機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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真紅の瞳は何も語らず

 予定通り、再オープンの目玉の一つであるガンプラバトルのイベントが執り行われることになり、会場には所狭しと人で賑わっていた。招かれていた翔を含んだゲスト達のトークも終わり、いよいよガンプラバトルが執り行われる。

 

「すっごい人数だね。どんなバトルになるんだろ」

「さあ。けど見知った顔もチラホラいるし、単純なバトルにはならないでしょうよ」

 

 観客席には今回、観戦することを選んだヴェルとシュウジがおり、抱えたバケツサイズのポップコーンをパクパクと食べているヴェルの隣でシュウジは参加者の中に見られる厳也達の姿を見ながら答える。

 

 ・・・

 

≪それでは準備が完了したファイターから出撃してくださいっ!≫

 

 いよいよ目玉のガンプラバトルが行われる。イベントMCがマイク片手に進行を始めると、参加者であるガンプラファイター達はガンプラバトルシミュレーターへと向かっていく。

 

「……一矢の奴、おらぬの」

 

 厳也達は周囲を見渡すが、一矢の姿は見当たらない。もしかしたらこの会場のどこかにいるのかもしれないが、だとしても何故、自分達の元にいないのだろうか。

 

「……俺達のところにはいなくとも、別の場所で参加している可能性はある」

 

 一矢がこの場におらず、寂しそうな表情を浮かべているミサを安心させるように影二が声をかける。シミュレーターは無数にあると言って良い。何も自分達のところにいなくとも参加者であれば、この会場でどのシミュレーターでもイベントその物には参加は可能だ。

 

(……一矢)

 

 ぼちぼち参加者達がガンプラバトルシミュレーターに乗り込んでいく。影二の言うように自分達は別に参加している可能性はあるが、それでも出来るのなら傍で、一緒に参加したかった。とはいえ時間が押し迫っている為にミサはガンプラバトルシミュレーターに乗り込む。

 

「……」

 

 ミサがガンプラバトルシミュレーターに乗り込んだのと同じタイミングで一矢がガンプラバトルシミュレーターが置いてある会場に姿を現す。なにかを探すように周囲を見渡していた一矢は目を伏せて、何か迷う素振りを見せつつも彼自身、ガンプラバトルシミュレーターに向かっていくのであった。

 

 ・・・

 

 ネバーランドが執り行うガンプラバトル。そのフィールドはそのままネバーランドを模して造られたステージであった。ネバーランドの広大なステージを舞台にガンプラバトルが行われている。

 

「各砲座一斉射撃! 撃ち落とせッ!!」

「淄雄が楽しそうにしているんだ、邪魔はさせないっ!」

 

 このイベントには本当に多くの参加者がバトルをしている中で一際目立つのはバイク戦艦ことアドラステアを駆る淄雄とそれを援護するようにアインラッドを駆使するゲドラフを使用する佳那であろうか。

 

「随分と派手にやる」

 

 アドラステアとゲドラフによって次々にガンプラが撃破されているなか、上空から眺めていたのは翔のブレイカーネクストであった。そろそろ自身もボチボチ動き出そうかと考えた時であった。

 

「──ッ!!」

 

 ふとモニターの前方がキラリと光る。感づいた翔が咄嗟にブレイカーネクストを動かすと、先程までブレイカーネクストがいた位置に全てを飲み込まんばかりの極太のビームが過ぎていく。

 

「やっぱり当たらないか」

「……リーナか」

 

 モニタ-を拡大して相手を確認する。そこにはウイングゼロの姿があり、ブレイカーネクストへの通信からファイターはリーナだろう。

 

「……翔が作ってくれたこの強化ユニット……結構凄いね」

「気に入ってくれたのなら何よりだ」

 

 先程の攻撃は挨拶代わりだろうか。ウイングゼロがその手に装備しているツインバスターライフルは今までと外観が違った。

 それはツインバスターライフルの強化ユニットであり、それを3基を銃身に装着することによって完成したドライツバークバスターであった。ドライツバークバスターの威力に心なしか驚いているリーナに翔は微笑んでいると……。

 

「また来る……!」

 

 すると今度は再びブレイカーネクストを狙った精密射撃が襲いかかり、そのあまりの鋭さから咄嗟にビームキャリーシールドを展開することによって何とか防ぐ。

 

「やはりカガミか」

「アナタに習った狙撃術です。いかがですか?」

「腕を上げた。痛いくらい良く分かるよ」

 

 シールドを構えたままブレイカーネクストが狙撃を放った相手を見やれば、此方に向かって突っ込んできたMA形態のライトニングFBがMS形態へと変形してきていた。

 ファイターはカガミであり、予想が合っていた翔の呟きにカガミが微笑を浮かべながら尋ねると翔も笑みを浮かべて答える。

 

「私達だけではありませんよ」

 

 並んでいるウイングゼロとライトニングFB。二人がかりで向かってくるのか考えていた翔だが、そんな翔の心を見透かしたカガミの発言と共にガンプラバトルシミュレーターに反応があり、次の瞬間、ブレイカーネクストに四方八方からソードピットが襲いかかる。

 

「レーアまで……」

「驚いたかしら?」

 

 すぐに反応して掻い潜る様に避けたブレイカーネクストが確認すれば、そこにはレーアのダブルオークアンタの姿が。だがただのダブルオークアンタではなく、右肩に装備されている新たな大型の実体剣・GNソードIVフルセイバーを追加したダブルオークアンタ フルセイバーだ。こちらもリーナのドライツバーク同様に翔が政策したものだ。

