは比べ物にならない効率で電気を作り出し、そして宇宙エレベーターを利用して地上に供給します』

 

 薄暗い部屋の中では一台のテレビが点いており、ぼんやりと薄暗い部屋に光を灯しながらニュース番組を流していた。

 

『このようにして宇宙で作った電気を地上へ送ることによって天候にも左右されず、効率よく発電できるわけです』

 

 番組内ではCGモデルを使用して、新たなエネルギー発電が紹介されていた。宇宙エレベーターを利用したこの発電方法は以前の世界大会のウイルス事件の際に不測の事態を乗り越えた実績から進められている宇宙開発計画の一環であろう。

 

『宇宙時代の発電システム【SSPG】。スペース・ソーラー・パワー・ジェネレーター。一日も早い実用化が望まれます!』

 

 最後にこの新たな発電システムの名前を名前を口にする女性キャスターの言葉を皮切りにここから更にSSPGの特集を広げていく。

 

「──望まない者もここにいマスよ」

 

 輝かしい未来を象徴するような新たな発電システム。だがその紹介している最中にテレビの画面が消える。テレビの明かりが消えた真っ暗な空間で悲しみを帯びた声が響くのであった。

 

 ・・・

 

「──みなさん、こんにちは!!」

 

 太平洋赤道上に浮かぶメガフロートにてマイク片手にマイクロドローンの前でレポートをしているのはハルであった。彼女の後ろには既に多くの人々が通り過ぎて行っており、かなりの賑わいを見せている。

 

「私は今、太平洋に浮かぶメガフロートの上に再び立っています。そう、宇宙エレベーターにまた来ているんです!」

 

 メガフロートと言えば、やはり宇宙エレベーターは語るに外せない。一時はどうなるかとは思ったが、それでも今となっては良い思い出なのかこの地に立っているハルは輝かしい笑顔を浮かべている。

 

「宇宙太陽光発電施設【SSPG】着工記念セレモニーの中で予定されている【ガンプラバトルSSPG記念大会】!その様子を皆さんにお届けしたいと思います!」

 

 とはいえこれまでガンプラバトルに関連するイベントのレポーターなどを務めて来たハルがこの場にいるのは、ちゃんとした理由がある。今日は何とまたこのメガフロートの地で大々的なガンプラバトルの大海が執り行われる予定なのだ。

 

「皆さんお馴染み、あの方も一緒ですよ! ミスター、お願いしまーす!」

「──みなさーん、ご機嫌よーう! ただいまご紹介にあずかりました、ミスターガンプラです」

 

 そしてガンプラバトルと言えば、この人物も外せないのかハルが満を持してとばかりに呼びかけると、モリモリのアフロと相変わらず奇異な服装をしたミスターガンプラがマイクロドローンのカメラに現れる。

 

「いやー初めて来たけど凄いところだねぇメガフロートって」

「ふふん、私は二度目なんですよ! 分からないことがあったら聞いてください!」

「何で沈まないのこれ?」

「えっ」

「これだけ大きいんだから普通沈むんじゃないの?」

 

 初めて訪れたメガフロートに流石のミスターも興奮を隠せない様子だ。そんなミスターにハルは自信満々に鼻を鳴らしながら得意げに話している。

 

 ではお言葉に甘えてとばかりに早速、切り出してみる。とはいえ建造上の事に関しては予想していなかったのか、ハルは間の抜けた声を漏らす。しかしミスターはそのままお構いなしに尋ねる。

 

「え、えーと……こ、今回の大会はミスター、いかがですか!?」

「ん? そうだね、今回も様々な強豪チームが世界各国から招待されている。見どころの多い戦いが期待できるんじゃないかな?」

 

 引き攣った表情を浮かべながら、強引に話題を変えてくるハルにミスターは尋ねられた事をそのまま答える。そう、ミスターの言う通り、今回のイベントは世界大会にも引けを取らない大規模なものなのだ。

 

「なるほど! どんなチームが出てくるか楽しみですね! それではまた後程お会いしましょう!!」

「ねえなんで沈まないのこれ?」

 

