機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

141 / 290
真紅の瞳に宿るもの

 クロスオーブレイカー達のバトルフィールドに選ばれたのは近くにコロニーが稼働している宇宙空間であった。既に三つ巴のバトルは始まっており、流星のような尾を引きながら三機のガンダムタイプのガンプラはぶつかり合う。

 

「宇宙空間は苦手なのよね……!」

 サヤナが使用するのはガンダムタイプはガンダムタイプでも風雲再起のパーツを組み込んだ四足タイプの機体であるジョストエースガンダムであった。だが苦々しく呟くサヤナの言葉通り、宇宙空間のような空中戦でのジョストエースは些か不利かと思われる。

 

「そうは感じないがっ!」

 

 そんなジョストエースに向かって行ったのはクロスオーブレイカーであった。

 宇宙空間に鮮やかなGN粒子を放出しながら、GNソードⅢを展開し斬りかかるもジョストエースは素早くツインソードライフルの銃尻の斧状の実体ブレードで受け止める。

 

 そのまま幾度とクロスオーブレイカーとジョストエースは刃を交えるが、近接戦に踏み込めばサヤナの実力の高さが伺える。これがもしもバトルフィールドが地上ならば、どうなっていたか末恐ろしい。

 

 するとジョストエースは上下に存在するツインソードライフルの二基のビームサーベルをスライドさせて槍のように装備するとそのままクロスオーブレイカーを薙ぎ払おうとする。

 

 寸での所でジョストエースの動きに感づいたクロスオーブレイカーは弾かれるように距離を置き、大型レールキャノンを放とうとするのだが……。

 

「──私も忘れないでっ!!」

 

 クロスオーブレイカーとジョストエースの間を割り込むように無数の極太のビームが通り過ぎる。誰かは分かっている。愛梨のガンプラであるストライクNEXTseedだ。しかも攻撃の手段はそれだけではなく、すぐさまストライクNEXTseedが両足に装備していたロングタイプのCファンネルが二機に襲いかかる。

 

 だが奏もサヤナも高い実力の持ち主だ。

 翻弄するように飛び回って襲いかかるCファンネルに動じる様子もなく落ち着いた動作でCファンネルをそれぞれ破壊するとクロスオーブレイカーもGNタイプの、ジョストエースは実弾タイプのマイクロミサイルを同時に放ち、無数の小型ミサイルは宇宙の闇を駆け巡り、対象へ迫るがすぐにそれぞれに対応されて硝煙に姿を変える。

 

 ・・・

 

「……良いバトルだね」

 

 外から観戦モニターでバトルの様子を眺めている希空はこの三つ巴のバトルを評価する。別に公式大会でのバトルというわけでもないただの小さなゲームセンターで行われているバトルだが目を見張るものがある。

 

 それぞれの実力の高さは尚のこと、それ以上にガンプラ達の攻撃の一つ一つにファイターの誇りを感じさせるような熱いバトルなのだ。

 

「でも……」

 

 しかしそんな熱いバトルの中、鉄仮面のような揺れ動かぬ表情で希空は観戦モニターに映るクロスオーブレイカーをジッと見やる。だがクロスオーブレイカーの見つめるその真紅の瞳は少なくとも友好的とは思えないほどどこか冷淡なものであった。

 

 ・・・

 

「ならば……ッ!」

 

 久方ぶりの地上での知り合いとのバトルではあるが、改めて彼女達の実力の高さが伺う事が出来た。それ自体はとても喜ばしいし純粋に嬉しいのだが、だからこそ自身の勝利で終わらせたいと思うのは不思議なことではないだろう。

 

 弾幕を張り合う激しい射撃戦のなか、このままではジリ貧である判断した奏はEXアクションを選択するとクロスオーブレイカーはその機体を赤く発光させ、残像を走らせながら加速する。

 