 

「翔さん? あれ、なんですかこの状況は……?」

「なになに、翔さん、レーアさん達のこと怒らしたの?」

 

 ブレイカーネクストと対峙するのは三機のガンダム。すると翔を目当てにやって来たあやこのアイオライトの風香のエクリプスまで合流してきてしまう。しかし二人ともレーア達とは違い、翔を攻撃することはなくこの状況の説明を求めている。

 

「怒らせる……。そうね、一度、翔にはお灸を据えるべきだと考えていたの。みんなに優しくするだけしておいて、いつまでもハッキリさせないんだから」

「なあなあでいましたが、刺激を与えるのも良いかもしれませんからね。引いてダメなら押してみましょう」

 

 怒らせたつもりはない、と風香に答えようとする翔だが、その前にレーアとカガミが答えてしまい、その内容に唖然としてしまう。

 

「ってきり翔さんはハーレム狙いなのかと思ってたけど。なーるほどね……。だったら風香ちゃんもやっちゃうよっ!」

「……そうですね。いつまでも翔さんを放っておいたら、いつまた女の子誑かすか分かったもんじゃありません」

 

 唖然とする翔を他所にレーア達の言葉に賛同した風香とあやこはそれぞれ機体を動かし、ブレイカーネクストと対峙する。

 

「……えー……っと……本気……なのか……?」

 

 対峙する五機のガンプラに流石の翔と言えど、冷や汗をかいてしまう。尋ねる翔にダブルオークアンタF達は武装を構える事で答える。

 

「翔は一度、爆発した方が良いと思う」

「リーナ!?」

「ルルに言われた。“私の分はリーナさんに任せる”って」

 

 ボソッと呟くリーナに妹のような存在の彼女に言われたことに動揺している翔だが、リーナはクスリと笑みを浮かべながらドライツバークバスターを構えると同時にダブルオークアンタF達は散開してブレイカーネクストに襲いかかるのであった。

 

 ・・・

 

「やっぱり色んなファイターがいますね」

 

 厳也達もガンプラバトルを行っており、参加者の数だけ個性の光るガンプラとバトルをしながら咲が楽しそうに話すと、同意するように厳也達も頷いている。

 

(一矢……)

 

 しかしミサだけは違っていた。その暗い表情は一矢だけしか考えておらず、心ここにあらずと言ったところか。

 

「っ!?」

 

 そんな心境はバトルにも反映されており、アザレアリバイブに襲いかかるガンプラに反応が遅れてしまった。迫るガンプラに直撃を受ける事をミサは覚悟する。

 

 しかしその前に上空から一直線に降り注いだビームがガンプラを貫き、撃破する。目の前で爆散したガンプラに驚きつつモミサが上空を見上げれば……。

 

「一矢っ!!」

 

 上空には翼を広げたガンダムが浮かんでおり、こちらを見下ろしていた。

 あのガンプラは一体、なんだ?と厳也達が互いに確認するが、誰も知らない。だが一人、ミサだけは知っていた。

 先程の暗い表情から一転して花が咲いたような明るい表情であのガンプラを使用するファイターの名を口にする。

 

 蒼と白を基調にしたそのガンダムは全身にCファンネルを装備しており、バックパックに装備しているスーパードラグーンを併せれば凄まじい力を発揮するだろう。

 

 その名はリミットガンダムブレイカー。

 

 ミサが一矢の部屋で未完成の状態で見たあのガンプラは漸く完成し、今こうして日の目を見たのだ。

 

「一矢……?」

 

 しかし一向にして一矢からの反応はない。一体、どうしたのか? 怪訝そうに一矢の名を呟く。いつまでも空からこちらを見下ろすリミットブレイカーからは威圧感のようなものすら感じるのだ。

 

「っ!?」

 

 すると次の瞬間、リミットブレイカーはその手に持つカレトヴルッフをガンモードに切り替えて、アザレアリバイブにその銃口を向けると引き金を引く。咄嗟にシールドで防いだもののミサは呆然としてしまう。

 

「なん……で……!?」

 

 一矢が自分に攻撃してきた。その衝撃はミサにはとても大きかった。しかし呆然とするその時間さえ許さぬようにリミットブレイカーは朱い刀身のカレトヴルッフをソードモードに組み替えるとアザレアリバイブに襲いかかる。

 

「……」

 

 リミットブレイカーのガンプラバトルシミュレーターには確かに一矢の姿があった。

 前髪に見え隠れする真紅の瞳は妖しく揺らめき、アザレアリバイブを捉えて離さない。

 そこから彼がなにを考えているのかは全く分からないがリミットブレイカーのツインアイは不気味に輝くと、カレトヴルッフを振りかぶるのであった……。




ガンプラ名 リミットガンダムブレイカー

WEAPON カレトヴルッフS(射撃と併用)
HEAD ダブルオークアンタ
BODY ガンダムエクシア
ARMS ガンダムAGE‐FX
LEGS デュエルガンダム アサルドシュラウド
BACKPACK ストライクフリーダムガンダム
SHIELD アンンチビームシールド

ビルダーズパーツ

チークガード×2(両頬)
Cファンネル・ロング×2(両腰)
Cファンネル・ショート×2(両腿横)
追加装甲版×2(両肩のCファンネルを覆うように)

イメージの為、例によって活動報告の方にリミットブレイカーのマイハンガーに繋がるURLを貼っておきます。一応、私が見た限りだとパソコンからは見れました。

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