機動戦士ガンダム Mirrors   作:ウルトラゼロNEO

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炎のブレイカー

 

 

「見てよこの装備! エンジニアがいるだけでカスタム出来ることが増えるんだね……! なんかカマセ君が環境に拘る理由が少し分かった気がするよ……」

 

 暗雲の立ち込める火山のある孤島がステージとなり、ゲネシス達はホログラム投影される。ゲネシスの隣に現れたのは、拡張装備をしてカスタマイズしたアザレアカスタムだ。

 以前のアセンブルシステムでは出来なかったこの姿を一矢に見せながら、複雑ながらミサはカマセがあそこまで環境にこだわっていた理由を理解する。口ではあぁ言っていたがやはり環境の大切さを改めて知ったのだ。

 

「さぁ、じゃあ行きますか」

≪───心得た≫

 

 ホログラム投影されている以上、ゲームは開始され、時間は限られている。

 ミサが動き出そうとした瞬間、聞きなれない声が一矢とミサの乗るスピーカーを通じて聞こえる。

 

 紳士的な男性の声だ。

 そしてその発生源は何と同じチームのロボ太のシミュレーターから流れてきていた。つまりはロボ太だ。

 

≪どうした、二人とも。私は心得たと返答しただけだ≫

「喋ったぁっ!!?」

 

 思わず固まる二人、そんな二人を疑問に思い、自分は何かおかしな事を言っただろうかと問いかけるロボ太にミサは素っ頓狂な声を上げる。

 

≪あぁうむ……。シミュレーターに合成した音声データを入力し、それがスピーカーから出力されている≫

「だってカドマツさんが喋れないって……」

 

 二人が驚いている理由を察したのかロボ太が今、何故自分がこのように言葉を二人に聞かせられているその理由を教えるが、それでもミサは戸惑ってしまう。ロボ太は言葉を発せれない、完全にそう思っていたからだ、

 

≪カドマツは発声機能がついていないと言っただけだ。私のボディにはスピーカーがない。ガンプラバトルシミュレーターにはスピーカーがあるのだから当然、喋ることは可能だ。ガンプラバトルというものはチームで行動するものだコミュニケーション手段がなければ不都合だろう≫

「そ……そーですね」

 

 ロボ太の言うことはまさにその通りではあるのだが、いかんせん驚きが強すぎてミサは唖然としたままだ。

 

≪さぁミサ、そして主殿! 油断せず進もう!≫

「ちょっと! なんで私が呼び捨てでそっちは主殿なのっ!?」

 

 もう自分達のガンプラはシミュレーターのジオラマ上にホログラム投影されている。

 このままではNPC機や他のプレイヤーとエンカウントするのは時間の問題だろう。ロボ太は一矢とミサに声をかけ、一矢が作成した自身のガンプラである騎士ガンダムの歩を進める。

 

 しかしいくら唖然としようがロボ太の言葉が聞き捨てならなかったのか、すぐさまミサがなぜ自分だけが呼び捨てなのか、抗議するように叫ぶ。

 

≪私はカドマツがインプットしたデータに従っているだけだ≫

「カドマツぅっ!!」

 

 別にロボ太が好き好んで二人の呼称を変えているわけではない。ミサの怒りの矛先はカドマツに向かう。

 

「……ふふんっ」

「そこも嬉しそうな顔しないっ!!」

 

 厳密に言えば違う存在ではあるが騎士ガンダムに主呼びされれば気分が良いと言うものだ。

 心なしかご満悦な表情の一矢にすかさずミサがツッコミを入れる。とはいえいつまでもこんなやり取りをする訳にはいかない。早速、NPC機が現れ、こちらに銃口を向けてくる。

 

 真っ先に動いたのはゲネシスだ。

 背部の二つの大型ガトリングを発射して、NPC機の動きを牽制、GNソードⅢをライフルモードにNPC機達を撃ち抜きながら、Vの字の残像を残しながら、高速で接近して、GNソードⅢを展開してNPC機群に切り込んでいく。

 

 一矢は顔には出さないもののゲネシスの性能には驚いていた。

 ブレイカーⅢ自体、過去に作成したが、あの頃はまだ翔の手ほどきを受けたとは言え、その大部分は一矢が作った。今より未熟で当時は気にならなかったが、今ではバトルをする度に少しずつズレのようなものを感じていた。

 

 だが今、成長した一矢が作成したゲネシスは違う。

 ズレなどは感じない。寧ろピッタリと自分に合っている気さえする。もっと加速しようと思えば出来るはずだ。ブレイカーⅢでは到達できなかった領域にこのゲネシスならば行けるのだ。

 

(前に……ッ!!)