 EXアクション・トランザムを発動させたクロスオーブレイカーは爆発的な加速をもってGNソードⅢをライフルモードで発射しつつ左手に一刀のレーザー対艦刀を装備するとストライクNEXTseedに襲いかかる。

 

 だが愛梨もすぐに反応して見せた。両腕のGNフルシールドを展開することで防御すると、そのままストライクNEXTseedもトランザムを発動させ、GNフルシールドをパージする。

 

 そのままクロスオーブレイカーの背後に回り込み、ビームサーベルで斬りかかろうとするもその前にジョストエースのミサイルが二機に襲いかかり、避けるには間に合わずクロスオーブレイカーはGNフィールドを展開して防ぐが、ストライクNEXTseedは直撃を受けてしまう。

 

「まずは……ッ!」

 

 硝煙があがるなか奏は標的をのけ反ったストライクNEXTseedに定めてそのままレーザー対艦刀で撃破しようとする。

 

 だがやはりこのバトルは何より行っているファイターを熱く高ぶらせるもの。

 ……奏にとってそれがいけなかった。

 

「……っ!?」

 

 奏の視界がグニャリと歪み、次の瞬間、全てがスローになったような光景が広がる。この光景を奏は良く知っている。自分の中に秘めた能力が発揮する時、不安定になった時によく発動する。

 

「……水を差してくれる……っ!」

 

 奏の能力が不安定になる原因は感情の高ぶり。今、こうして夢中でバトルをしているだけでも知らずに発現してしまうのだ。折角の素晴らしいバトルに冷や水を浴びせられたように奏の心境はみるみるうちに白けていく。

 

 そんな奏に不安定になった能力も落ち着いていき、スローになった世界も漸く元にも戻る。現実に戻ったような奏はそれでもそのままストライクNEXTseedに刃を向けようとしたのだが……。

 

『──それでも私は信じてる』

「──ッ!?」

 

 すれ違いざま切り捨てようとした時、脳裏に女性の声が響く。もう何度も見た悪夢の中で聞いてきた声だ。だが現実においても聞こえたのはこれが初めてなのか、奏は明らかに動揺しており、ストライクNEXTseedに何もせずそのまますれ違って通り過ぎてしまう。

 

「なんなんだお前は……ッ!?」

 

 サヤナも愛梨も今の奏の行動に不審がるなか、奏は片手で頭を抱えながら答えのない問い掛けをする。ずっと聞こえてくる一人の女性の声。まるで自分のことのように懐かしく、それでいてまるで奥底に眠る自分を呼び覚まされているようだ。

 

「私は私なんだ……ッ! 惑わさないでくれ……ッ!」

 

 この声を聞いていると、声は全く違うのにまるで自分だと錯覚してしまうようだ。それが奏を惑わせる。もはや忌々しさを越え、心の底から願うような奏の呟きも答えるものなど誰もいなかった。

 

 ・・・

 

 楽しかった時間も終わり、愛梨やサヤナと別れた希空達はホテルに戻っていた。

 

「……折角、知り合いがテレビに出てるのに見ないなんて」

 

 希空が見つめるテレビにはバラエティ番組が放送されており、その中にはMITSUBAの姿がある。MITSUBAことツバコにサヤナの面影がある。それもそうだろう。実はツバコはサヤナの妹なのだ。番組を見ながら最後に会ったのはいつだろうかと懐かしんでいる希空だが隣のベッドに眠っている奏を見やる。

 

 何だかんだで楽しい時間は送れたものの奏の様子は最後までどこかおかしかった。

 いつもは黙っていても勝手に喋りかけてくる彼女だが、今日に限っては無言でホテルに戻るなり、明日は博物館に行くからとさっさと済ますことを済ましてベッドで眠ってしまった。

 

(奏とはずっと一緒にいるのに……)

 

 こちらに背を向ける形で眠っている奏に希空は静かにこぼす。希空にとって今日の奏は今まで幼い時からずっと一緒にいた彼女の全く知らない姿を見てしまったようだったのだ。

 

