機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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最高の贈り物

 玉座を舞台にゲネシスブレイカーとアザレアリバイブはスペリオルドラゴンとバトルを繰り広げる。宙ではゲネシスブレイカーとスペリオルドラゴンが幾度もぶつかり合う。

 

(流石ロボ太ってとこか……)

 

 何度も何度も実体剣同士が交わり、甲高い音と共に火花が散る。

 しかし刃を交えれば交えるほど相対する一矢にはそのロボ太の高い実力を感じ取る。先程の三体の騎士ガンダムと戦闘をした際、根本となるロボ太のAIに迷いがあった為、難なく撃破することが出来たが、今のロボ太には迷いがない。それ故に……。

 

「チッ……!」

 

 スペリオルドラゴンから彗星のような剣技が放たれ、ゲネシスブレイカーへ襲いかかる光の斬撃破を受け止めるものの、その威力に耐えながら一矢は思わず忌々しそうに舌打ちする。

 

「うおぉおっ!!」

 

 しかしスペリオルドラゴンの閃光のような苛烈な勢いはとどまる事を知らず、スペリオルドラゴンが握るダブルソードの刃に轟々と燃え盛る炎が纏い、そのままロボ太の咆哮と共にゲネシスブレイカーに叩きつけると流石に受け止めきれず、耐え切れなくなって吹き飛んでしまう。

 

「やらせないっ!」

 

 吹き飛ぶゲネシスブレイカーを追撃しようとするスペリオルドラゴンであったが、その前にアザレアリバイブの怒涛の射撃がスペリオルドラゴンの行く手を阻む。しかしその射撃はスペリオルドラゴンがダブルソードを天に突き出した事で発生したトルネードスパークによって悉く防がれてしまう。

 

 しかもそれだけに留まらず、スペリオルドラゴンが包んでいた嵐が消え去るとその両肩の竜頭から砲撃を放ち、アザレアリバイブの射撃と相殺されてしまう。

 

「まだだ二人とも! 私はまだ満足してはいないっ!!」

 

 二対一の状況でさえロボ太は引けを取らない。それどころか更に求めてくる。それもそうだ。ロボ太はずっと一矢とミサの二人とずっとチームとして共に戦って来た。だがらこそロボ太は知っているのだ、二人の実力を。まだまだこんなものではないということを。

 

「そうだな、こんな事で満足されちゃ……」

「張り合いがないよっ!」

 

 姿勢を立て直したゲネシスブレイカーとアザレアリバイブは並び立ち、一矢とミサの口元に笑みが浮かぶ。するとゲネシスブレイカーとアザレアリバイブの二機は同時に覚醒をし、この玉座に鮮やかな光が照らされる。

 

「それでこそだッ! 行くぞ!!」

 

 二機のガンダムが覚醒を発現したのを見て、高揚するロボ太はダブルソードを一振りし突撃していく。向かってくるスペリオルドラゴンにアザレアリバイブは射撃を繰り出し、先程とは違う鋭い精度を誇る一発一発に掻い潜っていたスペリオルドラゴンもドラゴンシールドで防ぐものの、シールドに激しい弾痕が残る。

 

 同時にゲネシスブレイカーがGNソードⅤを構えて、地を蹴って一気に飛び出す。

 ゲネシスブレイカーの元々の高機動と覚醒が合さって生まれる機動力にスペリオルドラゴンに損傷が走る。

 

「楽しい……ッ! やはり二人と行うバトルは格別だッ!!」

 

 しかしロボ太も次第に適応していき、ゲネシスブレイカーの機動力に対応して剣戟を繰り広げる。幾度となく打ち合いながらロボ太は高まるものを感じる。これはただ誰かとガンプラバトルをするだけなら感じられない、一矢とミサだからこそ感じられるものの筈だ。

 

「だからこそ……ッ!!」

 

 弾かれるようにゲネシスブレイカーとスペリオルドラゴンが距離を取る。

 しかし相手の出方を見るわけでもなくゲネシスブレイカーとスペリオルドラゴンは同時に向かっていく。

 

「閃光ォッ斬ッ!」

 