 

 ミサの手を掴んだ自分はもう立ち止まらない、俯かない。前に進むんだ。

 過去の自分と決別する為に、手を伸ばしてくれたミサに応えるために。一矢のその気持ちに呼応するかのようにゲネシスのメインカメラは光り輝く。すると背部に光の翼が現れた。

 

「あ……」

 

 背後にいたミサが確認出来たのはここまでだった。

 思わず間の抜けた声を漏らしてしまう、気が付けばゲネシスは新たに現れたNPC機の背後にいた。周囲のNPC機も横一文字に両断され爆発する。

 見えなかった。それ程までの圧倒的なスピードを持ってゲネシスは撃破したのだ。

 

「私だって……ッ!」

 

 今のアザレアとゲネシスの距離はそのまま自分と一矢の差のように感じる。再び現れたNPC機に対して動き出したゲネシスにミサはその後を追い、自分も戦闘に参加する。

 

 後ろから見てる気なんてない。一矢に任せる気なんてないと言ったのは自分だ。言葉だけで済ませる気なんてない。何より迷いを振り払って自分の手を取ってくれた一矢の想いに応えるためにも自分も彼と共に前に進むのだ。

 

 取り付けた拡張装備であるミサイルポッドを発射して、ゲネシスを離れた場所から射撃しようとするNPC機を撃破しつつマシンガンでその周囲のNPC機を打ち抜いて、援護していく。

 

 《流石だな、二人とも》

 

 今の彩渡商店街ガンプラチームは二人ではない。二人の連携に感心しながらロボ太操る騎士ガンダムは電磁スピアを装備すると、そのまま投擲する。

 

 風切り音と共に放たれた電磁スピアがNPC機に深々と突き刺さると同時に接近した騎士ガンダムは電磁スピアを引き抜いて、周囲のNPC機含めて鋭く突きによる攻撃を浴びせる。

 

 《はぁあッッ!》

 

 突き刺した電磁スピアを足場に飛び上がった騎士ガンダムはそのままナイトシールドからナイトソードを引き抜き、素早くそして正確にNPC機を次々に撃破していく。

 

 次々にNPC機を切り裂いていくゲネシスと騎士ガンダム。近接戦においてNPC機は手も足も出ず、今、この二機の独壇場となっていた。

 それでも攻撃しようとするNPC機もいるがアザレアCの射撃がそれを阻み、すぐにゲネシス達に破壊される。

 

 《これで終わりか。物足りないな!》

 

 NPC機を撃破し、その場にはもう何も残らない。

 初めてのガンプラバトルではあったがロボ太は足を引っ張ることもなく一矢とミサと肩を並べられる。その発言からも余裕さを感じられた。

 

 

 ───その時だった。

 

 

「なっ……!?」

「地震!?」

 

 バトルフィールドとなっている火山のある孤島は突如として地鳴りが響き渡り、その振動に一矢とミサが驚く。この発生源は恐らくはモニターに映るあの火山だろう。

 

「噴火したぁっ!!?」

「いや……違う……ッ!!」

 

 火山に目をやった瞬間、火山の火口からまるで噴火のように一筋の炎が現れる。

 ミサは声をあげるが火山に目を凝らした一矢は何かに気づき、否定する。

 火山から現れた一筋の炎はまるで龍のように天へと昇り、暗雲を消し去り太陽が輝く晴天に変わったのだ。

 

「──だったら俺とも戦ってもらおうかッ!!」

 

 オープン回線から自信を伺わせるような活発な青年の声が響き渡る。

 同時にその場にいた者は驚愕する。輝く太陽を背に先程の一筋の炎はこちらに向かってくるからだ。炎はゲネシス達の前に轟音をあげ地面を削りながら降り立つ。

 

 地面に降り立った炎、その中からは人影が見える。人影は二つの拳を打ち鳴らすと大きく手を広げて自身に纏わりついていた炎を吹き飛ばし、その姿をハッキリと見せつける。

 

 そのガンプラはガンダムタイプの機体だった。

 真紅の機体と背部にマウントされた一本の刀は純粋な格闘機のような印象を受ける。

 