(奏は私に……私には何か隠してる)

 

 するとおもむろに立ち上がった希空は眠っている奏の傍らに歩み寄る。少なくとも今は落ち着いているようで規則正しい寝息を立てていた。

 奏が希空に隠し事をしている……。それは何なのかは分からなくとも、その行動その物には希空も薄々感づいてはいたのだろう。

 

(……でも……)

 

 奏の寝顔を見つめながら、希空は彼女が眠るベッドに乗りかかる。奏に覆い被さるような体勢になり、指先で奏の唇を撫でるとそっとその頬に手を添えて自分に向き直らせる。

 

「でも……お互い様ですよね」

 

 奏は眠っていて起きる気配はない。

 顔と顔が向き直り、その距離が近いものの希空は静かに口を開く。

 

「私も奏に隠している事がありますから」

 

 希空は距離の近い奏にどこか凍り付くような冷たさで呟く。

 奏を見据えるその真紅の瞳には慈しむようなそんな他者を思いやる感情と嫉妬のような他者への負の感情などの複雑な感情が混ざり合っていたのだ。




<いただいたオリキャラ&俺ガンダム>

刃弥さんからいただきました。

ガンプラ名 ジョストエースガンダム
WEAPON ツインソードライフル
WEAPON ツインソードライフル ライフルモード
HEAD  アストレイグリーンフレーム
BODY  ストライクフリーダムガンダム
ARMS  ガンダムヘビーアームズ
LEGS  風雲再起
BACKPACK ガンダム試作3号機
SHIELD  シェンロンシールド

カラーリングは全身が白。風雲再起の四本足による高機動を活かした、ツインソードライフルによる突きと薙払いの一撃離脱の戦法を得意とする。
遠距離戦についてもオプション装備のマイクロミサイルやカリドゥス複相ビーム砲で補う。
また父親の影響で剣術にも心得があるので、二刀流のビームサーベルでも戦う。弱点は宇宙空間などによる空中戦が苦手なこと。


幻想目録さんよりいただきました。

ガンプラ名:ストライクNEXTSeed

元にしたガンプラ:ストライクガンダム

WEAPON:ラケルタビームサーベル(フリーダム)
WEAPON:高エネルギービームライフル(Sフリーダム)
HEAD:ビルドストライク
BODY:フリーダムガンダム
ARMS:ガンダムデュナメス
LEGS:ビルドストライク
BACKPACK:フリーダムガンダム
SHIELD:GNフルシールド

拡張装備:太陽炉(腰裏)、Cファンネルロング(両足)、レーザー対艦刀(バックパックのブースター近く)、レールキャノン(両腰)

機体カラー:
基本カラー変えずに腕パーツだけ緑色の部分をエースホワイトでお願いします。
後は足のつま先の部分が赤⇨青色になっています。
他パーツはカラー変更なしです。

機体説明
両親の愛機であるストライクを参考にして愛梨が初めて自分一人で作り上げた機体。しかし太陽炉だけは父親が以前の機体に付けていたものを愛梨に譲ったもの。ただ太陽炉の性能が良過ぎるからなのか愛梨の技術が追いついていないのかは分からないがトランザムを使用するとフルシールドが加速に耐えきれずに破損してしまうのでフルシールドは簡単にパージ可能にしてある。そのため現在愛梨がオリジナルの太陽炉を製作中…

基本的に中〜遠距離の機体だがフルシールドをパージしトランザムを発動すれば一気に近距離と遠距離問わず戦える万能な機体になる。ただしシールドを破棄するため防御手段がなくなるので諸刃の剣になっている。
愛梨本人曰く「seedのキラみたいに全部良ければシールドなんていらない!」だがそれに対して周りは「それなら最初からフルシールドなんていらないんじゃ…」とこぼしている。



素敵な俺ガンダムありがとうございます!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。