 スペリオルドラゴンはダブルソードを突き出し、その身に光を纏い、竜を表したようにゲネシスブレイカーへと向かっていく。

 ゲネシスブレイカーも対抗するように覚醒の光を己の刃に込めて玉座の中心でぶつかり合い、見る者すべての視界を遮るようなまさに閃光が満ちる。

 

「──久しぶりに楽しい時間だった。主殿、ミサ……ありがとう」

 

 地に降り立ったゲネシスブレイカーとスペリオルドラゴンの身に亀裂が走る。鎧に入った皹を撫でながら全力を持ったバトルに満足したロボ太は一矢とミサにそれぞれガンプラ越しに頭を下げ、ログアウトするように玉座から消える。

 

「ちょっとー! 悩みはー!?」

≪解決したんだからいいじゃねえか≫

 

 バトルそのものは楽しかったが、結局ロボ太が何で悩んでいたのか分からなかったミサは不満そうにいなくなったロボ太に尋ねるが、カドマツは苦笑しながら宥めるのであった……。

 

 ・・・

 

「……起きたか」

 

 スリープ状態を解除したロボ太が起動すると、ロボ太が目にしたのは先程、自身の最深部までやって来た一矢達とカドマツが出迎えてくれた姿であった。

 

「結局、なんだったのー」

「まあ良いじゃん。結果オーライって奴だよ、ミサ姉さん」

 

 いまだに不満を垂れ流しているミサに夕香が宥めていると、ふとリーナがロボ太に歩み寄り、ロボ太に合わせて屈む。

 

「もう……大丈夫なんだね」

 

 ロボ太の兜を撫でながら、迷いをふりきった事にリーナは微笑を浮かべる。そうしていると物言えぬロボ太がリーナへ手を差し伸べる。

 

「うん、よろしくね」

 

 リーナは言った。ここから始めていきたいと。だからこそその始まりともいえるこの出来事を記念するようにロボ太から差し伸べられた手をしっかりと握る。

 

「意外と手、大きいんだね」

 

 その手をしっかりと握りながらリーナはその感想を口にする。騎士ガンダムモチーフでトイボットである為、サイズは幾らか制限されているが、その手は実際握ってみると思っていたより大きい。こういったものは実際、近くで触ってみないと分からないものだ。

 

「……もう行くのか」

「うん、そろそろ帰らないと……。今日だけしか会えないわけじゃないから」

 

 最後にまたロボ太に微笑を見せながら立ち上がったリーナは背を向けて歩み始めると、一矢はその小さな背中に尋ねる。するとリーナは微笑を浮かべたまま、肩越しで振り返って答え、この場を去っていくのであった。

 

 ・・・

 

「ただいま」

 

 ロボ太の件があって、翔のマンションに帰宅するのに時間がかかってしまった。玄関の扉を開き、帰って来たリーナは室内に足を踏み入れる。

 

「おかえり、リーナ」

 

 すると翔をはじめとして、レーア達も口々に「おかえりー」と温かくリーナを出迎えてくれた。

 

「もう飯出来てるから、手ェ洗って来いよ」

「うん」

 

 夕飯には良い時間となってしまった。もう既に準備を進めていたのだろう。台所を指差しながらシュウジが話しかけると、リーナはコクリと頷いて洗面所に向かっていく。

 

 ・・・

 

「そう言えば最近、リーナは頻繁に外出しているようだけど、何をしているのかしら?」

 

 食卓をかこみながら食事をとっている翔達。すると話題の種にと、レーアがずっと気になっていた事を口にすると、同じく気になったのか翔達もリーナを見やる。

 

「友達と遊んでるんだ」

 

 するとリーナは翔達に屈託のない笑顔を向ける。それだけ満ち足りた時間を過ごしているのだろう。釣られるように笑った翔達は夕飯で話に花を咲かせるのであった。

 

 ・・・

 

「そろそろかな」

 

 それから数日が経ち、彩渡商店街のトイショップでは一矢とミサの二人が作業ブースで誰かを待っているのか、やる事がなさそうに暇を持て余していた。

 

「……来たな」

 

 すると程なくして奥からロボ太がやってくる。どうやら先程まで充電を行っていたようだ。一矢とミサの視線が集中したため、どうしたのかと二人の顔を交互に見ているロボ太にミサは手招きで呼びせ寄せる。