 今回のイベントにおけるミスターの話も聞けたこともあって、半ば無理やり話を締めるハル。とはいえミスターはやはりこのメガフロートの構造が気になっているようで、中継が終わるその瞬間までハルに尋ねていた。

 

 ・・・

 

「またここに来れるなんて」

 

 世界各国から招待されたチーム……その中には彩渡商店街ガンプラチームの姿もあり、ミサはまた再び足をつける事が出来たメガフロートの施設内を見渡しながら心底、嬉しそうな笑顔を浮かべている。

 

「やっほー、久しぶりだね」

 

 そうしていると横から声をかけられる。聞き覚えのある声に顔を向けて見れば、そこにいたのはセレナであった。

 

「セレナちゃんっ!」

「やっぱり君達も招待されてたんだねぇ。まぁ何ら不思議なことじゃないか」

 

 久しぶりの再会にミサはセレナの方まで駆け寄っていく。嬉しそうにしているミサに釣られるようにセレナも微笑みながらミサとその後ろの一矢達を見やる。彼女の口振りから察するに彼女も自分達と同じようにこのイベントに招待されていたのだろう。

 

「俺達もいるぞ」

 

 すると再び声をかけられる。今度は一体、誰なのかと視線を向けて見れば、莫耶とアメリアの二人組であった。

 

「……アンタ達もか」

「俺達もあれから強くなったからな。バトルが楽しみだ」

 

 莫耶達がこの場にいると言う事は彼らもまたこの大会に招待されたと言う事なのだろう。反応する一矢に莫耶は自信ありげに笑みを浮かべながら話す。

 

「ボクも新しいガンプラ作ったんだ。どうせならその身で味わってみてよ」

「どんなガンプラなの!?」

「それはお楽しみー」

 

 世界大会から時間も経ち、あの頃よりも更に腕を磨いてきた。莫耶の言葉を引き継ぐようにセレナも笑みを浮かべながら彼女が口にする新たなガンプラが入っているであろう腰のベルトにつけられたケースを撫でながら話すと、あのバエルで悪魔の如き強さを見せつけたセレナが一体、どんなガンプラを組み上げたのかとミサは目を輝かせながら食い付くと、セレナはひらひらと両手を動かしながらお預けにする。

 

「まあその為にはまず予選を突破しないとね」

「……そこで躓く奴がいれば所詮、それまでってことでしょ」

 

 バトルを心待ちにしているミサに一応の注意を払うようにアメリアは声をかける。今回の大会もこれまでのジャパンカップなどと同様に予選がある。まずは予選を突破しなくては話にならないのだ。とはいえ端から予選落ちするつもりもないのか、一矢はアメリアの言葉を鼻で笑いながら答える。慢心している訳ではない、だが自分達の実力に自信はあるのだ。それは莫耶やセレナも同じことなのか、一矢の言葉に頷く。

 

「良い熱気だね。これは僕も刺激を受けるよ」

「ロクトさん!?」

 

 もう既に一矢達はバトルが待ちきれないとばかりに笑みを浮かべている。見えない火花が散るなか、そんな彼らに声をかけた人物がおり、視線を向ければそこにはロクトの姿があった。

 

「……まさか」

「ああ、僕も招待されたんだ。まあ実力で選ばれたってよりは現役宇宙飛行士の縁って感じかな。これでもネームバリューはある方だからね」

 

 ミサが驚いているなか、この場にいるロクトにその理由を察した一矢。そんな一矢に頷きながら、この場にいる理由を話す。とはいえ、ロクトの実力は知っている。この飄々としている男性はバトルともなれば油断できない実力の持ち主だ。

 

「これは意外なところで知り合いに会いそうだね。じゃあ、ボクはシオンが来てくれてるって言うからそっちに行くよ」

 

 セレナはロクトが現役の宇宙飛行士だとは知っていても面識はない。だが一矢達の反応から彼らが知り合いである事は察しているのだろう。携帯端末で連絡が入ったのを確認したセレナはこの場を後にする。

 

「バトル楽しみにしてるよ」

 

 最後にセレナはそう言い残す。その言葉はこの場にいる者全ての総意なのかそれぞれが笑みを浮かべて頷くと、セレナも微笑みながらシオンの元へ向かうのであった。


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