「バーニングガンダムブレイカー……?」

 

 そして何より一矢の目を引いたのは表示されているシミュレーターがロックした目の前のガンダムの機体名だ。

 ガンダムブレイカーと言えば自身が憧れている如月翔のガンプラの代名詞とも言える名前だ。

 

「おいおいボケッとしてんなよ。エンカウントしたんならやる事は一つだろ」

「……ッ!」

 

 バーニングガンダムブレイカーを操るであろう青年の声が聞こえ、一矢はハッとする。

 いまだ火の粉がバーニングブレイカーの周囲を舞っている。

 その中でバーニングブレイカーは軽やかにステップを踏むと右手を突き出し、左拳を引き構えをとる。

 アクション映画で見るような構えだ。

 しかしただの真似事ではない。格闘技に詳しくはない一矢にも分かる、隙がないのだ。

 

「速い……っ!?」

 

 しかしいつまでもこちらに武装を展開したまま様子を伺っているゲネシス達をバーニングブレイカーが待つ道理はない。

 もう声をかけてから時間は経っている。

 地面を蹴ると同時にバーニングブレイカーは瞬時にゲネシスの前に移動する。その速度はゲネシスにも勝るとも劣らない勢いだ。一矢が目を見開くのも束の間、掌底打ちを浴び、ゲネシスは吹き飛ばされる。

 

 《主殿ッ!》

「おっと」

 

 吹き飛ばされた一矢、しかしそちらばかりに気を取られていては一矢の二の舞だ。

 ロボ太はすかさずバーニングブレイカーに攻撃を仕掛けるが、どれも素早く受け流されてしまう。

 

「なっ!?」

「ロボ太!」

 

 受け流すうちに騎士ガンダムのナイトソードの太刀筋を見極めたバーニングブレイカーは向けられたナイトソードの切っ先を受け止める。ミサはすかさず援護をしようとするが……。

 

「やるよ」

「わっ!?」

 

 そのままバーニングブレイカーはぐるりと回転し、勢いを利用してナイトソードごと騎士ガンダムをアザレアCに投げる。避ける事は容易いが投げられたのは共に戦っているロボ太の騎士ガンダムだ。アザレアCは思わず受け止めてしまう。

 

「きゃああぁあっっ!!?」

 

 しかしそのせいで動きが一瞬止まってしまった。

 バーニングブレイカーはその隙を見逃すこともなく、右腕の甲に前腕のカバーが右腕を覆い、エネルギーが右マニュビレーターに集中させる。そのままエネルギーを照射して騎士ガンダムごとアザレアCに直撃させ、吹き飛ばすと、ミサの悲鳴が響く。

 

「……アンタ……一体……」

 

 アザレアC達はゲネシスの近くに吹き飛ぶ。

 三機が起き上がりバーニングブレイカーにすかさず再び武装を展開し対峙する。

 強敵であることは痛いほど分かった。手を抜く気はない。これからロボ太を加えチームとして動く以上、ここで目の前のガンプラに歯が立たないようではリージョンカップどころかその先にも行けないだろう。一矢はその強さとその名前に興味を引かれ、問いかける。

 

「シュウジ……、ブレイカーの名を継ぐ者だ」

 

 当のバーニングブレイカーは余裕そうに腰に左手を当てるとそのまま右の親指にあたる部分で頭部のスリット部分を擦り、再び先程の構えをとる。

 バーニングブレイカーのシミュレーター内では金色の瞳の青年……シュウジが好戦的な笑みを浮かべながら、その首元には下げられた宝石……アリスタが輝くのだった……。




シュウジ(Mirrors)

【挿絵表示】


前作EX編主人公シュウジの登場です。彼がここにいるのは前作EX編ラストから世界を旅をし翔の世界に辿り着けた感じですね。ですのでレーアとの勝負はシュウジの勝ちになってます。

前作キャラで登場が早くから決まっていたのは翔、あやこ、シュウジなんですよね。登場するかもしれないキャラがレーア、ショウマ、エイナル、ルルのガンブレ2原作組とリーナ、カガミ、ヴェルの三人です。

前作のラストを考えるに出し易いのはレーアとリーナ。そしてシュウジと同じ小隊であるカガミとヴェルですかね。この四人が今後、出る可能性が高いです。まぁそもそも前作主人公である翔がいまだ名前だけの登場なんですけどね。

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