機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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今後の課題

 

 バーニングブレイカーと対峙する彩渡商店街ガンプラチーム。

 真っ先に動いたのはアザレアCだ。マシンガンの銃口をバーニングブレイカーに向け、脚部のミサイルポッドと同時に発射する。

 

「へっ……」

 

 シュウジは笑みも漏らすと、すぐさまバーニングブレイカーを動かす。

 身体を宙に舞うと高速回転をし竜巻を起こすことで迫りくる銃弾を全て防ぎ、その竜巻のせいでゲネシス達は迂闊に攻撃ができなくなってしまう。

 

「──聖槍蹴りィッ!!」

「……ッ!」

 

 しかしバーニングブレイカーにとってはそうではない。竜巻を繋ぎ技にゲネシス達へ向けて急降下キックを放つ。

 圧倒的なスピードを持って放たれるその技に一矢達は何とか避けることには成功するが、ゲネシス達が避けたところに放たれたその一撃は土煙と土砂を巻き上げ、大きなクレーターを起こすほどの威力を見せる。

 

 距離が縮まり一矢が動いた。

 ゲネシスの機動力を利用してバーニングブレイカーの右に回り込むとGNソードⅢを展開して斬りかかる。

 

「甘いぜ」

 

 ポツリと呟かれる。

 ゲネシスのGNソードⅢは二本指で受け止められていたのだ。そのまま刀身を掴まれ、引き寄せられると頭突きを食らう。

 

「流星螺旋拳ッ!!」

 

 腰を深く落としたバーニングブレイカーはマニュピレーターを高速回転させ、放たれた一撃はゲネシスの装甲を轟音をあげて破られ深い損傷を与える。

 

「じ、次元覇王流……!?」

「覇王不敗流だ」

 

 先程の聖槍蹴りもそうだが、流星螺旋拳などの技を使う流派がガンダムシリーズにはある。ガンプラバトルシミュレーターにおいて次元覇王流の技はオプションとして使うことは出来る。しかしそれは一部の技だけであって流星螺旋拳などは使えない。

 しかし目の前のバーニングブレイカーは違う。オプションなどではない。その技をどうやって使うのかなどを理解し体得したかのように放ったからだ。

 

 その事に驚きながら次元覇王流の名を口にする一矢だが、シュウジは即答で否定する。

 彼の構えや戦い方といい、格闘技などに精通しているのは間違いなさそうだが、一矢達にとって覇王不敗流など聞いたことがない。しかしシュウジの反応から嘘をついているとは思えない。

 

「俺はお前より凄ぇ剣筋の女性を知ってる」

「っ!?」

 

 流星螺旋拳を喰らい、のけ反ったゲネシスの頭部を掴み、そのまま地面に叩き付け、轟音と土煙を立てて地面に倒れてしまう。

 

 《クッ!!》

「同じ騎士でも、もっと凄い騎士が俺の知り合いにいるぜ」

 

 ゲネシスにトドメを刺そうとマニュビレーターを振り上げるバーニングブレイカー。そうはさせまいと騎士ガンダムが彗星の如く素早い剣技がバーニングブレイカーに放たれるが、どれもバーニングブレイカーに掠ることもなく受け流される。

 

「つ、強い……」

「師匠に扱かれたんだ。俺の強さは伊達じゃあねえぜ」

 

 こちらが攻撃を受けることはあっても、バーニングブレイカーは直撃することもない。

 まずこの場に彼に近接戦で勝てる者はいないし、射撃をすれば先程の竜巻など予測不可能なやり方で防いでくる。思わずポツリと呟いてしまうミサの言葉を聞き取ったのか、シュウジは師を誇るように自慢げに話す。

 

「お前らはチームなのか?」

「は、はい。タウンカップ出て優勝しました……」

 

 こちらに攻撃を仕掛けようとはせずに感じた疑問を投げかけてくるシュウジにミサはおずおずと答える。恐らく今のバーニングブレイカーは攻撃は仕掛けてこないだろう。それほどの余裕を感じられる。

 

「ならお前らには欠点がある」

 

 両腕を組んだバーニングブレイカーから放たれた言葉に一矢達は怪訝そうな表情をする。何が欠点なのだろうか? もしそれが分かればバーニングブレイカーにも通用するのだろうか?

 

「お前らは個々に動き過ぎなんだよ。誰がこのチームを纏めてんだ」

「えっ……あっ……」

 

 彩渡商店街チームと戦闘し感じた欠点をあげ、問いかける。

 言われて見ればこのチームにおける司令塔になる存在はいない。ゲネシスもアザレアCも互いを見合う。

 

「嬢ちゃんは射撃でサポートしようってんだろうが、片方だけが寄ったところでそんなの連携とは言えねぇ。まっ、仲良しこよしでやるんなら今のままでも良いがそれじゃあ限界は近いぜ」

 

 先程のアザレアCの動きなどからミサがどういう意図で動いているのかを見抜いたシュウジは淡々と指摘をし、一矢達は自分達がチームを組み以上、大切なことの一つを見過ごしていたことを実感する。

 ここで一矢達はタイムアップとなり、ゲネシス達はその場から消えてしまい、その場にはバーニングブレイカーのみが残るのだった。

 

 ・・・

 

「負けちゃった……」

 