 

「じゃーんっ!」

 

 ロボ太を自分達が座る作業ブースに座らせると、ミサは机の上に置いていた箱を持ち上げて、隠していた中身を見せる。そこにあったのは金色に輝くレジェンドBBのスペリオルドラゴンであった。しかも手を加えらているようでかなりの出来栄えだ。

 

「……俺達からのプレゼント。ロボ太にはいつも世話になってるし」

「私と一矢で作ったんだよ! ロボ太の無限ループも解決した記念でねっ」

 

 何故、ガンプラのスペリオルドラゴンがあるのか二人に尋ねるように見やるロボ太に一矢とミサは笑い掛けながら説明する。

 

「……あれ嬉しくなかった?」

 

 するとスペリオルドラゴンをまじまじと見ていたロボ太は俯いてしまう。プレゼントが気に入らなかったのかと不安がるミサはロボ太に尋ねる。

 

 だがロボ太はすぐに顔を上げ、瞳にあたる液晶部分を操作して笑顔を浮かべる。その姿を見た一矢とミサは顔を見合わせると、笑いあい、早速三人でガンプラバトルへと向かうのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 ──私はトイボット 玩具ロボットである。

 

 

 

 

 ハイムロボティクス商品開発室で初めて起動したことを覚えている。

 

 

 

 

 右も左も分からぬ若輩ながら彩渡商店街のとある玩具店にて【ロボ太】というパーソナルネームと……

 

 

 

 

 

 かけがえのない友を授かった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

 

 

「……いきなり呼び出してどうしたの?」

 

 ロボ太の一件から数日後、一矢は一人喫茶店に呼び出されていた。奢りということもあって出されたコーラが入ったキンキンに冷えたコップを両手で持ってストローで啜りながら用件を目の前に座るシュウジに尋ねる。

 

「……実はお前に頼みたい事があってな」

 

 呼び出してきたシュウジだが、その様子はどこか疲れ切っているようで額を片手で覆って注文したアイスカフェオーレを一口も飲もうとしなかった。するとしばらく時間を置いて、シュウジは重い口を開く

 

「……これをな……。預かってほしいんだ」

 

 シュウジは横に置いてあった大きな封筒を卓上に置き、一矢の前に押し進める。

 漸く本題に入った事で一矢はコーラをコースターの上に置きながら、面倒臭そうに封筒を手に取る。どうやら手で触った感触では中身は雑誌のようだ。

 

「……エロ本?」

 

 封筒を開けて、中身を確認すればどうやら中身は例のエロ本だったようだ。どういう訳かと顔を顰めた一矢は理由を尋ねるようにシュウジを見やる。

 

「……レーアさん達にこの間、バレてな……。それだけならまだしもヴェルさんがそれ以降、妙に積極的って言うかなんというか……。その本で仕入れた知識で顔真っ赤にしながら人のこと誘惑しようとしてくんだけど……流石に見ていられなくなったからエロ本だけでも遠ざけようかなって」

 

 どうやらあれ以降、奥手であったヴェルが積極的になってきたそうだ。とはいえ元々の性分が奥手の為、無理をしている部分もあるらしく顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらシュウジを誘惑しようとするヴェルの姿が見ていられず、言っても聞かないからエロ本を遠ざける選択肢をしたらしい。

 

「……捨てれば良いじゃん」

「お前はエロ本を価値を分かっちゃいない」

 

 何故、わざわざ人に預けてくるのか。しかもこういった雑誌を。そう思った一矢は捨てる事も提案するのだが、妙に力のこもったシュウジの一言に首を傾げてしまう。

 

「なっ? 兎に角さ、頼むっ!」

 

 呆れてため息をつく一矢に両手を合わせながら頼み込むシュウジに半ば押し切られるような形でエロ本を預かる事を了承する。

 

(……巨乳?)

 

 とはいえ一応、夕香など家族の目もある。隠すつもりだが万が一にでも見られてしまった際、変な中身ではないか気になった一矢は再度、封筒内の雑誌の中身を見る。

 中身はアブノーマルなものではなかったが、表紙に書かれた煽り文句を見て、一矢は首を傾げながらでもエロ本を預かるのであった。


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