 シミュレーターから出ると、バーニングブレイカーに手も足も出せなかった事が悔しいのかミサは声小さくポツリと呟く。一矢、そしてロボ太も同じなのか僅かに俯いていた。

 

「───よぉお前らか、さっきのチームは?」

 

 数分後、シミュレーターから出てきたシュウジが一矢達に声をかける。軽く手を挙げてこちらに向かってくるその姿は気さくさも感じられる。

 

「見所はある。お前らはきっと今より強くなれるぜ」

「えっ、あっ……はい……!」

 

 感じた印象通り気さくに話しかけてくるシュウジにミサがしどろもどろになりながら答える。先程もアドバイスをしてくれたりと面倒見の良いお兄さんと言った印象だ。

 

「連携ってぇのは難しいよな。俺も前までは一人でも出来るって思ってた。ホント、カッコつけてただけって思えるぜ……。でも少し前にある人に連携の……チームの大切さを教わった」

「……あの……ある人って……」

「……如月翔……。お前らも知ってるんじゃないか?」

 

 饒舌に話すシュウジにここで一矢が口を開く。

 その質問はシュウジの口から出てきたある人に関してだ。戦闘前に彼が言った言葉。あの言葉から推測すればその人物は一矢の知る人物だ。一矢の問いに答えるシュウジ。やはりある人というのは翔だったようだ。

 

「まぁこんな事言ってても今もまだ、たいちょ……リーダーにどやされるんだけどな、動きすぎだって。縁があったらまた会ってバトルでもしようぜ」

「あのっ!」

 

 何やら言い留まったシュウジは言い直しながらも、今日はもうガンプラバトルをするつもりはないのかイラトゲームパークを出ようと歩き出そうとすると、ミサが呼び止める。

 

「強くなったら今度はシュウジさん……だっけ。シュウジさんと、そのチームの人達とバトルするよ! 今度は負けないからっ!!」

「……おうっ!」

 

 どうやらミサはシュウジが言うような仲良しこよしで終える気はないらしい。

 

 当然だ。

 自分達は上を目指すのだから。強くなったら今度はシュウジのチームとバトルがしたいと思えた。きっと素晴らしいチームなのだろう。ミサの強い言葉を聞いたシュウジは僅かに目を泳がせつつ軽く手をあげ、その場を去るのだった。

 

 ・・・

 

「シミュレーターのスピーカーで喋るとは想定外だったなぁ……。ヒアリング用の言語データベースを利用して音声データを合成するとは……」

 

 トイショップまでの帰り道、今後のチームとしての課題を話しつつ帰ってきた一矢達はカドマツと合流し、テストの経緯を話し終えるとカドマツは肩を竦めながらため息交じりに口を開く。

 

「勝手にやってたってこと?」

「ここまで出来るAIを作るなんて流石、俺。でもこれはダメだ。AIに禁止させるかなぁ……」

 

 ロボ太の行動はカドマツの意図したものではないことに驚く。

 てっきりそうだとしか思ってなかった。カドマツは自分を褒めつつもロボ太を見やる。その瞳は複雑そうな感情が見え隠れしていた。

 

「なんで!? 喋れなくするなんて可哀想だよっ!!」

 

 もうロボ太……もとい騎士ガンダムに主呼びしてもらえないかもしれない事に一矢が衝撃を受けているなか、その隣でミサが抗議するように声を上げた。

 

「ほらな、必要以上に感情移入しちゃうだろ? 例えは悪いがコイツが車に轢かれそうになった時、持ち主が助けようとしたら困るんだよ」

「あー……言いたいことは分かった……。でも……」

 

 口下手な自分がロボットならば何とかコミュニケーションできるかもしれないと思っていたが、肝心のロボ太が喋れなくなるかもしれない事に一人何も言わないが、両手と膝を床に突き頭を垂らして落胆している一矢を横目にロボット開発のデリケートな部分の一部を話すカドマツの話を聞いたミサは理解はするが、それでも納得は出来ていないようだ。

 

「んー……。だが確かにガンプラバトルでコミュニケーションが出来ないってのは不都合だな……って、なんだロボ太?」

 

 とは言えシミュレーターでロボ太が言った事も一理あると理解をするカドマツにミサが感激したようにカドマツの名を口にする横でロボ太が何やらカドマツにモニターを通じて意思表示をする。

 

「お前って奴は……っ!!」

 

 ロボ太が出力したテキストが映るモニターを見て感動したかのように声を震わせるカドマツ。その様子を見てミサがのぞき込む。

 

 〝私は私の主やその仲間に危害が及ぶことは望まない。その可能性を生む要素は排すべき”

 

 そこにはこう映し出されていた。ロボットながら、その騎士の忠誠心にカドマツは感激したようだ。

 

「バッキャローお前……こんなこと言われて出来るわけないだろぅっ……!」

 

 声を震わせその場を去っていくカドマツ。どうやらロボ太がバトルで喋れなくなるという事態は避けられたようだ。とはいえ……。

 

「……感情移入し過ぎ」

 

 ロボ太が喋られなくなる事は回避できたが、今さらながら開発者としてそれで良いのかと思う部分はある。

 何より隣の喋らないチームメイトも床に伏せたままロボ太に上半身だけ抱き着いて喜んでいる。カドマツと一矢のその姿に苦笑しながらミサが一人呟くのだった……。


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